私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

283、フィリー姉様の説明。

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セグシュ兄様から珍しく笑顔が消えていた。


「……まぁ、セシリアはお菓子に夢中だったから、覚えてないかな?」


いや、やたらじろじろ見てくる変なおじさんなら印象に残ってますよ?
確か、セグシュ兄様に食い気味に話しかけてきてたおじさんですよね?
ちゃんと覚えてるよ!と、言おうと顔を上げると、フィリー姉様までもが嫌な顔をして、ため息をついていた。


「あのウダツの上がらなそうな、いまいちパッとしない感じの…おっ…と、一応あれでもあの教会のトップなのよねぇ。あの顔見るだけで安っぽく見えちゃうのだけど」

「おっ…て。まぁおっさんだけど。一応トップだから……」


セグシュ兄様がフィリー姉様を窘めるような風を見せたけど、姉様は止まらない。
視界に入り込んだ母様似の明るい銀髪をくるくると指に巻き取りながら、不敵ともいえる笑みを浮かべる。


「あのおっさんのせいで散々な目に遭ってるから、良いんじゃないのかしら?……少なくとも私や、ここにいる子達が言う分には文句は言えないと思うわよ?」

「言わない、じゃなくて言えない、なのか」


また始まった。と、いう風な少々呆れ顔のヴィンセント兄様。


「そりゃそうよ!……まぁセグシュだけは直接的な被害はなかったんだっけ?ふふふっ。愛娘フィアの旦那様候補だものね?」

「うわっ…まだ言ってる……それ本当にやめて?僕、婚約者いるからね?その噂のせいで色々面倒なこと増えてるんだよ?」


なんかすでにセグシュ兄様が泣きそうな顔になっていた。
それと気づいた。
セシリアわたしやユージアとかね、ちびっ子に対する時のセグシュ兄様は、自分のことを『私』って使ってたのに今は『僕』に戻っちゃってるよ?
まぁ兄弟というか内輪だから良いのだろうけど。

やっぱり格好良いお兄ちゃんである前に、フィリー姉様やヴィンセント兄様の前では、可愛い弟のままなんだろうなと少し微笑ましくなってしまう。


「だって、私こそ正当な婚約者だって、本人フィアが公言してたわよ?」

「申し込んだ覚えも、申し込まれた事も、むしろ、あったこともありません!」

「……知ってるわよ。あんな義理妹とかごめんだわ」


本人のいないところでの悪口はダメだよ?と、ちょっと思いつつも、フィアって…あのフィアさんだよね?
今回の件では一線交えていたし、説明にもいずれ登場する名前かとは思っていたけれど、唐突な登場すぎてデザートを食べる手が止まってしまった。
『籠』の前で暴れてた……あの時の彼女の表情や台詞、怒号のような叫びを思い出して、ぞわりと背に冷たいものが走る。


「ってことでね、エルとユージア、セシリアはフィアと会った事があるはずなのだけど、ガレウス司教っていうのはその、フィアの父親なのね。そしてそのフィアこそが『籠』の所有者と言ったら理解できるかしら?……この2人が今回の件のほぼ黒幕ってことになるわ」

「えっと…エル、あの魔法撃ちまくってた……」

「あ、あぁ…あの怖いシスター」


フィリー姉様の説明にユージアがおずおずと補足を入れる。
エルネストは合点が言ったのか、こくりと頷いてそのまま俯いてしまった。
怖い、であってると思うよ!


「自称慈悲深き聖女だからね。怖いだなんて言ったら心外だって怒られちゃうわね?ふふっ」

「自称、なのですか?」

「そう、自称よ。光属性至上主義のあの教会において、必死に光持ちのフリして聖女だと自称して。……同じく光属性を持たない者をゴミ扱いしながら、ね。素敵な聖女様でしょう?」


レオンハルト王子の問いに答えながらフィリー姉様はにこりと笑う。

お父さんが一番偉い人だったから、好き勝手ができちゃってたのかな?
それでも、何人もの子が亡くなったって聞いている『籠』の存在すら、それをフィアが作ることを許してしまっていたのなら、それはすでに親ではないと思うんだ。


(あの『籠』の中の風景を当たり前と捉えられるフィアもだけど、彼女の蛮行を支えていた信者達の精神状態が恐ろしい)


実際、非合法である人買いが動いたりと『籠』の運営は組織だって行われていたようだし。
正直、フィア一人の蛮行だったにしても、あそこまで当たり前に運営されてしまう前に反対するものは出なかったのだろうかと考えたけど、反対するものは処分!だとしたら……。
あ、盲信的な信者達だったら、そもそも聖女様の指示に疑問すら持たなかったのか……。
ここまで行くと、ほぼ洗脳ですね。
やっぱり宗教って怖い!

あの時にフィアの口から『セグシュ様』と出ていたのも、公言されていたということは、いずれはセシリアわたしのように誘拐されていたのかもしれないと思うと、ゾッとしてしまう。


「それは、教会自体の教えに反していませんか?」

「フォーレス教としては『光属性を持って生まれた子は神の使徒である』一般人とは違う!っていう思考という意味では、あながち間違いではないと思うけどね。熱心な信者には申し訳ないけど、トップが真っ黒だと、解釈もどんどん歪んでいくのだと思うわ」


レオンハルト王子が少ししょんぼりとした表情になったのは…しょうがないか。
星詠みのクロウディア様が指摘していたように、側近に王子を害しても構わないと思えるほどの熱心な信者がいたのだろうから、教会に関しても良い印象しか与えられていないはずだ。


「フォーレス教?」

「そうよ~。カイはまだ知るような年頃じゃないものね。この国で関わっちゃいけない人種のトップだと思って良いわ。──あなた達獣人は特にね」


教団の名前を確認するように聞き返したカイルザークヘと視線を向けると、優しく諭すように笑みを浮かべならも軽く首を横に振った。


「フォーレス…フォーレス……ああ!なるほど」

「何か知ってるのかしら?」

「あ……えっと…僕のいたで、同名の…怪しげな教団があったと聞いた事があったので」


里ってことはつまり…昔から存在はしてたんだね。

『怪しげな教団』レベルだったのだろうけど…って、あ、思い出した!

魔導学院の学生にその怪しげな教団に傾倒していた子がいて、問題起こしたんだ……。
そうだそうだ!あの子の宗教がフォーレスだったはず。

その生徒は元から獣人を毛嫌いというか、もう視界に入れることすら嫌がるような感じの子だったらしいんだけどね。
ある日『獣人は獣以下の行いをした重罪人の生まれ変わりだ。生かしておくことすら罪だ』とか言って、獣人に襲いかかってしまった。

用意周到に襲撃の準備がなされていたようで、死者こそ出なかったけど、かなりの怪我人が出たと聞いている。


(その子を筆頭に数名の学生が関与していて、襲撃者リストにシシリーわたしとカイルザークの名前があったんだよねぇ)


ちなみに、シシリーわたしは獣人じゃないからね?!
当時のフォーレス教も光属性至上主義だったから、逆に闇属性である私はひどく汚れた存在なのだそうで。(失礼な!)

『負って生まれた罪を浄化してやらなければならない』という使命感に燃えた、彼らから見たら、私も格好の餌食だったのだろう。

事件があった当日の記憶は……無い。
いや、あるにはある……寝てたってだけで。
まぁそれのせいで、当日の安否や行動確認のために…何度も事情聴取をされて昼寝を説明せねばならず、大変な目にあった!という記憶しかない。

宗教は怖い!本当に怖いっ!!

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