悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

文字の大きさ
252 / 319
連載

価値観が似ている二人

しおりを挟む
馬車から降りる時にマリアローゼを抱えたシルヴァインが、そのまま歩き出そうとするのでマリアローゼは抵抗して小さな足をぱたぱたと動かした。

「お兄様、降ろして下さいませ。自分で歩けますし、レイ様にまず会いに行きたいのです」
「呼んだかな?」

馬車の陰から出てきた人物に、ひっとマリアローゼは小さく悲鳴を上げた。
会いに行こうとしたその人、ジェレイドだったのである。

「折角だから、僕が案内しようと思ってね。さあ、我が愛しのマリアローゼを寄越し給え」

バッと両手を広げてから、シルヴァインに手を伸ばして、マリアローゼを受け取る体勢に入ったので、シルヴァインはニヤリと不遜な笑顔を見せた。

「いいえ。丁度今、マリアローゼの願いを聞いて、降ろそうとしていた所でしたので」

シルヴァインは伸ばされたジェレイドの手を無視して、マリアローゼを優しく地面に降り立たせた。
諦め悪く、今度はマリアローゼに伸ばしてきた手を、マリアローゼ自身が手でぺちりと叩き落とす。

「お兄様の仰るとおりで御座いますので、お構いなく!それよりもレイ様にお願いがあるのです。レイ様にしかお願い出来ない事なのです」

マリアローゼが大きな瞳を輝かせて見上げると、ジェレイドは片膝を付いて胸に手を当てた。

「何でも、何でも叶えよう、我が姫よ」

(一々大袈裟過ぎますわ!)

突っ込みを入れたいのを我慢して、マリアローゼはにっこりと微笑んだ。
料理に必要な器具を作って欲しいと思っていたのである。

「本来ならわたくしが、工房に出向きたいところなのですが、生憎時間も限られておりますので、レイ様に監修して頂きたいのです」

「ふむ、何を作らせればいいのかな?」

ニコニコと手を伸ばしてジェレイドが髪や頬を撫でてくるが、頼みごとをしている手前、それを拒否するのは止めて、マリアローゼは先を続けた。

「まずは自動で出来るカキ氷機、これは町で店や屋台で使う事を考えて20機くらいは欲しいところです」
「ほう、カキ氷か、いいね!」

ジェレイドは相変わらずニコニコしながら、マリアローゼを愛で続けている。
一呼吸置いて、マリアローゼは作って欲しい物について再び話し出す。

「わたくしもお料理の際に使いたいので、ピーラーにスライサーにミキサー、泡だて器もお願い致します」
「ふむふむ。では料理に使う君の為の道具一式を用意させようね」

君の為の、という言い方に引っかかりを覚えて、マリアローゼはこてん、と首を傾げた。

「料理の道具ですけど、お城では使いませんの?」
「うーん、商会のレストランになら提供してもいいとは思う。けれど、」

そこで、言葉を区切って、地面についていた膝から土を払ってジェレイドは立ち上がった。

「城の厨房には沢山の料理人や使用人が勤めているからね。彼らの仕事を奪ったり減らしたりする訳にはいかない。宴の時には下処理も膨大になるけれど、街の人々の臨時の働き口にもなるんだよ」
「なるほど、便利な道具があると、それを妨げてしまうという事ですわね?ご指摘感謝致します、レイ様」

小さくお辞儀をするマリアローゼに、ジェレイドは笑み零れた。

「本当に君は素晴らしい淑女だ。頭も良くて、礼儀正しくて、こんなに愛らしいなんて」

突然手が伸ばされて、抵抗出来ないままマリアローゼは宙高く持ち上げられた上、ジェレイドにぐるぐると回された。
ぐるぐるぐるぐる。

「も、もうお止めになって下さいまし!目が回って酔ってしまいますわ」

「ぐふっ」

ぱたぱたと力いっぱい動かした足が、鳩尾に入ってしまったのか、ジェレイドはピタリと動きを止めて、マリアローゼを地面へと戻した。

「な、中々いいキックだね」
「有難う存じます、レイ様」

本当は心配したい所だが、不可抗力だし、もうぐるぐるが嫌なマリアローゼはお礼を言って兄の後ろにさっと隠れた。
鳩尾を押さえながら、そんなマリアローゼを見て、ジェレイドはまたニコニコと笑顔を取り戻す。

「そんな風に隠れて……ああ、君は可愛らしいなあ」

重症である。
つける薬はこの世の何処にも在りそうもない。
スン、と暗くなったマリアローゼの視界を塞ぐように、1人の人物が立ちはだかった。
そう。
ユリアである。

「はい、ジェレイド様、早くマリアローゼ様のお願いを聞いて、とっとと道具作りに行きやがれ!…下さい」
「君、それわざと言ってるよね?おかしな敬語だけど」

しっしっと手を振り払うような仕草で動かして、続けてユリアは罵声を浴びせた。

「はいはい、そうですよ!マリアローゼ様はこれからお料理するんですから、ほら行った行った」
「君はもう少し身分と言うものを気にしないか?」
「この世の一番上にマリアローゼ様がいて、その他有象無象は下に居ますけど?」
「それには概ね同意するよ」

気が合わない様でいて、価値観は全く同じなのである。
しおりを挟む
感想 154

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。