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第2話 回想・貴族学校と結婚式の記憶
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父親が何を言っているのか分からない。なんで私を屋敷に戻そうとしているのか。
「お前がいないと困るんだ! 早く屋敷に戻るぞ!」
「嫌です!」
はっきりと言うと、父親は私の右頬を思いっきり叩く。
シスター達は父親に完全に萎縮してしまっていた。父親は私を押し込むようにして馬車に乗せたのだった。
本当は抵抗したいけど、叩かれた頬があまりにも痛すぎて無理だった。
「あらお姉様。帰ってきたのぅ?」
久しぶりに見たジュリエッタは相変わらず憎らしい笑顔を浮かべていたし前よりも可愛らしく華やかな見た目になっていた。まだまだ子供なのに美しさが際立っている。
「お父様、なんでお姉様を戻したのよぅ。別に戻ってこなくてもいいのに」
それは私だってそうだ。こんな屋敷戻りたくはない。
父親は誰が見ても分かるような作り笑いを浮かべながら、ジュリエッタに猫なで声を出した。良い年した男がこんな声を出すなんて気持ち悪い。
「お前の面倒を見る者がいないだろう? だから連れて帰って来たんだ」
「メイドがいるじゃない」
ジュリエッタのくせに正論を言うなんて。この時だけは彼女のこの正論に同意してしまった。
「人数は多い方良いだろう?」
「まあ、確かにそうね!」
結局ジュリエッタはそれ以上何も聞く事無く、自室へと戻っていった。私も久しぶりに自分の部屋に戻ろうとしていると、父親にどこに行くんだ? と聞かれてしまった。
「私はどこに行けば……」
「ふん、貴様など離れで良いわ」
そのまま右腕を掴まれて屋敷の離れへと連れていかれた。右腕はちぎれそうなくらい引っ張られたのでとても痛いしまだ頬に痛みが残っていると言うのに。
離れはもはや倉庫と化していた。これはまともに生活するにはきつい。父親は何も言わずに離れから早歩きで出ていったのだった。
(はあ……)
私は肩でため息をつく。そして立ち上がって離れを片付け換気の為に窓を開けたのだった。メイドを呼ぼうとしたけどここからでは声が聞こえるかどうかも微妙な所だったので、メイドが近くを通るまで待った。
「すみません! ちょっといいですか?」
ようやくメイドを捕まえて、離れを一緒に簡単に掃除した。埃っぽさはちょっとはましになっただろうか。手伝ってくれたメイドには何度も頭を下げた。
「シュネル様ってお優しい方なのですね。出来損ないってジュリエッタ様からお聞きしていたもので」
(何を言ってるんだあのクソ妹……)
こうして私は貴族の令息や令嬢達が通う名門の貴族学校へ進学する事となった。
この貴族学校、本来は全寮制で貴族の中でも特に爵位の高い公爵、侯爵出身の生徒だけは特例で屋敷から馬車で通学するのを許されていた。
しかし父親は私が寮に入るのは認めなかった。
「寮に入るのは認めん。妻が亡くなった今だれが俺やジュリエッタの面倒を見るんだ?」
「お父様……」
「それに寮に入ればお前は腑抜けてしまう。寮は生ぬるい生ぬるすぎる。俺が直々に躾けなければ」
父親はもはや私をいじめたいだけなのだろうか。ここまで気がふれておかしくなってしまうなんて。
だけど子爵家である私が馬車で通う事はすぐに上級生や身分の高い令嬢令息達の間に知れ渡る事となった。
「あなた子爵家の癖になんで馬車で登校するのよ?」
「すみません。父親が寮に入るのを許さなかったもので」
「……そんな事ってある?」
「この子、服もボロボロじゃない?」
「関わらないでおきましょう。何があるかわからないわ」
「そうね」
貴族学校では父親やジュリエッタのようないじめや暴言を吐かれるのではなく、ひそひそと噂が独り歩きし腫物扱いされるようになった。
最初、ジュリエッタがこの学校に入学したらどうなるのかと少しだけ思っていたけど……それは杞憂だった。
なぜなら彼女は貴族学校には登校しなかったからだ。
「私は学校になんか行かないわ。家庭教師で十分よ」
私だけこうして貴族学校に通わされるだなんて。
だけど耐えるしかなかった。
(理不尽すぎる。私は学校に通ってジュリエッタは家でごろごろと過ごすだけ)
勿論成績は良くなれば父親からは怒られる。テストは満点の百点でないと機嫌は悪くなるし、80点を切っていたら思いっきり頬を叩かれて晩ごはんは抜きにされた。
そんな辛い貴族学校での生活が続き、卒業を迎えた18歳のある日の休日。この日も私は離れで勉強に励んでいると父親が話があると切り出してきた。
「お前に縁談が来た」
その相手がアイリクス伯爵家のソアリス様だった。この時彼は隣国に留学していた。
彼と初めて顔を合わせたのは、卒業パーティーの3日前だった。私から挨拶すると一瞬だけ私を見て子供のように目を輝かせてくれた。が、結婚して3年経っても共に夜を過ごす事も無くまともな会話すらない。
屋敷を出てあの父親とジュリエッタから逃れられたのは良かったけど、代わりにソアリス様の親から子供はまだかとせっつかれ、ソアリス様とは夫婦の営みもない。
こんなの生活にはもう飽きた。
さっさと新しい生活を送らさせて頂きます。
「お前がいないと困るんだ! 早く屋敷に戻るぞ!」
「嫌です!」
はっきりと言うと、父親は私の右頬を思いっきり叩く。
シスター達は父親に完全に萎縮してしまっていた。父親は私を押し込むようにして馬車に乗せたのだった。
本当は抵抗したいけど、叩かれた頬があまりにも痛すぎて無理だった。
「あらお姉様。帰ってきたのぅ?」
久しぶりに見たジュリエッタは相変わらず憎らしい笑顔を浮かべていたし前よりも可愛らしく華やかな見た目になっていた。まだまだ子供なのに美しさが際立っている。
「お父様、なんでお姉様を戻したのよぅ。別に戻ってこなくてもいいのに」
それは私だってそうだ。こんな屋敷戻りたくはない。
父親は誰が見ても分かるような作り笑いを浮かべながら、ジュリエッタに猫なで声を出した。良い年した男がこんな声を出すなんて気持ち悪い。
「お前の面倒を見る者がいないだろう? だから連れて帰って来たんだ」
「メイドがいるじゃない」
ジュリエッタのくせに正論を言うなんて。この時だけは彼女のこの正論に同意してしまった。
「人数は多い方良いだろう?」
「まあ、確かにそうね!」
結局ジュリエッタはそれ以上何も聞く事無く、自室へと戻っていった。私も久しぶりに自分の部屋に戻ろうとしていると、父親にどこに行くんだ? と聞かれてしまった。
「私はどこに行けば……」
「ふん、貴様など離れで良いわ」
そのまま右腕を掴まれて屋敷の離れへと連れていかれた。右腕はちぎれそうなくらい引っ張られたのでとても痛いしまだ頬に痛みが残っていると言うのに。
離れはもはや倉庫と化していた。これはまともに生活するにはきつい。父親は何も言わずに離れから早歩きで出ていったのだった。
(はあ……)
私は肩でため息をつく。そして立ち上がって離れを片付け換気の為に窓を開けたのだった。メイドを呼ぼうとしたけどここからでは声が聞こえるかどうかも微妙な所だったので、メイドが近くを通るまで待った。
「すみません! ちょっといいですか?」
ようやくメイドを捕まえて、離れを一緒に簡単に掃除した。埃っぽさはちょっとはましになっただろうか。手伝ってくれたメイドには何度も頭を下げた。
「シュネル様ってお優しい方なのですね。出来損ないってジュリエッタ様からお聞きしていたもので」
(何を言ってるんだあのクソ妹……)
こうして私は貴族の令息や令嬢達が通う名門の貴族学校へ進学する事となった。
この貴族学校、本来は全寮制で貴族の中でも特に爵位の高い公爵、侯爵出身の生徒だけは特例で屋敷から馬車で通学するのを許されていた。
しかし父親は私が寮に入るのは認めなかった。
「寮に入るのは認めん。妻が亡くなった今だれが俺やジュリエッタの面倒を見るんだ?」
「お父様……」
「それに寮に入ればお前は腑抜けてしまう。寮は生ぬるい生ぬるすぎる。俺が直々に躾けなければ」
父親はもはや私をいじめたいだけなのだろうか。ここまで気がふれておかしくなってしまうなんて。
だけど子爵家である私が馬車で通う事はすぐに上級生や身分の高い令嬢令息達の間に知れ渡る事となった。
「あなた子爵家の癖になんで馬車で登校するのよ?」
「すみません。父親が寮に入るのを許さなかったもので」
「……そんな事ってある?」
「この子、服もボロボロじゃない?」
「関わらないでおきましょう。何があるかわからないわ」
「そうね」
貴族学校では父親やジュリエッタのようないじめや暴言を吐かれるのではなく、ひそひそと噂が独り歩きし腫物扱いされるようになった。
最初、ジュリエッタがこの学校に入学したらどうなるのかと少しだけ思っていたけど……それは杞憂だった。
なぜなら彼女は貴族学校には登校しなかったからだ。
「私は学校になんか行かないわ。家庭教師で十分よ」
私だけこうして貴族学校に通わされるだなんて。
だけど耐えるしかなかった。
(理不尽すぎる。私は学校に通ってジュリエッタは家でごろごろと過ごすだけ)
勿論成績は良くなれば父親からは怒られる。テストは満点の百点でないと機嫌は悪くなるし、80点を切っていたら思いっきり頬を叩かれて晩ごはんは抜きにされた。
そんな辛い貴族学校での生活が続き、卒業を迎えた18歳のある日の休日。この日も私は離れで勉強に励んでいると父親が話があると切り出してきた。
「お前に縁談が来た」
その相手がアイリクス伯爵家のソアリス様だった。この時彼は隣国に留学していた。
彼と初めて顔を合わせたのは、卒業パーティーの3日前だった。私から挨拶すると一瞬だけ私を見て子供のように目を輝かせてくれた。が、結婚して3年経っても共に夜を過ごす事も無くまともな会話すらない。
屋敷を出てあの父親とジュリエッタから逃れられたのは良かったけど、代わりにソアリス様の親から子供はまだかとせっつかれ、ソアリス様とは夫婦の営みもない。
こんなの生活にはもう飽きた。
さっさと新しい生活を送らさせて頂きます。
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