元VRMMOプレイヤーは異世界にて無双します

宇宙猫

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第一章 異世界漂流編

第七話 ロイスロー討伐

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 異世界に漂流して三日目の朝、覚醒して開いた朧げな視界は近代的な天井を移し、現実に戻ったのではないかと錯覚させる。

「戻った!?」

 思いもしなかった出来事にぬか喜びするのもつかの間、起き上がった視界にあったのは昨日居たゲームの中のマイホーム。
 少し縦に窮屈に感じるロフトベッドだ。

「なんだ……ゲームか」

 普段なら真逆の言葉を発するはずが、ゲームの中にいることを悲しむとはなんという贅沢か。
 しかし、三日もゲームの中にいると現実世界の植物状態化した私はどうなっているかとやはり心配になる。
 自主的に食事も排泄も出来ないし、そのままの状態が放置されていれば昨日にも死んでいただろうし、これは某黒の剣士と同じように病院にでもいるのだろうか。

「まぁ、今更悩んでもねって話だしね」

 軽く伸びをしてロフトベッドを降り、焼きパンを咥えながら準備を済ませると、マイホームよりも小狭な宿に出る。実際空間だけを使っているようなものだから、シンプルな内装が使われないままになっている。

 部屋を出てロビーへと来ると、ルーアさんが先に椅子に座って待っていた。

「おはようございます、ルーアさん。お待たせしました」

 今日もルーアさんと一緒にパーティーを組んでクエストに赴く。その前に、緊急クエストのため出発する組合仲間の見送りがある。

「おはようございます、黒恵さん。では行きましょうか」

 そう言うとルーアは席を立ち、一緒に宿を出て、少し霧がかかった道を東門へ向かう。
 4方向を十字に通す大通りに馬車が疎らにあり、雑多な列ではあるものの数があると見栄えが良い。
 中には馬ではなくラプトルのような獣脚類の動物やドラゴンのようなものなど、多種多様なものがあり、富の量がよくわかるようだった。

 準備が整い朝の壁門解放が始まると、それぞれの馬車が一両ずつ列を作って動き出し、北東を目指して消えていく。
 面白そうな一大イベントに参加出来なかったのは少し残念だ。

「無事に戻ってきて欲しいですね」

 数十体程度なら数名が立ち向かってもそんなに違和感は無さそうなものだけれど、こうも大人数で立ち向かうのを見ると犠牲者の一人や二人の出てしまいそうなフラグを立てているような予感がする。
 数的優位は確保されるとはいえ、少数で多数を相手するようなものはファンタジー小説ではよくある事だから少し感覚が狂う。

「そうですね……いくらオークとはいえ、100匹以上の集団だと上位個体の出現も考慮しなければなりませんし、大変な戦いになりそうです」

 通常のオークであれば知能が低く、部族的な集まりはあるかもしれないが、群体を構成して統率された行動をとるようなことは滅多にない。
 しかし、ルーアさんの言う上位個体の出現があれば、それこそ緊急クエストに匹敵する脅威的な敵になるのも納得出来るところがある。
 魔王戦争でゴールドやプラチナ等級の冒険者の人口は少なくなっているし、現在能力的に人口の多い銀等級の冒険者が同数がそれ以上の数であたるのは当然だ。
 一応ゴールド等級の冒険者が数人いるにはいるけど、それらは戦場の指揮を担うために前線に出ることはあまりないはずだ。

 とはいえ、部外者はいくら考えてもどうしようも出来ないから、私達は組合館に戻る。

「それで、パーティーを組みましたが、どう言った形でやっていきます?」

 組合館に戻って朝のクエスト張り出しを待つ時間に、パーティー内での役割についてルーアさんと話す。
 現在、私が銃を、ルーアさんが双剣を武器とし戦闘距離の格差が起きているから、これをどうにかしたいのだ。

「私としては、ルーアさんに銃器をお貸しして効率よく討伐ができるような形を考えているんですけど、やはりルーアさんの意思もありますので、どうでしょうか」

 これの解決策として、私はルーアさんの銃器による戦闘力強化をして、同じ種類の武器で運用していきたいとする。
 扱いは教えられるし、稼ぎも増えるから理想の形にはなるが、彼女には強制することは出来ないから、あくまで本人の同意を得て行いたい。

「そう、ですね……以前のエアライフル?でしたっけ、アレの凄さは十分理解しているつもりですが、今しばらくは考えさせてください。それまでは黒恵さんが銃器で討伐を、私が回収をという形で大丈夫です」

 唐突な申し出に少し困ったようになりながらも、ルーアさんはそう言って検討はする様子を見せてくれた。
 私と彼女の信用もあるからすぐには出来ないと思っていたけれどこれなら触りはいい方だ。

「わかりました。では、私が討伐をしますので、ルーア回収をお願いします」

 今回はどの武器を使おうか、候補はあるが選択するクエストもあるし、少し楽しみになる。
 エアライフルを使わなくなればそれは彼女にプレゼントしたいし、喜んでくれたらいいなとも思う。

「お易い御用です。獣人なので体力には自信あるので!」

 気を取り直し、ルーアさんはグッと力強く拳を握る。
華奢な体から剛力を捻り出せるのだから、獣人は人に比べ身体能力が高い。
 足の速さと筋力もあるし、一気に間合いを詰めて双剣で切り刻むのは理想的な立ち回りだし、これをサブマシンガンに応用出来れば、劇的に火力はアップするはずだ。

「とはいえ、こんなにお若い年から冒険者というのは一般的なことなんですか?」

 肉体は十分にできているようだから銃を使う時のことは心配はしていないものの、まだ幼さの抜けない容姿を見ると、少女兵の爆誕も有り得る。

「大体15歳なれば成人と認められますし、私はもうその歳は超えてます。ですがまぁ、少し子供に見られてしまうのは不服です」

 怒って膨れる顔もまた可愛らしい。

「あいや……これはすみません。なにか事情があるのかと少し気になってしまい」

 魔王戦争で人族側もそれなりに疲弊しているし、働きに困って冒険者……そんな成り立ちの人もいなくはないような感じもあるから歳の若さが外見にも見えると気になって仕方がない。

「まぁ、そうですね……。黒恵さんに配慮して貰うほどでもありませんから大丈夫です」

 何かはあるよう、だけれど大丈夫だと無いと言われたので、私はそれを信じて無用な詮索はしないように控えるようにしなければいけない。

「わかりました。すみません、詮索をするようで」

 もし知ってしまったらいくらでも譲歩してしまいそうだし、彼女の為にと安請け合いしてしまうから知らない方がいい話もある。
 何かを抱えているということを知ってしまえば気遣うようにはなってしまうけれど、まだ出会って三日の彼女にどこまで接していいのか、距離感に悩む。

「いえいえ、お気遣いありがとうございます」

 何も無いように取り繕った後、会話は途切れお互いに話出せない気まずい空気になる。

「朝のクエスト張り出しを初めまーす!」

 そこに助けが入るように、朝のクエスト張り出しが入る。
 助かったと思いながら、私とルーアさんはロイスロー討伐のクエストを受注して、狩場へと一直線に向かう。

 東門を出て少し離れると、私は銃を取り出して弾倉を装着して肩にかける。
 M24 #スナイパーウェポンシステム__Sniper Weapon 
System__#のサイレンサー装着済み。今回使う銃器はこれになる。
 使い慣れたSRであるし、ラッピアのように臆病な気質の動物でもないからこれを選択した。

「今回はまた違う武器ですね、これが黒恵さんの言っていた銃器というものなのですか?」

 さすがに持っている武器が違うのはルーアさんも気付く。

「そうです。エアライフルとは攻撃力と射程距離が段違いですよ」

 自慢げにそう話す。基本的にはエアライフルとの違いは弾丸とそれをを発射するために利用するエネルギーが違う。
 エアライフルはペレットと圧搾空気、銃器は弾丸に火薬を使う。
 また、M24 SWSはボルトアクションライフルの代名詞であるレミントンM700を基にしているため、高い命中精度、単純で堅牢な構造、信頼性を受け継いでいる。

「簡単に言えば……えーっとあっちの方にいるロイスローの群れが殺せる距離ぐらい遠くから攻撃できます」

 単眼スコープで距離を図り、800m程の地点にちょうどロイスローが確認できたので、それを指さして有効射程を示す。

「????……良く見えますねあれが」

 ルーアさんも険しい顔をしてやっと見えたようで単純に驚いている。
 まぁ、こちらにはドローンというチート物でそれ以上の距離も目標、ロイスローがトータルで100匹以上確認されているのだがそれは企業秘密だ。

「この望遠鏡があれば遠くはよく見えますよ」

 単眼スコープをもうひとつ用意し、ルーアさんに渡す。
 一応簡素な望遠鏡は市場にあるにはあるが、私の使っている望遠鏡には遠く及ばない性能だ。 

「おー……、確かにロイスローが6匹います。ここから攻撃しても回収に時間がかかると思いますし、もう少し近付いてからやりませんか?」

「はい……」

 望遠鏡を覗いてはしゃぐのもつかの間、実用的な意見が刺さる。とはいえ一撃必殺で損傷の少ない状態ものを出来ればボーナスで報酬が弾むから、武器は変更することは無い。
 大体600m、歩けば8分もしない距離で銃を構える。
 バイポッドを展開し、近くの岩に乗せて胡座をかく形で射撃体制を整える。

 セーフティを外して一匹目に照準を定めると、引き金を引いて即座に装填する。
 パシュッとサイレンサーによって抑制されたした銃声が水面でも叩くような音を立て、ロイスローに命中する。
 それを確認する様子もなく次の目標、その次の目標へと瞬時に行い、2分もしないうちにその場にいた目標は全て狙撃し終えた。

「すごい射撃ですね、驚いてしまいました……」

 隣で狙撃の様子を単眼スコープで観ていたルーアさんは、エアライフルよりも激烈なものに衝撃を受けていた。
 私でさえ、初めて見た生の射撃にヨダレを垂らしてハッハッと犬のようになっていたのだから、そうなるのも然だろう(何かが違うような……?)。

「慣れればこんなもんですよ、最長で3.5kmと今いる距離の約6倍の射程から狙撃をした人もいますし、私もまだまだです」

 小走りにロイスローの回収へ歩き出しつつ、私はそう説明する。これは2017年6月23日、カナダ軍特殊部隊の狙撃手が、12.7x99mm NATO弾を使用する対物ライフルを使用して達成した最長距離記録だ。 
 戦闘中の狙撃の最長距離記録は2009年11月、イギリス陸軍ブルーズ・アンド・ロイヤルズの近衛騎兵軍曹が、強力な.338ラプアマグナム弾を使用するスナイパーライフルで2.4km先の敵兵を二名続けての狙撃に成功している。

「上には上がいるんですね……とはいえその距離までその弾丸を届けられる武器にも驚きです」

 漠然とした距離感だけど、彼女もそれなりにわかるようだ。

 数値上の有効射程、危険区域を超えた最高射程はまさに針に糸を通すような精密な狙撃だが、その距離になると弾丸は空気抵抗などで運動エネルギーを大幅に消費している。
 近衛騎兵軍曹の例を出せば弾丸は打ち出された当初の運動エネルギーの9割を失いながらも人体に十分なダメージを与えている。
 6秒という長時間を飛翔しており、一瞬の風でも数メートルという誤差を産む中弾丸を当てるのだから、相当な経験であったり計算能力が蓄積された賜物だ。

「殆ど不意打ちに近い形で殺られるので、卑怯な武器とも言われてますけど、それだけ強力な武器ということにもなります」

 回収と処理が終われば、弾倉に不足分の弾薬を装填して、次のロイスローの群れ近くへと向かう。
 場所はリアルタイムでわかるから、森にいる少数派のロイスロー以外は一日にして消滅する事になるかもしれない。
 生息域がここ限定でもないから、ニホンオオカミのように狩りすぎで種が絶滅することもないから心配はいらない。
 私は多くのお金を稼いで、依頼主としばらくの間の農家や旅人はロイスローの脅威に晒されなくて済む。
 不利益があるとすればしばらくはロイスローのクエストが出ないことによる鉄等級冒険者の収入がガタ落ちすることぐらいではないだろうか。

 何かあればギルドからだし、私は気にすることなく討伐を進めた。
 思い返せば魔法水で区域制圧も同時平行で行っており、私が行った場所は数時間は魔物が寄り付かない地帯となっており、その日にも他の冒険者に影響を与えていたのは後にわかったことだった。
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