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第一章
第9話 伝説の冒険者 爆(笑)誕 前編
しおりを挟むギルドの建物に着いた俺は中に入る。手前の食事処は満席に近い状態で賑わっていた。昨日に比べて人が多い。屈強な冒険者達にちょいビビりながら、奥の受付けカウンターを目指す。いやマジで酔っぱらいのムキムキおやじとかに捕まったら死ねるし。
「昨日の少年。今日は何用?」
受付けのお姉さんは俺を覚えていてくれたみたい。
「クエストの依頼って俺でも出来るんですか?」
「幾つか条件が有るんだけど」
条件とは、悪行の禁止、王都を侮辱する行為の禁止、戦争の火種になる行為の禁止、マフィア等との支援の禁止等々の禁止事項、冒険者に支払う依頼料や達成報酬は全額をギルドに預ける事、事務手数料等は依頼料等とは別に発生等々であった。
「探している人達を見かけたら、教えて欲しいって内容なんですが」
「報酬は何れくらい?」
「有力な情報限定で小金貨1枚でどうですか?」
「まぁいいけど、今は低額クエストのボードはいっぱいだから、貼られるのに順番待ちで時間が掛かるわよ」
ん~、みんなの所在は出来るだけ早くに知りたいとこだが…。
「さっきガルバーニさんに道で偶然ばったり会いまして……」
お姉さんをチラ見する。お姉さんの目の色が変わる。フィーッシュ!
「ちょっとした世間話とお姉さんの事も伝えましたよ」
「何、何、何言ったの?」
ガッチリフッキンぐ~!
「昨日ギルドで、受付けの優しくて綺麗なお姉さんが、親切に対応してくれて助かりました~と伝えたらニコニコしてましたよ?」
「や、や~ね~。受付けの~(両手を頬に宛て)、とても優しくて~(腰をクネ)、とてもとても綺麗なお姉さんが~(クネクネ)、とてもとてもとても親切に対応してくれて助かりました~(クネクネクネクネ)、だなんて~、もぉ~恥ずかしいじゃな~い(超デレ目)」
『とても』の回数が多過ぎません?
「少年の依頼書は過ぐに貼ってあげるね~」
お姉さんはチョロかった。
「それから、俺も冒険者になれますか?」
異世界に来て冒険者ギルドが有るんだから、冒険者職は外せないよね。他にも重要な意味がある。先ずは身分証明だね。王都は大丈夫としても、他の街では必要になる。其れと情報だ。何しろこの世界の事、政治、経済、社会、エンタメ等々の情報をネットで収集出来ない以上、ヒューマンコミュニティへの参加は必須だし、俺みたいに身元も怪しく、この世界的には無知な状況であった場合、冒険者ギルドは最適と思われる。
「少年の場合、凶悪犯罪者を捕まえた実績も有るし、ガルバーニさんとの接点でも有るから審査は無しで大丈夫ね」
後半の『ガルバーニさんとの接点』って……何でちか?今度もガルバーニさんとの接点で有り続けろって事でちか?
「何か特技とかは有る?」
「うーん、しいて言えば勘がいいってとこかな~」
索敵スキルについてはまだ伏せておく。
「希望する職は有るの?戦士って感じでは無いわね~。魔法は使えるの?」
首を振る。
「スクロールも読めません」
「手先は器用?」
「人並みだと」
「神を感じた事は有る?」
首を振る振る。
「じゃあレンジャー辺りかな~」
「あの~、初めに職業を決める必要って有るんですか?」
「そうね~、まず少年みたいに漠然と冒険者に成りたいですって人はほとんどいないわ。小さい頃から少なからず成りたい職業を夢見て、研鑽してあの扉を開けて、此処に来るの」
た、確かにそうだ。
「そして冒険者の証として(引き出しから其れを取り出し)、このネームプレートを私達は彼らに渡すの」
それは小さな金属プレートで、細い鎖りが付いていた。
「このプレートは冒険者の証。それとステータス補助の護符でもあるの。例えば此れは戦士の護符、戦士系の経験や研鑽に対し『やる気』にさせる効果があるわ」
「ステータスが直接上がる訳では無いんですね」
「僅かなステータス補正は、将来の結果としては本人の為にならないのよ」
「努力する事を身に付かせて、その背中を押して上げる護符なんですね。とても素晴らしいと思います」
「んフフ、ありがとう。どちらかと言えば、(恐目で食事処を睨み)チッ、ステータスは上がらねえのかよって愚痴を言う輩の方が多いから」
騒がしかった食事処がシーンと静かになった。
「と言うわけで、初めに職業を決めた方が、ステータスの上がりが早いのよ。レンジャー職でいい?」
レンジャーなら索敵の機会も有るだろうから悪くないかな。
ブルブル、ブルブル。
ズボンのポケットに入れてあるスマホのバイブ?
慌ててスマホを取り出して見ると、サツキサンからのメールだったよ?電波も無いのに何故に?メールを開けると
【愛の力です。話は伺いました。マスターのジョブは魔法使い一択です。】
【何故?】
【マスターの特別な索敵スキルにおいては、魔力やMPが大きい程に範囲、精度、品質に与える影響が大きく成ります。魔法使い職を選択し護符の支援を受けた方が、今後の成長が期待されます。また語学学習においても、護符の影響が期待されます。以上の理由で魔法使い一択となりました。】
【了解。サツキサン。流石だね】
【イエス、マスター】
画面から目を離すと、お姉さんがカウンターの上で頬杖して、何コレ視線で俺をガン見していたよ?俺はニコッと笑ってみる。お姉さんもニコッと笑ってくれたよ。胸元の谷間にドギマギからのパシャッ。お姉さんのスマイル&胸元パシャ。サンクス!
「それは何かな~?」
慌てて電源をオフにする。
「東方の魔導具です(汗)」
「何してたの~?(何コレ目)」
「たまに此処に占いとか運勢とかが写し出されるんです(汗)」
電源オフのスマホを見せる。
「初めて見る魔導具ね?」
お姉さんの何コレ目が終了すると急かさず
「腕のブレスレットに付いてるのって時計?」
「はい。東方にいた時に貴族様から貰いました」
お昼にセシリちゃんとの一悶着があったので、貴族様をでっち上げて回避。
「凄~い。こんなに小さな時計、初めて見た~」
フゥ~、何とか逃げ切れた~。
「魔法使いに成りたい?」
「はい。俺が魔法使いとか無理でしょうか?」
「魔法使いは適正が有れば成れる可能性はあるわ」
引き出しから小さな水晶を取り出した。
「此れを手のひらに乗せて魔力を込められる?」
水晶を受け取り
「此れは?」
「この水晶は魔力に反応して光るの。光らないようなら魔法使いは無理ってこと」
手のひらに水晶を乗せて、魔力を注ぐイメージに集中する。次第に水晶が薄い光を帯びる。やがて白い光に包まれた。
「へぇ~、光属性の魔力か~。レベル1で此れだけ光らせられるって凄いわよ。それに光属性は珍しいから将来が楽しみね」
いつの将来かは不明だけど、俺は魔法使い職業になる事が出来た。
「後は冒険者クラスね。一般的な冒険者にはA~G迄のクラスがあるの。普通初心者はD以下からのスタートになるわ。私が幾つかの質問をするからYES、NOで答えて。貴方は今迄に喧嘩で勝った事は有りますか?」
「NO」
こうして俺は全ての質問にNOと答えた。NOと言える日本人だ。いやいや、あの質問は普通高校生には無理ゲーだって。お姉さんは暗い顔でボソッと
「…じ…クラス」
「はい?」
「Gクラスよ(涙目)」
何も知らなかった俺は普通に
「Gクラスでも冒険者に成れるなら、俺はオッケーですよ」
突然ギルド内が大爆笑の渦に包まれる。食事処の方を見ると、全員が腹を抱えて笑っていた。みんな緑のオーラだから他意は無い。ピンクが一人混ざってるけど?
呆気に取られていると、筋肉ムキムキでガッツリ髭のあるおっさんファイターが、俺の方に来て大笑いしながらガッツリ肩組をしてくる。
「ようこそ伝説のGファイター」
俺は魔法使い(仮)ですよ~。Gファイターは飛行機ですよ~。おっさんは俺を引きずるように、みんなの輪の中に俺を連れて行く。
「お前ら~!遂にこのギルドに伝説が生まれた~!伝説のGファイターの名前は~、……、おい名前!」
「ライトです(ビビり目)」
「伝説のGファイターの名前はライトだ~!」
「「「「オーーーーーーー!」」」」
「伝説のライトに乾杯だ~!」
「「「「乾杯ーーーーーい!」」」」
みんながみんな乾杯をしている。俺にもビールジョッキが渡され、みんなが俺に乾杯してくる。多分俺が伝説級の最弱冒険者だから、其れを肴に騒いでいる。でも悲しくも悔しくもない。これが冒険者達だからだ。どちらかと言えば嬉しい。少しだけだけど初めてビールを飲んだ。ニガ旨かったよ。
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