異世界で『索敵』スキルが最強なの? お前らの悪事は丸っと全てお見通しだ!

花咲一樹

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第二章

第42話 フローランス領捕物帖 前編

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 聖竜討伐戦を終え3日たった其の晩、俺の執務室に新藤君と如月君を呼び、此の世界の事について話し合いをした。

「世界地図を見る限り、そう代わり映えはしないよね」

 サツキサンの画面に、此の世界の世界地図が映っている。

 ラグナドラグーン王国は、現世で言うところの東欧、スロバキアとハンガリー辺りに位置している。国土の大きさは北海道より少し大きい位いだ。

 南に魔人国、東にバルミスラ、西にはタイゼカラリアが有り、北にはラクリマスとエジアナの二国が有る。此処ら辺は小国郡で固まっているが、西方にはガレリア王国、北方にはマドラキア帝国、遥か東方にはチェイリン皇国等の大国が存在している。

「日本が有るんだな」

 如月君が寂しそうな顔で呟く。日本は武帝城国という名の国になっていた。

 新藤君がサツキサンに幾つかの質問をした。

「……。なるほど。微妙だな」

「転移して来たのが俺達3組だけってのは裏がありそうだよね」
「だな。偶然なら他のクラスや見知らぬ人も飛ばされているはずだもんな」

 如月君も考えは同じようだ。

「此の世界の誰か、若しくはクラスメイト、或いは神ってところか」

 新藤君のクラスメイト発言にはビックリだ。

「サツキサン、クラスメイトの可能性は有るのかな?」
「イエス、マスター。現時点ではゼロかと。但し未来に於いては可能性を否定出来ません」
「なるほど、未来か」

 新藤君が妙に納得しているよ?

「未来の誰かが俺達を転移させたって事?」
「新藤、流石にタイムパラドックス的に無理がないかな?」
「其のタイムパラドックスをクリア出来れば可能性は有るってぐらいだ。今はまだ情報が足りない。余り限定した考えを持たずに情報を集めよう」
「そうだね」「そうだな」

 俺達が此の世界に来た謎はワールドビジョンを持ってしても分からない事だらけだ。今夜はとりま此れでお開きとなった。

 ◆

「ライト~、たまには遊びに出掛けたいのじゃ~」

 朝食をみんなで囲んでいた時にルミナ様がぼやき始めた。

「ライトやセシリと一緒にいて毎日が楽しいが、たまには何処かに遊びに行きたいのじゃ~」

 みんなと陽煌宮で暮らし始めて3週間、此の世界に来てから約1ヶ月が経とうとしていた。楠木会による複製若しくは類似品、代用品開発は進み、必要最低限の物は何とか揃い始めた。
 コンタクトレンズなどはスライムの皮を代用するなど微妙な物も有ったり無かったり(汗)。女性下着や生理用品は裏メイド隊にも人気で、楠木君は鼻血を流しながら嬉々として作ったとか?

 ちなみに眼鏡フレームは普通にアルミやチタンの合金を使っている。此の世界ではドワーフ族が金属製錬魔法を使うので、鉄、アルミ、チタン、マグネシウム等の自然界に多くある金属、非鉄金属は比較的流通していた。金も魔法で製錬するので現世の歴史で習った鉛中毒とかは問題ないらしい。

「其れじゃフローランス領に一緒に行く?」
「「行くー!」」

 ルミナ様とセシリちゃんが大きな声で返事をした。

 フローランス領の統治をナタリアさんに依頼していた。統治については領主不在でも行政が滞りなく行えるよう三権分立的な政治形態と議会制の導入、自治会の設立等をナタリアさんには提案している。

 この世界の国は君主制、封建主義と言った政治形態だ。流石に共和制迄は行かないが民主制は取り入れたいと思っていた。

 ナタリアさんに話したら「凄く興味深いわ」とやたらと食い付きが良くてヤル気満々だった。承認限度額を各責任者に割り振って行けば多少の案件は多数決でサクサク解決出来るはずだ。難解な案件や揉める案件は領主預りにする事で領主権を主張する。

 ナタリアさんは「面白いわね。効率良く楽に政治をしつつ、其の品質は落とさない。手綱さえ確り握っていれば暴動も起きない。アレもコレも試してみたいわね。ンフ」と言っていた。最後の「ンフ」は気にしないしよう。

 ナタリアさんから準備が整ったので来て欲しいとの連絡があった。また、来週の収穫祭に合わせて、俺の新領主歓迎パーティーも行うとの事だ。収穫祭に合わせたのは経費削減の為だとか(苦笑い)。

 そんな訳でフローランス領に行くのでルミナ様の意見も尊重し、みんなで行く事となった。

 ◆

「お、御館様!いつ此方に!」

 俺、彩月、アルフィーナ王女、ルミナ様、セシリちゃん、メイアさん、アイシャさん、オリヴィア様、葵さん、茜音さん、新藤君、如月君、白山先生、オリバーさん(泣いてせがまれた)の大所帯で、フローランス領主館にテレポートで飛んできた。

「ゴットンさん、暫くお世話になります。ちょっと大所帯だけどよろしくお願いします」

 ゴットンさんは此の館の先々代領主から執事長をしているお爺さんだ。ゴットンさんは俺の連れを見て更に慌てて、両膝を付いて平伏したよ?

「あ、アルフィーナ王女様!な、何故このような処に!」
「ゴットンさん、顔を上げて下さい」

 アルフィーナ王女も慌ててゴットンさんの肩に手をあてた。

「私はライト様の付き添いです。暫くお世話になりますね」
「ははー!」

 ゴットンさんは更に頭を下げちゃったよ(苦笑い)。

「ところでゴットンさん、ナタリアさんは来てるのかな?」
「いえ、ナタリア様は買い物が有るとかで、昨日グリフォンに乗ってお出かけになられました」

 ナタリアさんは自由人だ。フローランスにも週2、3日ってとこだろう。

 今日は予定を変更して街に遊びに出る事とした。

「この人数で動いたら目立つだろう」

 新藤君の意見により2チームに分ける事とした。怨みっこ無しの『おもてうら』でチーム分けをする。ちなみに『おもてうら』とは手のひらの表か裏を出して2組に分ける手法だ。因みに白山先生とオリバーさんは二人でデートを楽しんでもらうため除外した(笑)。

「「「あった人~とあった人」」」

 3回目にしてちょうど2組に別れた。
 1班は俺とルミナ様、セシリちゃん、葵さん、オリヴィア様、如月君。
 2班は彩月、アルフィーナ王女、メイアさん、アイシャさん、茜さん、新藤君。
 護衛役が此方は葵さんだけだが、オリヴィア様も素で強いので大丈夫だろう。アルフィーナ王女が俺と別れたのが寂しいのか涙目だが彩月と茜音さんがなだめていたよ?

 ◆

 右手にセシリちゃん、左手にルミナ様と手を握りフローランスの街を歩いていた。後ろのオリヴィア様、葵さん、如月君は手を握ってはいないよ。

 フローランスの街並みは王都とあまり変わらないが、石畳が彼方此方にヒビが有り整備状態は好ましくない。此の分だと上水道や下水道も似たようなものだろう。ナタリアさんと要相談だな。

「ウワッ」
 急に左側に大きく引っ張られた。

「見るのじゃライト!可愛い服が飾ってあるのじゃ」

 次は右手だ。

「見て見て、ライトお兄ちゃん!可愛い靴が沢山有るよ」

 俺はあっちに振られ、こっちに振られ街中を散策していた。


 前回来た時のブティックにも立ち寄った。

「こんにちは~」

 お店の扉を開けて中に入る。お客は俺と同年代ぐらいの女の子が二人だけだ。

「いらっしゃいま……!ライト様!」

 店員のお姉さんが俺を見てびっくりしている。お客の女の子達も其の声で俺の方を見た。

「指輪の件、ありがとうございました。ホント助かりました」
「お、お役に立てて光栄です~。お陰様でエンゲージリングのお店って評判が広がり繁盛してます~(ニコニコ)」
「アハハ。其れは何よりです。中を少し見させて下さい」

「どうぞ、どうぞ」と俺達を中に通す店員のお姉さんが、サラサラな黄金の髪を靡かせ歩くオリヴィア様を見て突如固まった。

 オリヴィア様は何しろ目立つ。此処に来る迄も、道行く人がオリヴィア様を見てびっくりしていた。アルフィーナ王女も綺麗なゴールデンブロンドだが、オリヴィア様の髪はまさに純金の輝きを持っていた。しかも瞳の色も金色だ。

 お客の女の子達もオリヴィア様に釘付け状態だ。
 当の本人は何処吹く風だ。ドラゴンハートは伊達じゃない。
 ルミナ様、セシリちゃん、オリヴィア様も目をキラキラさせてアクセサリーや可愛いリボンや宝石等を物色している。

「葵さんは見なくていいの?」
「私は着飾るのがあまり得意ではないので」
「此れなんか似合うんじゃない」

 葵さんは少し照れながら言うと如月君が然り気無くネックレスを選んでいた。

「わ、私は大丈夫です(汗)。茜音さんに何かプレゼントを選んでみては(汗)」
「茜音にはこっちのが似合うかな」

 如月君がピンクの飾り石が付いたネックレスを選んでいたよ?茜音?アレアレ?そうなの?

「如月君と茜音さんってそうなの?」
「そうだよ?」

 如月君にさらりと言われた。葵さんは知っていたようだ。へ~、そうなんだ~(汗)。

「いつから?」
「此方に来て、孤児院にいた時辺りからかな?姫川さんが光斗の事で悩んでいるって相談されて。しかしあの難攻不落の姫川さんが光斗だったってのは驚いたけどね」

 あう。俺もびっくりだったよ。

「ライト~。見ろ見ろ綺麗じゃろ~」

 ルミナ様は指全部に指輪をしているよ?ゴージャスルミナ様バージョンだ(汗)。

「ライトお兄ちゃん、ほらほら、あたし綺麗~(ニコニコ)」

 セシリちゃんは口の周りに口紅塗りまくりだ(汗)。口裂けセシリちゃんバージョンだよ(汗)。

「アハハ、二人とも何事もやり過ぎはダメだよ」

 あれ?オリヴィア様は~~~あう(涙)。
 リボンやヘアピン、コサージュに簪、極めつけはウサギのカチューシャを綺麗な黄金の髪の毛に着けたオリヴィア様はルンルンしながら更にシュシュを着けようとしていた。

「どうだろうかライト。可愛いか!」

 黄金の瞳を輝かせながら微笑むオリヴィア様を、俺達は残念なドラゴンを見る目しか向けられなかった……。

 結局一人一つアクセサリーを買い店を後にした。如月君に突っ込まれアルフィーナ王女と彩月、メイアさんのお土産も買ったよ(汗)。
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