私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
445 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

445、思い出す記憶、選べたら良いのにね。

しおりを挟む
 


 今は……そうやって罵倒したり、意味なく否定する人はいないんだから、大丈夫だよ!と、自分に言い聞かせながら、顔を上げる。

 父様にも『一番怖いことは終わったんだから、もう大丈夫』と、背をぽんぽんとさすられてしまった。
 ……あれ?なんか勘違いされてるっぽい?

 まぁいいか。


 ちなみにだけど、今回のホタテは、お刺身でした。

 プロですか?!と思うくらい綺麗に捌かれていて、カツオのお刺身と一緒に貝柱が、並べられていた。
 ホタテのヒモと呼ばれる部分のお刺身も、少しだけ並んでいたけど、ヒモといえば……酒のつまみで干物のイメージが強いかなぁ……。


(新鮮じゃないと、ヒモの刺身は食べられたものじゃない!って聞いたことがあるんだよね)


 まぁ、そもそも、そんな新鮮なホタテが、簡単に手に入る地域じゃなかったので、ヒモの刺身なんて、旅番組で見かける程度の、不思議物体だった。
 ただ、ずっと食べてみたかったのもあって…恐る恐る口に運んだ。

 つまみでよく食べてた干物のヒモとは違って、不思議と透明感があってつるんとしてて…柔らかいくせに、噛むと不思議な歯応えがあって。
 そのコリコリとした歯応えがクセになるね。

 ……貝柱より、好きかもしれない。

 思わず、口元がほころんだ。






 ******






 残りのヒモと……生殖巣と呼ばれる……えっと、ホタテの肌色っぽいのとか白っぽい部分で、バタ焼にすると、タラコみたいな食感のするところ、あるでしょ?
 これらが、文字通りバタ焼にされて出てきていた。

 鮮度の関係だろうか?これまた美味しくて、箸が止まらない。


(まさか、こっちの世界に戻ってから前世にほんで憧れていたものを食べる機会が来るとは、夢にも思わないよなぁ……)


 なんか、他にもそれぞれにオススメの美味しい食べ方があったらしいのだけど、それを作るには材料が足りなかったらしい。


(ちょっと残念そうに「ごめんな」と、エルネストが言ってた気がしたけど、これで充分!大満足です!!)


 そうそう、あのホタテの生殖巣って呼ばれてるところ、ホタテによって色が違うでしょ?
 あれってね、白っぽいのがオスの精巣で、赤みが強くて肌色~オレンジっぽいのがメスの卵巣らしいよ!

 得意げにエルネストが説明していたのだけど……。


「食感一緒だから……色くらいでしか、区別つかないね?」

「いや、味も食感も、全然違うだろ…?」

「「えっ?!」」


 思わずお互いの言葉にびっくりして、食事の手を止めて顔をあげる。
 一瞬の間のあと……。


「おまっ…その顔っ…!はははっ」

「エルも…ここ!ここ!ご飯くっついてるよ!」


 顔を見合わせて、お互いに笑ってしまった。
 食べるのに必死だったから、口周りや、顔まわりが酷いことになっていた。


(というか、エルネストさんや……どうしてお米がおでこにくっついてるんだい?どういう食べ方をしてたのやら)


 お互いに笑い合っていたら、すごい勢いで、ばふ!と蒸しタオルが押し当てられて、ごしごしと拭きあげられる。
 タオルから、ぷはっと顔を出すと、押し当てていた手の主は、ルナで。

 エルネストはフレアに、窒息させられそうな勢いで、拭きあげられていた。


『おいっ!なんで髪にまで、米がついてるんだよっ!うまく取れないから、動くなって!』

「むーううううっ!はぁ……息できなきゃ、もがくからっ!抑えるとこ、考えてよ?!」


 本当に窒息しかけたのか、顔を真っ赤にして、必死な表情になっているエルネスト。
 失礼だけど、思わず笑いが…込み上げてしまった。ごめんよ。

 でも、そんな様子を見ていると、やっぱり4歳児なんだよなぁ。
 本当に、可愛くてしょうがない。


 ……それにしてもエルネスト!料理上手だね!
 まぁ盛り付けとか、そういう見栄え的なところは、ルナが腕を振るったみたいだけどね。

 それでも、この献立が、4歳の男の子の発案だ!なんて、ちょっと信じられない。
 すごいよね!?






 ******






 ああ、そうそう、前世で北海道の職場での辛い記憶には、後日譚があってね……。


 そうやって上司に散々、関東育ちをバカにされ続けた数年後、地元の女の子が入社してきたんだ。
 この子も私と同じで、数年ぶりの新規採用だった。
 だから、1番歳が近いのが私…と言っても5歳近く、歳の差がある状態で。


『先輩!ホタテの水…なんか汚ったなかったから、かえときましたよ?』

「あら、ありがとう!『天然物だからしっかり砂抜きして!』って言われて、してみたんだけど。思ってた以上に、砂を吐くんだねぇ」


 今日は職場の収穫祭という…まぁ秋の飲み会的なイベントが、夕方から予定されていた。
 そのために、今日は、昨日の夕方~今朝のうちに準備した、食材の下準備をしながらの仕事となっていた。


「あ!ビールの樽…注文してあるんだけど、届いてないかも」

『先輩!しっかりしてくださいよ~!適当すぎません?』


 冷ややかな薄笑いを浮かべて、私を見つめている新人。
 一応、私の直属の部下であり、後輩であるはずの彼女は、私の上司を見習ってか、どうにも私を見下すような態度が度々あった。


(……まぁ、いいんだけどね)


 最初はそれとなく注意したけど、直す気もないみたいだし、むしろ私の女性上司と出身地が一緒ということもあって、一緒になって嫌味を言ってくる事も多々あったから。
 もう、気にしないことにした。

 私まで、同じレベルに落ちる必要は、無いもんね。


 実はホタテの下準備も、本当は私の仕事だったのだけど。


『先輩にさせたら、食べれなくされてしまいますからね!』


 と『明らかに信用できません!』と言う態度で、仕事を奪っていった。
 まぁ、下準備自体は終わっていて、あとは数時間おきに、バットに入れたホタテを、浅く入れておいた海水で浸してあるので、様子を見つつその海水を入れ替えるくらいしか、残っていなかったのだけれど。

 作業内容も間違いがないか、女性上司がいる目の前で後輩へと指示を出して『これで大丈夫でしょうか?』と確認をとってからの、行動だった。

 ……のだけど。


(いやぁ。これってどれだけ私が馬鹿にされてたか、一目瞭然だよねぇ。説明も、話半分で聞かれててさ『そんな事、言われなくてもわかってます~!』って返事だったし)


 ただ、毎度のことだから、怒ることすら馬鹿馬鹿しくなっていて。


「そう、優秀で助かるわ!じゃあよろしくお願いしますね」


 にこりと笑みを浮かべると、さっさと自分の仕事に戻ることにした。
 言葉はともかく、手伝ってくれてるからね。
 だったら、他の仕事をサクッと終わらせてしまおうかと、仕事に集中していたのだった。

 実務の人たちは、収穫祭ができるほどに、今年一番の忙しい作業はひと段落している。

 ただ、私は事務仕事だからね。
 ちょうど月末だし、毎月変わらずに色々と費用は発生していくものだから、締日に向けて大忙しだったりした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...