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どうしよう…

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 馬車がどこかで止まったと思ったら、ひょろひょろのお兄さんが入ってきた。

「あれ、たのむ」

 僕を攫ったガラ悪男が何かを指図した。

 ヒョロイ上に気の弱そうなお兄さんは僕の背中に手をかざした。
 なんだか見覚えのある行為。

 お兄さんの僕の背に翳した手が発光する。

(魔法陣が張られてる…)

「張りました」
「よし、おいお前、ちょっと魔法使ってみろ」

(なんで…?)

 よくわからないけど、試しに雪を降らしてみよう。

 そう思って魔法を使うけど、何も魔力が出てこない。

(え、なんで…?雪の魔法なんて、なにも考えなくでできるのに…)

「使えないのか?」

 にやにやした顔で男が僕を見てくる。

「うまくいったな」
「お前はもう帰れ」
「は、はい…」

(この人たち、魔力を封じる魔法陣を張ったんだ…)

 魔力がなければ僕は非力なただの子供…どうしようもない。

(どうしよう…ぼく、ほんとに帰れないかも…)

 こんなことになるなら、にぃさまの部屋から出ない方がよかったのかな…

 にぃさまが言った通り、外は危険だった。
 にぃさまの言うこと聞いてれば…

 勝手に涙が滲んでくる。

「あーあー、泣いちゃって、かわいそぉに」

(…でも)

 それでも、レイや、フィリップやマリウス、それに、ミカエルと一緒にいるのは楽しかった。

 ミカエルが僕を連れ出してくれたから、外の世界を知ることができた。

(ミカエルが僕のことを救ってくれたこと、後悔したくない…!)


 ふいにユキの頭にミカエルの言葉が浮かんでくる。

『かならず僕が、あなたを助けます』

 ミカエルはユキを見つけた時、そう言ってくれた。

(そうだ、ミカエルが、僕を助けてくれる…)

 そう思うと胸があったかくなった。

 大丈夫、きっとミカエルが来てくれる。
 あのとき僕を見つけて助け出してくれたように。

 冷静になって考えてみれば、城から人がいなくなって騒ぎにならないはずがない。
 レイと会う約束もしてたし、きっと僕がいなくなったことはすぐ気づいてもらえるはず。

 僕がなにもできなくても、皆がなんとかしてくれるはず…

 そう自分に言い聞かせて、なんとか僕は心を落ち着かせた。
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