(完) ミリエネッタお嬢様の周りは変な人ばかり

茶ティム

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(1) 小さな揉め事

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パグルース国の都の一角で、ちょっとしたトラブル。いいえ、大した事では。でも、当時者にとっては、大問題なので終わりません。

都の路地で出会した貴族の馬車同士。どちらも、譲る気が無い。互いの護衛の兵士が睨み合い。通行人が呆れ顔。


「また、やってるよ。宰相の家族の馬車とサンリク伯爵の客人の馬車だ。何時も、揉めてる!」

「サンリク伯爵家は、強気だからな。普通なら、宰相には譲るのにさ。」


何しろ、宰相とサンリク伯爵とでは因縁がある。オマケに、今日の馬車には宰相の息女イザベラアンナ令嬢が乗られている。

都の者なら誰でも知っている話。イザベリータ令嬢が婚約者の座をサンリク伯爵の息女ミリエネッタ令嬢に奪われた事を。


「道を譲れ!」「そちらこそ、譲れ!」

の言い合い。どちらも兵士の大将が出て来て喧嘩が始まるのか。町の者の解説が始まる。


「サンリク伯爵家の兵士は、他の貴族の兵士とは違うんだ。何が違うかというた、給料が高い。噂では、兵士の平均収入の倍とか言われてる。その上に飯は食い放題なんだ!」


どこの貴族のお屋敷でも、使用人の食事は制限がある。金がかかるからだ。それなのに、サンリク伯爵家では大食いの兵士達に好きなだけ食べさせている。毎食、肉は山のように出るらしかった。

話を聞いた男達は羨ましそうな顔になる。


「その上に、手柄を立てると臨時ボーナスを弾んでくれるらしいぞ。」


そんな職場に働いている兵士だ。主人の為に張り切って仕事する。相手が宰相を務めるエンガット公爵だろうが関係ない。結局、エンガット公爵家の馬車は押し退けられてしまった。

ところが、それだけで済まなくなるのだ。
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