私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

338、お風呂に入りたいです。

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『セシリア、探検するの?』


 食堂から、奥の廊下を覗き込んだところで、キッチンからルナに声をかけられる。

 フレアは接客、ルナはキッチンと、完全に仕事の分担がしっかりできてきたようで。
 フレアはまさに接客中だし、ルナはルナで、食器を片付けている最中だったので、邪魔するつもりはない。
 ……作業中にそばを、幼児がちょろちょろするのがどれだけ邪魔か。

 危ないし、気は散るし、小さいから死角に入ってしまって、作業でちょっと動いた拍子に突き飛ばしてしまったり。

 お互いのストレスにならないように、極力近づかないようにして、返事を返した。


「まだ、全部見てないからね」

『じゃあ…セシリアのお部屋があるから、見てくるといいよ!』


 ちょっと予想外の言葉をもらって、目が丸くなる。


「私の、部屋?」

『そうそう!セシリアのお部屋!』


 ルナは絞った台拭きで作業台を拭きながら、にっこりと笑う。

 どうやら『避難所』に出入りができる人間が増えるたびに自然生成されるらしく、私の部屋もすでに生成されているのだそうだ。
 クロウディア様やルークの部屋のように、完全に個人専用らしくて、中の構成も操作の権限も、ここだけは独立していて、その個人のみという指定を受ける。


(個室の操作から、いずれは『避難所』全体の操作を覚えさせる目的もあったみたいなんだけどね)


 ルナが使い終わった台拭きを、ポイッと脇に置かれていた籠へと投げ込むと、その隣のカゴにふわりと、真っ白ふわふわのタオルが1枚増える。


(ああ、ここにも魔導学園にあった自動洗濯の籠があるんだなぁ。流石というかなんというか、中央公国と魔導学園の仲の良さがよくわかる感じだなぁ)


 だってこれ、嫁入り道具なのでしょう?
 嫁入り道具にどれだけのお金がかかってるんだろう……。
 使う私の立場にしてみれば、ありがたい限りなんだけどさ。


『セシリアは、個室をどうやって使いたい?……今は、食材を少し置かせてもらっちゃってるけど』

「むしろ、2人の部屋を作ろうか?出入りは私がいなくても出来てるんでしょう?」

『うわぁ…ありがとう!って……残念。セシリア、来客だよ。探検は…またあとでになるね』


 ルナはちょっと残念そうな顔をしながら、近くの椅子の背もたれに引っ掛けてあったカフェエプロンを手に取り、着け直す。


「うん、また後でね」


 私も、サロンへ戻るためにくるりと方向転換をする。

 自分の部屋、かぁ……。
 私室もここの部屋も、どこに行っても『私の部屋』って結構あるんだなと。
 むしろありすぎて、荷物溜め込んだらきっと、どこにあるか忘れてしまうんだろうな。
 一部屋一部屋が広すぎなんだもん。

 それにしても……2人の部屋を作ろう!と、言った時のルナの顔、すごく嬉しそうだったな。
 ふわりと大輪の花が開いたような、それだけで、ぱっと周囲が明るくなるような、本当に可愛らしい笑顔だった。


(ご褒美が欲しいって言ってたし、お部屋を作ってあげたら喜んでくれるかな?)


 精霊だろうがなんだろうが、やっぱり笑顔が好きだ。
 シシリーの時むかしより、ルナとフレアの素直な笑顔が増えてきてる気がする。
 今までの、いたずら心満載の嫌な笑いより、ずっと良い。






 ******






 ひょこりと食堂から顔を出すと、部屋の入り口に数人の人影が見えた。
 部屋の照明はかろうじて足元が見える程度まで落とされていたので、食堂から少し離れている『避難所』の入り口のドア付近の人影は…どんなに目をこらしても、単なる人影としか認識できなかった。


「食堂にセシーがいる!……他の子達は…?」


 この声は、どう聞いても父様でした。
 父様は『避難所』に単独で出入りができないので、同行者が王族かもしくは……。


「他の者は…風呂のようだな。フィリー嬢が…王子達の回収に向かったようだ」

「回収?」

「ああ、風呂上がりに、寝てしまったようだ」

「王子?レオン王子かしら…?珍しいわね?」


 説明しているのは…ルーク。
 それと一緒にいるのは、母様!思わず駆け寄る。


「セシーっ!……あれっ?」

「ふっ…。逃げられましたわね?」


 母様に向かって走ったものの、その進路に父様が私を抱きとめようと屈み込んだので、颯爽と躱して母様に飛びついた。


「母さまっ!」

「あら……このお腹は?随分ぽんぽんねぇ?」


 背後で珍しくルークがくつくつと笑っていた。
 その声に少しむすっとした父様が振り返ると、さらに笑いがこみ上げてしまったのか口元を隠すように手を添えて、説明を始める。


「……風の乙女シルヴェストルの報告によると『宰相の仕業』らしい…ぞ?それで晩ご飯が食べれずに、怒っているようだが…くくっ」

「えっ!?」

「……お菓子、与えすぎたのね?」


 母様を見上げながらうんうん。と頷くと、そっと頭を撫でられた。

 このぽんぽんお腹、そんなに出てるようには見えないんだけど、妊婦さんみたいにお腹が邪魔で足があんまり上がらないのね!
 あと、微妙にだけど足元が見えない。

 あまりの圧迫ぶりに自分でも苦しいし重いしで、ちょっと困り始めてたりした。


「私ほどは…」

「あなたと同じ量!……お腹壊してしまうわ」

「それとセシリア?……お通じはあった?」


 そう言えば……ない。
 首をブンブンと振った。

 小さい子って、食べたら食べただけ、汚い話だけど、出る。
 バナナ食べたら、バナナのような排泄が……!
 まるで心太つきのように、すぽんと、出てた。
 けど…私は、出てない。

 これはやばい。

 このままだと本当に、吐くかお腹が痛くなるパターンだ……。
 前世にほんでの息子も孫もそうだった!


(しかも、痛がるし吐くしでなかなかにインパクトが強い上に、別の病気が隠れてるかも!と疑い出したらキリがないような状況…ほら、激しく吐くし、そのまま脱水になって熱を出す時もあるから。なので、親を盛大に心配させるというオマケ付き)


 ……苦しむのは嫌だし、心配もかけたくないなぁ。
 ちょっと悲しくなる。今度から気をつけないと……。

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