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第五章
66 はじめて
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キスは激しくなっていく。まるで貪られるようだった。自分よりも一回りも大きな体に覆い被さられると、逃げ場などどこにもない。唇を重ねながらもロドリックが、その大きな硬い手のひらで、ユリアンの細い体を抱きしめてきた。
「ん、ふっ……」
「ユリアン、」
背骨のあたりを大事そうに撫でた手は、脇腹を辿って腰を抱く。ユリアンのヒートに当てられたロドリックは顔を赤く染めて、黄金の目を色濃くしていた。
そのロドリックの発情にユリアンも翻弄されて、頭が蕩けていく。ロドリックはキスを止めたら死んでしまうかのように求めてくるので、ユリアンは緩く唇を開いたままにしていた。
ロドリックとのキスは信じられないほど気持ちが良かった。口内の至る所を撫であげる熱い舌をユリアンも欲している。ユリアンのヒートから始まった筈なのに、ロドリックのフェロモンに頭も全身も侵されて、はっきりと発情を感じてしまう。
ロドリックの片手はユリアンの腰を抱き、もう片方は頭を掴んで離さなかった。ますますその男のフェロモンが強くなり、甘いキスが絶え間なく交わされる。
情欲に溶けていくロドリックの瞳がユリアンを見下ろした。すると唇が離れて、ユリアンの唇の端から唾液が溢れる。ロドリックはすっかり発情に支配されているらしく、どろどろに蕩けた瞳を細め、こぼれた唾液すら舐めとってきた。
二人はフェロモンの渦に溺れている。ロドリックの下半身の昂りが、服越しにユリアンの太ももに押し当てられる。
もうとっくに理性など燃え切れているような顔をしているのに、ロドリックは言った。
「ユリアン、助けてくれるのか?」
ユリアンは思わず、頬を緩めた。
ロドリックの黄金の目は涙で潤んでいる。戦場で鍛え上げられた、硬くて大きくて何者にも屈しない体をした年上の男が、自分に縋っている姿は、胸が爛れそうなほどに可愛く思えた。
もう、自分もどうかしているのかもしれない。あの牢獄から救われて、ヒートが起きて、頭が狂いかけている。
まあ、でも、それでもいいか。
「ロドリック様」
ユリアンは、頬を撫でてくるロドリックの手のひらに頬を擦り付けた。ふんわりと微笑み、その手にキスをしてから自分の手を絡める。こんな風に他人に甘えるなんて自分でも信じ難いけれど、心は緩んで脱力している。
「僕、今、安心してるんです」
唐突な言葉にロドリックが目を見開く。ユリアンは、小刻みに震える彼の手にまたキスをした。
別の国にいたはずのロドリックは、あの凍えるほどに冷たい牢獄まで助けにきてくれた。ユリアンは不意に思う。もしかしてこの人は、どこにいても駆けつけてくれるのだろうか。だとするならば、それほど頼もしいことはない。
「体は重くて熱いけど、心はびっくりするほど軽いんです。太陽の下に出てきたような、明るい気持ちになってるんです。今の僕には、ロドリック様を助けることなんて容易いんですよ」
「……そうか」
ロドリックはすると、安心したように目を細める。流れるように顔を近づけて、また唇を重ねてきた。ひとときも離れないようにキスを繰り返すロドリックだが、合間に彼は言った。
「ユリアン、先に言っておく」
「んっ、……? はい」
「俺は初めてだからな」
「え?」
「こうした営みは、人生でしたことがない」
「……」
力強く言い切るロドリックは、余裕がなさそうにユリアンの頬に、そして耳に甘噛みしてくる。肌の全てを食むようにキスをするロドリックの、黒髪を撫でてみる。
「今までに一度も?」
「必要がなかったからな」
思い出すのは、ロドリックが『再婚はしない』と言った日のことだ。再婚はしないし子供を作る気もないと断言していたが、あれは本当だったのか。
「随分と戦場での生活も長かった。そうした欲求も、俺にはなかった」
もしかして反応しなかったのだろうか。ロドリックの精神環境から見ても無理はない。ユリアンもまた経験はないが、一応は男として「大変でしたね」と頭を撫でてみると、ロドリックは「だが今は」と鎖骨を甘噛みをした。
「ユリアンを抱きたい。あぁ、どうなってるんだ。君はどうしてこうも甘いのか」
「ん、ぅ……」
「ん、ふっ……」
「ユリアン、」
背骨のあたりを大事そうに撫でた手は、脇腹を辿って腰を抱く。ユリアンのヒートに当てられたロドリックは顔を赤く染めて、黄金の目を色濃くしていた。
そのロドリックの発情にユリアンも翻弄されて、頭が蕩けていく。ロドリックはキスを止めたら死んでしまうかのように求めてくるので、ユリアンは緩く唇を開いたままにしていた。
ロドリックとのキスは信じられないほど気持ちが良かった。口内の至る所を撫であげる熱い舌をユリアンも欲している。ユリアンのヒートから始まった筈なのに、ロドリックのフェロモンに頭も全身も侵されて、はっきりと発情を感じてしまう。
ロドリックの片手はユリアンの腰を抱き、もう片方は頭を掴んで離さなかった。ますますその男のフェロモンが強くなり、甘いキスが絶え間なく交わされる。
情欲に溶けていくロドリックの瞳がユリアンを見下ろした。すると唇が離れて、ユリアンの唇の端から唾液が溢れる。ロドリックはすっかり発情に支配されているらしく、どろどろに蕩けた瞳を細め、こぼれた唾液すら舐めとってきた。
二人はフェロモンの渦に溺れている。ロドリックの下半身の昂りが、服越しにユリアンの太ももに押し当てられる。
もうとっくに理性など燃え切れているような顔をしているのに、ロドリックは言った。
「ユリアン、助けてくれるのか?」
ユリアンは思わず、頬を緩めた。
ロドリックの黄金の目は涙で潤んでいる。戦場で鍛え上げられた、硬くて大きくて何者にも屈しない体をした年上の男が、自分に縋っている姿は、胸が爛れそうなほどに可愛く思えた。
もう、自分もどうかしているのかもしれない。あの牢獄から救われて、ヒートが起きて、頭が狂いかけている。
まあ、でも、それでもいいか。
「ロドリック様」
ユリアンは、頬を撫でてくるロドリックの手のひらに頬を擦り付けた。ふんわりと微笑み、その手にキスをしてから自分の手を絡める。こんな風に他人に甘えるなんて自分でも信じ難いけれど、心は緩んで脱力している。
「僕、今、安心してるんです」
唐突な言葉にロドリックが目を見開く。ユリアンは、小刻みに震える彼の手にまたキスをした。
別の国にいたはずのロドリックは、あの凍えるほどに冷たい牢獄まで助けにきてくれた。ユリアンは不意に思う。もしかしてこの人は、どこにいても駆けつけてくれるのだろうか。だとするならば、それほど頼もしいことはない。
「体は重くて熱いけど、心はびっくりするほど軽いんです。太陽の下に出てきたような、明るい気持ちになってるんです。今の僕には、ロドリック様を助けることなんて容易いんですよ」
「……そうか」
ロドリックはすると、安心したように目を細める。流れるように顔を近づけて、また唇を重ねてきた。ひとときも離れないようにキスを繰り返すロドリックだが、合間に彼は言った。
「ユリアン、先に言っておく」
「んっ、……? はい」
「俺は初めてだからな」
「え?」
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「……」
力強く言い切るロドリックは、余裕がなさそうにユリアンの頬に、そして耳に甘噛みしてくる。肌の全てを食むようにキスをするロドリックの、黒髪を撫でてみる。
「今までに一度も?」
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「随分と戦場での生活も長かった。そうした欲求も、俺にはなかった」
もしかして反応しなかったのだろうか。ロドリックの精神環境から見ても無理はない。ユリアンもまた経験はないが、一応は男として「大変でしたね」と頭を撫でてみると、ロドリックは「だが今は」と鎖骨を甘噛みをした。
「ユリアンを抱きたい。あぁ、どうなってるんだ。君はどうしてこうも甘いのか」
「ん、ぅ……」
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