転生した精霊少女は教団騎士と感情を探す

和三盆

文字の大きさ
7 / 8

七話

しおりを挟む
 芽衣はエルネストのことが気になりつつも、出されたお茶が懐かしい香りを放ち、そっちのほうも気になってしまい、エルネストとお茶を交互に見る。
 好奇心に正直な様子にエルネストは憂鬱な気持ちが少しだけ晴れ、苦笑しつつ、エルネストは残ったカップを差し出す。
「どうぞ。飲んでも大丈夫だ」
「ありがとう」
 いつも父と母が飲んでいるのを見たことはあったが、飲んだことはなかった。贄になったときから水しか出されなかったからもう何年も見たことがない。
 エルネストは先にお茶を飲み、飲んでも大丈夫なものだと教える。眺めていた芽衣も同じように、一口飲むとなんとも言えない顔をした。
「……苦い」
 ちゃんと味を感じたことに芽衣は安堵する。時間が経っているせいでお茶は生ぬるくなっていたが、芽衣はそことには気づかなかった。温度を感じなかったからだ。
 予想していた反応にエルネストは小さなポットを差し出す。
「それじゃあ、これを入れるといい。蜂蜜だ」
「蜂蜜! 甘いやつ!」
 妹と二人で分けた蜂蜜の飴の味を思い出す。また、妹のことを思い出して、心の片隅に穴が空いたような気持ちになった。
 芽衣は蜂蜜をお茶に垂らして飲むと、苦味が薄まって、ちょうどいい味になった。
「美味しい」
「それなら、よかった」
 笑う芽衣に安堵しながらエルネストは天気のことを話すように切り出した。
「君は空から落ちてきたけど、どうして、そんなことに?」
「寝てたら、放り出されてたの」
 芽衣は死んだ時に出会った声の思い出しつつ答える。エルネストは芽衣の回答にどんな状態なのかわからずにもっと掘り下げて聞くことにした。
「寝ていたら? 君は寝るのが好きなのかい?」
「あんまり好きじゃないけど、呪いで体が弱くなってうごかせなかったから、寝てた」
「呪いだって……」
 エルネストはぎゅっと拳を握りしめる。思ったよりも彼女がいた場所は劣悪なのかもしれないと。
「そう、呪い。神様を作るための」
「!?」
 彼女が語る事は教団に所属するエルネストからすれば、到底信じられないものだった。精霊に呪いをかけて、神様を作るなぞ冒涜、以前に命知らずである。必ず実験者が命を落とす結果になるか、死ぬよりも酷い目にあうのが、通常だ。虐待された精霊が虐待だと認識して、人を恨んだ瞬間、能力が発動し相手が燃えたり、凍ったりしたことだってある。その場合、精霊の気がすむまで、犯人を好きにさせるのだ。
 エルネストは高鳴る心臓を抑えながらいった。これから、彼女の口から出てくる爆弾に備えて。
「その人間たちはなんで神を作ろうとしていたんだ?」
「皆が幸せになるためだって、人のための、人を守る神様を作るんだって言ってた」
「何を愚かな……」
 エルネストはバカバカしそうに吐き捨てた。爪が肉に食い込む。悔しさと己への苛立ちだった。教団で保護した精霊に話を聞くたびに、彼らの純粋さと運を恨む。
「ふわっ」
 芽衣はお茶を飲み終わり、小さなあくびをする。本来ならば、肉体か精神のどちらかが傷ついていないかぎり、睡眠を必要としない。
 エルネストは外を見て、いくつかの家の明かりが消えているのを確認する。いい時間だったようだ。
「もう、こんな時間か。今日はこれまでにしよう。そっちのベッドで寝るといい」
「エルネストは?」
「俺はこの椅子で寝るから問題ないよ」
 エルネストの回答に納得がいかない芽衣はベッドの大きさと自分たちの大きさを見て言った。
「じゃあ、ベッド一緒に寝よう」
「えっ?」
 また、爆弾を落とされて、エルネストは固まった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた

いに。
恋愛
"佐久良 麗" これが私の名前。 名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。 両親は他界 好きなものも特にない 将来の夢なんてない 好きな人なんてもっといない 本当になにも持っていない。 0(れい)な人間。 これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。 そんな人生だったはずだ。 「ここ、、どこ?」 瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。 _______________.... 「レイ、何をしている早くいくぞ」 「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」 「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」 「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」 えっと……? なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう? ※ただ主人公が愛でられる物語です ※シリアスたまにあり ※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です ※ど素人作品です、温かい目で見てください どうぞよろしくお願いします。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

最弱白竜ですが、なぜか学園最強の銀竜に番認定されました

斉藤めめめ
恋愛
竜の血を引く者だけが貴族になれるこの世界で、白竜は最も格の低い竜の証。 白竜の男爵令嬢リーゼロッテは、特待生として国内最高峰の王立竜騎学園に入学する。待っていたのは上位貴族からの蔑みと、学園を支配する四人の御曹司「四竜」。 その筆頭、銀竜公爵家の嫡男ルシアンに初日から啖呵を切ったリーゼは、いじめと嫉妬の嵐に巻き込まれていく。 それでも彼女は媚びない、逃げない、折れない。 やがてルシアンはリーゼから目が離せなくなり―― 白竜の少女が、学園と王国の運命を変える。 身分差×竜×学園ラブファンタジー、開幕。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...