11 / 88
第11話 お断りします
しおりを挟む
「王太子殿下、おはようございます」
私は薬師や医師に混ざり、ベッドに座るアダン様に朝の挨拶をする。
「おはよう、皆」
「では、早速診察に移らさせて頂きます」
「分かった、頼むよ」
アダン様は自分で上半身の服を脱ぎ、医師は手早くアダン様を診察していく。
「異常ありません」
「分かった、ありがとう」
診察が終わったタイミングで、私とハイダはアダン様の近くに歩み寄ると、アダン様は私達に目線を向ける。
「じゃあ、話をする。皆は退出して次の診察に向かってほしい」
その言葉で、部屋の中は私とハイダ、アダン様の3人だけとなる。アダン様は辺りを見渡してから口を開いた。
「結論から言うと、ジャスミン。俺と結婚してほしい」
「……」
求婚に対し、私は自分でもわからないほどに冷静だった。
(家としては申し分ないだろう、だけど私は……)
「お断りします」
私は薬師として働きたいのだ。アダン様と結婚したくて宮廷に入った訳では無い。
「理由は?」
「薬師として働きたいからです」
「じゃあ、結婚自体考えていないんだ」
アダン様から、私を試すような目線が絶えず向けられる。今の私はなんだか蛇に睨まれるカエルそのものだ。
「はい、薬師として働きたいと考えております」
「ジャスミン。確か、婚約破棄されてなかった?」
「!……どうして、それを……」
「そりゃ、色々耳に入ってくるからね。侯爵家から王太子となれば、格的にも良いと思うけど?」
「……それでも、お断りいたします」
「ふーん……」
アダン様がちらっと横目でハイダに目線を送るのが見えた。
「分かった。じゃあ、ジャスミン。俺の専属薬師に任命する。良いよね、ハイダ?」
「……私は構いませんが、ジャスミンさんは……」
結婚が無理なら専属薬師か。それなら……良いか。と私の心は肯定に傾いた。薬師としての立場が変わらないのであればそれで良い。
「専属薬師としてなら……」
「ん、じゃあ、決まりね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
私はアダン様に深く頭を下げたのだった。
「じゃあ、仕事に戻って良いよ」
そうアダン様に言われ、私とハイダは部屋から退出したのだった。
「ジャスミンさん、後でお時間構いませんか?」
「はい、大丈夫ですけど……」
私は薬師や医師に混ざり、ベッドに座るアダン様に朝の挨拶をする。
「おはよう、皆」
「では、早速診察に移らさせて頂きます」
「分かった、頼むよ」
アダン様は自分で上半身の服を脱ぎ、医師は手早くアダン様を診察していく。
「異常ありません」
「分かった、ありがとう」
診察が終わったタイミングで、私とハイダはアダン様の近くに歩み寄ると、アダン様は私達に目線を向ける。
「じゃあ、話をする。皆は退出して次の診察に向かってほしい」
その言葉で、部屋の中は私とハイダ、アダン様の3人だけとなる。アダン様は辺りを見渡してから口を開いた。
「結論から言うと、ジャスミン。俺と結婚してほしい」
「……」
求婚に対し、私は自分でもわからないほどに冷静だった。
(家としては申し分ないだろう、だけど私は……)
「お断りします」
私は薬師として働きたいのだ。アダン様と結婚したくて宮廷に入った訳では無い。
「理由は?」
「薬師として働きたいからです」
「じゃあ、結婚自体考えていないんだ」
アダン様から、私を試すような目線が絶えず向けられる。今の私はなんだか蛇に睨まれるカエルそのものだ。
「はい、薬師として働きたいと考えております」
「ジャスミン。確か、婚約破棄されてなかった?」
「!……どうして、それを……」
「そりゃ、色々耳に入ってくるからね。侯爵家から王太子となれば、格的にも良いと思うけど?」
「……それでも、お断りいたします」
「ふーん……」
アダン様がちらっと横目でハイダに目線を送るのが見えた。
「分かった。じゃあ、ジャスミン。俺の専属薬師に任命する。良いよね、ハイダ?」
「……私は構いませんが、ジャスミンさんは……」
結婚が無理なら専属薬師か。それなら……良いか。と私の心は肯定に傾いた。薬師としての立場が変わらないのであればそれで良い。
「専属薬師としてなら……」
「ん、じゃあ、決まりね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
私はアダン様に深く頭を下げたのだった。
「じゃあ、仕事に戻って良いよ」
そうアダン様に言われ、私とハイダは部屋から退出したのだった。
「ジャスミンさん、後でお時間構いませんか?」
「はい、大丈夫ですけど……」
35
あなたにおすすめの小説
余命一ヶ月の公爵令嬢ですが、独占欲が強すぎる天才魔術師が離してくれません!?
姫 沙羅(き さら)
恋愛
旧題:呪いをかけられて婚約解消された令嬢は、運命の相手から重い愛を注がれる
ある日、婚約者である王太子名義で贈られてきた首飾りをつけた公爵令嬢のアリーチェは、突然意識を失ってしまう。
実はその首飾りにつけられていた宝石は古代魔道具で、謎の呪いにかかってしまったアリーチェは、それを理由に王太子から婚約解消されてしまう。
王太子はアリーチェに贈り物などしていないと主張しているものの、アリーチェは偶然、王太子に他に恋人がいることを知る。
古代魔道具の呪いは、王家お抱えの高位魔術師でも解くことができない。
そこでアリーチェは、古代魔道具研究の第一人者で“天才”と名高いクロムに会いに行くことにするが……?(他サイト様にも掲載中です。)
だったら私が貰います! 婚約破棄からはじまる溺愛婚(希望)
春瀬湖子
恋愛
【2025.2.13書籍刊行になりました!ありがとうございます】
「婚約破棄の宣言がされるのなんて待ってられないわ!」
シエラ・ビスターは第一王子であり王太子であるアレクシス・ルーカンの婚約者候補筆頭なのだが、アレクシス殿下は男爵令嬢にコロッと落とされているようでエスコートすらされない日々。
しかもその男爵令嬢にも婚約者がいて⋯
我慢の限界だったシエラは父である公爵の許可が出たのをキッカケに、夜会で高らかに宣言した。
「婚約破棄してください!!」
いらないのなら私が貰うわ、と勢いのまま男爵令嬢の婚約者だったバルフにプロポーズしたシエラと、訳がわからないまま拐われるように結婚したバルフは⋯?
婚約破棄されたばかりの子爵令息×欲しいものは手に入れるタイプの公爵令嬢のラブコメです。
《2022.9.6追記》
二人の初夜の後を番外編として更新致しました!
念願の初夜を迎えた二人はー⋯?
《2022.9.24追記》
バルフ視点を更新しました!
前半でその時バルフは何を考えて⋯?のお話を。
また、後半は続編のその後のお話を更新しております。
《2023.1.1》
2人のその後の連載を始めるべくキャラ紹介を追加しました(キャサリン主人公のスピンオフが別タイトルである為)
こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
離宮に隠されるお妃様
agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか?
侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。
「何故呼ばれたか・・・わかるな?」
「何故・・・理由は存じませんが」
「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」
ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。
『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』
愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる