悪役令嬢? 何それ美味しいの? 溺愛公爵令嬢は我が道を行く

ひよこ1号

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観察するお嬢様

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マリアローゼはつんつんと、兄の服を引いた。

「もしかして、ユリアさんには、転生者だとバレていますかしら?」
「うーん、多分ね。でも敢えて話す必要は無いよ。彼女にとってそれはどうでもいい情報の1つなんだろう」

今も言い争いだか、仲良し談義だか分からない話を続けているので、マリアローゼはその場はユリアに任せて、控えているルーナとノクスを連れて、城へと向かった。
少し時間を置いて、マリアローゼの後ろを付いていくシルヴァインに気付いて、ユリアはやっとマリアローゼの不在に気がつき、会話の途中でジェレイドを放り出してその後に続いた。

「ユリア」
「はい?何でしょう」

歩きながらシルヴァインが声をかけると、ユリアはきょとん、とした顔で返事を返した。
マリアローゼがちょこちょこと元気よく歩く姿を優しく見詰めながら、シルヴァインは言葉を続ける。

「料理作りに、君とカンナも参加してくれ。ローゼも喜ぶだろうし、君の前世での記憶も役立つだろう」
「わあ!やっぱり神様ですね、シルヴァイン様っ!私で役に立つのなら、是非協力させて頂きますよ!マリアローゼ様のお料理姿が見れて、手料理までぺろぺろ…じゃなくて食べれるなんて幸せ過ぎて死にそうです!」

不穏な言葉が幾つも含まれているが、シルヴァインは敢えて無視して頷いた。


庭に面した出入り口には、城に勤める家令が姿勢良く立っている。
歳の頃はコルニクスと同年代か、少し上といったところだろうか。
銀色の髪を後ろに撫で付けていて、中々逞しい人物である。

素晴らしい筋肉ですわね!

マリアローゼは心の中で褒め称えつつ、こくん、と頷いた。

「マリアローゼお嬢様、ようこそいらっしゃいましたステラ・マリスへ」
「お出迎え有難う存じます、これから暫くの間宜しくお願い致します」

ステラ・マリスとは、この海の城の通称である。
元々は崖下から見上げる形で聳え立つ城を「星の海に建つ城」と呼んでいたものが、短くなって「星の海」の名前だけ残ったものなのである。

マリアローゼがふわりとスカートを広げてお辞儀をするのを見て、家令は改めて深く礼を返した。

「家令のノウェムと申します。城でのお嬢様のお世話はこちらに居りますシスネが担当させて頂きます」
「ご紹介に預かりました、シスネと申します。誠心誠意お仕え致します」

傍らにいた、歳若い侍女が進み出て挨拶に頭を下げる。
珍しい白い髪をしていて、横髪はおかっぱのようにまっすぐに耳が隠れる程度の長さで切り揃えられ、後ろ髪は長いのか後頭部に結って纏めてある。
肌も白く、瞳も灰白色なので、白さが際立つ美貌の少女である。

「シスネ、これから宜しくお願い致しますね」
「はい…」

一瞬、驚いたように目を見張ってから、シスネは再び会釈をした。

「では、お部屋にご案内致します」

(何だか不思議な少女ですわ……)

身体はほっそりとして、15歳前後に見えるのだが、動作はカンナの動きに似ている気がする。
キビキビとしていて、無駄がない動き、それに警戒心のような物も感じた。

(まるで野生の動物のよう)

安心できる場所で生きてきた、風ではないのに、虐待された人特有の悲壮感も無い。
どういった人生を歩んできたのだろう、とマリアローゼは興味を惹かれた。
脳裏に、一瞬ジェレイドの顔が浮かんで、マリアローゼは途端に表情を曇らせる。
ジェレイドは人の人生を玩具にしそうなところがあるのだ。
悪意ではなく、それは全てマリアローゼの為に行われる。
だからこそ、余計に始末が悪いのだが。

シスネの案内で、庭に面した玄関ホール脇の階段から二階へと登る。
廊下を進むと渡り廊下が現れて、窓などは無くて手摺だけが設えてあり、下に中庭が見えた。
反対側も同じ造りで、柱と柱の間の上部は弓状にアーチとなっている。
中庭に面した渡り廊下が終る前に両扉の入口脇に騎士が立っているのが目に入った。
他にもう一人、深い藍色の髪の少年とも青年ともつかない人物が、執事の姿で立っていて、最敬礼をした。

「この城でお嬢様のお世話を任されましたラディアータと申します」
「マリアローゼと申します。どうか宜しくお願い致しますね」

小さく膝を屈したマリアローゼをじっと見た後、後ろに控える二人を見て、ラディアータは何とも言えない表情を浮かべたのを見て、流石にマリアローゼは問いかけた。

「わたくしの侍女と侍従がどうか致しまして?」
「あ、いえ、知り合いに似ていたもので、申し訳ありません」

ぺこりと再度頭を下げたラディアータを見て、シスネがほんの少し嘲笑するような笑みを浮かべ、ラディアータも一瞬鋭い目でシスネを見上げた。

(あら、この二人仲が良くないのかしら?)

それに、知り合いに似ていた、というのは咄嗟の嘘に見えた。
かなり動揺していたから、知り合い、よりは近い人物なのだろう。

(悪意や憎しみには見えなかったから、もしかして、家族かしら?)

などと思い耽りながら、マリアローゼはラディアータの開けた扉から部屋の中に入り、その広さにまた驚いた。
豪華な応接間が広がり、扉が三つある。

「左側の扉は廊下になっていて、ご兄弟のお部屋もございます。右側の扉は女性の護衛用のお部屋でございます。奥の扉の先にお嬢様の寝室がございます」
「説明有難う、シスネ。では参りましょう」

奥の扉を開けると廊下を隔ててまた両扉の戸口があり、左側にも扉が付いている。
だが、先ほどの廊下に出る扉よりややこちら側にあるので、小さな部屋だという事だろう。

「こちらはトイレかしら?」
「左様でございます。右側の扉は近侍の方々のお部屋になりまして、その手前の空間は待機所として使われます。
待機所の奥に私とラディアータの部屋もございます」

ぺこりと会釈しつつ、シスネは説明を終えてノクスが扉を開いた。
応接室よりは一回り小さいものの、大きな寝室であり、扉の真向かいに大きな窓が付いていて、外は庭となっている。
海も見えるかと思ったのだが、壁のような建物に遮られていて見えない。

「海は見えませんのね」

残念そうな呟きに、シスネが静かに応えた。

「お嬢様の身の安全が第一ですので。それに、元々その庭は兵士達の修練場だったものを、弟公爵様が庭に作りかえられたのです。お嬢様の為に」

やや刺々しい言い方に聞こえて、マリアローゼは目を見張った。

(まさか、この子……!?)
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