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第一章
第15話 お姫様救出作戦 前編
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帰り道にクエスト成功の報告に冒険者ギルドに立ち寄った。
「猫探し完了しました」
俺はカウンターのテレシアさんに報告した。
「え?嘘?マジ?こんなに早く?ホントに~~~(疑目)」
「えぇ、まぁ運が良かったっていうか…、此れが証拠写真です」
俺はスマホで撮った写真を見せた。
「何これ!っていうかガルバーニさんがいるじゃない!元気にしてた?私の事何か言ってた…っていうか何でカーシャが隣にいるのよ!!!」
「あ、あの~~、ガルバーニさんとはたまたま偶然で~(脅目)」
「キー!あの女狐!私がいない時に何やらかしちゃってくれてんのよ!(鬼目)」
ひ~~、怖い~~~(涙目)
「何よこの勝ち誇った笑みは!」
いえ、そういう笑みではないと思いますが……
「い~わよ!そっちがその気ならヤッてやろうじゃないの!」
いえ、その気になっちゃってるのはテレシアさんの方では……
「行くわよライト君!」
「はひ?」
「今すぐガルバーニさんの所に行って『此れ』するの!分かった!(鬼目)」
「い、イエス、マム!」
俺はテレシアさんに連行されギルドの扉を出ようとした時、ギルドの前に豪華な馬車が横付けされた。
馬車の扉が開き、メイド服姿で渦中のカーシャさんが降りてきた。
「カーシャさん…」
「カ~ア~シャ~(鬼目)」
「何?テレシア。変な顔して?」
更に馬車の扉からメイド服姿の、超美人のメイドお姉様が降りてきたよ。
「め、メイア様!」
テレシアさんが驚きの声を出す。後ろのお食事処の冒険者達もザワつきだした。
「おい!見ろ!メイア様だ」「な、生メイア様だ」「お、俺っちに用かな?」「う~メロメロ~」
降りてきたメイア様はテレシアさんにこう言った。
「ライト・サクライ様はいらっしゃいますか?」
へ? 俺?
「あ、は、はい! この子がライト君ですが……」
テレシアさんは俺を紹介する。
訳分からない俺は、棒立ちで話しを聞いていた。
スタスタスタ
メイア様は棒立ちの俺に近付き、棒横にして俺を持つと馬車にそのまま押し込んだよ?
メイア様とカーシャさんが馬車に乗り込み、馬車は走り出した。ギルドの面々は目を点にして見送ったらしいよ?
「急なお呼び出しで、ご迷惑をおかけします」
走り出した馬車の中で、メイア様がお詫びをした。
「お城にて緊急の案件が発生しました」
「私の所にも裏メイド隊の緊急召集が来たのです。話しを聞いてライトさんの力が必要ですとメイア様にお話したところ、是非力を借りようとなりまして……」
「な、成る程。何か探しものですか?」
「詳しいお話はお城で」
メイア様の横顔に鬼気迫るものがある。お城では余程の事が起きているのだろう。俺は黙って馬車に揺られお城へと向かった。
◆
しばらくしてお城に着く。城門を抜け中庭を馬車が走る。日も暮れ暗がりながらも所々に灯籠や庭火があり、お城の大きさが伺える。正面の大扉前で馬車を降り城内に入った。中の華美な装飾品、絵画、置物に目を丸くしながら俺は其の部屋に通された。
中に入ると其所も豪華な部屋ではあったが会議室なのだろうか。大きな長テーブルが真ん中に置かれている。テーブルには偉丈夫で強面赤毛の如何にもって雰囲気の騎士様と若くてイケメンの騎士様、整った服を着て知的な顔に短い白髭のご老人の3人が座っていた。壁を背に5人のメイドさんが立っている。
「何か進展はありましたか宰相閣下」
メイア様がご老人に話しかける。
うぉ!宰相様でした。マジか!
「グリフォン隊と騎士隊を向かわせておるが、まだ時間がかかるだろう」
「グリフォン隊は10騎、騎士隊は5隊5騎編成で向かわせた」
若いイケメン騎士様がメイア様にそう報告する。
「焦る気持ちは分かるが、まぁ落ち着けメイア」
「しかし大将軍、こうしてる間に姫様の御身に何かあったら……」
大将軍に宰相、若い騎士は雰囲気的に騎士団長か親衛隊長、それに姫様と繋がれば……。
「あのもしかして……」
若い騎士に睨まれた。
「貴様は何者だ?」
「この方はライト・サクライ様です。オリバーさん。特別な感知系スキルをお持ちとの事でお招き致しました」
「占い師か」
メイア様がオリバー様に俺を紹介してくれた。余り良い印象ではないみたいだけどね(汗)
「探しているのはお姫様という事ですか?」
「姫様は外交で隣国バルミスラ国に行ってました。先方の歓迎ムードもあり、姫様の護衛もバルミスラ騎士団にお任せしたのですが、帰国の道中に賊に襲われ、姫様が連れ去られてしまったのです。あの糞の役にも立たないボケナス騎士団め~!(怒目)」
メイア様がメラメラと紫のオーラに包まれた。
「其れはいつ頃の話しなのですか?」
俺の問いにオリバー様は答えてくれる。
「今日の昼間、白昼にやられたらしい。此方らに報告があったのもつい先程だ」
「………」
「して占い師、姫様の居場所を占うのか?」
オリバー様が俺を怪しんでる。俺はサツキサンを取り出した。
「サツキサン、出来るかな?」
「イエス、マスター。今のマスターの魔力量での広範囲索敵は難しいです。ですが魔力供給を頂ければ、其れは可能となります」
サツキサンが喋っているのを見てカーシャさん以外は驚きの顔をしている。
「魔力供給って何?」
俺の問いにメイア様が答えた。
「魔力供給の件は了解しました。カーシャ、手伝って下さい」
「はい。メイア様」
「カーシャさん、宜しくお願いします」
カーシャさんは俺の後ろから肩に手を乗せ、俺の体に魔力を流してくれた。俺は意識を集中する為に両手を伸ばしサツキサンに手を翳す。
「索敵!」
意識を遠くに向ける。遠くへ。遠くへ。もっと遠くへ。
「メイア様。魔力供給の追加をお願いします」
サツキサンが更に魔力を求める。
「キャサリン」
「はい」
俺も意識を更に集中させた。
「サツキサン、そろそろよくないか?」
「いえ、マスター。今宵は地母神ガイア様の機嫌が宜しいようで、魔力粒子の繋がりが3倍のスピードです。取り零しなく広範囲索敵を致しましょう」
「了解。俺は遠くに意識を飛ばすから他のフォローは宜しく」
「イエス、マスター。了解しました」
俺は更に、更に、更に遠くへ意識を飛ばす。
「メイア様。もっと魔力供給をお願いします」
サツキサンがメイア様に追加の協力をお願いする。
「エリス、ケイナ」
「ハイ、メイア様」
更にメイドさん2人に魔力供給をしてもらいながら索敵範囲を広げていく。
「メイア様。もっと魔力を~」
遠くへ、遠くへ、遠くへ、遠くへ
俺の意識は空を駆け、森を抜け、海を渡る。
「魔力をもっと~、もっと下さ~い」
遠くへ、遠くへ、遠くへ、遠くへ
見知らぬ土地、見知らぬ動物、魔物、妖精……。
「もっと~、もっと~、もっと魔力を~~~」
遠くへ、遠くへ、遠くへ、遠くへ!
様々な人達、植物や果物、魚、色々な本や書物、お城、建物、世界の全てが見えてくる。
「もっと~~~~~~~!」
遠くへーーーーーッ!
あれ?
遠くへ飛ばした意識が俺の後頭部にぶつかったよ?
そういえば昔、本で読んだ事がある。
『君に世界の果てを見せてあげよう。振り向いてごらん。其処が君の世界の果てだよ』
つまり俺の意識は世界を一周してきたのだ。
「マスター、コンプリートです。全世界の全ての魔力粒子に索敵因子を書き込みました。新しいアプリがダウンロード出来ます。新しいアプリをダウンロードしますか?」
「イエス!サツキサン!」
「新しいアプリをダウンロードしました。新しいアプリの名前はワールドビジョン。世界は全てマスターの瞳の中に掌握されました。他にも幾つかのアプリがダウンロード出来ます。ダウンロードしますか?」
「其れはまた後で。よし!お姫様を探そう!ワールドビジョン!」
俺は全世界規模索敵ワールドビジョンを使用した。俺の索敵エリアは超広範囲に広がる。
「サツキサン、王族女性で検索をしてくれ。範囲は国内及び隣国」
「イエス、マスター。124名が該当します」
「流石に多いか。メイア様、お姫様の特徴を教えて下さい」
振り向くと沢山のメイドさんが壁に背中を預けていたよ?宰相様始め全員が呆けた顔をしているよ?
「あ、あのメイア様?」
「あ、は、はい?何でしょうか?」
……意識飛んでましたね(苦笑)
「お姫様の特徴を教えて下さい」
「其れはもう聡明な方で、誰にもお優しく……」
「あ、いえ、外見的特徴を~(汗)」
「し、失礼しました。お歳は17歳、長いステキな金髪で綺麗な碧眼です」
「サツキサン!検索条件に年齢17歳前後、金髪、ロン毛、碧眼を追加」
「イエス、マスター。その条件に合う方は6名に絞られました」
「あとは~。……城及びそれに類する建物にいない人、で検索!」
「イエス、マスター。その条件に合う方は1名です」
「その子だ!!!」
「ど、何処ですか!姫様はどちらに!」
メイア様はガッツリとサツキサンの画面をガン見している。画面上には光の点が1つあるだけだ。
「サツキサン。その場所を含む地図をレイヤー出来る?」
「イエス、マスター。ラグナドラグーンの地図を下層にレイヤーします」
光点の場所は南の方に位置する街『ペルセナ』の街中だった。
「信じられるのか?姫様が拐われたのはもっと東の方だぞ」
オリバー様の声にメイア様は
「今は何も手掛かりすらありません。私が行って参ります」
「やれやれ、メイア1人じゃ厳しいだろう。裏メイド隊は其処で全滅してるしな。俺も行くとするか」
大将軍が席を立ち上がる。
「ま、まま、待って下さい!私が同行します。夜飛べるグリフォンはあと2体です。私とメイアさんで見てきます(汗)」
「サツキサン。お姫様がいる建物と中の様子を表示して」
「イエス、マスター。画像出します」
サツキサンの画面に3Dワイヤーフレーム的な立体画像の建物と中の人が写し出された。
建物は2階建てで、1階のリビングに3人、2階の部屋に1人、廊下に2人写っている。
「2階のこの人がお姫様ですね」
「…………」
メイア様は画面に釘付けになっている。周りを見ると皆さんも釘付けだった。
「サツキサン。お姫様の状態を確認したいからズームして」
「イエス、マスター。リアル画像表示が出来るようになりましたが切り替えますか?」
「え!そんな事も出来るようになっちゃたの?」
「イエス、マスター。世界中の魔法粒子とリンクしています。色、熱、振動含め全てがマスターの瞳の中です」
「振動って事は音声も?」
「今回は距離が遠い為、音声は拾えません」
「成る程。じゃあ、映像表示の方お願い」
「イエス、マスター。お姫様の映像に切り替えます」
サツキサンの画面には、暗い部屋でベッドの上に横たわる、綺麗なお姫様が写し出された。ロープとかで縛られていないし、怪我も無さそうだ。眠らされてるって感じだった。
「姫様!」
メイア様が大きな声で叫ぶ。
「ら、ライト様。此れはいったい……」
「今のお姫様の状況です。お怪我とかは無さそうですね」
「お前、いったい何者だ?」
オリバー様が驚きの顔で俺を見ている。
「れ、レベルGクラスの冒険者です(汗)」
「何~?レベルGクラスなんて最弱じゃないか、っていうかGクラス冒険者なんて聞いた事ないぞ」
「ガハハハ!面白いな。ライトと言ったか。気にいったぞ!」
大将軍の笑い声の中、部屋の扉が開いた。
「何を笑っておる!アルフィーナは見つかったのか!」
物凄く威厳のありそうなお方が入って来ましたよ?
「国王!」
オリバー様が驚きの声をあげる。
「陛下、姫様の居所が今わかりました」
宰相様が国王様に応対する。
「何処だ!何処におる!メイアは何を見ている!ア、アルフィーナではないか!何故この中にアルフィーナがいる!どうなっているのだ!」
「こ、国王様」
俺は超ビビりながら国王様に説明をする。
「この画像は現在のお姫様の状況です」
俺は画面を摘まんで少し小さくし建物を写しだす。
「お姫様は現在この建物内に捕らわれています。サツキサン、地図に切り換えて」
「イエス、マスター」
画面は地図とお姫様の光点に切り替わる。
「お姫様は此処、ペルセナの街に連れ去られていました」
国王様は『?』の顔になっていた。
「何がどうなっている!全く分からんぞ!」
「陛下、落ち着いて下さい」
大将軍が助け舟を出してくれた。
「此処にいる全員が、其処にいるライトのやっている事が理解出来ないんです。しかし姫様がペルセナにいる事は分かった。だから救出に行く。今は其れでいいでしょう。オリバー、メイア、直ぐに行けるな!」
「「はい!」」
「ライト、お前も付いていってくれ。お前がいれば姫様は100%救出出来る」
「は、はい、大将軍様!」
こうして俺とメイア様、オリバー様でお姫様救出作戦が開始された。
ちなみに俺はメイア様の後ろに抱き付く形でグリフォンにタンデムした(ムフ♥)
「猫探し完了しました」
俺はカウンターのテレシアさんに報告した。
「え?嘘?マジ?こんなに早く?ホントに~~~(疑目)」
「えぇ、まぁ運が良かったっていうか…、此れが証拠写真です」
俺はスマホで撮った写真を見せた。
「何これ!っていうかガルバーニさんがいるじゃない!元気にしてた?私の事何か言ってた…っていうか何でカーシャが隣にいるのよ!!!」
「あ、あの~~、ガルバーニさんとはたまたま偶然で~(脅目)」
「キー!あの女狐!私がいない時に何やらかしちゃってくれてんのよ!(鬼目)」
ひ~~、怖い~~~(涙目)
「何よこの勝ち誇った笑みは!」
いえ、そういう笑みではないと思いますが……
「い~わよ!そっちがその気ならヤッてやろうじゃないの!」
いえ、その気になっちゃってるのはテレシアさんの方では……
「行くわよライト君!」
「はひ?」
「今すぐガルバーニさんの所に行って『此れ』するの!分かった!(鬼目)」
「い、イエス、マム!」
俺はテレシアさんに連行されギルドの扉を出ようとした時、ギルドの前に豪華な馬車が横付けされた。
馬車の扉が開き、メイド服姿で渦中のカーシャさんが降りてきた。
「カーシャさん…」
「カ~ア~シャ~(鬼目)」
「何?テレシア。変な顔して?」
更に馬車の扉からメイド服姿の、超美人のメイドお姉様が降りてきたよ。
「め、メイア様!」
テレシアさんが驚きの声を出す。後ろのお食事処の冒険者達もザワつきだした。
「おい!見ろ!メイア様だ」「な、生メイア様だ」「お、俺っちに用かな?」「う~メロメロ~」
降りてきたメイア様はテレシアさんにこう言った。
「ライト・サクライ様はいらっしゃいますか?」
へ? 俺?
「あ、は、はい! この子がライト君ですが……」
テレシアさんは俺を紹介する。
訳分からない俺は、棒立ちで話しを聞いていた。
スタスタスタ
メイア様は棒立ちの俺に近付き、棒横にして俺を持つと馬車にそのまま押し込んだよ?
メイア様とカーシャさんが馬車に乗り込み、馬車は走り出した。ギルドの面々は目を点にして見送ったらしいよ?
「急なお呼び出しで、ご迷惑をおかけします」
走り出した馬車の中で、メイア様がお詫びをした。
「お城にて緊急の案件が発生しました」
「私の所にも裏メイド隊の緊急召集が来たのです。話しを聞いてライトさんの力が必要ですとメイア様にお話したところ、是非力を借りようとなりまして……」
「な、成る程。何か探しものですか?」
「詳しいお話はお城で」
メイア様の横顔に鬼気迫るものがある。お城では余程の事が起きているのだろう。俺は黙って馬車に揺られお城へと向かった。
◆
しばらくしてお城に着く。城門を抜け中庭を馬車が走る。日も暮れ暗がりながらも所々に灯籠や庭火があり、お城の大きさが伺える。正面の大扉前で馬車を降り城内に入った。中の華美な装飾品、絵画、置物に目を丸くしながら俺は其の部屋に通された。
中に入ると其所も豪華な部屋ではあったが会議室なのだろうか。大きな長テーブルが真ん中に置かれている。テーブルには偉丈夫で強面赤毛の如何にもって雰囲気の騎士様と若くてイケメンの騎士様、整った服を着て知的な顔に短い白髭のご老人の3人が座っていた。壁を背に5人のメイドさんが立っている。
「何か進展はありましたか宰相閣下」
メイア様がご老人に話しかける。
うぉ!宰相様でした。マジか!
「グリフォン隊と騎士隊を向かわせておるが、まだ時間がかかるだろう」
「グリフォン隊は10騎、騎士隊は5隊5騎編成で向かわせた」
若いイケメン騎士様がメイア様にそう報告する。
「焦る気持ちは分かるが、まぁ落ち着けメイア」
「しかし大将軍、こうしてる間に姫様の御身に何かあったら……」
大将軍に宰相、若い騎士は雰囲気的に騎士団長か親衛隊長、それに姫様と繋がれば……。
「あのもしかして……」
若い騎士に睨まれた。
「貴様は何者だ?」
「この方はライト・サクライ様です。オリバーさん。特別な感知系スキルをお持ちとの事でお招き致しました」
「占い師か」
メイア様がオリバー様に俺を紹介してくれた。余り良い印象ではないみたいだけどね(汗)
「探しているのはお姫様という事ですか?」
「姫様は外交で隣国バルミスラ国に行ってました。先方の歓迎ムードもあり、姫様の護衛もバルミスラ騎士団にお任せしたのですが、帰国の道中に賊に襲われ、姫様が連れ去られてしまったのです。あの糞の役にも立たないボケナス騎士団め~!(怒目)」
メイア様がメラメラと紫のオーラに包まれた。
「其れはいつ頃の話しなのですか?」
俺の問いにオリバー様は答えてくれる。
「今日の昼間、白昼にやられたらしい。此方らに報告があったのもつい先程だ」
「………」
「して占い師、姫様の居場所を占うのか?」
オリバー様が俺を怪しんでる。俺はサツキサンを取り出した。
「サツキサン、出来るかな?」
「イエス、マスター。今のマスターの魔力量での広範囲索敵は難しいです。ですが魔力供給を頂ければ、其れは可能となります」
サツキサンが喋っているのを見てカーシャさん以外は驚きの顔をしている。
「魔力供給って何?」
俺の問いにメイア様が答えた。
「魔力供給の件は了解しました。カーシャ、手伝って下さい」
「はい。メイア様」
「カーシャさん、宜しくお願いします」
カーシャさんは俺の後ろから肩に手を乗せ、俺の体に魔力を流してくれた。俺は意識を集中する為に両手を伸ばしサツキサンに手を翳す。
「索敵!」
意識を遠くに向ける。遠くへ。遠くへ。もっと遠くへ。
「メイア様。魔力供給の追加をお願いします」
サツキサンが更に魔力を求める。
「キャサリン」
「はい」
俺も意識を更に集中させた。
「サツキサン、そろそろよくないか?」
「いえ、マスター。今宵は地母神ガイア様の機嫌が宜しいようで、魔力粒子の繋がりが3倍のスピードです。取り零しなく広範囲索敵を致しましょう」
「了解。俺は遠くに意識を飛ばすから他のフォローは宜しく」
「イエス、マスター。了解しました」
俺は更に、更に、更に遠くへ意識を飛ばす。
「メイア様。もっと魔力供給をお願いします」
サツキサンがメイア様に追加の協力をお願いする。
「エリス、ケイナ」
「ハイ、メイア様」
更にメイドさん2人に魔力供給をしてもらいながら索敵範囲を広げていく。
「メイア様。もっと魔力を~」
遠くへ、遠くへ、遠くへ、遠くへ
俺の意識は空を駆け、森を抜け、海を渡る。
「魔力をもっと~、もっと下さ~い」
遠くへ、遠くへ、遠くへ、遠くへ
見知らぬ土地、見知らぬ動物、魔物、妖精……。
「もっと~、もっと~、もっと魔力を~~~」
遠くへ、遠くへ、遠くへ、遠くへ!
様々な人達、植物や果物、魚、色々な本や書物、お城、建物、世界の全てが見えてくる。
「もっと~~~~~~~!」
遠くへーーーーーッ!
あれ?
遠くへ飛ばした意識が俺の後頭部にぶつかったよ?
そういえば昔、本で読んだ事がある。
『君に世界の果てを見せてあげよう。振り向いてごらん。其処が君の世界の果てだよ』
つまり俺の意識は世界を一周してきたのだ。
「マスター、コンプリートです。全世界の全ての魔力粒子に索敵因子を書き込みました。新しいアプリがダウンロード出来ます。新しいアプリをダウンロードしますか?」
「イエス!サツキサン!」
「新しいアプリをダウンロードしました。新しいアプリの名前はワールドビジョン。世界は全てマスターの瞳の中に掌握されました。他にも幾つかのアプリがダウンロード出来ます。ダウンロードしますか?」
「其れはまた後で。よし!お姫様を探そう!ワールドビジョン!」
俺は全世界規模索敵ワールドビジョンを使用した。俺の索敵エリアは超広範囲に広がる。
「サツキサン、王族女性で検索をしてくれ。範囲は国内及び隣国」
「イエス、マスター。124名が該当します」
「流石に多いか。メイア様、お姫様の特徴を教えて下さい」
振り向くと沢山のメイドさんが壁に背中を預けていたよ?宰相様始め全員が呆けた顔をしているよ?
「あ、あのメイア様?」
「あ、は、はい?何でしょうか?」
……意識飛んでましたね(苦笑)
「お姫様の特徴を教えて下さい」
「其れはもう聡明な方で、誰にもお優しく……」
「あ、いえ、外見的特徴を~(汗)」
「し、失礼しました。お歳は17歳、長いステキな金髪で綺麗な碧眼です」
「サツキサン!検索条件に年齢17歳前後、金髪、ロン毛、碧眼を追加」
「イエス、マスター。その条件に合う方は6名に絞られました」
「あとは~。……城及びそれに類する建物にいない人、で検索!」
「イエス、マスター。その条件に合う方は1名です」
「その子だ!!!」
「ど、何処ですか!姫様はどちらに!」
メイア様はガッツリとサツキサンの画面をガン見している。画面上には光の点が1つあるだけだ。
「サツキサン。その場所を含む地図をレイヤー出来る?」
「イエス、マスター。ラグナドラグーンの地図を下層にレイヤーします」
光点の場所は南の方に位置する街『ペルセナ』の街中だった。
「信じられるのか?姫様が拐われたのはもっと東の方だぞ」
オリバー様の声にメイア様は
「今は何も手掛かりすらありません。私が行って参ります」
「やれやれ、メイア1人じゃ厳しいだろう。裏メイド隊は其処で全滅してるしな。俺も行くとするか」
大将軍が席を立ち上がる。
「ま、まま、待って下さい!私が同行します。夜飛べるグリフォンはあと2体です。私とメイアさんで見てきます(汗)」
「サツキサン。お姫様がいる建物と中の様子を表示して」
「イエス、マスター。画像出します」
サツキサンの画面に3Dワイヤーフレーム的な立体画像の建物と中の人が写し出された。
建物は2階建てで、1階のリビングに3人、2階の部屋に1人、廊下に2人写っている。
「2階のこの人がお姫様ですね」
「…………」
メイア様は画面に釘付けになっている。周りを見ると皆さんも釘付けだった。
「サツキサン。お姫様の状態を確認したいからズームして」
「イエス、マスター。リアル画像表示が出来るようになりましたが切り替えますか?」
「え!そんな事も出来るようになっちゃたの?」
「イエス、マスター。世界中の魔法粒子とリンクしています。色、熱、振動含め全てがマスターの瞳の中です」
「振動って事は音声も?」
「今回は距離が遠い為、音声は拾えません」
「成る程。じゃあ、映像表示の方お願い」
「イエス、マスター。お姫様の映像に切り替えます」
サツキサンの画面には、暗い部屋でベッドの上に横たわる、綺麗なお姫様が写し出された。ロープとかで縛られていないし、怪我も無さそうだ。眠らされてるって感じだった。
「姫様!」
メイア様が大きな声で叫ぶ。
「ら、ライト様。此れはいったい……」
「今のお姫様の状況です。お怪我とかは無さそうですね」
「お前、いったい何者だ?」
オリバー様が驚きの顔で俺を見ている。
「れ、レベルGクラスの冒険者です(汗)」
「何~?レベルGクラスなんて最弱じゃないか、っていうかGクラス冒険者なんて聞いた事ないぞ」
「ガハハハ!面白いな。ライトと言ったか。気にいったぞ!」
大将軍の笑い声の中、部屋の扉が開いた。
「何を笑っておる!アルフィーナは見つかったのか!」
物凄く威厳のありそうなお方が入って来ましたよ?
「国王!」
オリバー様が驚きの声をあげる。
「陛下、姫様の居所が今わかりました」
宰相様が国王様に応対する。
「何処だ!何処におる!メイアは何を見ている!ア、アルフィーナではないか!何故この中にアルフィーナがいる!どうなっているのだ!」
「こ、国王様」
俺は超ビビりながら国王様に説明をする。
「この画像は現在のお姫様の状況です」
俺は画面を摘まんで少し小さくし建物を写しだす。
「お姫様は現在この建物内に捕らわれています。サツキサン、地図に切り換えて」
「イエス、マスター」
画面は地図とお姫様の光点に切り替わる。
「お姫様は此処、ペルセナの街に連れ去られていました」
国王様は『?』の顔になっていた。
「何がどうなっている!全く分からんぞ!」
「陛下、落ち着いて下さい」
大将軍が助け舟を出してくれた。
「此処にいる全員が、其処にいるライトのやっている事が理解出来ないんです。しかし姫様がペルセナにいる事は分かった。だから救出に行く。今は其れでいいでしょう。オリバー、メイア、直ぐに行けるな!」
「「はい!」」
「ライト、お前も付いていってくれ。お前がいれば姫様は100%救出出来る」
「は、はい、大将軍様!」
こうして俺とメイア様、オリバー様でお姫様救出作戦が開始された。
ちなみに俺はメイア様の後ろに抱き付く形でグリフォンにタンデムした(ムフ♥)
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【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
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ユーヤのお気楽異世界転移
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