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第一章
第17話 魔人国侵攻阻止作戦 前編
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お姫様は無事にお城にたどり着いたようだ。国王様と王妃様に迎えられたお姫様は、自室で静養されているとメイア様が教えてくれた。
俺は昨夜使われた会議室で、今回の事件について昨夜の面々で話しあいをしていた。
「この光の点が犯人って事か」
大将軍がサツキサンの画面を見ながら呟く。
「魔人国首都に向かってますな」
宰相様が行き先を予測した。
「今回の事件は魔人国絡みって事で確定ですね」
オリバー様の言葉に俺が続いた。
「皆様に見て貰いたいものが有ります。サツキサン、魔人国首都周辺の画像を」
「イエス、マスター。」
全員が其の画像を見る。
「なんだとー!」
「マジかよ」
「………」
「現在周辺の部隊を合わせると約3万の兵力になります」
「魔人軍3万……」
「くそ!戦争をする気か!」
「姫様誘拐はこの為か!」
「オリバー様。それも1つの可能性ですが、もう1つ我が国とバルミスラ国との友好関係の阻害という一面が有ります」
「友好関係の阻害?」
「まず男Aの素性ですが、魔人国密偵部隊に所属するハリザイという者でした。彼の家を索敵調査した結果、次の密書が見つかりました。サツキサン、密書の文面を表示して」
サツキサンが表示した密書には、事件の真相が書かれていた。姫様の外交における復路での誘拐によるバルミスラ国との友好関係の阻害、姫様誘拐後はバルミスラ国内に犯人を仕立て更なる関係の悪化、我が国内の魔人国間者によるバルミスラ国との戦争画策、この事件に関係する我が国とバルミスラ国の関係人物等々……。
全員が息を飲んで文面を読んだ。
「姫様を巻き込むとはあの禿げ魔人国王!許しません(鬼目)」
メイア様が怒りの形相です……。
「完全にやる気じゃねえか!」
「メイア、国王を呼んで来てくれ」
「カイゼス様。了解しました」
カイゼス大将軍はメイア様に指示をくだした。
しばらくして国王様がいらっしゃった。
「今度は何事が起きた」
国王様の問いに宰相様が答える。
「陛下、此度の姫様誘拐は魔人国の侵攻作戦の一環であった事が分かりました」
「其れはどういう事だ」
宰相様が今までの経緯を説明した。
「なんということだ。ならば迎え撃つしかあるまい。兵力はいかほど必要になる」
「最低でも5万は必要かと…」
「いや、足りないな。彼奴ら膂力が半端ない。此方が民兵ならば3人で当たらないと勝てない。ざっと8万は必要だろう」
「揃うのか?」
国王の問いにカイゼス様が答える。
「揃えるしかないでしょう。農夫もかき集めての総力戦になりますが」
「あ、あの……」
俺は文をわきまえず口を挟んだ。
「戦わない方法は無いのですか?」
「無理だな。和解は有り得ない。王女の誘拐事件を起こされ、其処で更に和解条件として、此方の領土をくれてやる等とは、我が国の誇りにかけて絶対に出来ない事だ」
カイゼス様が仰る事は最もだ。しかし俺は……。
「お、俺…私は戦争で多くの命を失う事と、国のプライドがイコールである事に、納得ができません。私の世界は、行き過ぎた国家間のプライドで世界の全ての国、全ての人々が終焉を迎えました……。もし回避出来たなら……。
こ、国王様。もし私に此度のお姫様救出で恩賞が頂けるなら、1日だけ時間を頂けませんでしょうか。戦争を回避する事を考える時間を下さい!」
俺は国王様に頭を下げた。
大将軍様が、宰相様が、国王様に向け相槌を打つ。
「ライトとやら。そなたの活躍は宰相から聞いておる。良かろう。お主に1日の時間をやろう」
「あ、ありがとうございます。で、では私は此にて失礼します。行こう!サツキサン!」
俺はサツキサンを手に取り退室した。考えろ!考えるんだ!戦争は絶対にダメだ!
◆
「ライト様。此方にいらっしゃったのですか」
俺は城内の廊下にあったベンチに腰掛けサツキサンと奮闘していた。
「メイア様」
「ライト様は戦争がお嫌いなのですね」
「はい。大嫌いです。両親も妹も戦争で亡くしました。大国の身勝手なプライドが、世界を終わらせたのです。今回もし戦争になったら、俺みたいな気持ちを持つ子供達が沢山出来てしまう。戦争で死にたくない。戦争で家族を失いたくない。俺みたいな一般人はそう思っていると思います。だから……」
「そうですね。戦争で得るものなど何も無い。私もそう思います(微笑み)」
「ありがとうございます。メイア様」
「何か良い策は見つかりましたか?」
「方向性は決まりました」
「どの様な?」
「魔人国国王をピンポイントに狙います。と言っても暗殺とかはしない方向で。暗殺だと結局怨恨が残るので、一時しのぎにしかならない。もう少し違う角度からのプレッシャーをかけられないか模索中です」
「成る程。面白いですね」
「分かったことが幾つか有ります。
若い頃は大分女遊びが派手でしたが、結婚後は成りを潜めています。理由はお妃が嫉妬深い方で、他の女性を全く認めない様です。国王が手を出した女性は全員城から追い出されています。
後は6歳になる息子を溺愛しています。息子の誘拐も考えましたが、此れは最後の手段でしょう」
「マスター。面白いものが見つかりました。国王に使えているメイドの日記です」
「内容は?」
「イエス。マスター。日記にはこう書かれていました。『あの晩に……』」
サツキサンが日記を読み終わった。
「アハハハ。ヒヒヒヒ~。腹痛ェ~!可笑し過ぎ~!笑い死ぬ~!」
メイア様もグッとこらえて笑いを我慢していたが。
「プッ。アハハハ~。無理です~。耐えられません~。アハハハ」
暫く爆笑タイムが続いた。俺は腹を抑え
「メイア様。行けそうです。協力して頂けませんでしょうか?」
「ライト様。勿論協力致します」
「ありがとうございます。戦争は絶対阻止させます!」
其の晩はお城に泊まることとなった。夜中に確認する事があったからだ。
「お茶が入りました」
「ありがとうございます。メイア様」
俺とメイア様は城の一室で、テーブルにサツキサンを置き画面を眺めていた。リアル画像は気持ち悪いので、2D画像のドット画像で魔人国国王を観察していた。勿論サツキサンに詳細は押さえてもらっている。
今の所、家族の夕食でニンジンを残した。トイレが長い等のパンチが弱いネタだけだ。
魔人国国王は家族3人でベッドで寝るようだ。
しばらく動きが無かったが遂に動き出した。
魔人国国王はベッドから出て寝室を抜け出した。廊下を小走りで進んで行く。しばらくしてメイドのいる部屋に入っていった。いつもの事なのだろう。
しかし今晩は多分偶然超ラッキーな事に、イレギュラーが発生していた事に魔人国国王は気付いていない。なんと彼の息子が跡を付けていたのだ。
扉を開けて中に入った魔人国国王、其の後に扉から中を覗く6歳の息子。暫くして走って逃げる6歳の息子。ベッドに入り布団を頭から被った6歳の息子。使える!
魔人国国王は『メイドの日記』通りに脱衣後僅か1分で情事は終わり、着衣した後にベッドに戻った。早い!早いよ魔人国国王さん!
俺とメイア様はニヤ~と悪い目をしていた。
俺はサツキサンからの情報を併せ、メイア様に魔人国王に宛てた手紙を書いてもらった。
「後はこの手紙をどうやって魔人国国王本人に渡すかが問題ですね」
「ライト様。其れは私達裏メイド隊にお任せ下さい。明日の朝には魔人国国王の手元に手紙をお届け致します」
「えっ、そんなに早く!」
「はい。其れでは早速行動致します」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
「はい。我が主よ」
メイア様はそう言って部屋を出ていった。…………。今、主って言ってた?聞き間違いか?
俺は昨夜使われた会議室で、今回の事件について昨夜の面々で話しあいをしていた。
「この光の点が犯人って事か」
大将軍がサツキサンの画面を見ながら呟く。
「魔人国首都に向かってますな」
宰相様が行き先を予測した。
「今回の事件は魔人国絡みって事で確定ですね」
オリバー様の言葉に俺が続いた。
「皆様に見て貰いたいものが有ります。サツキサン、魔人国首都周辺の画像を」
「イエス、マスター。」
全員が其の画像を見る。
「なんだとー!」
「マジかよ」
「………」
「現在周辺の部隊を合わせると約3万の兵力になります」
「魔人軍3万……」
「くそ!戦争をする気か!」
「姫様誘拐はこの為か!」
「オリバー様。それも1つの可能性ですが、もう1つ我が国とバルミスラ国との友好関係の阻害という一面が有ります」
「友好関係の阻害?」
「まず男Aの素性ですが、魔人国密偵部隊に所属するハリザイという者でした。彼の家を索敵調査した結果、次の密書が見つかりました。サツキサン、密書の文面を表示して」
サツキサンが表示した密書には、事件の真相が書かれていた。姫様の外交における復路での誘拐によるバルミスラ国との友好関係の阻害、姫様誘拐後はバルミスラ国内に犯人を仕立て更なる関係の悪化、我が国内の魔人国間者によるバルミスラ国との戦争画策、この事件に関係する我が国とバルミスラ国の関係人物等々……。
全員が息を飲んで文面を読んだ。
「姫様を巻き込むとはあの禿げ魔人国王!許しません(鬼目)」
メイア様が怒りの形相です……。
「完全にやる気じゃねえか!」
「メイア、国王を呼んで来てくれ」
「カイゼス様。了解しました」
カイゼス大将軍はメイア様に指示をくだした。
しばらくして国王様がいらっしゃった。
「今度は何事が起きた」
国王様の問いに宰相様が答える。
「陛下、此度の姫様誘拐は魔人国の侵攻作戦の一環であった事が分かりました」
「其れはどういう事だ」
宰相様が今までの経緯を説明した。
「なんということだ。ならば迎え撃つしかあるまい。兵力はいかほど必要になる」
「最低でも5万は必要かと…」
「いや、足りないな。彼奴ら膂力が半端ない。此方が民兵ならば3人で当たらないと勝てない。ざっと8万は必要だろう」
「揃うのか?」
国王の問いにカイゼス様が答える。
「揃えるしかないでしょう。農夫もかき集めての総力戦になりますが」
「あ、あの……」
俺は文をわきまえず口を挟んだ。
「戦わない方法は無いのですか?」
「無理だな。和解は有り得ない。王女の誘拐事件を起こされ、其処で更に和解条件として、此方の領土をくれてやる等とは、我が国の誇りにかけて絶対に出来ない事だ」
カイゼス様が仰る事は最もだ。しかし俺は……。
「お、俺…私は戦争で多くの命を失う事と、国のプライドがイコールである事に、納得ができません。私の世界は、行き過ぎた国家間のプライドで世界の全ての国、全ての人々が終焉を迎えました……。もし回避出来たなら……。
こ、国王様。もし私に此度のお姫様救出で恩賞が頂けるなら、1日だけ時間を頂けませんでしょうか。戦争を回避する事を考える時間を下さい!」
俺は国王様に頭を下げた。
大将軍様が、宰相様が、国王様に向け相槌を打つ。
「ライトとやら。そなたの活躍は宰相から聞いておる。良かろう。お主に1日の時間をやろう」
「あ、ありがとうございます。で、では私は此にて失礼します。行こう!サツキサン!」
俺はサツキサンを手に取り退室した。考えろ!考えるんだ!戦争は絶対にダメだ!
◆
「ライト様。此方にいらっしゃったのですか」
俺は城内の廊下にあったベンチに腰掛けサツキサンと奮闘していた。
「メイア様」
「ライト様は戦争がお嫌いなのですね」
「はい。大嫌いです。両親も妹も戦争で亡くしました。大国の身勝手なプライドが、世界を終わらせたのです。今回もし戦争になったら、俺みたいな気持ちを持つ子供達が沢山出来てしまう。戦争で死にたくない。戦争で家族を失いたくない。俺みたいな一般人はそう思っていると思います。だから……」
「そうですね。戦争で得るものなど何も無い。私もそう思います(微笑み)」
「ありがとうございます。メイア様」
「何か良い策は見つかりましたか?」
「方向性は決まりました」
「どの様な?」
「魔人国国王をピンポイントに狙います。と言っても暗殺とかはしない方向で。暗殺だと結局怨恨が残るので、一時しのぎにしかならない。もう少し違う角度からのプレッシャーをかけられないか模索中です」
「成る程。面白いですね」
「分かったことが幾つか有ります。
若い頃は大分女遊びが派手でしたが、結婚後は成りを潜めています。理由はお妃が嫉妬深い方で、他の女性を全く認めない様です。国王が手を出した女性は全員城から追い出されています。
後は6歳になる息子を溺愛しています。息子の誘拐も考えましたが、此れは最後の手段でしょう」
「マスター。面白いものが見つかりました。国王に使えているメイドの日記です」
「内容は?」
「イエス。マスター。日記にはこう書かれていました。『あの晩に……』」
サツキサンが日記を読み終わった。
「アハハハ。ヒヒヒヒ~。腹痛ェ~!可笑し過ぎ~!笑い死ぬ~!」
メイア様もグッとこらえて笑いを我慢していたが。
「プッ。アハハハ~。無理です~。耐えられません~。アハハハ」
暫く爆笑タイムが続いた。俺は腹を抑え
「メイア様。行けそうです。協力して頂けませんでしょうか?」
「ライト様。勿論協力致します」
「ありがとうございます。戦争は絶対阻止させます!」
其の晩はお城に泊まることとなった。夜中に確認する事があったからだ。
「お茶が入りました」
「ありがとうございます。メイア様」
俺とメイア様は城の一室で、テーブルにサツキサンを置き画面を眺めていた。リアル画像は気持ち悪いので、2D画像のドット画像で魔人国国王を観察していた。勿論サツキサンに詳細は押さえてもらっている。
今の所、家族の夕食でニンジンを残した。トイレが長い等のパンチが弱いネタだけだ。
魔人国国王は家族3人でベッドで寝るようだ。
しばらく動きが無かったが遂に動き出した。
魔人国国王はベッドから出て寝室を抜け出した。廊下を小走りで進んで行く。しばらくしてメイドのいる部屋に入っていった。いつもの事なのだろう。
しかし今晩は多分偶然超ラッキーな事に、イレギュラーが発生していた事に魔人国国王は気付いていない。なんと彼の息子が跡を付けていたのだ。
扉を開けて中に入った魔人国国王、其の後に扉から中を覗く6歳の息子。暫くして走って逃げる6歳の息子。ベッドに入り布団を頭から被った6歳の息子。使える!
魔人国国王は『メイドの日記』通りに脱衣後僅か1分で情事は終わり、着衣した後にベッドに戻った。早い!早いよ魔人国国王さん!
俺とメイア様はニヤ~と悪い目をしていた。
俺はサツキサンからの情報を併せ、メイア様に魔人国王に宛てた手紙を書いてもらった。
「後はこの手紙をどうやって魔人国国王本人に渡すかが問題ですね」
「ライト様。其れは私達裏メイド隊にお任せ下さい。明日の朝には魔人国国王の手元に手紙をお届け致します」
「えっ、そんなに早く!」
「はい。其れでは早速行動致します」
「ありがとうございます。宜しくお願いします」
「はい。我が主よ」
メイア様はそう言って部屋を出ていった。…………。今、主って言ってた?聞き間違いか?
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