侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。

二位関りをん

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第22話 団欒の輪

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「でも、姉ちゃん家にいる時よりも元気そうで良かったです。顔色も良いし、リア充って感じで」

 イーゾルはぼそりと呟いた。やっぱり知らぬ間に心配かけてしまった事を改めて痛感する。

「……気を使わせちゃってごめんね、イーゾル」
「姉ちゃんは悪くないっしょ。でも元気そうで本当に良かった。俺は姉ちゃんには幸せになってほしいんだ。家では理不尽にクソババアやクソ親父にボロカス言われてたりしてたの見てたからさ」
「……イーゾル」
「ほらまた心気臭い顔するーー!」
 
 イーゾルがこちらを指さしてそう言ってきた。そして身を乗り出して私の頬を手のひらでもいもいと揉みくちゃにしてきた。
 おしろい塗ってるのにそんな乱暴な……。

「プッ」

 レアード様が私の顔を見て吹き出した。そりゃあイーゾルに頬を揉みくちゃにされてるのだから、今の私はこれでもかと言うくらいの変顔を浮かべているに違いない。

「……やっぱりメアリーは可愛いな」
「か、かわひひ……れしゅかぁ?」
「可愛いよ。イーゾルナイスアシスト。こんな表情ははじめて見たよ」
「王太子様、そうおっしゃって頂き光栄でっす」

 にやにやとしながらもうやうやしく礼をするイーゾルに私ははあ……と笑いながら息を吐いた。
 明るくてお調子者ぽいところは相変わらず変わっていないみたいで何よりだ。

「ありがとうね、イーゾル」
「うん、どいたまだよ姉ちゃん」
「姉さん、コイツの優秀さと馬鹿らしさは変わっていないから」
「兄貴さぁ、良い事言った! みたいな顔をしてるけどそんな言い方ないっしょ……馬鹿じゃないし」
「そう言えばイーゾルはどの野菜が好きなんだ?」
「葉野菜系ですね。果物系も気に入っています」
(ドヤ顔してる……めっちゃドヤ顔してる……)

 その後もくだらない話などを4人で楽しんでいると、あっという間にお開きの時間が訪れた。

「もうそんな時間か。ラディカル子爵家の令息兄弟と話せて本当に良かった」
「こちらこそありがとうございました。姉さんとも話せて良かったです」
「姉ちゃん元気でな! また来るから!」
「ええ! マルク、イーゾル、またお会いしましょう……!」

 こうして彼らとのお茶会が終わり、玄関ホールまで見送ったのだった。

「……楽しい時間だったな」
「はい、本当に……」

 レアード様は穏やかな笑みを浮かべながら、私の背中に手を置いた。

「マルクはいずれよき当主になるだろうな」
「私もそう思います。あの子ならよき領主として頑張ってくれそうです。イーゾルも」
「兄弟が楽しみだな。また彼らを王宮に招いてお茶会したいものだ」
「そうですねえ。やっぱりあの2人と話していると心が落ち着きますし、楽しめます」

 ふふっと自分からもレアード様からも穏やかな笑い声が出た。ああ、胸の中のもやもやした暗い気持ちがどこかへと消え去ったように思う。
 また弟達に会ってのんびり話がしたいものだ。

(2人とも元気そうでよかった)

 それから次の日。早速イーゾルから手紙と実家の屋敷内で育てていると言う野菜が王宮に送られてきた。
 手紙を読む限り野菜は中庭の一部を勝手に耕して作った畑で育てていたようだ。私はウィルソン様の元へ嫁いでいてからは実家に戻っていないので、その間に畑を作ったのだろう。
 両親に叱られたとか、そういう記述は手紙には記されていない。まあ、両親から溺愛されていたイーゾルの事だからなんだかんだ怒られてないような気もするけど、母親は綺麗好きだし父親はそういうのには興味なさそうだから怒られてるかもしれない。

(でも野菜は美味しそうね)

 野菜は王宮のコックの皆様が美味しく調理してくださるそうだ。彼らがイーゾルの育てた野菜をどう調理するのか今から楽しみだ。

 ……婚約パーティー前日の朝。夜明けとともに目が覚めた私はドレスに着替えて中庭へと入る。中庭には一足早くレアード様がやってきていた。

「おはよう、メアリー」
「おはようございます。レアード様」
「夜明けとともにここに来ると、お前に会えると思ってな……」
「私も同じ気持ちでした」

 私も夜明けとともに、中庭へレアード様に会いたくてたまらない気持ちが胸の中で一杯になる。
 契約なのにこんなに愛されて私は幸せだ。

「レアード様。私はあなたに出会えて本当に良かった。今の私は幸せです」
「そうか。俺もメアリーと一緒に居られて幸せだよ」

 互いに互いを求めるようにして抱きしめあい、熱く唇を交わす。この熱が気持ちよすぎて私はたまらなく心と体を癒されていく。これは……依存とよく似たものかもしれない。

(レアード様とずっと一緒に居たい……ずっと、ずっと……)

 口の中で舌を抱きしめあうようにして絡ませる。それを愛のままに欲望のままに何度も繰り返した。

「はあっ……」

 何度口づけを交わしただろう。それすらも分からない程だ。
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