異世界で『索敵』スキルが最強なの? お前らの悪事は丸っと全てお見通しだ!

花咲一樹

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第二章

第28話 フローランス領反乱鎮圧作戦 後編

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 宿屋の部屋に俺達は戻って来た。アイシャさんが呆けた顔で俺達を迎えてくれる。

「あんにゃろう!裏があろうが無かろうが直ぐに拘束してやる。それと気になる事があるんだけど」
「如何されましたか?」

「王女の牢屋近くにもう一人捕らわれていた人がいた。見えなかったけどリンドルのはずだ。しかし俺が感じた彼のオーラは緑。つまり平常心なんだ。あんな劣悪な場所に幽閉されたら、なんぼなんでも深緑、心が落ち込んだ色になると思う」

「つまりリンドルも怪しいと?」
「そうなるね。サツキサン、リンドルの画像出して」
「イエス、マスター。画像出します」

 其の画像を見て俺とサツキサンはびっくりした。

「さ、サツキサン?このオヤジは?」
「イエス。マスター。魔人国密偵部隊に所属するハリザイと同一人物です」
「だよね。やってくれるぜ」
「光斗君、知ってる人?」
「こいつはアルフィーナ王女誘拐事件の主犯だ。あの時は逃げられたが、今度は逃がさない」

「今回の事件に於いては物的証拠が有りませんが」
「とりま、こいつの家を物色してみるか。アイシャさん、こいつの家は何処に在るの?……アイシャさん? アイシャさ~ん」

 アイシャさんは呆けた顔でボーっとしている。

 バシッ

 メイアさんがアイシャさんの頭にチョップをした。

「あう」
「アイシャ、何を呆けているのですか?」
「あ、いえ、余りにも展開が早くて何が何やら」
「此れが私達の主、ライト様なのですよ」
「は、はい!(ポッ)」
「あ、アイシャさん、リンドルの館の場所は?」

 俺はサツキサンの画面に表示されているフローランスの街の地図をアイシャさんに見せる。アイシャさんは指を指した。

「ライト様、此処がリンドルの館です」
「よし!サツキサン、家捜しするよ!」
「イエス、マスター」
「索敵!」



「目ぼしい物は流石に見つからないか~」
「ではアルフィーナ様の誘拐事件で検挙しましょう」
「そうだね……」

 残念だが此方の件は検挙後の尋問で吐かせるしか無いようだ。

「マスター。証拠では有りませんが、暖炉の灰の中に、燃やした封書の一部が燃え残っていました。解読は不可能ですがオスカーという名前が残っています」
「オスカーか……。サツキサン、魔人国のハリザイ(=リンドル)の家を家捜ししてみよう。オスカーに関わる何か、若しくは此方事件に関わる何かが見つかるかもしれない」
「イエス、マスター」
「ワールドビジョン!」

 俺とサツキサンはワールドビジョンで魔人国にあるハリザイの家を家捜しした結果、オスカーがハリザイの密偵仲間である事が判明した。俺達は続いてオスカーの調査をする。彼の家にハリザイが宛てた手紙を見つけた。

「よし!此れは証拠になるな。彩月、メイアさん、超距離になるけどこの手紙を確保したい」
「勿論」
「了解しました」

 俺達3人は手を繋ぎ輪を作る。

「「シンクロハーモライズ!」」
「ワールドビジョン」
「テレポート」

 俺達は夜のオスカー邸へ潜入し手紙を確保。返す刀でハリザイ邸の例の密書も確保し宿屋に戻った。

 ガタッ。着地後にメイアさんが膝をついた。

「大丈夫!メイアさん!」
「大丈夫です。ライト様……」
「すみませんメイア様。メイア様の魔力に頼ってしまい……」
「いいのですよ彩月様」
「よし、今日は此処までにしよう」

「駄目です!」
「メイアさん……」
「日が昇ればバルミスラの王女の姿が見えない事が発覚します。そうした場合…」
「何が起きるか分からないか……」
「はい、ライト様。アイシャ、私の代わりにライト様達をサポートしてください」
「了解しました」
「アイシャさん、宜しく頼む。ハリザイとブルンバークを捕縛するよ」
「「はい」」

 ◆

 時間は深夜2時を過ぎていた。
 先ずは熟睡しているブルンバークを両手両足を縄で縛り、猿轡をして難なく確保。転移先を街中にある警備隊詰所にして連行する。

「私達はナイトウイングスの者だ」

 アイシャさんが夜中の詰所の扉を叩き、俺達は中に入る。中には4人の警備兵がテーブルから立ち上がり此方を警戒する。

「ブルンバークを確保した。此方の牢屋にこいつをブチ込んでくれ」

 アイシャさんが引きずっていたブルンバークを床に投げ捨てる。ブルンバークはモガモガともがくが猿轡をされ縛られいるので、抵抗する事は何も出来ない。
 状況に混乱している警備兵だがブルンバークの姿を見て驚嘆する。

「俺はナイトウイングス団長のライト・サクライです。夜分にすみませんが協力してください」
「は、はい」

 警備兵が俺に敬礼をした。

「この男、ブルンバークを牢屋へ。後でもう一人連れて来るから待機していてさください」
「了解しました」

 俺達はブルンバークを警備兵に任せ、詰所を出た後に直ぐ様ハリザイの元へ転移をした。



 ハリザイのいる牢屋に俺達が姿を現す。
 俺達の気配に気付いたハリザイがベッドから跳ね起きる。手にはナイフを持っていた。

「貴様ら何者だ!」

 静かな牢獄にハリザイの声が響く。騒ぎを聞きつけ間も無く看守がやって来るだろう。
 アイシャさんが俺と彩月の前に出て身構える。右手は左腰の剣の柄へ、左手は前に突き出し間合いを取る。
 ハリザイが魔法の詠唱をしていた。
 アイシャさんは無詠唱で魔法を行使する。

「パラライズ!」

 麻痺の魔法をハリザイにかける。
 ハリザイは詠唱を中断し、パラライズの魔法をレジストした。しかしテレビ。

「グワッ!」

 アイシャさんの二重柄に仕込まれていたナイフがハリザイの右肩に突き刺さり、彼は手にしていたナイフを落とした。
 更に一瞬の間でアイシャさんはハリザイとの距離をゼロにして喉元に剣を突き付け動きを封じる。
 身動きを封じられたハリザイに、アイシャさんは左手に握られていた小さな石を目の前で投げつけた。石が当たった瞬間にバチッと音と共にハリザイは痙攣しその場に倒れた。

「す、凄い」

 一瞬の攻防に俺は息を飲んだ。
 此れが裏メイド隊の実力……。瞬きの間に全てが終わっていた。

「アイシャさん、凄いです!」

 俺は驚嘆の思いでアイシャさんに行った。

「こいつが一流の間者で助かりました」
「えっ、どういう事?」
「最後に使った落雷石をレジストされたら、あたしはこいつを殺していました。こいつはあたしの次の一手を理解して落雷石をレジストしなかったのです」
「一瞬でそんなやり取りが……」

 俺達はハリザイを縛り、今度は直接警備隊詰所内に転移をした。

 ◆

「お帰りなさいませライト様」
「メイアさん」

 メイアさんが警備隊詰所に来てくれていた。

「お怪我などは有りませんでしたか?」
「アイシャさんがいてくれて助かったよ。俺と彩月の二人で行ってたらマジヤバかった」
「アイシャがお役に立ちましたか」
「命の恩人です。ハリザイを一瞬で倒してくれたよ。ありがとうアイシャさん」
「い、いえ、私は任務を全うしただけで……(赤面)」
「そうですか。頑張りましたねアイシャ。ご褒美です」

 そう言ってメイアさんはアイシャさんの頭をナデナデする。ご褒美ってそれだけ?

「えへへ~(デレ~)」

 アイシャさんはかなりご満悦だよ?メイアさんのナデナデはメイアさんに認められたナデナデなんだね(微笑み)
 ハリザイを牢屋に入れるよう警備隊に頼み俺達は宿屋に戻った。



「やれやれ、一先ず此れで一安心かな」
「此度もライト様のご活躍で早期解決と成りそうですね」
「ねぇ、光斗君は前の事件もこんな感じだったの」
「イエス、彩月様。ライト様とサツキサンにかかればこんな事件は早期解決物件です」

「今回は彩月がいなかったら厳しかったよ。手伝ってくれてありがとう(笑顔)」
「ううん。私の力が光斗君の力に慣れて凄く嬉しいよ(微笑み)」
「それでライト様。あの者達は如何致しますか?」
「そうだね(笑) ブルンバークはともかくハリザイはこの街ではリンドルとして名の通った官僚だ。それなりにみんなに納得して貰わないといけない。だから……」

 ◆

 翌朝、俺達は領主ブルンバーク邸の正門前にいた。時間は朝8時。レイムレット卿も兵士100名を連れて到着していた。

「初めまして。ノワールの塔塔主に先日任命されましたライト・サクライです」

 俺はレイムレット卿に挨拶をした。伯爵位を持つレイムレット卿は白髪のおじいさんで、オリバーさんのおじいさんにあたる人だ。

「レイムレットじゃ。サクライ卿の事はオリバーからの手紙で聞いておったが、此れはどういう事かの?」

 正門前には多くの街人が集まっていた。ブルンバークの公開詰問が正門前で行われる事を、アイシャさんに頼み街中に知らせてもらっていた。
 ブルンバークとリンドルを乗せた馬車が正門前に到着し、両手を紐で縛られたブルンバーグが警備隊により馬車から下ろされる。
 街人達はひそひそとざわめく。

「ブルンバークだ」「いつ捕まったんだ?」「街を騒がせやがって」

 続いてリンドルが下ろされる。街人達は大きくざわつき出した。

「おい!リンドル様だぞ」「何でリンドル様が」「どういう事だ」

 警備隊が二人を正門前のござに座らせる。
 ブルンバークはぶつぶつと呟いている。

「何でこうなった…。何でこうなった…。何でこうなった……」

 リンドルはぶっきらぼうに大声を上げる。

「貴様か!儂にこんな事をしてタダですむと思うなよ!」
「誰に向かって吠えてんだ!ゴラー」

 アイシャさんがハリザイを威嚇してるよ?
 俺は冷たい声で言う。

「黙れ。話は後で聞いてやる。先ずはブルンバーク!お前の罪状を言い渡す。
 1。アルフィーナ王女誘拐事件に荷担しバルミスラ騎士団の馬車に細工をした件
 2。更に反旗し我が国に騒乱を起こした件。
 3。バルミスラ国王女を誘拐した件。
 そして俺が一番許せないのは、誘拐した王女をあんな劣悪な牢屋に閉じ込め、いたいけな少女の心を傷付けた事だ!
 言い逃れしたい事は有るか?」

 ブルンバークは俯き相変わらずぶつぶつ言っている。

「ではリンドル。先ずはお前の主張を聞いてやる。言ってみろ」

「言ってみろだと!儂は其処のブルンバークを止めようとしたのだ!しかしあの臭い牢屋に押し込まれ煮え湯を飲まされていたんだぞ!」

 街人からは「お可哀想に」とか「なんて酷い仕打ちを」とか聞こえてくる。

「他に言いたい事は有るか?」
「儂は領民にも優しく接して来た!」

 街人から一斉に大きな声が上がる。

「そうだ、そうだ!」「リンドル様は良い人です!」「リンドル様は悪くない!」

 街人の声にリンドルの顔はニヤニヤしていた。

「他には?」
「他にも何も儂は悪い事は一切やっとらん!そんな儂を捕まえ、縄に縛り、大衆の前で恥を欠かせおって、貴様こそ此の儂が断罪してくれる!さっさと縄をとけ!小僧!」

 街人達も俺に向かってブーイングを飛ばして来た。まぁ予想通りだけどね。

「黙れ!貴様が何処の誰で何を企てていたか、丸っと全部お見通しなんだよ!」

 俺の大きな声で一斉に静まり返る。

「リンドル。貴様の罪はブルンバークを使い今回の事件を起こさせた事」
「何を言ってる!」
「更にはアルフィーナ王女を魔人国へ誘拐しようとした大罪」
「…………」
「心辺りが有るだろ?リンドル。いやさ魔人国秘密諜報員のハリザイ!」

 ハリザイは青い顔で俺を見ていた。

「……しょ、証拠は在るのか?」

 俺は懐から例の密書とオスカーに宛てた手紙をハリザイの目の前に叩きつける。

「此れが証拠だが、何か言いたい事は有るか?」
「ば、ば、馬鹿な……。な、何故、此れが此処に……」
「アルフィーナ王女誘拐の時は森の中で逃げられたが、今度は俺の勝ちだな(ニヤリ)」
「お、お前はあの時の……」

 ハリザイは俺の顔を思い出したようだ。

「思い出してくれて嬉しいよ。さてもういいだろう。お前達の処分については………………レイムレット卿、お願いします(汗)」

 レイムレット卿は突然振られてビックリしているよ?

「儂か! 此処まで盛り上げて最後に振るか?」

 街人達も笑い出した。勝った!俺の狙いはリンドル逮捕の正当性を知って貰う事だった。笑い声が出たという事はみんな納得した証拠だ。

「す、すみませんレイムレット卿。私は法律に関しては不勉強でして~。何卒ご采配を~(汗)」

 頭をポリポリかく俺に街人達からの笑い声が聞こえてきた。

「仕方ないの~。
 ブルンバーク!お前は多くの大罪を犯した。極刑に処する。
 リンドル!お主は魔人国の人間である事から処分は外務大臣に預ける。
 お前達二人は王都迄連行した後に裁かれる事となる。
 舘内におる兵士達は、直ちに武装をとき投降せよ。百叩きで許してやる。以上じゃ」

 俺は拍手をした。それを機に街人達からも大きな拍手が沸き起こる。

 此れにてフローランス領反乱鎮圧作戦コンプリートだ!


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