私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
367 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

367、永く生きるという事。

しおりを挟む



 室長会議で、もしかしたら、シシリーわたしも会ったことがある人なんだろうな。
 この『監獄』と呼ばれてしまった施設に、シシリーの研究室の技術が、一部使われていたみたいだし。

 ルークはゆっくりと前へ進むと、少し大きめの青く澄んだ水晶のような形をした魔石の欠片を、そっと拾った。
 屍人ゾンビとしての身体は、魔物としての活動が停止したのと同時に灰と帰したようで、他に何も彼の手がかり、彼であったことを示すものを残さなかった。


「ハンス…昔の知り合い…だったのか?」

「ああ、とても優秀な研究者だった」


 父様の問いに、ルークは寂しげな声でポツリと呟く。
 心なしか、私を小脇に抱える力が強くなった気がした。
 動揺、してるのかな?
 ルークは感情をあまり出さないって周囲に言われてたけど、悲しいものは悲しいよね、きっと。


(長く生きるって…良いなと思ったこともあったけど、そうだよね。懐かしい知り合いとの再会は、まず無いんだ)


 会えるにしても、こんな状況での再会は絶対にしたく無いし。
 友人でなくとも、知り合いのこんな変わり果てた姿なんて、見たくも無い。

 本人が好き好んで、その格好をしていたならともかく、だけどね。


「それでもアレは魔物だ。守護龍の浄化で一時的に意識が戻っただけだ……寂しいが」


 ルークはそう、周囲に説明をしていた。


「ハンス…こんな時に申し訳ないが、状況の説明を頼む。どちらも戦ってたら急に好意的になるわ、声が聞こえるわで…正直、理解が追いつかない」


 首を横に振りながら、しかし竜っぽい魔物への警戒もしつつの父様。

 そういや、まだもう1匹いたんだった!
 ルークの片マントで視界が狭いから…うっかり、というか、静かすぎてその存在を忘れてたよ……。

 屍人ゾンビとの攻防が終わったと同時に、竜っぽい魔物はその場にぺたりと寝そべるように低く座り込むと、目を瞑り動かなくなってしまっていた。


「あ、ああ、今の屍人ゾンビは、この『監獄』の開発者だ。セシリアの使っている腕輪とほぼ同格の資格を有している人物だった」

「ではセシリアと同じ『管理者』の登録のあった者…?」


 そうだ。と、ルークが頷くと、父様は不思議そうに竜っぽい魔物へと視線をやる。
 竜っぽい魔物は、自分が話の話題に上っている事に気づいたのか、うっすらと目を開けると、すぐに興味なさげに、目を閉じてしまった。


「じゃあ、こいつはなんで排出されずに残ったんだ?他の『宝』は私たちとともに排出されたのだろう?」

「……これは『守護者』なのだと思う。さっきのが、意識がある時に、あえてその権限を与えたようだ。この『監獄』から外に出て、悪さをさせないために」

「じゃあ…『核』はどこへ行ってしまったのかしら?」

「どうやら、管理者だった彼が、瘴気に当てられて意識のない間に取り込んだのだろう。だからのさっきの状況だ……取り込んでしまってからは、随分時間が経っていて『核』自体は既に原型を留めていないようだが」


 ダミーが新たなる『核』となるために、本来の『核』の力を回収した。
 力として取り込んでしまっていたから、回収されて身動きができなくなっていた。

 ……って事は、物音は管理者が魔物化してしまった自分と、高ランクへと変異してしまった魔物を外へ逃さないために、自ら『堅牢の封印』へと入って……そして両者戦闘中だったのだろうか。


(それでもって、両者が戦闘中に、私が『核の再構築』を命じて……魔力を奪ってしまった…と)


 あれ?奪ったのは本来の『核』の魔力たったのだから、それを取り込んでいた屍人ゾンビが無力化されていたのはわかる。
 でも、竜っぽい魔物までがボロっとして、身動きできなくなってたのはおかしくないかな?

 あれあれあれ?と思っていたら、それに関しては……その竜っぽい魔物の食料が、『核』から発せられていた魔力だからだろう。との事だった。

 ここら辺はダンジョンの『核』と同じ感じらしくて、ダンジョンは自分の『核』を守るために、周囲にいる魔物をダンジョン内に引っ張り込む。
 引っ張り込まれた魔物たちは餓死しないように『核』から微量の魔力を食料として与え続けられている。
 奥に行けば行くほど、もらえる魔力は大きくなるから、ダンジョンの奥ほど、強い魔物が多い。


(弱かった魔物も、もっと美味しい魔力が欲しいから、ダンジョンの奥を目指す…いつの間にやら奥に進むための進化とばかりに、ダンジョン固有の亜種なんかが増えちゃってたりするわけなんだけど)


『核』を取り込んじゃっていた屍人ゾンビは、さぞ美味しそうに見えてたんだろうなぁ。
 そりゃ戦闘にもなるよね。そもそもが弱肉強食な世界だものね。


「で、今の『核』はどこにあるんだい?そんなに、そうそう取り込まれたり、暴走されたりじゃ、困るんだけど」

「……セシリアが持っている。尤ももっとも、その腕輪に吸収されてしまっている状態なので、誰かに譲渡する事自体が不可能なのだが」


 なんて事だ…!と、父様が頭を抱えている。
 いや……私も初耳だし、なんて事だ!と頭を抱えそうなんだけど?


「大丈夫だろ。内装にお菓子の家を望むような子だ。そのまま育てば悪用の心配もない」

「しかし…王家の『避難所』と同等の施設型魔道具アーティファクトの所有者が、幼児……」

「ねぇ、肝心のシュトレイユ王子を呪ってたのは誰なの?」


 ぶつぶつと独り言のように父様の譫言うわごとが聞こえる中、竜っぽい魔物の周囲をくるりと観察するように歩いていたフィリー姉様が、周囲を見渡しながら聞く。


「コレの中だろう……周囲の全てを取り込んで変異した魔物なのだから」


 外に排出されたモノたちの中に、シュトレイユ王子を呪っていた者が存在しなかったのならば、あとはコレしかいないだろ。と。


(個人的には竜っぽい魔物よりは賢そうだったから、屍人ゾンビがシュトレイユ王子を呪った張本人か!?と思ってたけど、そうではなかった以上、他に施設の中に存在するモノ自体がいないからなぁ)


 竜っぽい魔物の前に、ちょこんと座って待機している小さな仔犬…ヘルハウンドが尻尾を振りながら『そろそろ始めますか?』と、こちらを振り返った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

処理中です...