婚約者を妹に奪われ、家出して薬師になった令嬢は王太子から溺愛される。

二位関りをん

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第15話 情事の監視※

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「あれだよね」

 アダン様が媚薬の方を指さしながら、小声でそう問いかけたので私はすぐさま頷く。
 王妃アネーラは媚薬を入れ終わると、一旦部屋から退出していった。

(まさか、証拠を隠す為?)

 王妃アネーラが再び部屋に戻って来た時には、媚薬の瓶はどこにも見当たらなかった。

「やっぱり、どこかに瓶を捨ててる」

 アダンの小さな小さな鋭い声に、私は頷きながら目を細める。
 すると部屋に国王陛下が寝間着姿で現れた。

「国王陛下。お待ちしておりました」
「アネーラ。待たせてすまぬな」
「陛下、メイドにワインを用意させました。ぜひお飲みくださいませ」

 国王陛下は王妃アネーラから、媚薬の入った方のワイングラスを受け取ると、一口、二口程飲んだ。

「良い香りと味わいだ。どこのワインだ?」
「南方から取り寄せた品にございます」
「なるほど、そうか……色も良いな」

 媚薬を飲んだ国王陛下だが、今の所様子に特段変化は見られない。

(ちゃんと効いているのかよくわからない……)

 すると、ワインを一口飲んだ王妃アネーラが、国王陛下の左腕に抱き付く。

「陛下……」

 彼女の甘い声がこちらにも聞こえてきた。

「アネーラ……」
「陛下……」

 国王陛下は、王妃アネーラを抱き寄せて、深い口づけを交わし始めた。国王陛下の頬に少し赤みがさしているように見えるが、これが媚薬の効果なのかどうかまでは、まだ判断が難しい。

「んっ……」
「ふっ……」

 ベッドと右横に座り、口づけを交わす2人。見ているだけで私の息も荒くなる。
 すると、横にいたアダン様の姿がいない事に気づく。

(いない?! 一体どこに……)

 だが、私もこの場から動くのは何だかリスクがありそうで怖い。この場で留まりながら、国王夫妻の情事を見つめるといきなり誰かに尻を掴まれる。

(!)

 危ない。声を出す所だった。振り返ればアダン様が戻ってきていたのだった。

「どこへ?」
「これ、瓶を回収しといた。どうなってるかなぁ」

 アダン様の右手には媚薬が入っていた瓶が握られていた。彼は私に瓶を無言で渡すと、瓶の中が空になっているのが確認できた。
 そんな中。目の前の小窓からは、国王陛下が仰向けになりその上に王妃アネーラがうつ伏せになる形で抱き合っていた。

「陛下……今日も私の中に、子種をくださいませ」
「ああ……好きなだけ受け取るがよい」

 王妃アネーラは国王陛下の寝間着の帯を外し身体をさらけ出す。そして自身も帯を外すと、国王陛下のそれを自身の中に入れ込んだ。

「んっ……うん……」

 王妃アネーラの甘い嬌声がこちらまではっきりと聞こえてきた。彼女は自ら腰を上下や前後に揺らし、国王陛下に快楽を与えていく。

「あっ……はあん……」
(これが……2人の……)

 王妃アネーラと違い、国王陛下はただ仰向けになっているだけだ。時折王妃アネーラの腰の付近に手を添えたりはしているが、それ以外は動く気配が無い。

(なぜだ?)
「なるほどね」

 うんうん。とアダン様がうなづいている。何か思いついたのだろうか。私は思い切って小声でアダン様に聞いてみる事にした。

「何か、分かったんですか?」
「媚薬を使った理由だよ。要は、父上の精力剤代わりに使ってたんだ」

 精力剤なら、医薬庫の中にあるはずだが……。

「精力剤では、ダメなのでしょうか?」
「精力剤では効き目が少ないかアネーラが納得するくらいのやる気が出ないんだろう。だからより強力な媚薬を使っているという事だと思う」
「なるほど……」
「もう父上も年だからね。それにアネーラは……子供が早く欲しくて仕方がないのさ」

 そう語るアダン様の顔は、今まで見た事が無いくらいに、忌々しさを表していた。苦虫を噛み潰したかのような口元に、国王陛下の上で快楽に歪む王妃アネーラを睨みつけるような目つき。何もかもから王妃アネーラに対する敵意がにじみ出ていた。

(そんなに……)
「アダン様……」
「ごめんね。アネーラは後妻だから先妻の子である俺にとって血の繋がりは何にもない。だから俺が邪魔なんだよ」
「自身の子を、王太子につけたいと」
「そういう事さ。だから早く子供を。出来たら男子が欲しくてたまらないという訳さ」

 アダン様の冷たい言葉と、王妃アネーラの妖しい嬌声が同時に私の耳に入ってくる。温度差が違いすぎて風邪を引きそうだ。

「あっ……んんっ!」

 国王陛下の身体の上にまたがる様にして腰を振っていた王妃アネーラが、身体を震わせて快感に身をゆだねていった。

「ああーー……陛下の子種が私の中に……」

 王妃アネーラのその声は、まさに恍惚感でいっぱいだった。その様子をアダン様はじっと見逃す事無く目をそらす事もなく目に焼き付けている。

「はあっ……陛下っ……もっと、ご寵愛を……」
「アネーラ……好きなようにせよ」

 まだ彼らの絡みは続くようだ。そんな中。アダン様がいきなり私の左肩に手を乗せた。

「なんでしょうか……」
「ねえ、せっかくだし……俺らもしようよ」

 アダン様はそう言って私の左手を取ると後ろへ振り返り、早歩きでこの場から出ていく。私は彼の足についていくのがやっとだった。
 到着した先は、アダン様のお部屋。私はそのままふわふわと浮かぶ羽毛のように、ベッドへ押し倒される。

「あ、アダン様」
「ふふっ……」

 アダン様の笑みが、私の目に焼き付けられていく。

 
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