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第一章 異世界漂流編
第八話 ダンジョン (上)
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ロイスローを狩猟し終わり、魔術をかけていても目に見えて膨れている雑嚢を肩にかけ、北門をくぐって街に帰ってくる。
「いやー、今日はこれまでかと言うほど大量でよかった」
合計で108匹のロイスローを、108発の7.62mm弾を消費して討伐し終え、ご満悦な私は事前に知っていた事ながら歓喜する。
森沿いにも40匹以上が潜在していたから、街周辺でもそれなりに生息していたことが分かる。
ロイスロー一匹で小ドライアンド銅貨が3枚、ユーティルト鉄貨が5枚。ゲーム内通貨に揃えると80ポイントになる。
以前、ゲーム内貨幣と異世界貨幣の互換性が用意されている事に気づいて以来、お金の数え方はゲーム内のものを参考に使用している。
わかりやすく表にしたものが以下になる。
鉄貨
ユーティルト鉄貨 略:U鉄貨
ユーティルト鉄貨 1U=1ポイント
↓25U鉄貨=1D銅貨
ドライアンド銅貨 略:D銅貨
小ドライアンド銅貨 1D=25ポイント
大ドライアンド銅貨 5D=125ポイント
↓20D銅貨=1S銀貨
セリエムス銀貨 略:S銀貨
小セリエムス銀貨 1S=500ポイント
大セリエムス銀貨 5S=2500ポイント
↓20S銀貨=1L金貨
高額貨幣
レイセオン金貨 略:L金貨
小レイセオン金貨 1L=10,000ポイント
大レイセオン金貨 3L=30,000ポイント
↓12L金貨=1G白銀貨
ゴルディオン白銀貨 略:G白銀貨
ゴルディオン白銀貨 1G=120,000ポイント
その後にミスリル貨などの高級貨幣が続く形である。
さて話は戻り、80ポイントの報酬が108個で8640ポイントとなる。
このポイントを上の表に当て嵌めると、
大セリエムス銀貨が3枚、
小セリエムス銀貨が2枚、
大ドライアンド銅貨が5枚、
ユーティルト鉄貨が15枚となる。
これは昨日のクエストで得た報酬の四倍ほどだ。
それと引き換えにロイスローを大量に討伐して捕食者の生態系が一時的に壊れるわけだけど、同じ分だけラッピアなどの被食者を間引いてバランスは取れる。
緊急クエストに行った銀等級冒険者が帰ってくるまでの当面の資金と、脅威になるロイスローを排除することで安全確保にも繋がる。
ラッピアの間引きは食料確保の目的でも使えるから、解体は外部に任せて異世界の料理作りにも挑戦してみたい。
そして、ルーアさんの銃器の練習などにも時間は使うことが出来る。
やりたい事は山ほどあるし、時間をどう有効活用するか考えるのはとても唆るものだ。
「そう言えば、ルーアさんにこれもどうぞ。十分に使えると思いますので」
私も愛用する多用途銃剣「OKC-3S」。
アメリカ海兵隊が2002年から使用するナイフで、その名の通りM16系、M27 IARなどの銃器の銃剣として使用することが可能。
第二次大戦のアメリカで開発されたケイバーナイフの特徴を継承しており、これを推している私はゲームでも真っ先に購入しているのはまた別の話だ。
銃器以外で使えそうなものとして用意していたのを思い出し、鞘に入った状態のものを共に渡す。
左腰のベルトに下げているのを見せ、ボタンを外してナイフを抜きとる。
「切れ味もいいし、戦闘用に使うも良し、モンスターの解体に使うも良しのナイフですから、お気に召しましたら使ってください」
ルーアさんの武器は双剣だから使う機会も少ないかもしれないけれど、あれば役に立つとは思う。
何よりM27 IARで武装した時にも銃剣等で使えるから、渡すなら早い方がいいと思ったのだ。
「あ、ありがとうございます」
彼女は少し嬉しそうな、また何故ナイフと疑問に思うような、物珍しい目でナイフを見る。
腰のベルトに付けられることを教えると、嬉嬉としてそれを付けた。
そうしているうちに組合館へ戻り、クエストの終了を受付に伝え、弾丸を取り除いてあるロイスロー108匹が入った雑嚢を手渡す。
1匹ずつ出すとさすがに面倒だから、数え終わるのを待ってテーブル席に座る。
数え終わり、ボーナス等を含めて、
大セリエムス銀貨3枚、
小セリエムス銀貨3枚、
大ドライアンド銅貨1枚、
小ドライアンド銅貨2枚、
ユーティルト鉄貨5枚。
計9180ポイントの報酬が入り、これを半分ずつルーアさんと分けて受け取る。
時間もあるので、ルーアさんと一緒に昨日行けてなかった街の工匠区あたりを見て周る。
近くまで来ると、露店とは格段に異なる質の武器や武具が並び、燃えたぎるいくつもの炉が黒煙を吐き出す様子は、その熱気に圧倒されるほとだ。
他にも家具、鍋など、それなりの加工技術を必要とするものはここに集中しているようだ。
初めて見る魔術師が使う杖などは、魔石と呼ばれる鉱石を媒体としており、その取り付け方なども見ていて飽きない作りになっている。
魔法と親和性の高い素材を使ってできており、その親和率や質によっても火力などが左右されるようだ。
また装飾品なども見て回る。
大体は装備制作などで余った素材で作ったようなものも多いけれど、魔術師が使うような魔石をはめられたものは他よりも格段に高く、また綺麗だった。
気が済む頃には空は暗くなり始め、中央の広場から帰ろうとする途中、ルーアさんが突然険しい顔で立ち止まる。
「ルーアさん?どうしました?」
野生の勘か何かが察知したのだろうか、他の冒険者も、数人が違和感を覚えたように天を仰ぐ。
同じように空を見ても、私には何が怒っているか分からない。
「感じないですか、巨大術式の展開が始まってるのを」
特定の人が違和感を覚えるのは、彼女が言う魔術によるものが起因しているようだ。
「いや、全然?……ん?」
ポワ……と地面に浮き出る淡い文字と陣の光。これは、確かにやばいかもしれない。
「とりあえず、逃げましょう!明らかに異常です」
怯えるルーアさんの手を引いて、外周へと走り出す。陣は中央広場を軸に広がっているから、それから遠ざかれば影響は減る。
とはいえ、防壁の根元まで広がる光はそれすら許さぬように、閃光を放つ。
一瞬にして、轟音と共に地面が割れ、建物が崩れ落ちる。走る足元の先にも亀裂が走り、地中へ誘うように口を開く。
それに勢いを殺すことが出来ず、また足元が崩れてルーアさん共々滑り落ちる。
「んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
意味もなく反射的にルーアさんを庇い、地中へと消えていく。体感したことの無い暴風と底の見えない暗闇は恐怖そのものだ。
「んにぁ!!死んでたまるかぁ!!」
瞬時にパラシュートパックを購入、装備して、足でルーアさんをしっかりと固定して手でフックを引っ張って展開する。
ガクンと言う衝撃と共に、目に見えて減速した風景に肝が冷える。
「ルーアさん、少々手荒ですが失礼します!」
ルーアさんが落ちないようにしっかりとつかみ直し、紐でぐるぐるに固定すると、パラシュートを操作してゆっくりと降りていく。
広い範囲で崩落が起きたせいか、岩場の峡谷のように複雑な地形に豹変していた。
ドローンをフル活用して地形を先読みしながら5分ほどしてやっと地面に降り立つ。
「他に落ちた人々が無事にいられると思いますか?これ」
紐でギチギチに縛っていたルーアさんを解放し、辺りを見回しながらそう問う。崩壊した岩などの上に家屋などの残骸が散乱しており、人の死体などが見えないのが今のところ助かるところだ。
しかし、これからどう地上へと戻るものか、悩みものだ。
「さぁ……皆目見当もつかないです」
しかし、こんな大規模なものを起こす黒幕は何か。考えることは山ほどある。
とりあえず、護身のためにMP5を取り出し、ドローンをいくつか戻しつつ警戒を維持する。
再度発生した一瞬の閃光に目が眩むと、そこはまた見た事のない空間に残される。
「はぁ……もう驚きませんよ」
しかし声は震えている。
とはいえ、さっきの地面を割って落とされるのよりはインパクトに欠けている感は確かにある。
「もう何も分からないんですが、もしかしたらこれはダンジョンなのではないですか?」
割と聞き覚えのある単語が、ルーアさんの口からこぼれる。
「ああ……ということは、私達に敵対する何かが私達に挑戦状を突き付けたということでいいんですね」
続々と機器を展開して、そのダンジョンとやらの内部を様々な方法でスキャンする。
基本的には私達の現在位置が最下層として、地上へと道が繋がっているようだ。
生体反応は……現時点では反応無し。とはいえ、進めば何かしら敵か味方かに出会うことになるだろう。
「とりあえず、進みますか。ルーアさん、武器はありますか?」
「いえ、さっきの崩落で無くしてしまったみたいです。今は黒恵さんから頂いたナイフが一つだけしか……」
「うーん……では、今だけこれをお貸ししましょうか、そのナイフよりは幾らか役に立つのではないでしょうか」
差し出したのは、サブマシンガン「UZI」が二挺。20発弾倉を装着して、コッキングレバーを引かずに渡す。
「これは……銃?」
「はい、9x19mmパラベラム弾を使用するサブマシンガンです。扱いを説明します」
弾倉には弾が20発、上部にあるコッキングレバーを引いて、それらを装填して弾丸を発射する準備がまず一つ整う。
基本的に、近代的な銃器にはセーフティ(安全装置)がある。UZIは、これをグリップセーフティという形で実装しており、充分に握れば発射可能になる。
最後にトリガーを引けば、弾が連続して発射される。
パパパパパッ、小刻みに破裂音が響き、吐き出された9mm弾がダンジョンの壁を削る。
基本的な扱いはレクチャーしたので、コッキングレバーは引いて、初弾が薬室に装填される。
これでトリガーを引けば、いつでもどこでも敵に死というお届け物を配達できる。
「照準は……まぁ敵に向けて引き金を引けば、数発は当たると思います。難しく狙わなくていいので、双剣代わりにでも。基本的に私が敵の制圧を行いますが、はぐれた場合、護衛対象が増えた場合は、ルーアさんにも打ってもらいます。いいですね」
銃は扱っているのを数回は見ているし、打つのは初めてとはいえ、獣人の身体能力なら何も知らない一般人に与えるよりかはマシだ。
「わ、わかりました」
しっかりと意気込み、ルーアさんは頷く。
念の為に32発の弾倉をあと5本。160発分を用意し、魔術を施したポーチの中へ吸い込まれる。
「では、行きましょう。人が残っていればいいんですが……」
即応態勢を維持して、ダンジョンを上層へ進む。
ダンジョンはどうやって作ったかはよく分からないけど、炭鉱内を行くかのように整然としている。
崩落させた瓦礫などをリサイクルしているのだろうか、もしそうならなんと環境に優しいものなのだろう。
とはいえ、これを魔術で行ったとすれば大量の魔力を消費しただろうし、それが戻るのにも時間がかかるだろうから、発見したら速攻で撃破したい。
「タンク!カバー!」
しばらくすると、通路にから男性の雄々しい声と剣がぶつかり合う音が聞こえ、先にある少し広い空間に生体反応が複数帰ってくる。
音を立てずに接近し影からそれをそっと見ると、冒険者と思われる者が五人、複数のゴブリンと対峙していた。
ハンドサインでルーアさんを止め、どこからともなくグレネードを取り出し、迷いなくピンを引き抜く。
「今すぐ目をつぶって!眩しいですよ!」
ゴブリンも振り返る大声でそう警告すると、スタングレネードを投げ、数秒後に約100万カンデラ以上の閃光が空間を眩しく照らす。
目を潰されたゴブリンは悲鳴をあげ、目を抑えて暴れ回る。
冒険者達も呆然と立ち尽くす中、私はMP5を構え、躊躇なくトリガーを引いてひとつずつ殺していく。
「はぁ……お怪我はありませんか?」
ゴブリンを制圧して安全が確保されると、溜息をひとつ着いて、冒険者らに問う。
「一瞬の出来事でわからなかったが……助かった。鉄等級のアグーナだ、よろしく」
「同じく鉄等級、黒恵と申します」
お互いに握手を交わし、自己紹介をする。
状況の収集がつくと、ゴブリンの首など回収できるものを回収し、火を囲んで状況整理に移る。
「ということは、アグーナさんたちも同じように奈落に落ち、気付いたらダンジョンにいた、ということですね?」
話を一通り聞いて、まず他にも冒険者の生き残りはいることで、最悪の事態は回避されていることはわかった。
私とルーアさんは奇跡的にパラシュートで降り立っただけで、大体の冒険者は落下しきった時点でダンジョンのどこかに迷い込んでいるようだ。
「そうだな、そんな所だ。しかし、ここで他の冒険者と合流できたのは大きいな、助けて貰ったお礼は、ここから出たあとでいいか?」
組合の異なる彼らでも、仲間が多ければ生存の確率は上がるし、負傷者が発生した場合の運搬役をお願いすることも出来る。
「ええ、私は特に職業もありませんが、罠なども一応見分けることができるので、戦闘と共にお役に立てると思います」
「何でも屋だな、俺らに何かできることはないか?」
「そうですね……」
剣士のシノン、ローグランは、地味な役回りだが、荷物回収を専門に行う。
回収するものは黒恵が用意した軍用バックに魔術を付与したもので、他よりも大容量を誇る。
偵察系スキルを持つ斥候のエイナルは、先行して敵の索敵。
罠の発見などダンジョン探索に強いスキルを持つ盗賊のヴァレリは、エイナルと同様に先行して貰う。
その2人が敵を発見、または遭遇したした場合、無理に戦闘は行わず、私黒恵が、MP5で撃破する。
白魔術師のエレナは、有事の時には回復に専念。
ルーアさんは、その護衛に着く形で役割分担が決まる。
そしてすぐにも出発する準備を整え、上層を目指して皆で歩き出した。
「いやー、今日はこれまでかと言うほど大量でよかった」
合計で108匹のロイスローを、108発の7.62mm弾を消費して討伐し終え、ご満悦な私は事前に知っていた事ながら歓喜する。
森沿いにも40匹以上が潜在していたから、街周辺でもそれなりに生息していたことが分かる。
ロイスロー一匹で小ドライアンド銅貨が3枚、ユーティルト鉄貨が5枚。ゲーム内通貨に揃えると80ポイントになる。
以前、ゲーム内貨幣と異世界貨幣の互換性が用意されている事に気づいて以来、お金の数え方はゲーム内のものを参考に使用している。
わかりやすく表にしたものが以下になる。
鉄貨
ユーティルト鉄貨 略:U鉄貨
ユーティルト鉄貨 1U=1ポイント
↓25U鉄貨=1D銅貨
ドライアンド銅貨 略:D銅貨
小ドライアンド銅貨 1D=25ポイント
大ドライアンド銅貨 5D=125ポイント
↓20D銅貨=1S銀貨
セリエムス銀貨 略:S銀貨
小セリエムス銀貨 1S=500ポイント
大セリエムス銀貨 5S=2500ポイント
↓20S銀貨=1L金貨
高額貨幣
レイセオン金貨 略:L金貨
小レイセオン金貨 1L=10,000ポイント
大レイセオン金貨 3L=30,000ポイント
↓12L金貨=1G白銀貨
ゴルディオン白銀貨 略:G白銀貨
ゴルディオン白銀貨 1G=120,000ポイント
その後にミスリル貨などの高級貨幣が続く形である。
さて話は戻り、80ポイントの報酬が108個で8640ポイントとなる。
このポイントを上の表に当て嵌めると、
大セリエムス銀貨が3枚、
小セリエムス銀貨が2枚、
大ドライアンド銅貨が5枚、
ユーティルト鉄貨が15枚となる。
これは昨日のクエストで得た報酬の四倍ほどだ。
それと引き換えにロイスローを大量に討伐して捕食者の生態系が一時的に壊れるわけだけど、同じ分だけラッピアなどの被食者を間引いてバランスは取れる。
緊急クエストに行った銀等級冒険者が帰ってくるまでの当面の資金と、脅威になるロイスローを排除することで安全確保にも繋がる。
ラッピアの間引きは食料確保の目的でも使えるから、解体は外部に任せて異世界の料理作りにも挑戦してみたい。
そして、ルーアさんの銃器の練習などにも時間は使うことが出来る。
やりたい事は山ほどあるし、時間をどう有効活用するか考えるのはとても唆るものだ。
「そう言えば、ルーアさんにこれもどうぞ。十分に使えると思いますので」
私も愛用する多用途銃剣「OKC-3S」。
アメリカ海兵隊が2002年から使用するナイフで、その名の通りM16系、M27 IARなどの銃器の銃剣として使用することが可能。
第二次大戦のアメリカで開発されたケイバーナイフの特徴を継承しており、これを推している私はゲームでも真っ先に購入しているのはまた別の話だ。
銃器以外で使えそうなものとして用意していたのを思い出し、鞘に入った状態のものを共に渡す。
左腰のベルトに下げているのを見せ、ボタンを外してナイフを抜きとる。
「切れ味もいいし、戦闘用に使うも良し、モンスターの解体に使うも良しのナイフですから、お気に召しましたら使ってください」
ルーアさんの武器は双剣だから使う機会も少ないかもしれないけれど、あれば役に立つとは思う。
何よりM27 IARで武装した時にも銃剣等で使えるから、渡すなら早い方がいいと思ったのだ。
「あ、ありがとうございます」
彼女は少し嬉しそうな、また何故ナイフと疑問に思うような、物珍しい目でナイフを見る。
腰のベルトに付けられることを教えると、嬉嬉としてそれを付けた。
そうしているうちに組合館へ戻り、クエストの終了を受付に伝え、弾丸を取り除いてあるロイスロー108匹が入った雑嚢を手渡す。
1匹ずつ出すとさすがに面倒だから、数え終わるのを待ってテーブル席に座る。
数え終わり、ボーナス等を含めて、
大セリエムス銀貨3枚、
小セリエムス銀貨3枚、
大ドライアンド銅貨1枚、
小ドライアンド銅貨2枚、
ユーティルト鉄貨5枚。
計9180ポイントの報酬が入り、これを半分ずつルーアさんと分けて受け取る。
時間もあるので、ルーアさんと一緒に昨日行けてなかった街の工匠区あたりを見て周る。
近くまで来ると、露店とは格段に異なる質の武器や武具が並び、燃えたぎるいくつもの炉が黒煙を吐き出す様子は、その熱気に圧倒されるほとだ。
他にも家具、鍋など、それなりの加工技術を必要とするものはここに集中しているようだ。
初めて見る魔術師が使う杖などは、魔石と呼ばれる鉱石を媒体としており、その取り付け方なども見ていて飽きない作りになっている。
魔法と親和性の高い素材を使ってできており、その親和率や質によっても火力などが左右されるようだ。
また装飾品なども見て回る。
大体は装備制作などで余った素材で作ったようなものも多いけれど、魔術師が使うような魔石をはめられたものは他よりも格段に高く、また綺麗だった。
気が済む頃には空は暗くなり始め、中央の広場から帰ろうとする途中、ルーアさんが突然険しい顔で立ち止まる。
「ルーアさん?どうしました?」
野生の勘か何かが察知したのだろうか、他の冒険者も、数人が違和感を覚えたように天を仰ぐ。
同じように空を見ても、私には何が怒っているか分からない。
「感じないですか、巨大術式の展開が始まってるのを」
特定の人が違和感を覚えるのは、彼女が言う魔術によるものが起因しているようだ。
「いや、全然?……ん?」
ポワ……と地面に浮き出る淡い文字と陣の光。これは、確かにやばいかもしれない。
「とりあえず、逃げましょう!明らかに異常です」
怯えるルーアさんの手を引いて、外周へと走り出す。陣は中央広場を軸に広がっているから、それから遠ざかれば影響は減る。
とはいえ、防壁の根元まで広がる光はそれすら許さぬように、閃光を放つ。
一瞬にして、轟音と共に地面が割れ、建物が崩れ落ちる。走る足元の先にも亀裂が走り、地中へ誘うように口を開く。
それに勢いを殺すことが出来ず、また足元が崩れてルーアさん共々滑り落ちる。
「んなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
意味もなく反射的にルーアさんを庇い、地中へと消えていく。体感したことの無い暴風と底の見えない暗闇は恐怖そのものだ。
「んにぁ!!死んでたまるかぁ!!」
瞬時にパラシュートパックを購入、装備して、足でルーアさんをしっかりと固定して手でフックを引っ張って展開する。
ガクンと言う衝撃と共に、目に見えて減速した風景に肝が冷える。
「ルーアさん、少々手荒ですが失礼します!」
ルーアさんが落ちないようにしっかりとつかみ直し、紐でぐるぐるに固定すると、パラシュートを操作してゆっくりと降りていく。
広い範囲で崩落が起きたせいか、岩場の峡谷のように複雑な地形に豹変していた。
ドローンをフル活用して地形を先読みしながら5分ほどしてやっと地面に降り立つ。
「他に落ちた人々が無事にいられると思いますか?これ」
紐でギチギチに縛っていたルーアさんを解放し、辺りを見回しながらそう問う。崩壊した岩などの上に家屋などの残骸が散乱しており、人の死体などが見えないのが今のところ助かるところだ。
しかし、これからどう地上へと戻るものか、悩みものだ。
「さぁ……皆目見当もつかないです」
しかし、こんな大規模なものを起こす黒幕は何か。考えることは山ほどある。
とりあえず、護身のためにMP5を取り出し、ドローンをいくつか戻しつつ警戒を維持する。
再度発生した一瞬の閃光に目が眩むと、そこはまた見た事のない空間に残される。
「はぁ……もう驚きませんよ」
しかし声は震えている。
とはいえ、さっきの地面を割って落とされるのよりはインパクトに欠けている感は確かにある。
「もう何も分からないんですが、もしかしたらこれはダンジョンなのではないですか?」
割と聞き覚えのある単語が、ルーアさんの口からこぼれる。
「ああ……ということは、私達に敵対する何かが私達に挑戦状を突き付けたということでいいんですね」
続々と機器を展開して、そのダンジョンとやらの内部を様々な方法でスキャンする。
基本的には私達の現在位置が最下層として、地上へと道が繋がっているようだ。
生体反応は……現時点では反応無し。とはいえ、進めば何かしら敵か味方かに出会うことになるだろう。
「とりあえず、進みますか。ルーアさん、武器はありますか?」
「いえ、さっきの崩落で無くしてしまったみたいです。今は黒恵さんから頂いたナイフが一つだけしか……」
「うーん……では、今だけこれをお貸ししましょうか、そのナイフよりは幾らか役に立つのではないでしょうか」
差し出したのは、サブマシンガン「UZI」が二挺。20発弾倉を装着して、コッキングレバーを引かずに渡す。
「これは……銃?」
「はい、9x19mmパラベラム弾を使用するサブマシンガンです。扱いを説明します」
弾倉には弾が20発、上部にあるコッキングレバーを引いて、それらを装填して弾丸を発射する準備がまず一つ整う。
基本的に、近代的な銃器にはセーフティ(安全装置)がある。UZIは、これをグリップセーフティという形で実装しており、充分に握れば発射可能になる。
最後にトリガーを引けば、弾が連続して発射される。
パパパパパッ、小刻みに破裂音が響き、吐き出された9mm弾がダンジョンの壁を削る。
基本的な扱いはレクチャーしたので、コッキングレバーは引いて、初弾が薬室に装填される。
これでトリガーを引けば、いつでもどこでも敵に死というお届け物を配達できる。
「照準は……まぁ敵に向けて引き金を引けば、数発は当たると思います。難しく狙わなくていいので、双剣代わりにでも。基本的に私が敵の制圧を行いますが、はぐれた場合、護衛対象が増えた場合は、ルーアさんにも打ってもらいます。いいですね」
銃は扱っているのを数回は見ているし、打つのは初めてとはいえ、獣人の身体能力なら何も知らない一般人に与えるよりかはマシだ。
「わ、わかりました」
しっかりと意気込み、ルーアさんは頷く。
念の為に32発の弾倉をあと5本。160発分を用意し、魔術を施したポーチの中へ吸い込まれる。
「では、行きましょう。人が残っていればいいんですが……」
即応態勢を維持して、ダンジョンを上層へ進む。
ダンジョンはどうやって作ったかはよく分からないけど、炭鉱内を行くかのように整然としている。
崩落させた瓦礫などをリサイクルしているのだろうか、もしそうならなんと環境に優しいものなのだろう。
とはいえ、これを魔術で行ったとすれば大量の魔力を消費しただろうし、それが戻るのにも時間がかかるだろうから、発見したら速攻で撃破したい。
「タンク!カバー!」
しばらくすると、通路にから男性の雄々しい声と剣がぶつかり合う音が聞こえ、先にある少し広い空間に生体反応が複数帰ってくる。
音を立てずに接近し影からそれをそっと見ると、冒険者と思われる者が五人、複数のゴブリンと対峙していた。
ハンドサインでルーアさんを止め、どこからともなくグレネードを取り出し、迷いなくピンを引き抜く。
「今すぐ目をつぶって!眩しいですよ!」
ゴブリンも振り返る大声でそう警告すると、スタングレネードを投げ、数秒後に約100万カンデラ以上の閃光が空間を眩しく照らす。
目を潰されたゴブリンは悲鳴をあげ、目を抑えて暴れ回る。
冒険者達も呆然と立ち尽くす中、私はMP5を構え、躊躇なくトリガーを引いてひとつずつ殺していく。
「はぁ……お怪我はありませんか?」
ゴブリンを制圧して安全が確保されると、溜息をひとつ着いて、冒険者らに問う。
「一瞬の出来事でわからなかったが……助かった。鉄等級のアグーナだ、よろしく」
「同じく鉄等級、黒恵と申します」
お互いに握手を交わし、自己紹介をする。
状況の収集がつくと、ゴブリンの首など回収できるものを回収し、火を囲んで状況整理に移る。
「ということは、アグーナさんたちも同じように奈落に落ち、気付いたらダンジョンにいた、ということですね?」
話を一通り聞いて、まず他にも冒険者の生き残りはいることで、最悪の事態は回避されていることはわかった。
私とルーアさんは奇跡的にパラシュートで降り立っただけで、大体の冒険者は落下しきった時点でダンジョンのどこかに迷い込んでいるようだ。
「そうだな、そんな所だ。しかし、ここで他の冒険者と合流できたのは大きいな、助けて貰ったお礼は、ここから出たあとでいいか?」
組合の異なる彼らでも、仲間が多ければ生存の確率は上がるし、負傷者が発生した場合の運搬役をお願いすることも出来る。
「ええ、私は特に職業もありませんが、罠なども一応見分けることができるので、戦闘と共にお役に立てると思います」
「何でも屋だな、俺らに何かできることはないか?」
「そうですね……」
剣士のシノン、ローグランは、地味な役回りだが、荷物回収を専門に行う。
回収するものは黒恵が用意した軍用バックに魔術を付与したもので、他よりも大容量を誇る。
偵察系スキルを持つ斥候のエイナルは、先行して敵の索敵。
罠の発見などダンジョン探索に強いスキルを持つ盗賊のヴァレリは、エイナルと同様に先行して貰う。
その2人が敵を発見、または遭遇したした場合、無理に戦闘は行わず、私黒恵が、MP5で撃破する。
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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