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はじまりはじまり。小さな冒険?
398、嬉しい知らせの、お帰りなさい。
しおりを挟む時間は少し戻って。
魔力熱から復活して、様子を見ると言う予備のお休み1日は、カイルザークと延々と読書につぶして。
食事の時間も忘れるほどに熱中した挙句に、そんな状況に盛大に呆れたセリカに引きずられるようにして、2人とも晩御飯の席へ連れ出される。
その席には、最近には珍しく、父様と母様が揃っていて……さらに、来客としてルークと……。
「ユージアっ!」
「久しぶり……?まぁ、本当は…ちょっと前にも、お見舞いに来たんだけどね」
ルークの隣から、ひょこりと明るい緑色の髪がのぞく。
養成所に行ったはずのユージアがいた。
……年単位での勉強が、山盛りだったんだよね?!
「……愚息が、養成所を修了したので、正式に…使用人の契約をしに、来た」
「ほら…セシリア、言った通りでしょう?すぐ戻ってくるよって泣くほどの事じゃないって」
「泣いてたのっ?!」
「……」
ルークの隣の席にいたユージアが、にこりと笑みを浮かべながら、椅子から私を抱き上げる。
新しく新調したのだろうか?
黒い細身のフロックコートに、装飾のついたチェーンが揺れる。
ユージアから、ほのかに香る花の香り。
「すぐ戻るって言ったじゃない。大切な杖だって借りてたんだし!」
「…早すぎ。びっくりした。でも……うれしい」
「ちゃんと、頑張ったからね!」
ぎゅーっと頬擦りをされたあと、ぽんぽんと頭を撫でられてから、椅子に戻された。
ユージアに『行ってらっしゃい』をしてから、1週間と少しかな?
随分と早い。
もっとずっと……それこそ、来年の魔法学園の入学準備、もしくは再来年の入学と同時くらいで合流できるんじゃないかな?なんて思っていたので、びっくりしすぎてどう反応して良いのか、わからない。
「ひとまずだ…使用人として公爵家に招き入れるとして、扱いは『研修』では無くて『使用人』としてで、本当に良いのかい?まずはここの確認だが…」
「使用人で!」
ユージアが即答する。
ルークはというと、不快そうに眉をピクリと動かしたが…特に反論等はしなかった。
父様は意味ありげな視線を母様に送ると、母様は優しげな笑みを浮かべながら、小さく頷いた。
「……ちなみにセリカは『研修』だ。『研修』というのは半分は使用人であり、半分は『勉強に来ている』と、いう立場だから、基本的には客人でもある。と、いう扱いだ。……完全に使用人であるならば……今、ここの席にキミが同席することすら、ままならないんだけども。それでもいいのかな?」
「…っ!それは…」
父様がにやりと笑う。
小さな子供の間違いの指摘をする時の『本当にそれで良いの?』と不安を誘うような、少し意地の悪い笑みだ。
「ふふっ。意味を理解してなかったのでしょう?」
「まぁ、身分としての扱いの違いってだけで、どちらにしても行う仕事は一緒だし……基本的に貴族の子息を受けれる場合は『研修』と言う形になるんだけど、どうだろうか?」
「け…研修でっ!」
焦って返事をしたものの、少し呆然として固まってしまっているユージアを見て、ルークは大袈裟なほどにため息をつく。
「この通り、非常に世情に疎い。精神面の幼さゆえでもあるが……」
「で…でもっ!養成所はちゃんと修了したからねっ?!」
「……使用人としての、労力の提供と同時に『育児』の手間も、出てしまうが」
ルークは眉間を手で抑えながら、軽く首を振る。
あぁ……これみよがしに完全に呆れている!という態度ですよね。
なんでこう、ユージアの前だと、わざとらしいくらいに態度に出すんだろう……。
それとも、これも教育の一環なのかな?
少し遠い目になりつつ、ルークへと視線をやると、何事も無かったかのように、食事を始めていた。
「まぁ、他にも『育児』の必要な子たちがいるから、一緒に頑張っていけばいい」
うん『育児』……育児だよね。
今、3歳児なんて、まるっと育児だよね。
魔のイヤイヤ期、真っ只中で、無限の体力の3歳児ですよ……。
ユージアも3歳児相当まで縮んでるらしいし、3歳児…私を入れて、カイルザークとユージアで3人もいることになる。
(1人だけでも振り回されまくるのに、カオスだよなぁ……)
前世のような育児環境だったら、確実に育児ノイローゼに追い込まれてる気がする。
こちらの貴族の育児の方法としては、親の方針にもよるけど…基本的には子供は領地の家族棟で、家庭教師や乳母たちに囲まれて育つ。
実は、あんまり親と接触がない。
教育熱心だったり、うちのように、子供好きな両親ではない限りは、食事の時間に一緒に食事をする…かもしれない。
1日数時間だけ、親との面会がある…かもしれない。という、なかなかに放任主義な中で育つ。
だからね、使用人たちの子供や、平民の子供を『遊び相手』として雇うこともあるんだよ。
『研修』としてやって来る、貴族の子息たちも、この遊び相手としての需要が結構あったりするので、低年齢からの『研修』の受け入れが普通にある。
だって、子供は領地に置いといて、自分たちは王都のタウンハウスに滞在して、毎夜の如く開かれる、夜会に興じる……なんてことも当たり前だからね。
「……本来であれば、辺境伯の御子息を雇い入れると言うのも、おかしな話なんだけど…」
「本人が望むのだから、しょうがあるまい?」
「そうなんだよなぁ…じゃあ、確認するけど『研修』で、公爵家に来る。と、いうことでいいのかな?」
「はいっ!お願いします」
ちなみにだけどね、この研修と最初から使用人としての違いっていうのが、例えばだけど、お城に行った時に自分の身分を名乗るかどうかの違いなんだって。
……ある程度の身分が証明できないと、入れてもらえない場所もあるから。
ただただ、私の使用人ってだけだと場所によっては『待合室でお待ちください』になってしまうことが多いんだ。
こういう時に『使用人だけど、貴族なんですよ』と証明ができた場合、会議の場まで一緒に入ることができる。
(あと……使用人のための、寮の部屋割りも変わってくるんだ)
貴族の子息の場合は自分専用のメイドを連れて研修に来ている場合があるから、他の使用人とは違って、そのメイドの部屋が付属している作りの寮を、割り当てられることが多い。
ちなみに一般の使用人の部屋は…格や勤続年数・家族形態にもよるけれども、基本的には相部屋だったり、個室でもワンルームのような作りになる。
平民の一人暮らしの部屋よりはちょっとだけ良いような、それなりの部屋になるよ。
(確か……セリカも貴族の子息用の部屋なんだけど、彼女の場合は1人で来ているので、自分専用の使用人の部屋は使ってないって言ってたかなぁ)
それぞれに食事を進めつつ、ふと、父様が顔を上げた。
「ユージアの部屋だが。本来なら使用人棟の上階を、と準備していたんだが、少し状況が変わってね、今日からエルとカイの隣の部屋を使ってもらう」
ちょっと特殊な立場になってしまうけど。と、笑う。
「可能な限りは使用人として仕事をする。でも、仕事がない時はうちの子だ。言葉遣いもその時々で変わっても良い。ただ、使用人としての仕事をしている最中の言葉遣いは、きっちり守ること。いいね?」
「……っ!…はいっ!」
公爵家の子になりたかったと言っていたユージア。
父様の言葉に大きく目を見開いて、またもや固まってしまっている。
ちょっと涙ぐんでいるようにも見えるんだけど……。
「……と言うところが一応双方の妥協点ではあるんだけど、どうだろうか?」
「では、お願いしよう…」
ルークは小さく頷いて手元にあった書面にサインをすると、父様の席へと書類が運ばれていった。
……こうやって、思っていたよりも異常に早く、ユージアは私の使用人として帰ってきたのでした。
しかも、私専用の執事ですって!
なんかちょっと聞こえがいいよねっ!
本当のところは立場とかどうでもいい。
そばに戻ってきてくれただけで、本当にうれしい。
しかも、こんなに早く!
父様も事前にお願いしておいた、ユージアの願いをしっかりと汲んでくれていたし、すごく良い結果になったと思っている。
そして、案の定だけれど、そんなやりとりをハラハラと見ながら、私が器用に食事ができるわけもなく。
気づけば、私だけが、まだご飯。
周囲はデザートや食後のお酒やお茶へと移行していくのでした……。
みんな早すぎだよ……。
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