私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
257 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

257、頑張ったご褒美は。

しおりを挟む




「無事だよ。教会の件からどうなってしまうのかと心配していたが、あの子達のおかげで……以前よりも喋るし、よく笑う」


父さんの言葉に、ほっとする。
教会の件……被害者リストの中にセシリアの名を見つけてしまった時は背筋が凍った。

その数ヶ月前、年初めの儀で久々に会ったセシリアは、お人形さんのようで本当に可愛らしかった。
話しかけられると、一生懸命に返してくる言葉はすべて舌っ足らずで、それを補うかのように手を大きく振ってみたり、それでも足りないのかジャンプまでして言葉を伝えようと頑張る反応がまた可愛らしくて。


(あまりの可愛らしさに他の兄弟や、その配偶者たちからもみくちゃにされて、憮然としていたけどね)


私達兄弟の歳の離れた末っ子だったので、兄弟達の可愛がりも激しかった……。
今まで末の弟という位置だったセグシュですら15歳だ。
そのさらに下に12歳も離れた妹となっては、まさに溺愛といった感じで。


(少々遊ばれすぎてぐったりはしていたが、食後に出たクランベリーをふんだんに使ったケーキに目をキラキラと輝かせていた。その印象が強い)


そんな幼子があんな凄惨な場面に遭遇してしまって…しかも一度も一人で外に出たことのない子が、だ。
……相当怖い思いをしたのではないだろうか。
治療院にて治療中となっている『籠』に囚われていた被害者達は、身体こそ回復の方向へと進んではいるが、精神的な問題からの心身への異常に悩んでいる。
セシリアにだって何か影響があってもおかしくはない状況だった。

魔法で精神こころまでは治せない。

彼らのカルテによれば、初期治療時の外部協力者にセシリアの名があった。
気丈にも誘拐事件から合流後、大聖女かあさんと共に治療にも加わっていたようだ。

私はその場に立ち会うことはできなかったけれど『セシリア嬢の助言により、被害者達の状態改善がなされた。これが無ければ、ほぼ助からなかっただろう』そう書かれているカルテもあった。

あの小さな身体で、いっぱい頑張ったんだろう。
このカルテは後日『セシリア嬢もまた被害者であり、この一文がきっかけとなって彼女の今後の生活が脅かされてはならない』との配慮から、内容削除の上、協力者の欄にのみ、名を残す事となった。


(母さんは全文削除させたがったようだけど……状況を把握するための報告書のようなものだから、完全削除はできなかったみたいだ)


それでも、セシリアが頑張っていたことはわかる。
もちろん、一緒に助かった子……新しい弟もだ。
だからせめて、これからは怖い思いをしないように、守ってやりたい。


……仕事の合間を縫って、セシリアのために精霊使いを探してみようと思う。
どうしても私には精霊使いというと、精霊と仲睦まじく優しく微笑み合うあのエルフの旅人のイメージが強くて。
セシリアにも彼らのように良好な関係を築く事ができれば、彼女の精霊は暴走状態とはいえ、これだけの騒動を起こせるほどの格の高さだ、セシリアにとってきっと強力な助けになるだろう。

婚姻によって公爵家いえから出てしまっている私が、セシリアの兄として関われる事は少ない。
会えない分、たくさんのプレゼントを買い与えるのも関わり方の一つだろうが、そんな事よりは、少しでも知識を深められる手段を贈りたいと思っている。

あー…新しい弟達の分は……会ってから考えよう。


「まぁ、とんでもないトラブルも山盛りなのが……ね」


そう考えているとポツリと父さんの呟きが聞こえてきて、思わずため息が出てしまう。
何言ってるんだか。


「子供ってそういうものだって、よく言ってたじゃないですか」

「まぁ…そうなんだけどな。下の子になればなるほど遭遇すもってくるトラブルが大くなってる気がするんだよなぁ……今回はついに国まで巻き込んでるし」

「老けるてる暇がなくて、良いのでは?」

「忙しすぎて、むしろ枯れてしまいそうだよ」


枯れるって…。
全くそんなイメージが湧かないんですけどね。
実際、良い歳なのに白髪すら無いじゃないですか。


「はぁ……そう言ってる余裕があるなら、楽しんでますよね?」

「まぁ…な。予想外が少々多いが……ああそうだ!…予想外といえば、すごいモノが見れるぞ?」

「3歳のセシリアが精霊と契約交わしてたり、奴隷の主人になってる時点で、すでに『とんでもない』と言う意味では、凄いですよ……」


大通りを必死に竜騎士が何度も疾走していく姿を目撃しつつ、裏通りの影にあった、木の樽に腰掛けつつ、楽しげに目を輝かせて話し出す父さん。
かなり余裕ですね?!

絶対に見つからないという自信があるのが不思議でしょうがない。

せめて見つかってしまった時に対応できるようにと、警戒しなくてはいけないんじゃないかと思うのだが……むしろ私まで木の樽を椅子がわりに勧められてしまった。


「……セシーがいるとハンスが笑う」

「は……?」


は?と、思わずポカンとしてしまった私の顔が面白かったのか、くすくすと笑われてしまった。
ハンス先生もエルフなだけあってかなりの美貌の人だが、基本的に無表情だ。
それでも、透き通るような肌の色も相まって、蝋人形のような冷たい美しさがある。

表情の変化といえば、眉を潜められたり、ため息を吐かれたりくらいしか記憶にない。
会話自体も常に抑揚のない、ボソボソ喋りなのだ。
そのハンス先生が笑うだなんて、全く想像がつかなかった。


「はっきりと笑うんだよ。侮蔑や蔑みではなく、優しく」

「想像つきません……」

「だよな……」


王族ゆえにハンス先生とは幼少期からの付き合いがある母さんすら、ハンス先生の表情が変わるところは滅多に見たことがないと言っていたくらいだ、全く想像がつかない。
そんな私の反応が面白いのか、くすくす笑いが続く。


「仕事こそ優秀だが、滅多に姿を現さないハンスが、セシーが関わる事になると目の色を変えて、動く。……抱え込んで常に傍にいようとする。凄いだろ?」

「いや…凄いも何も、全く想像できません」

「避難所にもきっと姿を現すと思うよ……っと、そろそろ時間だ。セグシュとフィリーは直接避難所へ向かう事になったから、ヴィーもこのまままっすぐ避難所へ行ってくれ。セシーを…王子や子供達を頼んだよ」

「はい!」


返事とほぼ同時に、周囲を風が吹き荒れ始める。
父さんがどこから出したのか、長杖を地に突き立て、シャン!と鳴らす。
風を集め──次の瞬間、軽い衝撃波が起こると、姿が見えなくなる。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...