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第一章 出会い
三話 この人となら大丈夫
「笹倉さん、どこか行きたいところありますか? 例えばスーパーとか、ドラッグストアとか」
「そういえば……冷蔵庫空っぽでした。ここまで来たから、買い物して帰ろうかな」
「俺、付き合いますよ。この辺りのこと、まだあまり分からないでしょう?」
「それは心強いですけど、いいんですか? 私なんかに付き合ってもらっても」
「全然いいです。近隣の案内ついでに付き合いますよ」
田島さんは優しく微笑みながら言った。
お礼をするつもりだったのに、結局コーヒーをごちそうになって私たちは喫茶店を出た。
「じゃあ、行きましょうか。笹倉さん」
眩しい日差しの中、田島さんと並んで歩く。
歩く速さを合わせてくれているのが分かって、なんだか温かい気持ちになった。
駅から少し歩いた場所のスーパーで、食材の買い出しをする。
いいですよって言うのに、田島さんはさっさとカゴを持ってくれた。
一緒に食材を選んでいると、田島さんが料理の話を始める。
「田島さんも、自炊するんですか?」
「一応はしますよ、大したものは作れないですけど。疲れてる時や遅くなった時は、
手抜きして総菜買ったりしますしね」
ふと、同じ職場の同僚だった元カレを思い出してしまう。
私の部屋にふらりと来ては、「何か作ってよ」なんて言って、勝手に冷蔵庫からビールを取り出す。
食事が出来上がるまでは、ひたすらスマホを触ってるだけだった。
結局、職場の同僚男性と浮気をしていて、私は捨てられた。
「笹倉さん? どうかしました?」
心配そうに声をかけられて、我に返る。
突然フラッシュバックした嫌な記憶を振り払って、無理やり笑った。
「……ごめんなさい。ちょっと考え事しちゃってて」
「……昨夜のこと、まだショックですよね」
「いえ、昨夜のことは本当に大丈夫です。田島さんがいてくれるし……。今言われて、
やっと思い出したくらいで」
買い物かごを持ってくれている田島さんが、ほっとしたように笑った。
肩が触れ合うくらい距離が近くなる。
彼がそばにいてくれると、なぜか安心できた。
「他に何か必要なものありますか?」
「えーっと……これくらいでいいかな……。ありがとうございます」
スーパーを出て二人で歩く。
買い物袋は断ったのに、田島さんが持ってくれた。
道すがら公共施設や、コンビニの場所を教えてくれる。
夜に女性一人で歩かない方がいい路地裏や、美味しいパン屋さんまで田島さんは何でも知っていた。
警察官だし、当たり前かもしれないけれど。
引っ越してきたばかりで、私にとっては馴染みのない土地。
田島さんが一緒にいてくれるのは、本当に心強かった。
「ありがとうございます、田島さん。私ひとりだったら多分迷子になってました」
「分からないことがあったら、いつでも連絡ください。迷子になったら、交番でも俺のところでも遠慮なく来てください」
私の買い物袋を持ったまま、微笑みながら言う。
冗談なのか本気なのか分からない。でも、そんな優しさが嬉しかった。
アパートに着くと、田島さんは買い物袋を私の部屋のある三階まで「持っていきますよ」と言ってくれた。
けれど、さすがに丁重に断った。
あまり優しくされると、余計に意識してしまう。
道中は甘えてしまったけれど、買い物袋の一つや二つ持てないほど非力じゃないし。
一緒に降りてしまった二階のエレベーターホールで、田島さんと黙って向かい合った。
「……笹倉さん」
名前を呼ばれただけなのに、胸が熱くなる。
何か言いかけて、結局言わないまま田島さんは微笑んだ。
その仕草だけで心が揺れた。
「そういえば……冷蔵庫空っぽでした。ここまで来たから、買い物して帰ろうかな」
「俺、付き合いますよ。この辺りのこと、まだあまり分からないでしょう?」
「それは心強いですけど、いいんですか? 私なんかに付き合ってもらっても」
「全然いいです。近隣の案内ついでに付き合いますよ」
田島さんは優しく微笑みながら言った。
お礼をするつもりだったのに、結局コーヒーをごちそうになって私たちは喫茶店を出た。
「じゃあ、行きましょうか。笹倉さん」
眩しい日差しの中、田島さんと並んで歩く。
歩く速さを合わせてくれているのが分かって、なんだか温かい気持ちになった。
駅から少し歩いた場所のスーパーで、食材の買い出しをする。
いいですよって言うのに、田島さんはさっさとカゴを持ってくれた。
一緒に食材を選んでいると、田島さんが料理の話を始める。
「田島さんも、自炊するんですか?」
「一応はしますよ、大したものは作れないですけど。疲れてる時や遅くなった時は、
手抜きして総菜買ったりしますしね」
ふと、同じ職場の同僚だった元カレを思い出してしまう。
私の部屋にふらりと来ては、「何か作ってよ」なんて言って、勝手に冷蔵庫からビールを取り出す。
食事が出来上がるまでは、ひたすらスマホを触ってるだけだった。
結局、職場の同僚男性と浮気をしていて、私は捨てられた。
「笹倉さん? どうかしました?」
心配そうに声をかけられて、我に返る。
突然フラッシュバックした嫌な記憶を振り払って、無理やり笑った。
「……ごめんなさい。ちょっと考え事しちゃってて」
「……昨夜のこと、まだショックですよね」
「いえ、昨夜のことは本当に大丈夫です。田島さんがいてくれるし……。今言われて、
やっと思い出したくらいで」
買い物かごを持ってくれている田島さんが、ほっとしたように笑った。
肩が触れ合うくらい距離が近くなる。
彼がそばにいてくれると、なぜか安心できた。
「他に何か必要なものありますか?」
「えーっと……これくらいでいいかな……。ありがとうございます」
スーパーを出て二人で歩く。
買い物袋は断ったのに、田島さんが持ってくれた。
道すがら公共施設や、コンビニの場所を教えてくれる。
夜に女性一人で歩かない方がいい路地裏や、美味しいパン屋さんまで田島さんは何でも知っていた。
警察官だし、当たり前かもしれないけれど。
引っ越してきたばかりで、私にとっては馴染みのない土地。
田島さんが一緒にいてくれるのは、本当に心強かった。
「ありがとうございます、田島さん。私ひとりだったら多分迷子になってました」
「分からないことがあったら、いつでも連絡ください。迷子になったら、交番でも俺のところでも遠慮なく来てください」
私の買い物袋を持ったまま、微笑みながら言う。
冗談なのか本気なのか分からない。でも、そんな優しさが嬉しかった。
アパートに着くと、田島さんは買い物袋を私の部屋のある三階まで「持っていきますよ」と言ってくれた。
けれど、さすがに丁重に断った。
あまり優しくされると、余計に意識してしまう。
道中は甘えてしまったけれど、買い物袋の一つや二つ持てないほど非力じゃないし。
一緒に降りてしまった二階のエレベーターホールで、田島さんと黙って向かい合った。
「……笹倉さん」
名前を呼ばれただけなのに、胸が熱くなる。
何か言いかけて、結局言わないまま田島さんは微笑んだ。
その仕草だけで心が揺れた。
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