私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

397、さぁさぁ、帰るよ帰るよっ!。

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「な…なな、な…んでも、ない!」


 あくまで治療だもんね?!
 高熱に魘されうなされてたから、願望……いや、それはありえないっ!!

 夢でも、あってたまるかっ!
 ていうか、龍って赤ちゃんなのでしょう?


(あれ、どう見たって『赤ちゃん!』っていうレベルじゃ無かったよ?!)


 ぐあぁああ……。
 頭の中が混乱の極地に至って、文字通り頭を抱えてしまうと、背後からユージアの笑い声と、カイルザークの深いため息が耳に入ってきた。


「なんでもあるじゃん……」

「嫌なことでも…されたのか?」


 ルークまで、その美貌に怪訝な色を浮かべて、腕の中の私を覗き込んできた。

 イヤではない、いや、そう意味じゃない。
 じゃないけど、イヤ…えっと…あれ?
 何を言おうとしてたんだっけ?


「な、なんでもないよっ!!……っていうかあれ、あの子っ!本当にっ!龍なの?!」

「……ああ。キミを…治療したのは、子龍だと聞いている」


 半ばパニック状態の私の質問に、形の良いルークの唇が、妖艶な笑みを浮かべる。
 風に遊ぶ黒の艶髪を片手で払うと、じっと覗き込んでくる。


「えっと……セシリアの、つがいでしょ?」

「人族ってすごいなぁ…本当に気づかないんだ……」


 通常であれば、つがいの片方が適齢になれば、その適齢を迎えた方が、相手を探し出せるようになる。
 そうやって見出されたつがいも、出会った瞬間に、自分の『運命の相手』だと理解をする。

 ちなみに『見出される』というのは、一度でも相手に会ったことがあると言う事。
 ……つまり、私は会ったことがあると言うのに『運命の相手』だと理解をしていないと言う事で。


(いや、そもそもいつ会ったんだ?!)


 あんなに綺麗な子だったら、一度会ったら絶対に忘れない!
 というか、あんな子に会うようなタイミングが、そもそもなかった気がするんだけどっ!?
 父様じゃないけど、私の眉間がしわしわになっていく様子を、楽しげに眺めるようにしてルークが囁く。


「ああ…気づかないな。全く気づいてなかった。気づかなすぎて、却って潔いほどだ…ははっ」

「自己紹介してくれなきゃ、わっかるきゃぁぁぁああっ!?」


 突如、開けた視界と、強めの浮遊感を感じて、悲鳴がもれた。
 どうやら『聖樹の丘』を通過して…そう、丘なんだよね。丘。

 ルークたちはちょっと迂回をする形になる、丘へ登るルートを選ばずに、直線距離となる、丘をそのまま突っ切って、崖となっている部分から飛び降りるという、強硬手段に出たようだった。

 ……そう、今、まさに、飛び降りている真っ最中。


「本当、残念な子…」

「可哀想にっ…なってき…たっ」


 背後から笑い声が聞こえてくるわけですが……。
 残念とか可哀想とか、言い放題だなっ?!


「龍が、な…。ああ……あと、ユージアも、か」

「ええっ?!」


 ルークの腕から身を乗り出すようにして、背後へと振り返ると、顔を真っ赤にして完全に息があがってしまっているユージアが見えた。
 ま、それでも移動しながらの会話なんだけどね。


「あ…ははっ…。バレ、てる……」

「バレてるんじゃなくて、キミの場合は、バテてるんでしょ…」


 ユージアの隣を並走しているカイルザークは、ころころとよく笑う。
 つまり、ルークと同じく、息は全く上がっていない。
 ……なんだろうね?この体力の差。

 エルフは体力が低いってよく聞くけどさ、この状況、ルークが異常なのか、ユージアがか弱すぎるのか?


「……縮め」

「やだ」

「はいはい…親子喧嘩はいいから。……さて、ユージア?幼な子ぼくに軽々と運ばれる、ちょっと恥ずかしい、大きなお兄ちゃんになりたくなかったら、縮もうか~?」


 走りながらだけど、親子の会話が険悪になるかな?と思ったところでカイルザークが満面の笑みでユージアの背後に回りこみ、腰に飛びついたと思った次の瞬間には、ユージアを仰向けの体勢で軽々と持ち上げてしまっていた。


「あ……はい…って、ちょっ!?…待って待って…っ!!」

「待ちませ~ん!ほらほら、縮め~縮め~♪」

「ねっ…ねぇ、縮むのは良いけど…さ…。き、着替えっ…は?」

「ないっ!見られる前にダッシュで帰ろう?」

「いっっやああああああぁぁぁぁっっ!」


 背後から聞こえてくる面白そうな会話に、思わず笑いつつ、大きな上下移動からの内臓のシェイクダンスがなくなって安心したのか、またもや大きなあくびが出てしまった。

「寝ておけ」と、再度、肩に風が当たらないようにとマントでくるみ直されて、抱えられる。
 時折、流れるような艶髪が視界に踊るくらいで、あとは安定して抱えられているから、一気に眠くなってしまった。


「ルークほかほかだねぇ。すごく、おちつく…」

「……合成魔獣キメラも討伐された。聖樹の保護、再生も進むはずだ。安心してくれ」

「うん、ありがとう。よろしくね……ディオメド導師せんせいは、私の…初めてのせんせい、なんだ……」

「そうだったのか…それは初耳だな……」

「うん……」


 ふふふ。知らないでしょう?
 カイルザークとも、ルークとも、出会う前のことだからね?

 そんなお話をしてあげようかと、ちょっと胸を張ったところまでは記憶にあるんだけど…どうやら、そのままうっかり寝てしまって、起きたら昼過ぎでした。

 ……魔力熱から復活して、やっとみんなでのお勉強会だっ!と、意気込んでいたはずなのに。

 どうしてこうなった……。

 ていうか、誰か起こしてよっ!!!
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