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はじまりはじまり。小さな冒険?
445、思い出す記憶、選べたら良いのにね。
しおりを挟む今は……そうやって罵倒したり、意味なく否定する人はいないんだから、大丈夫だよ!と、自分に言い聞かせながら、顔を上げる。
父様にも『一番怖いことは終わったんだから、もう大丈夫』と、背をぽんぽんとさすられてしまった。
……あれ?なんか勘違いされてるっぽい?
まぁいいか。
ちなみにだけど、今回のホタテは、お刺身でした。
プロですか?!と思うくらい綺麗に捌かれていて、カツオのお刺身と一緒に貝柱が、並べられていた。
ホタテのヒモと呼ばれる部分のお刺身も、少しだけ並んでいたけど、ヒモといえば……酒のつまみで干物のイメージが強いかなぁ……。
(新鮮じゃないと、ヒモの刺身は食べられたものじゃない!って聞いたことがあるんだよね)
まぁ、そもそも、そんな新鮮なホタテが、簡単に手に入る地域じゃなかったので、ヒモの刺身なんて、旅番組で見かける程度の、不思議物体だった。
ただ、ずっと食べてみたかったのもあって…恐る恐る口に運んだ。
つまみでよく食べてた干物のヒモとは違って、不思議と透明感があってつるんとしてて…柔らかいくせに、噛むと不思議な歯応えがあって。
そのコリコリとした歯応えがクセになるね。
……貝柱より、好きかもしれない。
思わず、口元が綻んだ。
******
残りのヒモと……生殖巣と呼ばれる……えっと、ホタテの肌色っぽいのとか白っぽい部分で、バタ焼にすると、タラコみたいな食感のするところ、あるでしょ?
これらが、文字通りバタ焼にされて出てきていた。
鮮度の関係だろうか?これまた美味しくて、箸が止まらない。
(まさか、こっちの世界に戻ってから前世で憧れていたものを食べる機会が来るとは、夢にも思わないよなぁ……)
なんか、他にもそれぞれにオススメの美味しい食べ方があったらしいのだけど、それを作るには材料が足りなかったらしい。
(ちょっと残念そうに「ごめんな」と、エルネストが言ってた気がしたけど、これで充分!大満足です!!)
そうそう、あのホタテの生殖巣って呼ばれてるところ、ホタテによって色が違うでしょ?
あれってね、白っぽいのがオスの精巣で、赤みが強くて肌色~オレンジっぽいのがメスの卵巣らしいよ!
得意げにエルネストが説明していたのだけど……。
「食感一緒だから……色くらいでしか、区別つかないね?」
「いや、味も食感も、全然違うだろ…?」
「「えっ?!」」
思わずお互いの言葉にびっくりして、食事の手を止めて顔をあげる。
一瞬の間のあと……。
「おまっ…その顔っ…!はははっ」
「エルも…ここ!ここ!ご飯くっついてるよ!」
顔を見合わせて、お互いに笑ってしまった。
食べるのに必死だったから、口周りや、顔まわりが酷いことになっていた。
(というか、エルネストさんや……どうしてお米がおでこにくっついてるんだい?どういう食べ方をしてたのやら)
お互いに笑い合っていたら、すごい勢いで、ばふ!と蒸しタオルが押し当てられて、ごしごしと拭きあげられる。
タオルから、ぷはっと顔を出すと、押し当てていた手の主は、ルナで。
エルネストはフレアに、窒息させられそうな勢いで、拭きあげられていた。
『おいっ!なんで髪にまで、米がついてるんだよっ!うまく取れないから、動くなって!』
「むーううううっ!はぁ……息できなきゃ、もがくからっ!抑えるとこ、考えてよ?!」
本当に窒息しかけたのか、顔を真っ赤にして、必死な表情になっているエルネスト。
失礼だけど、思わず笑いが…込み上げてしまった。ごめんよ。
でも、そんな様子を見ていると、やっぱり4歳児なんだよなぁ。
本当に、可愛くてしょうがない。
……それにしてもエルネスト!料理上手だね!
まぁ盛り付けとか、そういう見栄え的なところは、ルナが腕を振るったみたいだけどね。
それでも、この献立が、4歳の男の子の発案だ!なんて、ちょっと信じられない。
すごいよね!?
******
ああ、そうそう、前世で北海道の職場での辛い記憶には、後日譚があってね……。
そうやって上司に散々、関東育ちをバカにされ続けた数年後、地元の女の子が入社してきたんだ。
この子も私と同じで、数年ぶりの新規採用だった。
だから、1番歳が近いのが私…と言っても5歳近く、歳の差がある状態で。
『先輩!ホタテの水…なんか汚ったなかったから、かえときましたよ?』
「あら、ありがとう!『天然物だからしっかり砂抜きして!』って言われて、してみたんだけど。思ってた以上に、砂を吐くんだねぇ」
今日は職場の収穫祭という…まぁ秋の飲み会的なイベントが、夕方から予定されていた。
そのために、今日は、昨日の夕方~今朝のうちに準備した、食材の下準備をしながらの仕事となっていた。
「あ!ビールの樽…注文してあるんだけど、届いてないかも」
『先輩!しっかりしてくださいよ~!適当すぎません?』
冷ややかな薄笑いを浮かべて、私を見つめている新人。
一応、私の直属の部下であり、後輩であるはずの彼女は、私の上司を見習ってか、どうにも私を見下すような態度が度々あった。
(……まぁ、いいんだけどね)
最初はそれとなく注意したけど、直す気もないみたいだし、むしろ私の女性上司と出身地が一緒ということもあって、一緒になって嫌味を言ってくる事も多々あったから。
もう、気にしないことにした。
私まで、同じレベルに落ちる必要は、無いもんね。
実はホタテの下準備も、本当は私の仕事だったのだけど。
『先輩にさせたら、食べれなくされてしまいますからね!』
と『明らかに信用できません!』と言う態度で、仕事を奪っていった。
まぁ、下準備自体は終わっていて、あとは数時間おきに、バットに入れたホタテを、浅く入れておいた海水で浸してあるので、様子を見つつその海水を入れ替えるくらいしか、残っていなかったのだけれど。
作業内容も間違いがないか、女性上司がいる目の前で後輩へと指示を出して『これで大丈夫でしょうか?』と確認をとってからの、行動だった。
……のだけど。
(いやぁ。これってどれだけ私が馬鹿にされてたか、一目瞭然だよねぇ。説明も、話半分で聞かれててさ『そんな事、言われなくてもわかってます~!』って返事だったし)
ただ、毎度のことだから、怒ることすら馬鹿馬鹿しくなっていて。
「そう、優秀で助かるわ!じゃあよろしくお願いしますね」
にこりと笑みを浮かべると、さっさと自分の仕事に戻ることにした。
言葉はともかく、手伝ってくれてるからね。
だったら、他の仕事をサクッと終わらせてしまおうかと、仕事に集中していたのだった。
実務の人たちは、収穫祭ができるほどに、今年一番の忙しい作業はひと段落している。
ただ、私は事務仕事だからね。
ちょうど月末だし、毎月変わらずに色々と費用は発生していくものだから、締日に向けて大忙しだったりした。
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