対人恐怖症は異世界でも下を向きがち

こう7

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街を訪ねて三千里

小話 親友はひ弱そうな少年

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「ただいま」

「あら、あなた。随分と遅かったわね。数日も家を空けるなんて‥浮気?」

「ぶふっ、馬鹿ちげーよ! ちょいとダチと話し込んでただけだよ。」

「あなたの友達? お向かいの木に住んでる方かしら?」

「いいや違うよ。新しく出来た友達さ、人間のな。」

「あなた変な木の実でも食べて、頭がおかしくなったの?人間は、私達うさぎを食料か運が良ければ愛玩動物にしか見てないわよ。大丈夫?」

妻がそう思うのも仕方ない。普通の人間は、俺らを食うか、捕まえて売るかだ。
でも、俺が出会ったアイツは間違いなく変人だ。

俺はユーリル大森林でいつものように夕飯用の果実を探していた。
でもゴブリンに捕まり、年貢の納め時だと諦めの境地にいた。妻や娘に心で謝罪していた。
そんな時、アイツが現れた。

初めて見たときは、ひ弱そうな人間の子供だと思った。俺を掴むゴブリンもそう思ってただろう。
にやにや笑ってたしな。


俺もこの人間も終わりだなと思ったよ。

でも違った。あいつがどうやったのかは知んねーが、あっという間にゴブリンは死んでいた。

見た目とは裏腹にかなりつえーみたいだ。
こんなに強いのになんで、切ったゴブリンをみて驚いてたのか不思議だ。

少年は俺を見た。
あー俺はどうなるんだ。こいつに食われる対象が変わっただけか。

でも、こいつはニコリと心配するように笑ってひと撫でしたら、すぐにゴブリンの処理をした。

俺をどうする気もないのか?
変なやつだ。だが、まあ礼儀はちゃんとしないとな。

俺は仕方なくしょうがなくお礼のためオーレの果実を取ってきた。

けっ、人間の子供のくせに嬉しそうに喜びやがって変なやつだ。
ったく、そんなに嬉しいなら他にも果実があるところ案内してやるか。全くしょうがないやつだ。


それから、こいつを案内している間に接して分かったことがある。こいつは俺を対等に見てくれている。ただの愛玩動物と見ていない。
嬉しいじゃねーか、ちくしょう。


こいつといる時間はいつの間にか楽しくなっていた。
でも、出会いがあれば当然別れもある。
馬鹿が‥たかが1匹のうさぎとの別れにそんな悲しそうな顔すんじゃねえよ。

俺には、妻や娘だっている。だからお別れだ、一旦な。

俺たちはいつまでも親友だ。

すぐに背中を向けて良かったぜ。目から汗が一向に止まらねー。


じゃあな、またな。

「あなた、大丈夫?ボーッとしてたけど、やっぱり変な木の実食べたのね。」

妻が心配そうに見ている。

「おぉ、すまんすまん。ちょっとそのダチのことを思い出してた。あいつは、変なやつだが良いやつだ。だから、大丈夫だ」

「ふふ、あなたがそこまで言うなんて是非会ってみたかったわ」
「今度来たら紹介するさ。また会おうって約束したしな」
「あら、楽しみだわ」

早く会いに来いよ、コータ。

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