あなたの番になれたなら

ノガケ雛

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第3章

第2話 ※

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 アスカの唇が離れたあとも、リオールはしばし彼を見つめたままだった。
 その視線の温かさに、胸の奥がじんわりと熱を帯びる。


「……じゃあ、遠慮なく触れるぞ」


 彼の声はいつもより低く、けれど驚くほど優しい。
 アスカが小さく頷くと、リオールの手が恐るおそる、まるで壊れ物に触れるように肌へと滑り込む。


 胸の飾りを弾かれ、小さく漏れる息。
 熱い舌が胸を這い、飾りを舐める。
 お腹を撫でて下りていく手が、そっと熱に触れ、アスカの体がピクンと跳ねた。
 
 段々と昂ってくる体。
 いつの間にか堪えることのできなくなってきた声。
 そして、リオールの指が奥に触れ、柔らかな中を探るように慎重に入り込んでくる。


「んっ、ぁ……!」


 決して傷つけることのないように、丁寧に解されていく。
 その優しい手つきが嬉しくて、アスカは胸を締め付けられるような感覚になり、うるうると瞳に涙を貯めた。


「……大丈夫か?」
「はい……リオール様が、優しいから」


 恥じらいに頬を染めながら答えるアスカに、彼は緩く笑みを浮かべる。
 そのまま、二本、三本と中に埋まる本数が増えていき、アスカに与えられる快楽も大きくなっていく。


「っは、ぁ、り、リオール様、だめ……もう……っ」
「良い。我慢するな」
「っ、ぁ、あ……──ッッ!」


 アスカは口元を手で覆うと、声を堪え体を細かく震わせて絶頂した。
 快楽の波が静まると、くたりと脱力し、ほわほわした顔でリオールを見上げる。


「っリオールさま……」
「可愛い」


 そっと口付けをされ、アスカはゆっくりと瞬きをする。
 余力のある涼しい顔で頬を撫でてきた彼。
 しかしアスカは与えられるばかりは嫌で、逞しいその体に手を伸ばし、はだけた衣の裾から手を入れる。
 キメの細かい肌を撫でれば、彼は擽ったそうに笑った。


「アスカ、擽ったいぞ」
「リオールさま……お召し物を脱がせても、よろしいですか……?」
「ああ」


 許しを貰い、丁寧に衣を脱がす。
 そっと腹筋にを撫で、手を下ろして、主張している熱に触れた。


「は……アスカ、我慢できなくなる、やめろ」
「我慢など、なさらないでください……。もう、早く、欲しいです」
「っ、」


 リオールは小さく息を飲むと、アスカの手を取り寝台に押し付けた。


「挿れるぞ」
「っん、はい」


 ぐっと押し当てられる熱がゆっくりと入ってくる。
 首がグッと反れて背中が浮く。
 逃げそうになる体を腰を掴まれることで止められた。
 

「あぁっ、ぁ、お、きい……っ」
「っは、少し、きついな……」
「う……ぁ、リオールさまぁ……」


 トン、とリオールの肌がアスカの肌に触れる。
 ぴったりとくっついて、お互いの呼吸が混ざった。
 
 

 奥まで届いている熱に、アスカの体は敏感に反応していた。
 呼吸のたびにそれを意識してしまい、自然と奥がきゅっと締まってしまう。
 唇を重ね合い、濡れた舌が絡まり、そこに籠もった熱がさらに二人を火照らせた。


「ぁ……リオールさま、気持ち、いいです……」
「……ああ。私もだ」


 リオールの腰がゆっくりと引かれ、再び奥深くまで押し入ってくる。
 優しいけれど、確かな熱を持った動き。その一つひとつに、アスカの体は甘く反応し、声がこぼれるのを止められなかった。


「あっ……っ、ふ……ああ……」
「少し、激しくするぞ」
「っ……は、い……ぁ、ひっ……あ、あぅ……っ」


 動きが次第に熱を帯びていくたびに、アスカの思考は霞み、快楽に包まれていく。
 リオールに抱かれているという安心感と、何もかもを預けられるという信頼が心地よくて、胸の奥がとろけそうだった。


「アスカ……私の首に、腕を回せ」


 囁くような声に、アスカはぎゅっとリオールの首に腕を回す。
 額が触れ合うほどの距離で見つめ合えば、ふたりの息遣いが溶け合っていく。


「アスカ……そなたが、愛しい」
「……わたしも、愛しています……リオールさま……っ」


 その言葉が、胸の奥を優しく満たしていく。


 トン、トン、と奥を突かれ、自然と背中が浮く。
 いつの間にか自ら腰を揺らし、彼を求めている。


「ぁ、あ、リオールさまぁっ」
「っ、ああ、いいぞ」


 切羽詰まったような、しかし甘さの含まれた声。
 リオールは、その声色と体の反応からアスカが再び絶頂を迎えるのだとわかり、ふっと口元を緩めた。


「──っぁ、ああ……ッ」


 心まで震えるような幸福に包まれながら、許しを得たアスカは静かに絶頂を迎える。
 体を震わせて甘く果てていく。


 その直後、リオールもまた深く繋がったまま、全てをアスカの中へと注ぎ込んだ。

 重ねた体がそっと力を抜く。ぴたりと寄り添ったまま、ふたりはただ、静かに鼓動を感じていた。

 触れ合ったぬくもりが、互いの愛情を何より雄弁に物語っていた。





 翌朝、腰に甘い違和感を感じながら、アスカは清夏と薄氷に嬉々とした表情を見せた。


「許可が出ました。陛下と、お忍びで視察に行きます」
「……」
「私は行くよ」


 あまりにもキラキラとした顔をしているので、さすがの清夏も薄氷も、何も言えずに頷くしかなかった。


 ──こっそりとお守りすればいい。王妃様には伝えずに、静かに。バレないように


 二人の心は一致している。
 陽春もきっと、同じように考えているはずだ。
もっとも彼のことだから、リオールを説得して堂々と随行する道を選ぶかもしれないが。


「では、いつ向かわれますか? お忍びであるならば、腕の立つ護衛を数名用意します。おそらく、陛下もそうお考えでしょう。お召し物は如何なさいましょうか……」
「拘らないよ。私が村で着ていたようなものでかまわない」
「……ですが、陛下とお忍びで向かわれるのでしょう? ……少しばかりは、着飾りたくはありませんか?」
「!」


 清夏に言われ、アスカはハッとした。
 視察だが、リオールには逢瀬とも伝えているわけであって、下手な格好をして隣を歩くのは失礼に値すると気付いたのだ。


「ど……どうしよう」
「……もしも、拘りがないのであれば、私にお任せいただけますか?」
「清夏に?」
「はい。かならずや王妃様にお似合いのものを用意致します」


 清夏はまるで自分自身がお洒落をするかの如く、やる気に満ちた様子。
 アスカは「お願いします」とひとつ頷いた。


「いつ行くかは……陛下の政務次第になると思うので、また相談して、伝えるね」
「わかりました」


 頭を下げた二人に、満足気に微笑みを返し、そっと腰に手を添えた。
 昨夜の余韻が、まだ微かに残っている。


 街は、どのようなところなのだろうか。
 活気があって、賑やかなのだろう。

 ──しかし、届く請願書にはあまり良くないことも書かれてある。

 アスカは王妃になったのだから、その責務を全うしなければならないと燃えていた。
 リオールと共に、より良い国へ。


 ただの平民だった自分が、こんなことを思うようになるとは考えもしなかった。
 胸に生まれた覚悟と、責任感。
 これを今は、誇らしくすら思った。
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