15 / 88
第15話 情事の監視※
しおりを挟む
「あれだよね」
アダン様が媚薬の方を指さしながら、小声でそう問いかけたので私はすぐさま頷く。
王妃アネーラは媚薬を入れ終わると、一旦部屋から退出していった。
(まさか、証拠を隠す為?)
王妃アネーラが再び部屋に戻って来た時には、媚薬の瓶はどこにも見当たらなかった。
「やっぱり、どこかに瓶を捨ててる」
アダンの小さな小さな鋭い声に、私は頷きながら目を細める。
すると部屋に国王陛下が寝間着姿で現れた。
「国王陛下。お待ちしておりました」
「アネーラ。待たせてすまぬな」
「陛下、メイドにワインを用意させました。ぜひお飲みくださいませ」
国王陛下は王妃アネーラから、媚薬の入った方のワイングラスを受け取ると、一口、二口程飲んだ。
「良い香りと味わいだ。どこのワインだ?」
「南方から取り寄せた品にございます」
「なるほど、そうか……色も良いな」
媚薬を飲んだ国王陛下だが、今の所様子に特段変化は見られない。
(ちゃんと効いているのかよくわからない……)
すると、ワインを一口飲んだ王妃アネーラが、国王陛下の左腕に抱き付く。
「陛下……」
彼女の甘い声がこちらにも聞こえてきた。
「アネーラ……」
「陛下……」
国王陛下は、王妃アネーラを抱き寄せて、深い口づけを交わし始めた。国王陛下の頬に少し赤みがさしているように見えるが、これが媚薬の効果なのかどうかまでは、まだ判断が難しい。
「んっ……」
「ふっ……」
ベッドと右横に座り、口づけを交わす2人。見ているだけで私の息も荒くなる。
すると、横にいたアダン様の姿がいない事に気づく。
(いない?! 一体どこに……)
だが、私もこの場から動くのは何だかリスクがありそうで怖い。この場で留まりながら、国王夫妻の情事を見つめるといきなり誰かに尻を掴まれる。
(!)
危ない。声を出す所だった。振り返ればアダン様が戻ってきていたのだった。
「どこへ?」
「これ、瓶を回収しといた。どうなってるかなぁ」
アダン様の右手には媚薬が入っていた瓶が握られていた。彼は私に瓶を無言で渡すと、瓶の中が空になっているのが確認できた。
そんな中。目の前の小窓からは、国王陛下が仰向けになりその上に王妃アネーラがうつ伏せになる形で抱き合っていた。
「陛下……今日も私の中に、子種をくださいませ」
「ああ……好きなだけ受け取るがよい」
王妃アネーラは国王陛下の寝間着の帯を外し身体をさらけ出す。そして自身も帯を外すと、国王陛下のそれを自身の中に入れ込んだ。
「んっ……うん……」
王妃アネーラの甘い嬌声がこちらまではっきりと聞こえてきた。彼女は自ら腰を上下や前後に揺らし、国王陛下に快楽を与えていく。
「あっ……はあん……」
(これが……2人の……)
王妃アネーラと違い、国王陛下はただ仰向けになっているだけだ。時折王妃アネーラの腰の付近に手を添えたりはしているが、それ以外は動く気配が無い。
(なぜだ?)
「なるほどね」
うんうん。とアダン様がうなづいている。何か思いついたのだろうか。私は思い切って小声でアダン様に聞いてみる事にした。
「何か、分かったんですか?」
「媚薬を使った理由だよ。要は、父上の精力剤代わりに使ってたんだ」
精力剤なら、医薬庫の中にあるはずだが……。
「精力剤では、ダメなのでしょうか?」
「精力剤では効き目が少ないかアネーラが納得するくらいのやる気が出ないんだろう。だからより強力な媚薬を使っているという事だと思う」
「なるほど……」
「もう父上も年だからね。それにアネーラは……子供が早く欲しくて仕方がないのさ」
そう語るアダン様の顔は、今まで見た事が無いくらいに、忌々しさを表していた。苦虫を噛み潰したかのような口元に、国王陛下の上で快楽に歪む王妃アネーラを睨みつけるような目つき。何もかもから王妃アネーラに対する敵意がにじみ出ていた。
(そんなに……)
「アダン様……」
「ごめんね。アネーラは後妻だから先妻の子である俺にとって血の繋がりは何にもない。だから俺が邪魔なんだよ」
「自身の子を、王太子につけたいと」
「そういう事さ。だから早く子供を。出来たら男子が欲しくてたまらないという訳さ」
アダン様の冷たい言葉と、王妃アネーラの妖しい嬌声が同時に私の耳に入ってくる。温度差が違いすぎて風邪を引きそうだ。
「あっ……んんっ!」
国王陛下の身体の上にまたがる様にして腰を振っていた王妃アネーラが、身体を震わせて快感に身をゆだねていった。
「ああーー……陛下の子種が私の中に……」
王妃アネーラのその声は、まさに恍惚感でいっぱいだった。その様子をアダン様はじっと見逃す事無く目をそらす事もなく目に焼き付けている。
「はあっ……陛下っ……もっと、ご寵愛を……」
「アネーラ……好きなようにせよ」
まだ彼らの絡みは続くようだ。そんな中。アダン様がいきなり私の左肩に手を乗せた。
「なんでしょうか……」
「ねえ、せっかくだし……俺らもしようよ」
アダン様はそう言って私の左手を取ると後ろへ振り返り、早歩きでこの場から出ていく。私は彼の足についていくのがやっとだった。
到着した先は、アダン様のお部屋。私はそのままふわふわと浮かぶ羽毛のように、ベッドへ押し倒される。
「あ、アダン様」
「ふふっ……」
アダン様の笑みが、私の目に焼き付けられていく。
アダン様が媚薬の方を指さしながら、小声でそう問いかけたので私はすぐさま頷く。
王妃アネーラは媚薬を入れ終わると、一旦部屋から退出していった。
(まさか、証拠を隠す為?)
王妃アネーラが再び部屋に戻って来た時には、媚薬の瓶はどこにも見当たらなかった。
「やっぱり、どこかに瓶を捨ててる」
アダンの小さな小さな鋭い声に、私は頷きながら目を細める。
すると部屋に国王陛下が寝間着姿で現れた。
「国王陛下。お待ちしておりました」
「アネーラ。待たせてすまぬな」
「陛下、メイドにワインを用意させました。ぜひお飲みくださいませ」
国王陛下は王妃アネーラから、媚薬の入った方のワイングラスを受け取ると、一口、二口程飲んだ。
「良い香りと味わいだ。どこのワインだ?」
「南方から取り寄せた品にございます」
「なるほど、そうか……色も良いな」
媚薬を飲んだ国王陛下だが、今の所様子に特段変化は見られない。
(ちゃんと効いているのかよくわからない……)
すると、ワインを一口飲んだ王妃アネーラが、国王陛下の左腕に抱き付く。
「陛下……」
彼女の甘い声がこちらにも聞こえてきた。
「アネーラ……」
「陛下……」
国王陛下は、王妃アネーラを抱き寄せて、深い口づけを交わし始めた。国王陛下の頬に少し赤みがさしているように見えるが、これが媚薬の効果なのかどうかまでは、まだ判断が難しい。
「んっ……」
「ふっ……」
ベッドと右横に座り、口づけを交わす2人。見ているだけで私の息も荒くなる。
すると、横にいたアダン様の姿がいない事に気づく。
(いない?! 一体どこに……)
だが、私もこの場から動くのは何だかリスクがありそうで怖い。この場で留まりながら、国王夫妻の情事を見つめるといきなり誰かに尻を掴まれる。
(!)
危ない。声を出す所だった。振り返ればアダン様が戻ってきていたのだった。
「どこへ?」
「これ、瓶を回収しといた。どうなってるかなぁ」
アダン様の右手には媚薬が入っていた瓶が握られていた。彼は私に瓶を無言で渡すと、瓶の中が空になっているのが確認できた。
そんな中。目の前の小窓からは、国王陛下が仰向けになりその上に王妃アネーラがうつ伏せになる形で抱き合っていた。
「陛下……今日も私の中に、子種をくださいませ」
「ああ……好きなだけ受け取るがよい」
王妃アネーラは国王陛下の寝間着の帯を外し身体をさらけ出す。そして自身も帯を外すと、国王陛下のそれを自身の中に入れ込んだ。
「んっ……うん……」
王妃アネーラの甘い嬌声がこちらまではっきりと聞こえてきた。彼女は自ら腰を上下や前後に揺らし、国王陛下に快楽を与えていく。
「あっ……はあん……」
(これが……2人の……)
王妃アネーラと違い、国王陛下はただ仰向けになっているだけだ。時折王妃アネーラの腰の付近に手を添えたりはしているが、それ以外は動く気配が無い。
(なぜだ?)
「なるほどね」
うんうん。とアダン様がうなづいている。何か思いついたのだろうか。私は思い切って小声でアダン様に聞いてみる事にした。
「何か、分かったんですか?」
「媚薬を使った理由だよ。要は、父上の精力剤代わりに使ってたんだ」
精力剤なら、医薬庫の中にあるはずだが……。
「精力剤では、ダメなのでしょうか?」
「精力剤では効き目が少ないかアネーラが納得するくらいのやる気が出ないんだろう。だからより強力な媚薬を使っているという事だと思う」
「なるほど……」
「もう父上も年だからね。それにアネーラは……子供が早く欲しくて仕方がないのさ」
そう語るアダン様の顔は、今まで見た事が無いくらいに、忌々しさを表していた。苦虫を噛み潰したかのような口元に、国王陛下の上で快楽に歪む王妃アネーラを睨みつけるような目つき。何もかもから王妃アネーラに対する敵意がにじみ出ていた。
(そんなに……)
「アダン様……」
「ごめんね。アネーラは後妻だから先妻の子である俺にとって血の繋がりは何にもない。だから俺が邪魔なんだよ」
「自身の子を、王太子につけたいと」
「そういう事さ。だから早く子供を。出来たら男子が欲しくてたまらないという訳さ」
アダン様の冷たい言葉と、王妃アネーラの妖しい嬌声が同時に私の耳に入ってくる。温度差が違いすぎて風邪を引きそうだ。
「あっ……んんっ!」
国王陛下の身体の上にまたがる様にして腰を振っていた王妃アネーラが、身体を震わせて快感に身をゆだねていった。
「ああーー……陛下の子種が私の中に……」
王妃アネーラのその声は、まさに恍惚感でいっぱいだった。その様子をアダン様はじっと見逃す事無く目をそらす事もなく目に焼き付けている。
「はあっ……陛下っ……もっと、ご寵愛を……」
「アネーラ……好きなようにせよ」
まだ彼らの絡みは続くようだ。そんな中。アダン様がいきなり私の左肩に手を乗せた。
「なんでしょうか……」
「ねえ、せっかくだし……俺らもしようよ」
アダン様はそう言って私の左手を取ると後ろへ振り返り、早歩きでこの場から出ていく。私は彼の足についていくのがやっとだった。
到着した先は、アダン様のお部屋。私はそのままふわふわと浮かぶ羽毛のように、ベッドへ押し倒される。
「あ、アダン様」
「ふふっ……」
アダン様の笑みが、私の目に焼き付けられていく。
30
あなたにおすすめの小説
余命一ヶ月の公爵令嬢ですが、独占欲が強すぎる天才魔術師が離してくれません!?
姫 沙羅(き さら)
恋愛
旧題:呪いをかけられて婚約解消された令嬢は、運命の相手から重い愛を注がれる
ある日、婚約者である王太子名義で贈られてきた首飾りをつけた公爵令嬢のアリーチェは、突然意識を失ってしまう。
実はその首飾りにつけられていた宝石は古代魔道具で、謎の呪いにかかってしまったアリーチェは、それを理由に王太子から婚約解消されてしまう。
王太子はアリーチェに贈り物などしていないと主張しているものの、アリーチェは偶然、王太子に他に恋人がいることを知る。
古代魔道具の呪いは、王家お抱えの高位魔術師でも解くことができない。
そこでアリーチェは、古代魔道具研究の第一人者で“天才”と名高いクロムに会いに行くことにするが……?(他サイト様にも掲載中です。)
だったら私が貰います! 婚約破棄からはじまる溺愛婚(希望)
春瀬湖子
恋愛
【2025.2.13書籍刊行になりました!ありがとうございます】
「婚約破棄の宣言がされるのなんて待ってられないわ!」
シエラ・ビスターは第一王子であり王太子であるアレクシス・ルーカンの婚約者候補筆頭なのだが、アレクシス殿下は男爵令嬢にコロッと落とされているようでエスコートすらされない日々。
しかもその男爵令嬢にも婚約者がいて⋯
我慢の限界だったシエラは父である公爵の許可が出たのをキッカケに、夜会で高らかに宣言した。
「婚約破棄してください!!」
いらないのなら私が貰うわ、と勢いのまま男爵令嬢の婚約者だったバルフにプロポーズしたシエラと、訳がわからないまま拐われるように結婚したバルフは⋯?
婚約破棄されたばかりの子爵令息×欲しいものは手に入れるタイプの公爵令嬢のラブコメです。
《2022.9.6追記》
二人の初夜の後を番外編として更新致しました!
念願の初夜を迎えた二人はー⋯?
《2022.9.24追記》
バルフ視点を更新しました!
前半でその時バルフは何を考えて⋯?のお話を。
また、後半は続編のその後のお話を更新しております。
《2023.1.1》
2人のその後の連載を始めるべくキャラ紹介を追加しました(キャサリン主人公のスピンオフが別タイトルである為)
こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
勘違い妻は騎士隊長に愛される。
更紗
恋愛
政略結婚後、退屈な毎日を送っていたレオノーラの前に現れた、旦那様の元カノ。
ああ なるほど、身分違いの恋で引き裂かれたから別れてくれと。よっしゃそんなら離婚して人生軌道修正いたしましょう!とばかりに勢い込んで旦那様に離縁を勧めてみたところ――
あれ?何か怒ってる?
私が一体何をした…っ!?なお話。
有り難い事に書籍化の運びとなりました。これもひとえに読んで下さった方々のお蔭です。本当に有難うございます。
※本編完結後、脇役キャラの外伝を連載しています。本編自体は終わっているので、その都度完結表示になっております。ご了承下さい。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
燻らせた想いは口付けで蕩かして~睦言は蜜毒のように甘く~
二階堂まや♡電書「騎士団長との~」発売中
恋愛
北西の国オルデランタの王妃アリーズは、国王ローデンヴェイクに愛されたいがために、本心を隠して日々を過ごしていた。 しかしある晩、情事の最中「猫かぶりはいい加減にしろ」と彼に言われてしまう。
夫に嫌われたくないが、自分に自信が持てないため涙するアリーズ。だがローデンヴェイクもまた、言いたいことを上手く伝えられないもどかしさを密かに抱えていた。
気持ちを伝え合った二人は、本音しか口にしない、隠し立てをしないという約束を交わし、身体を重ねるが……?
「こんな本性どこに隠してたんだか」
「構って欲しい人だったなんて、思いませんでしたわ」
さてさて、互いの本性を知った夫婦の行く末やいかに。
+ムーンライトノベルズにも掲載しております。
離宮に隠されるお妃様
agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか?
侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。
「何故呼ばれたか・・・わかるな?」
「何故・・・理由は存じませんが」
「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」
ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。
『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』
愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる