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はじまりはじまり。小さな冒険?
443、乙女心…じゃなくて親の心。
しおりを挟む「すごいよなぁ……あれは『捌くのを見た事がある』ってだけではなくて、ちゃんと教わって、何度も失敗してできるようになった感じだ。あんな小さな子に、しっかりと仕込んでくれた…多分、養母だろうが、エルが1人になっても、困らないようにって、先を見越してたんだろうなぁ……」
立派な人だ。と、ぽつりと呟いていた。
(そうだね…父様はきっと、エルと同じように、私が包丁を握ってたら…悲鳴をあげて取り上げちゃうでしょう?)
私が母親の立場でも、そうだよ。
体験は必要なことだけど、それ以上に失敗が恐ろしくて。
なにより刃物だから。
怪我をしてしまったらどうしよう!と、どうにも子供の危なっかしい手つきが、見ていられない。
あれね、親の立場から言わせてもらうと『ハラハラして見つめる』じゃなくて、心臓が止まりそうなほどの緊張感を持って、ガン見してるんです。
もう、内心ではね、心配すぎて見てられないの。
(握った包丁が、グラっとなるだけで『ぎゃ!』っと叫びたくなっちゃうくらい、心配なんだよ……)
……まぁ子供の立場から言えば、口うるさいし、変なところで声かけてくるから、むしろ気が散って失敗しそうで邪魔!あっち行っててよ!って感じちゃうのだけど。
******
「できたぞ!」
エルネストの嬉しそうな声で、朝ごはんが始まった。
ちなみにだけど、父様の『丸くて大きな魚』は、鰹の事だったようだ。
丸い…まぁ確かに正面から見たら、丸く見える……かな?
私は『丸い!』と言われて、マンボウか何かかと、思っちゃってたよ。
(流石に、マンボウを食べる習慣がある地域には住んだことがない……というかアレ、食べれるんだろうか?なんて、実はちょっと焦ってたりしました…)
葉物とオニオンのサラダの上に、サイコロ状に刻まれた生のカツオに、柑橘系の酸味のあるドレッシング。
カツオといえば、刺身かたたきか?それくらいしか食べたことのない私。
サラダに乗っているカツオは、ちょっと不思議な感じがしたのだけど、ドレッシングやオイルとも相性が良くて、とてもさっぱりとしていて美味しく食べれた。
野菜好きなカイルザークが、ものすごい勢いで食べている姿は、予想通りではあるのだけど、あまりの必死さにちょっと笑いつつ、負けずと私も箸がすすんでしまった。
そして、父様の食欲をずっと刺激し続けていた、焼き魚のような匂いの元は、どうやらカツオのたたきのように、表面を炙っていた時のものだったみたいで。
それぞれのメニューに使われているカツオの表面部分は、丁寧に炙られたあとがあった。
(あの匂いだと、藁を使った炙りだった気がするんだけど……どうやったんだろう?)
そして、私の目の前には、個人的に本命の、カツオの漬け丼が……。
(サラダ食べ過ぎて、ちょっとお腹の容量が危険なのだけど、こっちもめちゃくちゃ美味しい……っ!)
生醤油と酒で作った漬けというよりは、ほのかに甘酸っぱいから、甘めの出汁醤油と酒・味醂、あと、お酢がベースかなぁ……。
そこに、とても薄くスライスされたオニオンが、半透明の花を咲かせるように盛られている。
その隣には、たっぷりの擂り胡麻で揉み込まれた、カツオの漬け丼があって…なんと2種類(!)
それぞれ小さな小鉢で準備されていて、こっちはエルネストとユージアが黙々と…それこそ言葉すら発せずに、食べることのみに集中している感じだった。
小鉢が、すごい勢いで消えていく様を目撃してしまった。
(まぁ…かくいう私も食べることに必死で、今日は食事中に、周囲がどんな会話をしていたとか、全く覚えていません)
それくらいに美味しかったんだよ!
他のメニューは……確か、サラダとカツオの漬けを挟んで作ったサンドイッチなんかもあったよ。
ちょっと生臭そうなイメージだったけど、これもすごくさっぱりとした味付けで、後でルナに聞いたら、漬け丼用の漬けとは別の味付けで、わざわざ準備したものだったらしい。
これは父様が『弁当にして欲しい』と口にしていたけど『生物だからダメです』と却下されて残念がっていたから、相当美味しかったのかな?と思う。
あとは桜海老っていうのかな?
なんか、私の『桜海老』のイメージって、お好み焼きとかに入れる、かっさかさに乾燥させた真っ赤で小さな海老なんだけど、テーブルの小鉢にいるのは、多分その桜海老の生の状態のもの。
桜海老のお刺身って言うらしいよ!
大きさはやっぱり、あの桜海老のサイズなんだけど、乾燥前だからか、気持ち大きい感じで。
味はそれでもしっかりと、エビの味と食感があって、甘くてぷりっと…いや、ぷち?かな……とにかく美味しくて。
(確か、前世の旅番組で、釜揚げシラスに添えられて「桜海老とシラス丼」みたいな感じで、見かけたことはあるんだけどね。美味しそうだなとは思ったけど、流通の関係か…鮮度の関係もあるんだろうね。私が住んでいた地域では、生の桜海老を食する機会はなかったのですよ!)
ちなみにこの、ぷりぷりの桜海老は、シュトレイユ王子とレオンハルト王子に大ヒットしたらしく、2人とも目をキラキラと輝かせながら、おかわり分の小鉢を独占する勢いで、美味しそうに食べまくってたよ。
エルネスト以外のみんなは、シラスを見て『たくさんの目に見つめられている気がしてちょっと苦手』って、言ってた気がするんだけどね。
エビなら平気なのかしら。
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