雑魚兎が貴族に飼われてもいいじゃない!?

べべ

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最終章:兎、頑張ります

最終章ー3

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 アーキンは、いかにも大人しい感じの少女だった。
 栗色の髪はマッチョメン譲りだが、肌は白い。やはりマッチョメンは日焼けしていたらしいな。
 鼻っ柱にはソバカスがついており、それがコンプレックスなのか、大きめのメガネをつけて隠しているように見える。
 長髪故か前髪も長めで、俯き具合では顔が隠れるくらいだな。

 歳はチビっ子と同じく9だと言うが、その割には落ち着いている。どっちかっつうと、坊っちゃんに近い。
 しかし、坊っちゃんが太陽だとイメージするなら、そいつは月って感じ。ロマンチックに言ったが、ようは根暗な雰囲気である。
 なんで、あのマッチョメンからこれが生まれるんだ?

「はっはっは! アーキンよ、ワシとゴウンは旧知の仲でな。もはや家族のようなものよ! そのようにかしこまる事はないぞ?」

「まぁ、すぐに慣れてとは言えないけどね。改めてよろしく、アーキンくん」

「よ、よろしくおねがいします……アーキン・ネサイア・クロードです……」

 ネサイアも名前にあんのな。
 てことは、マッチョメンはサニティ・ネサイア・クロードか。ほんと洒落てんなこの国の人の名前。
 あ、ちなみに坊っちゃん達は既に自己紹介済みだぞ。

「ははっ、まあ良い、慣れろ! それよりもゴウン、ネアヒリムよ。ワシは早く例のものを頂きたいのだが?」

 現在、俺たちは屋敷の食堂で朝餉あさげを待っているところである。
 マッチョメンは、まるで子供のように机をぽんぽこ叩きながら椅子をガタつかせている。
 アーキン……メガネはそれを見て、申し訳なさそうに俯いている。父親がガキンチョみたいで恥ずかしいんだなぁ。

「まぁまぁサニティ。この屋敷の料理長は待たせるのがお好きなのは知ってるだろう?」

「はぁん? あやつはまぁだそんな仕事をしとるのか! まったく、腕が良くてもそんなだから王宮の専属料理人を止めることになったのであろうに」

「ふふふ、そのおかげで彼程の料理人がこの屋敷に来てくれたのだから、彼の仕事の遅さには感謝しないとね?」

 ふぅん、料理長って昔はそんな地位にいたんだ。
 あの性格だと、絶対長続きしないと思うんだけど……。

『あはは、僕もそう思う……』

『だよなぁ。王族待たせても絶対飄々としてたと思うぞ……』

『料理の途中で新しいこと考えついて、絶対こっちのが美味しいって言って作り直したり~』

『あ~、ありそうありそう』

 俺と坊っちゃんが念話しながらクスクス笑っていると、ふと視線を感じた。
 ちらりとそちらを見てみると、メガネが俺らの方を見ているのに気づく。
 んで、そのメガネをチビっ子がじっと見ているというよくわからん構図ができていた。

「ねぇねぇ、アーキンちゃん」

「へ、ひゃい!?」

「さっきからお兄ちゃんの事見てるけど、どうしたの?」

「え、あ、その……」

 おぉ、流石はチビっ子。遠慮がねぇ。
 メガネのオーバーリアクションを意にも介さず語りかけてやがる。

「お兄ちゃんカッコいいもんね~、だから見てたの?」

「あ、や、違くて……その、うさぎ……」

「え~? デブ兎見てたの?」

「で、で? ぁや、それは……うん、珍しいな、って……」

 あぁ、そういう。

『お貴族様が雑魚兎と契約してて珍しい~ってか?』

『んもう、なんでそんなに卑屈なのさ~』

『冗談だよ。まぁ珍しいのはそうなんだろうな』

『んふふ、そうだねぇ』

 貴族様方の権力の定義は、契約獣がいい目安になるからな。
 俺みたいなのを契約獣にしてんのは坊っちゃんくらいのもんだろうな。

「カクっていう名前なんだよ」

「ひゃうっ!」

「可愛いでしょ」

 坊っちゃんも会話に参加し、笑いかける。
 マダム殺しのビューティースマイルを間近で受けてますが、メガネの瞳が焼かれてないか心配でならない。

「え、あ、う……か、カッコいい、です」

「え? そうなんだぁ。良かったねカク、カッコいいんだって!」

「……フス」

 違う、違うぞ坊っちゃん。
 今のワードは、絶対俺に言ったんじゃないと思うぞ。

「…………ほほぅ?」

「おやおや」

「まぁまぁ」

「っ! っ! うぅ~っ」

 あ~ぁ、大人衆の視線を受けて萎縮しちまった。
 あぁなったら立ち直るのに時間がかかるだろうな。なむなむ。
 ……それはそれとして、マジで料理長、遅くない? いつもより時間かかってるような気がするんだけど。

「旦那様、失礼します」

 俺が不思議に思っていると、聞き慣れない声が聞こえてきた。
 この辺じゃまったく聞かない、クール極まりない声だ。映画の声優とかになれそうだな。

 声の方向をを見てみると、使用人の服に身を包んだ、白髪の男性が立っていた。
 切れ長の瞳、高い鼻。ピンと伸びた背筋、氷のような雰囲気。
 コンステッド氏の柔らかな雰囲気とは真逆の、漫画に出てきそうな執事さんであった。

「おう、ファビュラス! なんだなんだ、どうした」

「ハ、コンステッドから言伝を預かって参りました」

 ファビュラスって名前の執事はうやうやしく一礼しつつ言葉を紡ぐ。
 一々絵になるなぁ、なんだこのえげつないかっこよさ。

「コンステッドから? どうかしたのかな」

「はい、コンステッドは厨房から離れられないということで、私が」

「……厨房?」

 この時全員の胸には、同様の予感がよぎっていたことだろう。
 安心しろみんな。俺もそうだ。

「厨房で、何か……あったのかな?」

「ハ、それが……厨房の責任者の方が、「今思いついた料理法の方が絶対美味しい」と言い出しまして、これから作り直すと……」

『『あんの馬鹿料理長ぅぅぅぅぅ!?』』

 俺と坊っちゃんは、即座に立ち上がって厨房に走った。
 本当に予想通りな事をやるやつがあるか! こちとら腹減ってんだよぉぉ!!
 
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