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はじまりはじまり。小さな冒険?
367、永く生きるという事。
しおりを挟む室長会議で、もしかしたら、シシリーも会ったことがある人なんだろうな。
この『監獄』と呼ばれてしまった施設に、シシリーの研究室の技術が、一部使われていたみたいだし。
ルークはゆっくりと前へ進むと、少し大きめの青く澄んだ水晶のような形をした魔石の欠片を、そっと拾った。
屍人としての身体は、魔物としての活動が停止したのと同時に灰と帰したようで、他に何も彼の手がかり、彼であったことを示すものを残さなかった。
「ハンス…昔の知り合い…だったのか?」
「ああ、とても優秀な研究者だった」
父様の問いに、ルークは寂しげな声でポツリと呟く。
心なしか、私を小脇に抱える力が強くなった気がした。
動揺、してるのかな?
ルークは感情をあまり出さないって周囲に言われてたけど、悲しいものは悲しいよね、きっと。
(長く生きるって…良いなと思ったこともあったけど、そうだよね。懐かしい知り合いとの再会は、まず無いんだ)
会えるにしても、こんな状況での再会は絶対にしたく無いし。
友人でなくとも、知り合いのこんな変わり果てた姿なんて、見たくも無い。
本人が好き好んで、その格好をしていたならともかく、だけどね。
「それでもアレは魔物だ。守護龍の浄化で一時的に意識が戻っただけだ……寂しいが」
ルークはそう、周囲に説明をしていた。
「ハンス…こんな時に申し訳ないが、状況の説明を頼む。どちらも戦ってたら急に好意的になるわ、声が聞こえるわで…正直、理解が追いつかない」
首を横に振りながら、しかし竜っぽい魔物への警戒もしつつの父様。
そういや、まだもう1匹いたんだった!
ルークの片マントで視界が狭いから…うっかり、というか、静かすぎてその存在を忘れてたよ……。
屍人との攻防が終わったと同時に、竜っぽい魔物はその場にぺたりと寝そべるように低く座り込むと、目を瞑り動かなくなってしまっていた。
「あ、ああ、今の屍人は、この『監獄』の開発者だ。セシリアの使っている腕輪とほぼ同格の資格を有している人物だった」
「ではセシリアと同じ『管理者』の登録のあった者…?」
そうだ。と、ルークが頷くと、父様は不思議そうに竜っぽい魔物へと視線をやる。
竜っぽい魔物は、自分が話の話題に上っている事に気づいたのか、うっすらと目を開けると、すぐに興味なさげに、目を閉じてしまった。
「じゃあ、こいつはなんで排出されずに残ったんだ?他の『宝』は私たちとともに排出されたのだろう?」
「……これは『守護者』なのだと思う。さっきの彼が、意識がある時に、あえてその権限を与えたようだ。この『監獄』から外に出て、悪さをさせないために」
「じゃあ…『核』はどこへ行ってしまったのかしら?」
「どうやら、管理者だった彼が、瘴気に当てられて意識のない間に取り込んだのだろう。だからのさっきの状況だ……取り込んでしまってからは、随分時間が経っていて『核』自体は既に原型を留めていないようだが」
ダミーが新たなる『核』となるために、本来の『核』の力を回収した。
力として取り込んでしまっていたから、回収されて身動きができなくなっていた。
……って事は、物音は管理者が魔物化してしまった自分と、高ランクへと変異してしまった魔物を外へ逃さないために、自ら『堅牢の封印』へと入って……そして両者戦闘中だったのだろうか。
(それでもって、両者が戦闘中に、私が『核の再構築』を命じて……魔力を奪ってしまった…と)
あれ?奪ったのは本来の『核』の魔力たったのだから、それを取り込んでいた屍人が無力化されていたのはわかる。
でも、竜っぽい魔物までがボロっとして、身動きできなくなってたのはおかしくないかな?
あれあれあれ?と思っていたら、それに関しては……その竜っぽい魔物の食料が、『核』から発せられていた魔力だからだろう。との事だった。
ここら辺はダンジョンの『核』と同じ感じらしくて、ダンジョンは自分の『核』を守るために、周囲にいる魔物をダンジョン内に引っ張り込む。
引っ張り込まれた魔物たちは餓死しないように『核』から微量の魔力を食料として与え続けられている。
奥に行けば行くほど、もらえる魔力は大きくなるから、ダンジョンの奥ほど、強い魔物が多い。
(弱かった魔物も、もっと美味しい魔力が欲しいから、ダンジョンの奥を目指す…いつの間にやら奥に進むための進化とばかりに、ダンジョン固有の亜種なんかが増えちゃってたりするわけなんだけど)
『核』を取り込んじゃっていた屍人は、さぞ美味しそうに見えてたんだろうなぁ。
そりゃ戦闘にもなるよね。そもそもが弱肉強食な世界だものね。
「で、今の『核』はどこにあるんだい?そんなに、そうそう取り込まれたり、暴走されたりじゃ、困るんだけど」
「……セシリアが持っている。尤も、その腕輪に吸収されてしまっている状態なので、誰かに譲渡する事自体が不可能なのだが」
なんて事だ…!と、父様が頭を抱えている。
いや……私も初耳だし、なんて事だ!と頭を抱えそうなんだけど?
「大丈夫だろ。内装にお菓子の家を望むような子だ。そのまま育てば悪用の心配もない」
「しかし…王家の『避難所』と同等の施設型魔道具の所有者が、幼児……」
「ねぇ、肝心のシュトレイユ王子を呪ってたのは誰なの?」
ぶつぶつと独り言のように父様の譫言が聞こえる中、竜っぽい魔物の周囲をくるりと観察するように歩いていたフィリー姉様が、周囲を見渡しながら聞く。
「コレの中だろう……周囲の全てを取り込んで変異した魔物なのだから」
外に排出されたモノたちの中に、シュトレイユ王子を呪っていた者が存在しなかったのならば、あとはコレしかいないだろ。と。
(個人的には竜っぽい魔物よりは賢そうだったから、屍人がシュトレイユ王子を呪った張本人か!?と思ってたけど、そうではなかった以上、他に施設の中に存在するモノ自体がいないからなぁ)
竜っぽい魔物の前に、ちょこんと座って待機している小さな仔犬…ヘルハウンドが尻尾を振りながら『そろそろ始めますか?』と、こちらを振り返った。
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