悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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魔法と医療と立ち直りの早いお嬢様

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もぐもぐと頬を膨らませて軽食を頬張るウィスクムを見ながら、マリアローゼは今迄読んだ本と照らし合わせて情報を整理した。
主に血統によって得意分野が決められる、貴族の使う基本的な魔法が属性魔法。
この魔法は光、闇、火、水、風、土に主に分類され、属性ごとに特殊な魔法が使える。
基本的には自分の持っていない属性に分類される魔法は使用出来ない。

魔術師は、その属性魔法を越えて「元素魔法」として魔法を行使できる。
だが、元々の属性が有利に働く為、同じ魔法を使った場合属性を持っている方が効果が大きい。
また、様々な元素を組み合わせて術式を組む事で、新しい魔法を生み出す事が出来る。
少しの魔力さえあれば使える生活魔法という基盤を創ったと言われる「創造魔法」

神聖魔法は、神聖教の聖典である神聖教本、神聖経典とも言われる、通称「聖書」を読める事と、信仰心があれば
神の奇跡として魔法を使う事が出来る。
ただしここでも属性魔法という壁はあるのだ。
一番低い等級のキュアという小回復は誰でも扱えるが、表面の傷を癒すだけの魔法で、身体の内部に及ぶ裂傷などは
光の属性を含むヒールという回復魔法でしか治せない。

でも。

「回復魔法について、お尋ねしたいのですけれど。光属性がないと神聖教でもヒールは使えないと思うのですが、それでも身体の欠損は治せませんよね?」

「うむ。絶対ではねーけど、癒術師の精度と魔力の強さにもよるなぁ」

「わたくしの行った事はご存知ですか?」

マスロで癒したダンという冒険者は、失った足を繋げて癒した事で一命を取り留めたし、歩けるようにもなったのだ。
ウィスクムはニッコリと微笑んで頷いた。

「ああ。医術と癒術を組み合わせたんだろ?ジェレイドも昔、似たような事をした事があってな、今でも研究してる筈だ」

「ま、まあ……それは素晴らしいですわ!……けれど、何故その方法が普及しておりませんの?神聖教と反目しない為、なのですか?」

人の命や人生よりも、宗教としての体面を選ぶのか?と怒りは沸くが、選ぶのが宗教団体というものである。
だが、ウィスクムは首を捻った。
その顔は何かを隠しているようだ。

「あー…そうかもなー、いや、どうだったかなー?」
「レイ様に直接訊いた方が宜しくて?それなら先生…いえ、ウィスクムさんの手を煩わせる事もありませんわね」

先生と一度呼んで名前を呼び直すことで、先生と呼ばねーぞこの野郎という意味を込めて見詰めると、ウィスクムはあっさりと引き下がった。
引き下がったと言うより前に出てきた。

「いやいや、ウィスクム先生が教えてあげるよ!何でもね、君が聖女として名声を馳せる可能性があるから、秘匿するんだって言ってたよ!今は臓器移植に関してまで、ジェレイドは研究を進めてるはずだ!」

(たかが、そんな事くらいで……)

マリアローゼの顔がスウッと蒼白になった。
望みもしない聖女伝説の為に、失われたかもしれない命と冒険者生命を思うと、怒りと遣る瀬無さで身体が震える。
だが、のんびりとした様子でウィスクムは言う。

「ジェレイドがもしその方法を確立していたら、どうなっていたか?助かる命もあったかもしれないが、まず間違いなく王家がジェレイドを囲い込んだだろう。ということは、だ。フィロソフィ公爵家の当主もどんなに当人達が拒んだところで、王と前公爵でジェレイドに決定しただろう。王命で、ジェレイドとミルリーリウムの結婚、という事になれば…」

「わたくしが生まれなかった……?」

「いいや、君だけじゃない。君の兄達も全員、生まれていないだろうな」

(お兄様達…。
ああ、結局自分勝手と決め付けてわたくしは怒ってしまったけれど、同じなのだわ。
あの時、オリーヴェを見捨てたわたくしと、同じ選択をしただけ。
それを責めようとしていたなんて、浅慮過ぎる自分に失望してしまいそう)

しゅん、と勢いをなくした幼女に、ウィスクムは手を伸ばして頭を優しく撫でた。

「俺もジェレイドも君を待っていたし、君がいるから救われた人々だっているんだから悪い選択じゃない筈だ。それに、これからもっと救われる人々がいる」

マリアローゼは、心配そうに見詰めるルーナとオリーヴェが頷いて見せるのを視界に収めて頷いた。

(後ろ向きになっても良い事はありませんわね!)

「では、今後はその方法は冒険者ギルド経由で広めて参りましょう」
「おお?……お、おう。立ち直りはえーな」

気持ちの切り替えが早いのは自他共に認めるところになったマリアローゼは、ふんす!と頷いた。
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