4 / 25
第一章
2-2
しおりを挟む
しかし、予想に反して王子からの手紙が再び届いた。
《お返事ありがとうございます。
お手紙を読んでいて気が付いたのですが、私にはカイ様のことを「カイ」とお呼びするようにと言ってくださいましたが、それなら私も「アル」とお呼びください。
それに、カイは堅苦しい話し方は苦手ですよね?話し方も変えましょう。
その方がきっと仲良くなれますから。
貴方と仲良くなりたいアルミス より》
これは、あの手紙の仕返しとしか思えない。カイを嫌うどころか、対抗心に火をつけてしまったらしい。
しかし、カイも折れるわけにはいかない。
《それではアル様と呼ばせてもらいます。様は外しませんからね?話し方も少し砕けますけど後で文句は受け付けませんよ。
ところで父様が言ってましたが、アル様はご友人がいないと聞いてます。
学園でも俺の手紙と同じように話しかけてみてはいいかがでしょう。
すぐにお友達もできますよ。
友人が多いカイルア より》
父から聞いた話を引き合いに出して心を折る作戦だ。これなら行けるだろうと自信満々に手紙を出す。
ーーーしかし。
《様を外していただけないのは惜しいですが仕方がありませんね。
それで友人がいない事ですが、それは違いますよ。
友人は作ろうと思えば作れるのです。ただ、友人がいても私は忙しいので遊んだりはできません。
それに、私が話をしたいと思うのはカイだけですから。
カイのためのアルミス より》
ああ言えばこう言う精神で距離を詰めてくる。
しかもどこで知ったのか、恥ずかしい口説き文句付きだ。この人は本当に10歳なのか?と疑いたくなるほどだ。
もしかすると中身は立派な成人男性で、王子の皮を被っているのかもしれないとさえ思えてくる。
《アル様、俺はそんな言葉では落とせませんよ。
もう少し俺の好みになってから言ってください。
それにお友達との交流も大事です。そこから得られるものもありますからね。
この世に無駄なことなど存在しないのです。
誰のものでもない自由なカイルア より》
今度は説教じみたことを書いてみる。
すると、返事はこうだった。
《そんな安い言葉で落とせるだなんて思ってませんよ。
でも、カイの好みは気になりますね。ぜひ教えてください。きっとあなた好みの大人になってみせますから。
それから、友人の件も。あなたがそう仰るのなら、友達も悪くはないのかもしれませんね。いつになるのか分かりませんが、いつかの手紙を送る時には友人の話をできるようにしますので楽しみにしていてください。
成長中のアルミス より》
「成長中のアルミス」の部分は明らかに気合いの入った筆圧が強めの文字で書かれている。
それがあまりにも面白くて、この手紙には思わず笑ってしまった。
手紙は3日に1回のペースで届いた。
週に約2回。毎度毎度カイの話に食いついてくるアルミスからの手紙に返事を送ることがいつしか日課になっていた。
《俺の好みは頭が良くて身長も高く、スラッとした体型の綺麗系のお姉さんですよ。
そもそも、男性が恋愛対象ではないので……
「カ……さま……カイ様、、カイ様!」
「っ?!」
突然ダリアの声が聞こえて我に返る。
手紙の返事に夢中になりすぎて彼女の呼ぶ声に全く気が付かなかった。
「あれだけ色々おっしゃっていたのに、今は王子様にご執心ですか?」
「別にそういう訳じゃない」
「そうは言いますけど、手紙が届く日になると窓の外をチラチラと見てますよね」
カイはギクリとして目をそらした。
事実、カイは手紙を送って3日ほど経つと配達員が手紙をポストに入れに来るのを窓の外からこっそりと待っていたのだ。
まさか見られているとは。しかも、1番揶揄われる可能性のあるダリアに。
カイは今にも消え入りそうな声で「そんなわけない。たまたま配達員が来る様子が見えただけで……」とぼそぼそと言い訳をした。
「アル様はカイ様にさぞ本気かと思いますが。逃げ続けられるのも時間の問題ではないでしょうか」
「でも、まだ1回しか会ってない。手紙のやり取りでどうこうなる訳ないだろ」
「2回目にお会いするのもさして時間はかからないかと思いますが。そのときはどうされるのですか?」
それもそうだ。実はあれから手紙で何度か王城に来ないかという誘いは受けているものの、予定が合わないからという理由でそれとなく断っていた。
だが、手紙がこれだけ長く続いている以上ずっと会わない訳にもいかず、業務と言いながら街に出ていることも、その業務が大したことではないことも噂や父から漏れていれば更に質が悪い。
「そうだな……。次に手紙で誘われたときはさすがに行かないといけないだろうな」
口からは、胸の中にあるモヤモヤを全て吐き出すような大きなため息が出た。それでも、そのモヤモヤが解消される訳ではない。
「アル様との手紙は……正直面白い。面白いんだよ。あの人、全然折れないんだもん。王子だけど気を使わなくて良くて、しかも素直だし。友達だったらどれだけ良かったか……」
「いい大人がもんなんて使わないでください。気持ち悪いので」
ダリアは辛辣な一言を放ち、続けて言う。
「塵も積もればとはまさにこの事ですね。カイ様が日々送られてくる手紙にこんなにも振り回されるようになられて」
「なんだそれ」
「東洋のことわざですよ」
塵も積もれば山となる。手紙も重ねれば情も湧く。
3日ごとに積み重ねられる手紙の分だけ「楽しい」が増えれば悩みも増えていく。
父や国王のことを考えずにあっさり婚約を断ってしまえばよかったものを、ずるずると先延ばしにした結果がこれだ。
王子に情が湧いてしまっている今、彼を傷つけたくないと思うのはカイの良心だった。
《お返事ありがとうございます。
お手紙を読んでいて気が付いたのですが、私にはカイ様のことを「カイ」とお呼びするようにと言ってくださいましたが、それなら私も「アル」とお呼びください。
それに、カイは堅苦しい話し方は苦手ですよね?話し方も変えましょう。
その方がきっと仲良くなれますから。
貴方と仲良くなりたいアルミス より》
これは、あの手紙の仕返しとしか思えない。カイを嫌うどころか、対抗心に火をつけてしまったらしい。
しかし、カイも折れるわけにはいかない。
《それではアル様と呼ばせてもらいます。様は外しませんからね?話し方も少し砕けますけど後で文句は受け付けませんよ。
ところで父様が言ってましたが、アル様はご友人がいないと聞いてます。
学園でも俺の手紙と同じように話しかけてみてはいいかがでしょう。
すぐにお友達もできますよ。
友人が多いカイルア より》
父から聞いた話を引き合いに出して心を折る作戦だ。これなら行けるだろうと自信満々に手紙を出す。
ーーーしかし。
《様を外していただけないのは惜しいですが仕方がありませんね。
それで友人がいない事ですが、それは違いますよ。
友人は作ろうと思えば作れるのです。ただ、友人がいても私は忙しいので遊んだりはできません。
それに、私が話をしたいと思うのはカイだけですから。
カイのためのアルミス より》
ああ言えばこう言う精神で距離を詰めてくる。
しかもどこで知ったのか、恥ずかしい口説き文句付きだ。この人は本当に10歳なのか?と疑いたくなるほどだ。
もしかすると中身は立派な成人男性で、王子の皮を被っているのかもしれないとさえ思えてくる。
《アル様、俺はそんな言葉では落とせませんよ。
もう少し俺の好みになってから言ってください。
それにお友達との交流も大事です。そこから得られるものもありますからね。
この世に無駄なことなど存在しないのです。
誰のものでもない自由なカイルア より》
今度は説教じみたことを書いてみる。
すると、返事はこうだった。
《そんな安い言葉で落とせるだなんて思ってませんよ。
でも、カイの好みは気になりますね。ぜひ教えてください。きっとあなた好みの大人になってみせますから。
それから、友人の件も。あなたがそう仰るのなら、友達も悪くはないのかもしれませんね。いつになるのか分かりませんが、いつかの手紙を送る時には友人の話をできるようにしますので楽しみにしていてください。
成長中のアルミス より》
「成長中のアルミス」の部分は明らかに気合いの入った筆圧が強めの文字で書かれている。
それがあまりにも面白くて、この手紙には思わず笑ってしまった。
手紙は3日に1回のペースで届いた。
週に約2回。毎度毎度カイの話に食いついてくるアルミスからの手紙に返事を送ることがいつしか日課になっていた。
《俺の好みは頭が良くて身長も高く、スラッとした体型の綺麗系のお姉さんですよ。
そもそも、男性が恋愛対象ではないので……
「カ……さま……カイ様、、カイ様!」
「っ?!」
突然ダリアの声が聞こえて我に返る。
手紙の返事に夢中になりすぎて彼女の呼ぶ声に全く気が付かなかった。
「あれだけ色々おっしゃっていたのに、今は王子様にご執心ですか?」
「別にそういう訳じゃない」
「そうは言いますけど、手紙が届く日になると窓の外をチラチラと見てますよね」
カイはギクリとして目をそらした。
事実、カイは手紙を送って3日ほど経つと配達員が手紙をポストに入れに来るのを窓の外からこっそりと待っていたのだ。
まさか見られているとは。しかも、1番揶揄われる可能性のあるダリアに。
カイは今にも消え入りそうな声で「そんなわけない。たまたま配達員が来る様子が見えただけで……」とぼそぼそと言い訳をした。
「アル様はカイ様にさぞ本気かと思いますが。逃げ続けられるのも時間の問題ではないでしょうか」
「でも、まだ1回しか会ってない。手紙のやり取りでどうこうなる訳ないだろ」
「2回目にお会いするのもさして時間はかからないかと思いますが。そのときはどうされるのですか?」
それもそうだ。実はあれから手紙で何度か王城に来ないかという誘いは受けているものの、予定が合わないからという理由でそれとなく断っていた。
だが、手紙がこれだけ長く続いている以上ずっと会わない訳にもいかず、業務と言いながら街に出ていることも、その業務が大したことではないことも噂や父から漏れていれば更に質が悪い。
「そうだな……。次に手紙で誘われたときはさすがに行かないといけないだろうな」
口からは、胸の中にあるモヤモヤを全て吐き出すような大きなため息が出た。それでも、そのモヤモヤが解消される訳ではない。
「アル様との手紙は……正直面白い。面白いんだよ。あの人、全然折れないんだもん。王子だけど気を使わなくて良くて、しかも素直だし。友達だったらどれだけ良かったか……」
「いい大人がもんなんて使わないでください。気持ち悪いので」
ダリアは辛辣な一言を放ち、続けて言う。
「塵も積もればとはまさにこの事ですね。カイ様が日々送られてくる手紙にこんなにも振り回されるようになられて」
「なんだそれ」
「東洋のことわざですよ」
塵も積もれば山となる。手紙も重ねれば情も湧く。
3日ごとに積み重ねられる手紙の分だけ「楽しい」が増えれば悩みも増えていく。
父や国王のことを考えずにあっさり婚約を断ってしまえばよかったものを、ずるずると先延ばしにした結果がこれだ。
王子に情が湧いてしまっている今、彼を傷つけたくないと思うのはカイの良心だった。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】俺の顔が良いのが悪い
香澄京耶
BL
顔が良すぎて祖国を追い出されたルシエル。
人目を避けて学院で研究に没頭する日々だったが、なぜか“王子様”と呼ばれる後輩ラウェルに懐かれて――。
「僕は、あなたそのものに惚れたんです。」
重くて甘い溺愛攻め × こじらせ美形受
※イラストはAI生成です。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
夜が明けなければいいのに(洋風)
万里
BL
大国の第三皇子・ルシアンは、幼い頃から「王位には縁のない皇子」として育てられてきた。輝く金髪と碧眼を持つその美貌は、まるで人形のように完璧だが、どこか冷ややかで近寄りがたい。
しかしその裏には、誰よりも繊細で、愛されたいと願う幼い心が隠されている。
そんなルシアンに、ある日突然、国の命運を背負う役目が降りかかる。
長年対立してきた隣国との和平の証として、敵国の大公令嬢への婿入り――実質的な“人質”としての政略結婚が正式に決まったのだ。
「名誉ある生贄」。
それが自分に与えられた役割だと、ルシアンは理解していた。
部屋に戻ると、いつものように従者のカイルが静かに迎える。
黒髪の護衛騎士――幼い頃からずっと傍にいてくれた唯一の存在。
本当は、別れが怖くてたまらない。
けれど、その弱さを見せることができない。
「やっとこの退屈な城から出られる。せいせいする」
心にもない言葉を吐き捨てる。
カイルが引き止めてくれることを、どこかで期待しながら。
だがカイルは、いつもと変わらぬ落ち着いた声で告げる。
「……おめでとうございます、殿下」
恭しく頭を下げるその姿は、あまりにも遠い。
その淡々とした態度が、ルシアンの胸に鋭く突き刺さる。
――おめでとうなんて、言わないでほしかった。
――本当は、行きたくなんてないのに。
和風と洋風はどちらも大筋は同じようにしようかと。ところどころ違うかもしれませんが。
お楽しみいただければ幸いです。
天涯孤独になった少年は、元軍人の優しいオジサンと幸せに生きる
ir(いる)
BL
※2025/11 プロローグを追加しました
ファンタジー。最愛の父を亡くした後、恋人(不倫相手)と再婚したい母に騙されて捨てられた12歳の少年。30歳の元軍人の男性との出会いで傷付いた心を癒してもらい、恋(主人公からの片思い)をする物語。
※序盤は主人公が悲しむシーンが多いです。
※主人公と相手が出会うまで、少しかかります(28話)
※BL的展開になるまでに、結構かかる予定です。主人公が恋心を自覚するようでしないのは51話くらい?
※女性は普通に登場しますが、他に明確な相手がいたり、恋愛目線で主人公たちを見ていない人ばかりです。
※同性愛者もいますが、異性愛が主流の世界です。なので主人公は、男なのに男を好きになる自分はおかしいのでは?と悩みます。
※主人公のお相手は、保護者として主人公を温かく見守り、支えたいと思っています。
パブリック・スクール─薔薇の階級と精の儀式─
不来方しい
BL
教団が営むパブリックスクール・シンヴォーレ学園。孤島にある学園は白い塀で囲まれ、外部からは一切の情報が遮断された世界となっていた。
親元から離された子供は強制的に宗教団の一員とされ、それ相応の教育が施される。
十八歳になる頃、学園では神のお告げを聞く役割である神の御子を決める儀式が行われる。必ずなれるわけでもなく、適正のある生徒が選ばれると予備生として特別な授業と儀式を受けることになり、残念ながらクリスも選ばれてしまった。
神を崇める教団というのは真っ赤な嘘で、予備生に選ばれてしまったクリスは毎月淫猥な儀式に参加しなければならず、すべてを知ったクリスは裏切られた気持ちで絶望の淵に立たされた。
今年から新しく学園へ配属されたリチャードは、クリスの学年の監督官となる。横暴で無愛想、教団の犬かと思いきや、教団の魔の手からなにかとクリスを守ろうする。教団に対する裏切り行為は極刑に値するが、なぜかリチャードは協定を組もうと話を持ちかけてきた。疑問に思うクリスだが、どうしても味方が必要性あるクリスとしては、どんな見返りを求められても承諾するしかなかった。
ナイトとなったリチャードに、クリスは次第に惹かれていき……。
神獣様の森にて。
しゅ
BL
どこ、ここ.......?
俺は橋本 俊。
残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。
そう。そのはずである。
いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。
7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。
贖罪公爵長男とのんきな俺
侑希
BL
異世界転生したら子爵家に生まれたけれど自分以外一家全滅という惨事に見舞われたレオン。
貴族生活に恐れ慄いたレオンは自分を死んだことにして平民のリオとして生きることにした。
一方公爵家の長男であるフレドリックは当時流行っていた児童小説の影響で、公爵家に身を寄せていたレオンにひどい言葉をぶつけてしまう。その後すぐにレオンが死んだと知らされたフレドリックは、以降十年、ひたすらそのことを悔いて生活していた。
そして十年後、二人はフレドリックとリオとして再会することになる。
・フレドリック視点は重め、レオン及びリオ視点は軽め
・異世界転生がちょいちょい発生する世界。色々な世界の色々な時代からの転生者の影響で文明が若干ちぐはぐ。
・世界観ふんわり 細かいことは気にしないで読んでください。
・CP固定・ご都合主義・ハピエン
・他サイト掲載予定あり
神の寵愛を受ける僕に勝てるとでも?
雨霧れいん
BL
生まれるのがもっともっと今より昔なら、”信仰”することが”異端”でない時代なら世界ならよかったと、ずっと思って生きていた。あの日までは
溺愛神様×王様系聖職者
【 登場人物 】
ファノーネ・ジヴェア →キラを溺愛し続ける最高神
キラ・マリアドール(水無瀬キラ)→転生してから寵愛を自覚した自分の道を行く王様系聖職者
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる