婚約者を妹に奪われ、家出して薬師になった令嬢は王太子から溺愛される。

二位関りをん

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第16話 私達も快楽に※

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「すごかったよね……あの2人」

 そう語るアダン様の瞳は獣か猛禽類のごとき鋭さで、押し倒されている私をとらえている。私はごくりと唾をのみ彼の顔を見る。

「……っ」

 私の右手には、媚薬が入っていた空の瓶がある。アダン様は私に手を差し伸べ、それを渡すようジェスチャーをした。

「どうぞ」
「ありがとう。これは俺が持っておくから」
「わ、わかりました……」
「そうだ。良い事思いついた」

 アダン様はそう言うと、一旦私の元から離れて、ベッドの横にある白くて大きなクローゼットの扉を開いた。

「そ、それは……」

 なんと、そのクローゼットの中から媚薬の入った瓶が1本、あったのだ。アダン様はそれを手に取りクローゼットの扉を閉めて、私の元へと戻ってくる。

「父上の様子じゃあ、効能があんまりよくわからなかったからさ。飲んでみてよ」
「え」

 媚薬が入った瓶を口元まで向けられる。この場で飲まなければならないという事か。

(飲んだらどうなるんだ……?)

 だが、アダン様の命令となると逆らう事は出来ない。私は瓶を手に取り、一口口に入れたのだった。

「ジャスミン。全部飲んで」

 やはり一口だけではだめか。一口飲んだだけなのに、頬が若干熱を発しだしているのがわかる。私は意を決してぐいっと媚薬をすべて飲み切ったのだった。
 するといきなり、目がぐるりと回転する。大きなめまいだ。私は身体を支える力を失い、そのままベッドの上に倒れてしまう。それに脈が次第に速くなっていく上に下腹部がじわじわと熱くなっていく。一体なんなのか自分でもよくわからない。

「ジャスミン?!」

 アダン様が私の名を呼んだのは聞き取れたが、それ以降は何を言っているのか聞き取れないまま、視界がぼんやりと白くなっていった。

「ジャスミン!」

 そして気が付けば、私は下着姿のまま、ベッドの上であおむけになっていた。私の右側に、少し服が乱れたアダン様が座って私の手を優しく握っている。

「あ、アダン様……」
「気づいたんだね。さっきはごめん。まさかこんなに薬が効くとは思わなかった」

 沈痛な面持ちで、謝罪の意思を見せるアダン様。眉を下げ、私の両手を握り何度も申し訳ないとの言葉を発するその痛々しい姿に私は謝らないでくださいませ。と気を使いつつ言葉を投げかける。

「私の不注意です。しっかり用法や量についてもっと勉強しなければ……」
「ジャスミン……」
「人は誰だって失敗します。ですからお気になさらないでくださいませ」

 多分こういう時、ハイダ達薬師の皆はこのような言葉を投げかけてくれるだろうという、安心感に似た何かを感じていた。
 アダン様は私の顔を見て、うんと大きく頷く。

「次からはしっかり気を付けるよ。それに、この媚薬の効果も分かった。アネーラがした事もね」

 アダン様は私の両頬に手をそっと当て、キスをした。私の唇を彼の舌が割って入り、私の舌に絡みこんでくる。

「んふっ……」

 私はまた、アダン様に押し倒された。口付けを交わしながら、時折口を離しながらゆっくりと身体全体を掌で撫でられていく。

「はあっ……」

 ただ、撫でられているだけなのに身体全体が熱く火照っている。しかも、下腹部が熱くて濡れているのが分かる。その下腹部の様子に気がついた時。私はある事にも気付いた。

(もしかして、さっき目覚める前に……)
「アダン様、その……さっきしましたか?」
「ああ、媚薬の効果を薄める為に……」

 やはり。私が気を失っている間にアダン様は一度私を抱いていたのだ。媚薬を必要以上に飲み過ぎた場合、一度絶頂に達して薬の効果を薄めないと最悪意識が戻らなくなるという副作用がある。

(国王陛下と違って私は明らかに飲み過ぎだったから、仕方ない……)
「ジャスミンすまない。あのままだと意識を失ったままかもしれなかったから」
「いえ。介抱して頂きありがとうございます」

 私はアダン様の背中に両腕を伸ばして、抱き寄せた。彼の香水の匂いが更に鼻腔を甘く刺激する。

「私はもう大丈夫です……」
「ジャスミン……」

 大丈夫とはいえ、身体全体は下腹部を中止に火照ったままである。だが、さっきのようなめまいは無い。

「ジャスミン……!」
「アダン様……」
「ああ、好きだ……!」

 アダン様はそう言うと、私から離れると私の両太ももを持ち、足を広げる。
 その声音は奇しくも、先程国王陛下の上に跨り、快楽に歪んでいた王妃アネーラの恍惚的な声音と似ていた。

(王妃様みたいだ。これを言ったら起られそうだけど)

 そして、私の中にぐぬりと、硬く熱いものが入る。奥まで到達すると、ずんと更に突き上げられ、私はたまらず声を出してしまう。

「んっ……!」
「あっ、すごい……!」
「はあっ、はあっ……」
「動いて、いい?」

 アダン様からのその問いに私は大きく頷く。すると一瞬だけ彼はふっと力の抜けた笑みを浮かべた。

「はあっ……!」

 粘膜と肌が擦れて起こる淫らな音が部屋中に響き渡る。私は夜明けまでアダン様と快楽に溺れていったのだった。


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