神様になったTS妖狐はのんびり生活したい~もふもふ妖狐になった新人神様は美少女となって便利な生活のため異世界と日本を往復する~

じゃくまる

文字の大きさ
52 / 180

第52話 夢

しおりを挟む
 無事に引継ぎを終えたその日の夜、ボクは夢を見ていた。
 知らない場所、知らない街、そして知らない時代。
 赤く燃える街を鎧兜と槍や刀で武装した人々が行きかう。
 木造の壁は燃え上がり、藁ぶきの屋根は赤く燃えて崩れ落ちる。
 土壁は辛うじて残るも、最後には支えを失って倒れて崩れ去ってしまった。
 ここはどこだろう。

「ここは日ノ本での争いの記憶の一つじゃな。時は平安末期といったところかのぅ」
 誰かの声が聞こえた。
 でも姿は見えない。

「よくある争いの一つじゃが、わしが生まれたのもこの時代じゃ」
 場所は変わりどこかの山のような場所。
 遠くに燃える村が見えていた。
 
「争い、欲望、そして怨嗟。まぁ色々なものが集まって渦巻いておった時代じゃな。わしら妖が生まれるのも道理じゃろう」
 そう声が聞こえた後、後ろからガサガサ茂みをかき分けるような音が聞こえた。
 後ろを振り向くと、そこには狐の耳と尻尾を持った男女と子供たち。

「今は亡き父御と母御、そして弟とわしの唯一の友人の女子じゃな。皆妖としては不完全で妖力も少なかった。当然寿命もそれなりじゃ」
 懐かしむような声が聞こえた後、場面は切り替わる。

 父母と弟の死を迎え、墓を作り、そして友人の女の子が死んだ。
 ボクは激しく慟哭した。

「あぁ。これはいかぬ。いつになっても悲しい出来事じゃ。じゃが、これが最初じゃったのかもしれぬ」
 声は震えていた。
 最初とは……?

 平穏そうに見えるのにどこか貧しい街が広がる。
 将軍と呼ばれた男性は辛うじて凛々しい姿をしているものの、付近の屋敷はどこか古く、手入れもあまりされていないように見えた。
 お金がないのだろう。

「わしが妖力を得てそれを伸ばしていた時の光景じゃな。たまに野盗狩りなどもしておったわい。懐かしいのぅ」
 まるで武士崩れのような汚い見た目の盗賊が襲ってくる。
 ボクはそれを切り伏せ、あるいは叩き潰して武具や金目の物を奪った。

「今でいうレベリングというやつじゃな。こやつらは弱いくせに威勢だけはよかったのぅ。まぁ弱者からしか奪えん連中じゃったが」
 一通り回収した後、ボクはその場を立ち去りどこかの山の木の上から街を見下ろしていた。

 風景は変わり、色々な場所で争いが起こった時代になった。
 農村の男性は出稼ぎに行き、兵士となってはどこかの武将の配下に就く。
 そんな時代。
 
 野盗を倒し、または変化をして戦場に乱入したボクは、なんとなく気に入った軍の味方をしては相手を突き崩していた。
 そんなことを繰り返すうちに、ボクの妖力は高まり、徐々に異界の力を手に入れるようになっていった。

「わしが【混沌】と呼ばれる力を手に入れたのはこのあたりからじゃった」
 この時点でこの声が誰なのか、ボクにはわかってしまった。

 場面は変わり、見るだけでもおぞましい粘性生物や触手の塊などと戦いそれを下し、いつしか軍勢を率いるようになっていた。

「こやつらを初めて見たときは尻尾の毛も逆立ったというものよ。じゃが慣れとは怖いもので、徐々に慣れていってしまってのぅ。今ではすっかり平気になってしまったのじゃ。それに見よ、あのスライムを」
 ボクの視界がスライムを捉える。
 見るだけでもおぞましい粘性生物は徐々に人型になり、可愛らしい美少女の姿となった。
 まぁ気配はそのままおぞましいわけだけど……。

「あやつはこの後、わしの妹分となったのじゃ。これが【混沌の狐】と呼ばれた、御神楽葛葉の生涯の一部よ。これより先はまだ見せるには早いのぅ」
 そう。この声はお婆様だ。
 これはお婆様の記憶なんだ。

「さて、わしの可愛い遥よ」
 いつの間にかボクは自由に視線を動かすことができるようになっていた。
 それと同時に、ボクの目の前にはボクと同じ姿をした黒髪赤目の妖狐の少女が現れた。

「お婆様……」
 お婆様はボクをそっと抱きしめると、こう耳元で囁いた。

「遥や。済まぬ。そなたが死んだのはわしのせいなのじゃ。わしがそなたと一緒に生まれ変わるために、そなたの人間としての生を犠牲にさせてしもうた」
「えっと、それはなんとも言えません。どう考えればいいのかもわかりません。日本には戻れないわけじゃないですし、お母さんたちにも会えています。まぁ唯一の違いは性別が変わったことくらいで……」
 お婆様に耳元で囁かれるのですごくぞくぞくしてしまったのは内緒だ。

「そなたが女子になった理由はあのあほうの悪ふざけもあるが、そう誘導したのはわしじゃ。そなたの魂の大本は、わしの唯一の友人の女子じゃ。ゆえにわしも共に居たくて、共に生まれ変わることを選んだのじゃ」
「えっ……」
 突然突き付けられた事実にボクは硬直した。
 さっき見た女の子が、ボク……?

「【混沌の力】を得てから知ったことじゃ。本当に申し訳ないことをしたのじゃ……」
「お婆様……」
 正直過去がどうとかわからないし、お婆様の気持ちもわからない。
 だからどういえばいいのかわからない。
 けど、それはもういいんじゃないかとも思う。

「大丈夫、です。それよりも……」
「なんじゃ?」
 ボクと同じ顔のお婆様が至近距離からボクをじっと見つめる。

「お婆様の肉体はないわけですけど、どうするつもり、なんですか? 生まれ変わると言っても……」
 魂は寄り添えるかもしれないけど、肉体はない。
 まさか、ボクが産む?

「心配するでない。そなたはわしと同じく【混沌の力】を得た。わしを通じてな。分け身を生み出すことが可能じゃ。そしてそれはわしであり、そなたでもある。わしはそなたの体を通して力を行使できるし、そなたも生み出された分け身を使って力を行使することもできる」
 つまり、一心同体ということなのか。

「そなたが死ねばわしも死ぬ。ただそれだけじゃ。若葉によって生み出された子がわしの唯一の後悔をなくしてくれたのじゃ。これ以上にうれしいことはあるまいて」
 お婆様は実にうれしそうに、目に涙を浮かべながらそう言った。

「お婆様……」
「そなたには、分け身を生み出せるようになってもらわねばのぅ。なあに、すぐじゃて。それと、予め予定されている通り、新たな領域を作り街を作るのじゃ。運営はほかのものに任せよ。よいな?」
「は、はい」
「うむ。さて、今宵はここまでじゃ。遥や、待っておるぞ。分け身は【混沌の力】を使い、うまく定着させるのじゃ。さすればできるようになるじゃろう」
 お婆様はそう言うとうっすらと薄くなり消えていった。

「お婆様……」
 そしてボクの意識は覚醒していくのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...