24 / 32
どうしよう…
しおりを挟む馬車がどこかで止まったと思ったら、ひょろひょろのお兄さんが入ってきた。
「あれ、たのむ」
僕を攫ったガラ悪男が何かを指図した。
ヒョロイ上に気の弱そうなお兄さんは僕の背中に手をかざした。
なんだか見覚えのある行為。
お兄さんの僕の背に翳した手が発光する。
(魔法陣が張られてる…)
「張りました」
「よし、おいお前、ちょっと魔法使ってみろ」
(なんで…?)
よくわからないけど、試しに雪を降らしてみよう。
そう思って魔法を使うけど、何も魔力が出てこない。
(え、なんで…?雪の魔法なんて、なにも考えなくでできるのに…)
「使えないのか?」
にやにやした顔で男が僕を見てくる。
「うまくいったな」
「お前はもう帰れ」
「は、はい…」
(この人たち、魔力を封じる魔法陣を張ったんだ…)
魔力がなければ僕は非力なただの子供…どうしようもない。
(どうしよう…ぼく、ほんとに帰れないかも…)
こんなことになるなら、にぃさまの部屋から出ない方がよかったのかな…
にぃさまが言った通り、外は危険だった。
にぃさまの言うこと聞いてれば…
勝手に涙が滲んでくる。
「あーあー、泣いちゃって、かわいそぉに」
(…でも)
それでも、レイや、フィリップやマリウス、それに、ミカエルと一緒にいるのは楽しかった。
ミカエルが僕を連れ出してくれたから、外の世界を知ることができた。
(ミカエルが僕のことを救ってくれたこと、後悔したくない…!)
ふいにユキの頭にミカエルの言葉が浮かんでくる。
『かならず僕が、あなたを助けます』
ミカエルはユキを見つけた時、そう言ってくれた。
(そうだ、ミカエルが、僕を助けてくれる…)
そう思うと胸があったかくなった。
大丈夫、きっとミカエルが来てくれる。
あのとき僕を見つけて助け出してくれたように。
冷静になって考えてみれば、城から人がいなくなって騒ぎにならないはずがない。
レイと会う約束もしてたし、きっと僕がいなくなったことはすぐ気づいてもらえるはず。
僕がなにもできなくても、皆がなんとかしてくれるはず…
そう自分に言い聞かせて、なんとか僕は心を落ち着かせた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2,124
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる