私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

348、新たな課題と可愛い仔犬。

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 どうやら、エルネストの魔力操作の練習が上手くいくようになったら、他の子たちも同じように水遊びを始めてしまい、それならばと、セグシュ兄様が同じように魔力操作で動かしている的に、それぞれ子供たちに持たせた、コップ一杯の水を飛ばせて当てるという訓練の応用のような遊びが始まっていたのだった。

 しかもヒートアップしてきたところで、面白がった仔犬姿のヘルハウンドが
『私に当ててみるがいい』と、身軽に水を避けては部屋中を走って逃げてみせるものだから、子供たちは大興奮になってしまった。

 挙句の果てには、気配はそのままに姿を消して見せたりと、追いかけ回す子供たちには、動きの激しい、完全な遊びに発展してしまっていた。


(もう、ここまで来ると、サバイバルゲームとかシューティングゲームとかいうんだっけ?そんなゲームにしか見えないよね)


 そんな、ヘルハウンドがちょうど姿を消したタイミングで、入れ違いに現れた私たちの気配を間違えて察知してしまい……。
 私たちが姿を現したところを、子供たちに盛大に狙い撃ちをされるという状況になってしまったのだった。


「本当に、ごめんなさい」


 エルネストがしょんぼりとしかし、丁寧に謝っているのに対し、レオンハルト王子とカイルザークは一応、謝ってはいるのだけど、隙あらば逃げ出そうとしてるような空気が見て取れた。
 というか、2人とも顔が青いよ?

 カイルザークに至っては、しっぽは完全に下がって、耳が常に後方の音を探るように、必死に拾っている感じ。
 これはもう完全に『逃げたい』のポーズだったと思うんだけど。

 なんでそこまで怯えてるんだろう?


「濡れてないから、大丈夫だ。ずいぶん…短時間で上達したな」

「はい…ありがとうございます!」


 褒められて頭を撫でられると、エルネストは満面の笑みになった。

 一方、レオンハルト王子とカイルザークはそろりそろりと後退している最中だった。


「2人にも…課題が必要なようだな」

「「!?」」


 案の定だけど、びくりと飛び上がる2人。
 そしてその傍にいた小さな漆黒の仔犬も、瞬時に耳がぴっと立ち、2人の影に隠れようと後退する様子に、ルークは薄く笑みを浮かべる。

 その笑みを目撃した、レオンハルト王子とカイルザーク両名の顔が…どんどん引きつっていく。
 見事に青ざめていく。


「そこの…ヘルハウンドにも手伝ってもらおうか」

「きゅうぅん…」


 仔犬姿のヘルハウンドまで、カイルザークと同じように下がった耳になっているのが見えて思わず笑ってしまった。

 課題……宿題か。出されるのが嫌だったのね。


(カイルザークはもともと勤勉な子だったのだから、そこまで嫌がる必要もない気がするんだけどなぁ)


 魔法の宿題なら、レオンハルト王子はともかく、カイルザークは、ほぼ使えるんだから問題ないと思うし。


「なに、さっきの水遊びの応用だ。……ヘルハウンドと言うくらいだから、火は使えるか?」


 こくり。と、漆黒の仔犬が小さく頷く。
 ……大の大人が、ぬいぐるみのように小さな子犬に、真剣に話しかけている様は、何か妙な笑いを誘ってしまうのだけど…本当は大きな犬だし、気にしないってことにしておこう。


「では、手伝ってもらおう」


 そう言うと、ルークはヘルハウンドの前にしゃがみ込むと、手を差し伸ばす。
 その手の中には小さな魔石が握られていた。

 手間賃だ。と、ヘルハウンドの前に置くと、ヘルハウンドはその魔石を食べてしまった。

 そして、ルークは立ち上がると右手を軽く振る。
 手元がふわりと明るく光ると、その動作に呼応するようにサロン中の至るところに、無数の燭台が現れた。

 様々なデザインの大量の燭台たち。
 この『避難所』にある燭台を総動員したのでは?と思うほどに大量でデザインが揃っていないにもかかわらず、量に圧倒され、荘厳ささえ感じてしまう

 壁に現れた燭台、小型のシャンデリア状の燭台、サロン内にいくつかある応接セットのテーブルの上に現れた燭台……本当に様々な用途での燭台が、所狭しとサロン内に現れては設置されていく。


「課題は食後からだが……」


 ルークが説明を始めようとしたところで、ヘルハウンドがサロンを壁沿いに一周するように走り出した。
 その姿を追うように、周辺の燭台に点火されていく。

 点火とともに、部屋の調光が弱められて薄暗くなって、燭台の蝋燭たちが炎によってその姿を浮かび上がらせる。


「うわぁ…綺麗」


 思わず声に出てしまったけど、それは他の大人たちも同じだったようで、口々に感嘆の言葉がぽつぽつと呟かれているのが聞こえる。

 それは今から何かの儀式のために用意されたと言われたら、すんなりと納得できるほどに壮麗と厳粛を兼ね備え、そして何よりふらふらと揺れる小さな炎たちによって、とても幻想的な景色とな世界。


「今日、使うのは『水』だ。各自コップ1杯の水を持って、この全ての燭台から火を消してもらう」


 ルークはその景色を確認して、満足そうに小さく頷くと、課題の内容を話し始めた。

 使って良いのはコップ一杯の水のみ。
 と言っても、空になったら補充は無限にOKだし、魔法で水を呼べるならそれを使っても良い。

 そして、ヘルハウンドも捕まえておくこと。
 ヘルハウンドの捕まえ方は、身体にタッチ、もしくは水をかける。

 それを討伐が終わるまでにこなしておくこととなった。

 ……魔法で水を呼ぶ。と、ルークは簡単に話していたけど、無いものを集めて出現させる魔法というのは、かなり難易度が高い。


シシリーむかしのわたしでも、杖なしで『魔法で水を呼ぶ』のは、一応できたけどコップ一杯が良いところだったし)


 相性とかも関係してくるから、もしかしたら水と好相性だったエルネストなら、可能な魔法かもしれないね。


 ……それにしても、絨毯張りのお屋敷の中での盛大な水遊びですよ。
 普通なら発狂の勢いで怒りそうなものだけど『避難所』だからこそ許される、水遊び。
 私も参加したかったなぁ……。


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