6 / 11
第一章 異世界漂流編
第六話 緊急クエスト発令
しおりを挟む
「はぁー、狩りましたねぇ」
穏やかな太陽の温もりの下、36匹目のラッピアを狩り終えて東門へと帰路につく途中のルーアさんの隣で、気を緩ませてこぼす一言。
やりきったというには短時間に終わり、この後の時間をどう潰そうか悩む。
「ラッピア1匹あたり報酬としてドライアンド小銅貨二枚が出るから、36匹で小セリエムス銀貨3枚、大ドライアンド銅貨2枚、小ドライアンド銀貨1枚。正規のクエストを取った訳では無いのでクエスト報酬がないけど、それでも私が一日やって出る報酬の3倍……」
隣のルーアさんに至っては、指を何度も折ってラッピアを狩猟した報酬額の大きさを何度も確認しては身を震わせている。
そんなに驚くこともないと思うけど、彼女はその金額に何か執着があるようだ。
個人の話に無闇矢鱈と突っ込む事もないが、やはり彼女の言動や行動が気になって仕方がない。
今後も良い中でいたいし、プレチャージ式エアライフル一式を譲って見るのも一つかという考えに至る。
アレであれば銃器に転換する噛ませにもなるし、仮定ではあるものの金銭問題を抱えるルーアさんの自己解決にも繋がって一石二鳥になるだろう。
しかし、出会って数日に譲るのは時期尚早だと思うし、彼女とパーティーを組んで様子を見てからにしよう。
そう考えているうちに私とルーアさんは東門を通り、既に組合の建物へと帰ってきた。
中は人も少なく静かで、組合の主要な冒険者はまだクエストに出ているようだ。
時間があるならやはりもう少し数を狩って来てもよかった気もするけど、そのせいで生態系が崩壊して稼げなくなるのも困るし、どこかで暇を潰してくればよかったかもしれない。
「すみません、ローヴェン組合長は今いらっしゃるでしょうか?今朝ラッピア36匹の狩猟を言い渡され、完了してきたので報告をしに来ました」
とりあえずと受付カウンターでクエストの報告と、依頼主である組合長の所在を確認する。
「はい、ローヴェン組合長はちょうど外出されたばかりで、いらっしゃいません。クエストは承ってますので、先に狩猟したラッピアを確認をさせて頂けますか?」
残念、入れ違いになってしまったようだ。
一応受付の方で把握はしてあるようなので、それに同意する。
「分かりました、お願いします」
ルーアさんの収納魔術が付与されたポーチから、ペレットを取り除いた状態の良好なラッピアを一匹ずつ取り出し数を確認して、ちゃんとラッピア36匹を狩った事を保証してもらった。
血抜きをしていない殆ど生の状態だったから、少し凄惨な状況になりかけたものの、私がやるよりは受付を介して解体した方がよっぽど容量を得ているはずだ。
報酬等はローヴェン組合長の確認を取るまで保留とされ、用もなくなった私とルーアさんは街を散策して手暇を潰すことにした。
「いやー、終わりましたねぇ」
久しぶりに撃ったエアライフルの感触を思い出しながら、鉄等級への昇格が約束され一息ついた事に、幾らか気を緩ませる。
これが通れば、晴れて銃器を持ってモンスターらを蹂躙することも出来るから、どの銃で初陣を飾ろうか今から楽しみである。
「そうですね、36匹も狩りましたし状態も良かったので、報酬に加えボーナスがいくつある事やらです」
今回受けたラッピア討伐、これが12匹分(小セリエムス銀貨一枚、大ドライアンド銅貨一枚、小ドライアンド銀貨三枚)が、節制すれば大体二日は過ごせるお金だ。
それが三倍、六日はクエストに行かなくて済む金額だから、ルーアさん一人では稼ぎたいと思っても稼げないものだ。
まぁ仕方ないと言えば仕方ないか。
今回の報酬はアイアン等級昇級への前座に過ぎないし、ルーアさんもお手伝いしてくださったので、二人で半分ずつ貰った方がお互いにとっていいでしょう。
今も独り言が捗るようにお金に関しては執着があるようだし、後で幾らでも稼げるから今はそこまで重要ではない。
たわいのない会話をしながら中央路へと出る前に、マイホームが使えるかどうかという事を試そうとしていた事をふと思い出す。
「そうだ……すみません少し用を思い出したので、ここから別れてもいいですか?急ぎではないので、ルーアさんの方で用があれば後で構いません」
マイホームに入るには世界観が違いすぎて彼女が混乱してしまうかもしれないし、他にもやりたいことで見られると困るようなものもは確かにある。
一人でマイホームでやった方が迷惑もかからないだろうから、唐突に解散を提案する。
「そうですね、私は一人でもいいので、またお暇になったら案内しますし、大丈夫です。ではまた」
にこやかに手を振って別れると、裏路地手前に入ってメニューを確認する。
マイホームという欄が健在なのを見つけそれをタップ。
一瞬にして視界がポリゴン片に包まれ、目を開ければ、マイホームのリビングに当たる6畳の部屋に瞬間移動していた。
間取りは1K、トータルで15畳の小狭な学生寮といった感じだけど、これが私の理想の部屋だ。
内装はキッチン、トイレ、お風呂場、そしてこだわりのロフトベッド、空調も完備している。
いずれも電力や水の出処は不明なものの、ちゃんと動作する。これなら宿をとるよりもこちらで寝泊まりした方が費用を節約できるからとても有難い。
キッチン側にある玄関からは外に出ることが可能で、今までいた部屋の数倍の広さのある土地が広がり、その大半は家庭菜園になっている。
銃で殺伐とした世界観の中に何故家庭菜園?というツッコミはさておき、芋や人参などの野菜が可食である事を確認すると、衣食住はある程度確保されていることがわかる。
隅に設置していた作業台等々もしっかり使用可能で、生産能力も完備。
これでパーティメンバーも連れてこられるようならパーフェクトなのだけれど、先に客人用の部屋を用意する必要がありそうだ。
食料の生産場所もそれなりに確保しておきたいけど、人が住む場所も確保したいから、これは要検討だ。
「まぁ、使える事が分かればそれでいいか、今度からはこっちで寝泊まり出来そうだし、ルーアさんにお礼を言わないとなぁ……」
そう言い残すと、やりたい作業は後回しに、確認したいことはやりきったからまたポリゴン片に包まれて元の世界へと戻る。
目を開ければ、さっきいた裏路地の手前。残念ながら、元のゲームの世界に戻ることは出来なさそうだ。
ワンチャンスあるものかと思ったけど、致命的なバクが何かのせいで異世界にでも切り離されたようで現実世界の私はちゃんと生きているか少し心配になる。
幸運にもチートアイテムは山ほどあって困ることはないし、修正か何かがあるまで悠々自適にこの生活を満喫してれば大丈夫でしょう。
しかし、マイホームで時間を潰したとはいえまだ昼の3時ぐらいだ。不用意にルーアさんと別れてしまったし、これからどうしよう……やることが無い。
ローヴェン組合長も帰ってきているかもしれないから、組合館に戻ってからやることを考えよう。
そうと決まれば、人の流れに任せて組合館に戻る。露店を通る際に何か買い足すものがないかと見て回るも、魔法水はまだ沢山あるし、他のものも自前で性能のいいのが揃えられるから特になかった。
転じて、私が露店を開けばぼろ儲けできるのではないかという発想にも至る。休みの日でも設けたら開いてみるのも面白そうだ。
そう面白そうな事を考えているうちに組合館の手前に戻ってきており、入り口に入る際に違和感に気付く。
ローヴェン組合の中でもそれなりの等級を持つ冒険者の殆どがテーブルを囲んで何かを話しているからである。
その後ろで険しい顔をして腕を組むローヴェン組合が私に気付き、静かに手招きする。
それに頷いて反応すると、そそくさとローヴェン組合長の横に立つ。
「クエスト満了おめでとうと言いたいところだが、緊急クエストがギルドから通達されてね、今は会議中だ」
耳元に寄せるとローヴェン組合長はそう囁く。あまりいい雰囲気では無いのはそのせいかもしれない。
「緊急クエストですか、どんな内容なのですか?」
「オークの集団が、この街よりも北東の平原で暴れ回っているらしいんだが、突如としてこちらの方向へ進軍を始めたそうで、キャラバンを中心として被害が続出しているんだ。さらなる被害を出さないためにもこれを討伐して欲しいというクエストだ」
オーク、また厄介そうな相手が進撃しているようで……緊急事態に扱われる程だから、そういったケースは少ないか、対処するにも数が多いかなのだろう。
「ギルドからの通達ということは、他の組合なども受け取っていたりします?それなら数を揃えて対抗すればいいのでは無いですか?」
人が集まれば、まぁ防衛戦ぐらいは回せるぐらいはあると思うけど……。
「簡単に言ってくれるな、先方の数は100を越えているんだぞ?銀等級の冒険者だけでは数が足らないし、連携を取るにもそう容易なものでは無い。第一、今どこを進軍しているかの情報も不足しているから、決定に時間がかかるんだ」
確かに、オークの集団が揃ってこちらに来るとも限らないし、位置の特定もできていなければ準備にも時間がかかる。
「では、私がオークの捜索の斥候に出させてはくれないでしょうか、広範囲捜索の速さと正確さには自信があります」
ドローンをフル活用した広域探索では、今は範囲が足らずオークの集団が補足できてはいないけれど、大体の位置が分かるのであれば一方的に捕捉することは可能だ。
もし仮に敵から捕捉されたとしても、それを退けられる力と振り切れるだけの足はある。
「ダメだ、それこそ君を信頼できるほどの資格と実績が不足している。ラッピアを狩った程度で鼻を高くしているようでは冒険者は務まらない」
しかし、あくまでも組合長であるローヴェンは頭を縦に振ることはなく、また鉄等級昇格の成否も揺らぐ事を匂わせられる。
「今ここで君が動いてどう変わるのかわかるほど私は君の実力を知っていない。証明する時間もないから、今回は一つ堪えて欲しい」
まぁ、冒険者になってまだ二日の見習いに何が出来るかは確かに未知数だ。
いくら自信があるとはいえ、その磨きのかかっているかも分からない原石を砕け散らせる訳には行かないから、保守的な考えの下だろう。
「わかりました、私情のためにギルドの規定に背く行為をしてしまい申し訳ございません」
これは銅、また鉄等級でも口出し無用の領域、無理について行けばローヴェン組合長の責任にも問われるから、大人しく下がるしかない。
「ああ、ありがとう。組合に対する気持ちは十分理解しているつもりだ、まずは鉄等級の昇級を待ち、その行動で納得させてくれ」
鉄等級昇級の時は豪快に事を決めた組合長も、しっかりと考えている。そのためにも、先ずは下積みが必要であるから、急がずゆっくりとやっていく他無さそうだ。
話は変わるが、そうなるとラッピアやロイスローがこの街周辺から消え去り詰み状態になりそうな予感しかなく、これはローヴェン組合長の責任にしておくことを密かに決める。
その日のうちにローヴェン組合は6名の銀等級冒険者が緊急クエストに参加を決定し、他の組合も続々と参加を決定した。
最大で8個の組合が参加し、近隣の街にある組合を合わせてそこそこの数の冒険者が揃う。
出発する地点は異なるとはいえ、早期に集結して対抗すれば数的均衡は保たれると思うが、それ以上は彼らの技量次第になる。
ローヴェン組合長は武器を持てない体のため同伴せず、経験豊富な6名の銀等級冒険者を見送ることになった。
ギルドが配布した特殊な魔導具を利用して定期的に会話をできるようだから、動きがあれば多少は状況がわかるようなっているようだ。
時間的にその日のうちには出ることが出来なかったため、夜は6名の銀等級冒険者が主役の送迎会のような形で夕食は賑わい、無理な飲酒を避けるため私はルーアさんと足早に抜けていった。
穏やかな太陽の温もりの下、36匹目のラッピアを狩り終えて東門へと帰路につく途中のルーアさんの隣で、気を緩ませてこぼす一言。
やりきったというには短時間に終わり、この後の時間をどう潰そうか悩む。
「ラッピア1匹あたり報酬としてドライアンド小銅貨二枚が出るから、36匹で小セリエムス銀貨3枚、大ドライアンド銅貨2枚、小ドライアンド銀貨1枚。正規のクエストを取った訳では無いのでクエスト報酬がないけど、それでも私が一日やって出る報酬の3倍……」
隣のルーアさんに至っては、指を何度も折ってラッピアを狩猟した報酬額の大きさを何度も確認しては身を震わせている。
そんなに驚くこともないと思うけど、彼女はその金額に何か執着があるようだ。
個人の話に無闇矢鱈と突っ込む事もないが、やはり彼女の言動や行動が気になって仕方がない。
今後も良い中でいたいし、プレチャージ式エアライフル一式を譲って見るのも一つかという考えに至る。
アレであれば銃器に転換する噛ませにもなるし、仮定ではあるものの金銭問題を抱えるルーアさんの自己解決にも繋がって一石二鳥になるだろう。
しかし、出会って数日に譲るのは時期尚早だと思うし、彼女とパーティーを組んで様子を見てからにしよう。
そう考えているうちに私とルーアさんは東門を通り、既に組合の建物へと帰ってきた。
中は人も少なく静かで、組合の主要な冒険者はまだクエストに出ているようだ。
時間があるならやはりもう少し数を狩って来てもよかった気もするけど、そのせいで生態系が崩壊して稼げなくなるのも困るし、どこかで暇を潰してくればよかったかもしれない。
「すみません、ローヴェン組合長は今いらっしゃるでしょうか?今朝ラッピア36匹の狩猟を言い渡され、完了してきたので報告をしに来ました」
とりあえずと受付カウンターでクエストの報告と、依頼主である組合長の所在を確認する。
「はい、ローヴェン組合長はちょうど外出されたばかりで、いらっしゃいません。クエストは承ってますので、先に狩猟したラッピアを確認をさせて頂けますか?」
残念、入れ違いになってしまったようだ。
一応受付の方で把握はしてあるようなので、それに同意する。
「分かりました、お願いします」
ルーアさんの収納魔術が付与されたポーチから、ペレットを取り除いた状態の良好なラッピアを一匹ずつ取り出し数を確認して、ちゃんとラッピア36匹を狩った事を保証してもらった。
血抜きをしていない殆ど生の状態だったから、少し凄惨な状況になりかけたものの、私がやるよりは受付を介して解体した方がよっぽど容量を得ているはずだ。
報酬等はローヴェン組合長の確認を取るまで保留とされ、用もなくなった私とルーアさんは街を散策して手暇を潰すことにした。
「いやー、終わりましたねぇ」
久しぶりに撃ったエアライフルの感触を思い出しながら、鉄等級への昇格が約束され一息ついた事に、幾らか気を緩ませる。
これが通れば、晴れて銃器を持ってモンスターらを蹂躙することも出来るから、どの銃で初陣を飾ろうか今から楽しみである。
「そうですね、36匹も狩りましたし状態も良かったので、報酬に加えボーナスがいくつある事やらです」
今回受けたラッピア討伐、これが12匹分(小セリエムス銀貨一枚、大ドライアンド銅貨一枚、小ドライアンド銀貨三枚)が、節制すれば大体二日は過ごせるお金だ。
それが三倍、六日はクエストに行かなくて済む金額だから、ルーアさん一人では稼ぎたいと思っても稼げないものだ。
まぁ仕方ないと言えば仕方ないか。
今回の報酬はアイアン等級昇級への前座に過ぎないし、ルーアさんもお手伝いしてくださったので、二人で半分ずつ貰った方がお互いにとっていいでしょう。
今も独り言が捗るようにお金に関しては執着があるようだし、後で幾らでも稼げるから今はそこまで重要ではない。
たわいのない会話をしながら中央路へと出る前に、マイホームが使えるかどうかという事を試そうとしていた事をふと思い出す。
「そうだ……すみません少し用を思い出したので、ここから別れてもいいですか?急ぎではないので、ルーアさんの方で用があれば後で構いません」
マイホームに入るには世界観が違いすぎて彼女が混乱してしまうかもしれないし、他にもやりたいことで見られると困るようなものもは確かにある。
一人でマイホームでやった方が迷惑もかからないだろうから、唐突に解散を提案する。
「そうですね、私は一人でもいいので、またお暇になったら案内しますし、大丈夫です。ではまた」
にこやかに手を振って別れると、裏路地手前に入ってメニューを確認する。
マイホームという欄が健在なのを見つけそれをタップ。
一瞬にして視界がポリゴン片に包まれ、目を開ければ、マイホームのリビングに当たる6畳の部屋に瞬間移動していた。
間取りは1K、トータルで15畳の小狭な学生寮といった感じだけど、これが私の理想の部屋だ。
内装はキッチン、トイレ、お風呂場、そしてこだわりのロフトベッド、空調も完備している。
いずれも電力や水の出処は不明なものの、ちゃんと動作する。これなら宿をとるよりもこちらで寝泊まりした方が費用を節約できるからとても有難い。
キッチン側にある玄関からは外に出ることが可能で、今までいた部屋の数倍の広さのある土地が広がり、その大半は家庭菜園になっている。
銃で殺伐とした世界観の中に何故家庭菜園?というツッコミはさておき、芋や人参などの野菜が可食である事を確認すると、衣食住はある程度確保されていることがわかる。
隅に設置していた作業台等々もしっかり使用可能で、生産能力も完備。
これでパーティメンバーも連れてこられるようならパーフェクトなのだけれど、先に客人用の部屋を用意する必要がありそうだ。
食料の生産場所もそれなりに確保しておきたいけど、人が住む場所も確保したいから、これは要検討だ。
「まぁ、使える事が分かればそれでいいか、今度からはこっちで寝泊まり出来そうだし、ルーアさんにお礼を言わないとなぁ……」
そう言い残すと、やりたい作業は後回しに、確認したいことはやりきったからまたポリゴン片に包まれて元の世界へと戻る。
目を開ければ、さっきいた裏路地の手前。残念ながら、元のゲームの世界に戻ることは出来なさそうだ。
ワンチャンスあるものかと思ったけど、致命的なバクが何かのせいで異世界にでも切り離されたようで現実世界の私はちゃんと生きているか少し心配になる。
幸運にもチートアイテムは山ほどあって困ることはないし、修正か何かがあるまで悠々自適にこの生活を満喫してれば大丈夫でしょう。
しかし、マイホームで時間を潰したとはいえまだ昼の3時ぐらいだ。不用意にルーアさんと別れてしまったし、これからどうしよう……やることが無い。
ローヴェン組合長も帰ってきているかもしれないから、組合館に戻ってからやることを考えよう。
そうと決まれば、人の流れに任せて組合館に戻る。露店を通る際に何か買い足すものがないかと見て回るも、魔法水はまだ沢山あるし、他のものも自前で性能のいいのが揃えられるから特になかった。
転じて、私が露店を開けばぼろ儲けできるのではないかという発想にも至る。休みの日でも設けたら開いてみるのも面白そうだ。
そう面白そうな事を考えているうちに組合館の手前に戻ってきており、入り口に入る際に違和感に気付く。
ローヴェン組合の中でもそれなりの等級を持つ冒険者の殆どがテーブルを囲んで何かを話しているからである。
その後ろで険しい顔をして腕を組むローヴェン組合が私に気付き、静かに手招きする。
それに頷いて反応すると、そそくさとローヴェン組合長の横に立つ。
「クエスト満了おめでとうと言いたいところだが、緊急クエストがギルドから通達されてね、今は会議中だ」
耳元に寄せるとローヴェン組合長はそう囁く。あまりいい雰囲気では無いのはそのせいかもしれない。
「緊急クエストですか、どんな内容なのですか?」
「オークの集団が、この街よりも北東の平原で暴れ回っているらしいんだが、突如としてこちらの方向へ進軍を始めたそうで、キャラバンを中心として被害が続出しているんだ。さらなる被害を出さないためにもこれを討伐して欲しいというクエストだ」
オーク、また厄介そうな相手が進撃しているようで……緊急事態に扱われる程だから、そういったケースは少ないか、対処するにも数が多いかなのだろう。
「ギルドからの通達ということは、他の組合なども受け取っていたりします?それなら数を揃えて対抗すればいいのでは無いですか?」
人が集まれば、まぁ防衛戦ぐらいは回せるぐらいはあると思うけど……。
「簡単に言ってくれるな、先方の数は100を越えているんだぞ?銀等級の冒険者だけでは数が足らないし、連携を取るにもそう容易なものでは無い。第一、今どこを進軍しているかの情報も不足しているから、決定に時間がかかるんだ」
確かに、オークの集団が揃ってこちらに来るとも限らないし、位置の特定もできていなければ準備にも時間がかかる。
「では、私がオークの捜索の斥候に出させてはくれないでしょうか、広範囲捜索の速さと正確さには自信があります」
ドローンをフル活用した広域探索では、今は範囲が足らずオークの集団が補足できてはいないけれど、大体の位置が分かるのであれば一方的に捕捉することは可能だ。
もし仮に敵から捕捉されたとしても、それを退けられる力と振り切れるだけの足はある。
「ダメだ、それこそ君を信頼できるほどの資格と実績が不足している。ラッピアを狩った程度で鼻を高くしているようでは冒険者は務まらない」
しかし、あくまでも組合長であるローヴェンは頭を縦に振ることはなく、また鉄等級昇格の成否も揺らぐ事を匂わせられる。
「今ここで君が動いてどう変わるのかわかるほど私は君の実力を知っていない。証明する時間もないから、今回は一つ堪えて欲しい」
まぁ、冒険者になってまだ二日の見習いに何が出来るかは確かに未知数だ。
いくら自信があるとはいえ、その磨きのかかっているかも分からない原石を砕け散らせる訳には行かないから、保守的な考えの下だろう。
「わかりました、私情のためにギルドの規定に背く行為をしてしまい申し訳ございません」
これは銅、また鉄等級でも口出し無用の領域、無理について行けばローヴェン組合長の責任にも問われるから、大人しく下がるしかない。
「ああ、ありがとう。組合に対する気持ちは十分理解しているつもりだ、まずは鉄等級の昇級を待ち、その行動で納得させてくれ」
鉄等級昇級の時は豪快に事を決めた組合長も、しっかりと考えている。そのためにも、先ずは下積みが必要であるから、急がずゆっくりとやっていく他無さそうだ。
話は変わるが、そうなるとラッピアやロイスローがこの街周辺から消え去り詰み状態になりそうな予感しかなく、これはローヴェン組合長の責任にしておくことを密かに決める。
その日のうちにローヴェン組合は6名の銀等級冒険者が緊急クエストに参加を決定し、他の組合も続々と参加を決定した。
最大で8個の組合が参加し、近隣の街にある組合を合わせてそこそこの数の冒険者が揃う。
出発する地点は異なるとはいえ、早期に集結して対抗すれば数的均衡は保たれると思うが、それ以上は彼らの技量次第になる。
ローヴェン組合長は武器を持てない体のため同伴せず、経験豊富な6名の銀等級冒険者を見送ることになった。
ギルドが配布した特殊な魔導具を利用して定期的に会話をできるようだから、動きがあれば多少は状況がわかるようなっているようだ。
時間的にその日のうちには出ることが出来なかったため、夜は6名の銀等級冒険者が主役の送迎会のような形で夕食は賑わい、無理な飲酒を避けるため私はルーアさんと足早に抜けていった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
異世界きたのに、冒険者試験で詰みました。
アセチルサリチルさん
ファンタジー
【追放もざまぁも無双もない。あるのは借金と酒と笑いのみ!】
お父さん。お母さん。
あなたたちの可愛い息子は――
異世界で、冒険者になれませんでした。
冒険者ギルドでのステータス鑑定。
結果は「普通」でも、
固有スキルは字面最強の《時間停止》
……なのに。
筆記試験ではギルド創設以来の最低点。
そのまま養成所送りで学費は借金三十万。
異世界初日で、多重債務者です。
……なめてんのか、異世界。
ここで俺たちパーティのイカれたメンバーを紹介するぜ!
ケモミミ用スキルが初日で無駄になったバカ、タクヤ。
魔力制御が全くできない厄病神のバカ、リーシャ。
実は厨二病で呪い装備しか愛せないバカ、オルファ。
そして――スキルで時間を止めても動けないお茶目な俺、ユウヤ。
うーん! 前途多難!
これは――
最強でも無双でもない。
理不尽な世界で、借金と酒と事故にまみれながら、
なんだかんだで生き延びていく話。
追放? ざまぁ? 成り上がり?
そんなものはございません。
あるのは、
愛すべバカどもが織りなすハートフルな冒険譚のみ。
そんな異世界ギャグファンタジーがここに開幕!
戦えない魔法で追放された俺、家電の知識で異世界の生存率を塗り替える
yukataka
ファンタジー
安全を無視したコスト削減に反対した結果、
家電メーカーの開発エンジニア・三浦恒一は「価値がない」と切り捨てられた。
降格先の倉庫で事故に巻き込まれ、彼が辿り着いたのは――魔法がすべてを決める異世界だった。
この世界では、魔法は一人一つが常識。
そんな中で恒一が与えられたのは、
元の世界の“家電”しか召喚できない外れ魔法〈異界家電召喚〉。
戦えない。派手じゃない。評価もされない。
だが、召喚した家電に応じて発現する魔法は、
戦闘ではなく「生き延びるための正しい使い方」に特化していた。
保存、浄化、環境制御――
誰も見向きもしなかった力は、やがて人々の生活と命を静かに支え始める。
理解されず、切り捨てられてきた男が選ぶのは、
英雄になることではない。
事故を起こさず、仲間を死なせず、
“必要とされる仕事”を積み上げること。
これは、
才能ではなく使い方で世界を変える男の、
静かな成り上がりの物語。
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる