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第一章

12 気遣い※

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 一成の青い瞳に欲望が滲むのが分かった。
 その青は深い海の色をしている。懐かしいような、悍ましいような、綺麗な色をしていて、瞳は嫌いになれない。
 玲はその膝から降りて、滑らかなカーペットの上に座り込んだ。一成の股の間に割り込み、恐る恐る彼の下半身に手を伸ばす。
 ゴスケを呼ばれなくてよかった。友人に真っ先に電話をかけなくてよかった。本当に……もし彼を呼ばれていたらこうはいかない。
 今後も気をつけないと。玲が出来ることは一成の気を引くことだ。
「触っていいですか」
「好きにしろ」
 一成は鋭い眼差しで玲を見下ろしていた。決して冷めた瞳ではない。むしろ熱が孕み始めている。
 スウェットを着ているからジッパーが見当たらない。布越しに股間を撫でると、玲の意図を察した一成は腰を上げて、ボトムと下着をずらした。
「……っ」
「咥えるなら咥えろ」
 まだ柔らかい性器が露わになる。勃起していないのに既に大きかった。勃ち上がったらどれ程になるのだろうと想像し、ゾッとする。
 一体、自分は何をしているのか。頭が冷えかけるが、息を吐いてその思考を放棄する。
 こんなの大したことではない。大丈夫。今までだってどうにかしてきたのだ。一成に暴力を振るってくる気配もない。ならばむしろ少し間違えたっていいくらいだ。
 玲は慎重に性器に触れる。まるで反応を見せないそれを勃たせるために。
「……大きいですね」
「……」
 小さく感想を呟くが無反応だった。上目遣いで見上げると、一成は無表情で玲を見下ろしている。
 ごく、と唾を飲み込んでペニスに触れる。
 人肌の体温だった。竿を柔い力で握りしめて、亀頭を唇で喰む。
 カリ首を咥えて口内におさめる。出来る限り咥え込んで、口の中全体を使って丁寧に愛撫する。
「ちっせぇ口だな」
「ふ、ふいまへ」
「そこで喋んな」
 自分主体のフェラは慣れていない。でもちゃんと気持ちよくしないと。
 口を窄めてペニスを吸うように刺激する。空気に触れている竿の箇所も、両手で擦り上げる。
 一成のペニスは日本人離れした大きさだった。アルファらしいと言えばそうだが、徐々に硬くなっていくと、より凶器じみていく。
「んっ、ふ……ん」
 こんなに大きな性器は見たことない。体格がしっかりしているからだろう。
 考えながら扱いていくが、徐々に思考もぼやけてくる。
 唾液が唇の端から漏れて顎に伝っていく。先走りが溢れて、玲の口内で混じった。
「んぅ、……ッ、ぅ」
「……あー……」
 生温かったペニスの熱が増した。一成が唸るように低い声を出す。
 かなりの時間がかかったが勃起している。拙いフェラだったが、一成は文句を言わなかった。
 唯一彼がするのは、
「下向くな」
 玲が視線を落とすたび、顔を上げさせることくらいだ。
 大きな手で髪を撫でてくる。骨ばった指が耳に触れた。耳たぶをいじられると、ぞくっと背筋が震え上がった。
 玲は意を決して喉奥までペニスを咥える。
 上顎と舌で剛直に吸い付き、上下に顔を動かした。
「奥まで喰らって、偉いじゃねぇか」
 一成が揶揄うように、けれど余裕ない口ぶりで呟いた。目元がかすかに赤らんでいる。発情の証だ。
 反り上がった竿は脈が浮き立っていた。熱くて湿ったそれを手で愛撫していくと、一成が眉間の皺を寄せる。
 腰が僅かに動いた。絶頂が近いらしい。
 予感すると同時、一成が絞り出すような声を出した。
「あー……出る」
「……んぐっ、……ッ」
 性器がぶるりと震えて口内に勢いよく吐精される。苦味が舌の上に広がる。熱い。
 ずるっとペニスが抜けると玲は途端に咳をした。
 とても苦しかったが、一成を絶頂させることができた。良いのか悪いのか達成感が胸に広がるが、どうしても不味すぎる。
「何咥えてんだよ。さっさと離せばよかっただろ」
「んっ」
 射精した癖に文句を言っている一成が玲の両頬を片手で掴んできた。
 一成は玲の舌に残った陰毛を指で摘み、自分のモノなのに嫌そうな顔をして灰皿に捨てる。ティッシュを数枚引き抜くと口の中の精液を拭ってきた。
 舌を拭き取られれば嘔吐感に襲われた。ケホ、とまた咳をしていると、一成が両脇に腕を差し入れてくる。
「必死になって吸いやがってたな」
 あっという間に膝の上に乗せられてしまう。先ほどから軽々と持ち上げてくるが、玲をぬいぐるみか何かだと思っているのだろうか。
 ぬいぐるみには射精しないよな。尻の下の一成の性器を気にしながらも、玲は彼を見つめた。
「……下手でしたか?」
「下手」
 容赦なく言うから、「でも射精したじゃないですか」とぼやく。
 一成は嘲笑うように鼻を鳴らした。
「お情けの吐精な」
「なんですか、それ」
「気遣いの射精」
「……」
「まだ口元汚れてるぞ」
「むぅ」
 強引に唇をティッシュで拭われる。一成は丸めたティッシュをテーブルへ投げた。
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