異世界で『索敵』スキルが最強なの? お前らの悪事は丸っと全てお見通しだ!

花咲一樹

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第三章

第55話 決戦 帝国選挙 後編

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 投票日の早朝は投票用紙の束を持ち、24箇所の教会施設に二人一組で散って貰った。

 俺とサツキサンは朝から索敵で教会本部を監視する。予想通りに清浄石の偽物を用意していた。其の偽物は神官ではなく私服の男女に渡されていた。

「なるほどな」「なるほど(ニヤ)」「なるほどですね」「なるほどね(クスッ)」

 新藤君、如月君、メイアさん、ナタリアさんは「なるほど」と呟いたよ?

「何がなるほどなの?」

 俺の問いにメイアさんが答えてくれる。

「はい、ライト様。彼等は帝都民に混ざり列に並び、自分の番が来た時に清浄石を入れ替えすると思われます」
「なるほど(苦笑い)。それじゃ交換出来ない様にすればいいね」
「早速、彼等を捕らえますか?」
「其れだとキリがない」

 彼等を捕らえても、次の『彼等』が現れる可能性がある。

「笠原君、各教会で本物の清浄石が設置されたら台と清浄石を融合して取れない様にしてくれ。彩月と岡本さんで笠原君を各場所に連れて行ってほしい」
「「「了解」」」

 ナタリアさんがクククと笑っている。

「見たいわね。彼奴が清浄石を取ろうとして取れない間抜けぶりを、是非見たいわね」
「ドッキリカメラばりに面白しろそうだな」
「流石はライト様。斬新なお考えです(クスッ)」

 いやいや、そういう狙いじゃないんだけど……(涙)。
 こうして帝国初となる皇帝選挙が始まった。

 ◆

 各教会では朝から多くの人々が列を作っていた。ざっくり千人は並んでいる長蛇の列だ。各教会には5~10の投票箱が用意してある。有権者約4万人が投票終わる迄には日も暮れる可能性がある。

 因みに立候補者にはカトレア姫、教会支持のルバルト皇子に加え、軍部支持のカリス皇子もいる。デリアンデス元帥は俺達に選挙戦の敗北宣言をしている。しかし、全ての軍幹部が納得している訳ではない事から、選挙で負ける事で納得させる必要があったみたいだよ?

 投票が始まり1時間。投票は概ね順調に進む中、偽清浄石を持った男が現れた。男が清浄石を交換しようと石を持ち上げるが、台に融合されている為に全く動かない。期待通りのリアクションありがとう!

「アハハ、頑張れ~」
「気合い入れないと取れないわよ」

 サツキサンの画面を見ている如月君とナタリアさんが届かない声援を送る。そうこうしてると怪しい行為が目立ち警備していた兵士に捕まっていたりした。
 そんな訳で各教会で同じ様にすげ替え犯はお縄となった。懐に偽清浄石を隠し持っているのだから言い逃れも出来ないよね(笑)。

 其の後に“投票箱を運ぶ馬車の襲撃”未遂事件、“教会で暴れて妨害しよう”未遂事件、更には“教会放火”未遂事件等々を数々防ぎ、投票は夜の7時頃には終了した。

 投票箱は帝国城に運ばれ厳重な警備のもと一夜をあかし、翌日朝から開票作業となった。各陣営から50人づつ出し、帝国城内の大広間にて作業が行われた。不正を働きそうな邪な者も当然いたが、其処にはダブルチェックやトリプルチェックによる開票作業を行い、改算を防ぎながら全ての開票は夕方に何とか終了した。

 ◆

 日も暮れ、帝国城には発光石による灯火が灯る中、空位の玉座を前にカトレア姫、カリス皇子、ルバルト皇子が並んで立っていた。カトレア姫はニコニコしていたが、カリス、ルバルト両皇子は疲れた顔をしている。特に教会陣営のルバルト皇子のげっそりした顔には悲哀さを感じる程だ。ギラン大司教の野望に巻き込まれた被害者と言っていいだろう。


 俺はナタリアさん、エリナさん、新藤君、如月君、彩月、葵さん、メイアさん、アイシャさん、キャサリンさん、及びナイトウィングス10人と一緒に、カトレア姫の後ろに三列で並んでいた。
 同じ様にカリス皇子の後ろにはデリアンデス元帥を筆頭に軍幹部含む軍人が約30人が、ルバルト皇子の後ろにはギラン大司教を筆頭に教会幹部含む神官が約30人並んでいる。

 皆が揃うタイミングで空色の法衣を纏った白髪の老人3人が玉座の段にある脇の袖から出てきた。空色はイルフィニス女神の色、其の色を基調とした法衣を纏えるのは教皇と6人の枢機卿だけであるとか?
 枢機院は聖イルフィニス教会の総本山、聖イルフィニス大聖堂の教皇に使える組織である。今回の皇帝選挙の見届け含め派遣されてきたみたいだよ?

 カーディナルブルーの法衣を纏った3人のうち、中央に立つ長い白髭の老人が宣誓をした。

「我ら枢機院はイルフィニス女神に仕える使徒である。其の名、此の身に誓い宣誓する。嘘、偽りなく神と人々の意志が導いた新皇帝の名を告げる事を」

 威厳と貫禄に満ちた老人がそう告げると、隣の老人が一枚の紙を手に読み上げる。

「我らが神、イルフィニス女神と我が帝国民により行われた選挙の結果、帝都5万人の内、4万3628人が投票。3万7318票を得たカトレア・ジル・アルバースを第27代新皇帝とする」

 カトレア姫が3人の枢機卿に慎ましくお辞儀をした。俺達は歓声をあげたい衝動を抑えていた矢先、ギラン大司教が大声をあげた。

「枢機卿!カトレア皇姫様は不正を働いています!此の選挙は無効ですぞ!」

 中央の枢機卿がギラン大司教に問いただす。

「其れはどの様な不正ですか?」
「カトレア皇姫様は昨日コロセウムに3万人もの人々を集めマインドコントロールをしたのです!」

 おぉ~、そう来たか!確かに教会側から見たら集団洗脳としてとらえたくなるのも頷ける(苦笑い)。しかし……

「其れは違いますよ、ギラン大司教」

 エリナさんがギラン大司教の言葉を否定した。ギラン大司教はエリナさんを睨み付ける。

「教会に席を置きながら妨害一つ出来ない役立たずの小娘が何を言うか!」

 ナタリアさんがクスクスと肩で笑っているよ?

「小娘と言って頂ける事には感謝致します。しかしカトレア皇姫様が行ったライブコンサートは、決して洗脳等という行為でなかった事を私が保証致します」

「お前の保証がいったい何になるッ!」
「……私の顔はお忘れになってしまいましたか。貴方が最後に大聖堂に来たのは3年も前になるかしら」

 エリナさんはそう喋りながら前に出る。枢機卿の一人が法衣をエリナさんに渡した。
 エリナさんはカーディナルブルーの法衣に袖を通す。其の法衣は金と銀の刺繍が施されていてめちゃめちゃ綺麗だ。
 更に金細工で豪華な冠が枢機卿の手により頭に被せられた。

 ギラン大司教は其のエリナさんの姿に恐れおののいている。

「エ、エステカリーナ教皇様……。な、何故カトレアと一緒に……」

 エリナさんが教皇様であった事にギラン大司教だけではなく、カトレア姫、彩月や葵さん、ナイトウィングスメンバー、デリアンデス元帥達軍幹部もビックリ顔をしている。
 彼女の正体を知っていたのは俺とサツキサン、ナタリアさん、新藤君、如月君、メイアさんだけだったからね。

「私はカトレア様の選挙活動を全て見て来ました。彼女の、彼女達の活動に一片の曇りもありません。私も彼女が作る新しい帝国を見てみたいと思います。貴方は神に仕える身でありながら何をしているのですか」

「な、何とは?私はルバルト皇子を支援し、延いては教会の発展の為に尽力を尽くしていたのですぞ」
「しかし貴方はカトレア様を殺害しようと……」
「エリナさん、いや教皇様。彼は第一皇子達の暗殺の主犯者です。彼の手は神に仕える者の手ではありません」

 俺がそう告げるとギラン大司教が狂人の目で俺を睨み付ける。彼のオーラは真っ黒だ。そして彼の両脇にいる男も同じく真っ黒だった。

「ナイトウィングス、ライト・サクライ……。キサマらが来なければ我が野望は成していたものを……」

 ギラン大司教の黒いオーラが膨れ上がる。

「葵さん!」
「キサマだ……」

 此の世界に来たばかりの俺なら、殺気に気が付いても何も出来ずに殺されていただろう。しかし今は違う。
 俺の声に葵さんは速攻反応し、ワールドクロックを発動させた。世界は葵さんだけの時間となる。

「……け……わ……」

 気が付けばギラン大司教がバタリと倒れ、二人の男は既に倒されていた。其の傍らには鞘に収まった剣を持った葵さんが立っている。鞘に収まった剣で殴打し昏倒させていた。
 帝国に来て初めて使ったワールドクロック。教皇様事エリナさん、枢機卿のご老人達、更にはデリアンデス元帥はじめ軍幹部達は、あまりの早業に口をあんぐりと開けているよ?

「ありがとう、葵さん」
「光斗さんの反応の早さには驚かされます」
「黒いオーラが大きくなるのが見えたからね」

「誰か、アオイの動きが見えた者はいるか(汗)」

 我に帰ったデリアンデス元帥が葵さんを驚愕の目で見ている。

「動き何処か、気配すら感じる事も出来ませんでした(汗)」

 コスタリムさんも同じく驚きの顔で葵さんを見ていた。

「カイゼスが言っていた。アオイは神速の剣を使うと……。此れがアオイの実力ということか……」
「剣聖が敗北した理由が分かりました……」
「欲しいな」
「欲しいですね」

 いやいや、あげないよ!

「元帥、教会の方々には退席して頂いた方がよいかと」

 俺は元帥にそう進言した。ギラン大司教が倒れ動揺を隠せない神官が何人もいる。彼等も間違いなく共犯者だ。

 兵士達に囲まれ教会関係者が玉座の間を退席して行った。

「カトレア皇姫様、おめでとうございます」

 エステカリーナ教皇はカトレア姫の手を両手で取り、優しく微笑みかけた。

「あ、ありがとぉう~ございますぅ~」

 カトレア姫、喋り方が素になってますよ~(汗)。

「宰相閣下」

 教皇に呼ばれた宰相が玉座の段の袖から出て教皇に頭を垂れる。

「バーライル宰相閣下、カトレア皇姫殿下が選挙の結果、第27代皇帝と成ります。異論はございませんね」
「はい。教皇様」
「デリアンデス元帥も異論はございませんね」
「はい。教皇様」

 宰相と元帥は教皇に頭を垂れる。

「カリス皇子、ルバルト皇子。二人ともよく頑張りましたね(微笑み)」
「「教皇様~~~」」

 二人の皇子は涙を流している。エステカリーナ教皇は二人を呼び抱きしめていた。

「ナタリア。二人をお願いします」

 二人の皇子はナタリアさんに連れられ退席していった。

「ライト、ありがとう。貴方が此の帝国に新しい風を運んでくれました。昨夜のライブで人々が見せたあの笑顔を、私は生涯忘れる事はないでしょう。本当にありがとう」

 教皇、いやエリナさん(あえて俺はエリナさんと呼ぶ事にしたよ)は涙を浮かべ俺に微笑みかけた。

「ライト~、ありがとぉう~ですぅ~」

 カトレア姫が俺に抱きついてきたよ?二人の皇子が退場した事で、張り詰めていた緊張が少し緩んだかな?

「ライトやぁ~、皆さんがぁ~、応援してぇくれなかったぁらぁ、私はぁ勝てません~でしたぁ~」

 カトレア姫は泣きながら感謝の気持ちを俺達に伝えた。

「カトレア皇姫様の強い意志があったからこそです。平和な帝国を作ってください」
「はい……」

 カトレア姫は涙を拭い、笑顔でそう一言答えた。此れから寒い冬を迎える今、南方の戦線縮小は其れほど問題なく行えるだろう。しかし帝国の経済回復は険しい道のりだ。彼女が目指す明るい帝国に俺達はどれだけ協力出来るのだろうか……。
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