清楚系彼女は溺愛警察官を乱して狂わせる

日下 凛

文字の大きさ
5 / 14
第一章 出会い

三話 この人となら大丈夫

しおりを挟む
「笹倉さん、どこか行きたいところありますか? 例えばスーパーとか、ドラッグストアとか」
「そういえば……冷蔵庫空っぽでした。ここまで来たから、買い物して帰ろうかな」
「俺、付き合いますよ。この辺りのこと、まだあまり分からないでしょう?」
「それは心強いですけど、いいんですか? 私なんかに付き合ってもらっても」
「全然いいです。近隣の案内ついでに付き合いますよ」

 田島さんは優しく微笑みながら言った。
 お礼をするつもりだったのに、結局コーヒーをごちそうになって私たちは喫茶店を出た。

「じゃあ、行きましょうか。笹倉さん」

 眩しい日差しの中、田島さんと並んで歩く。
 歩く速さを合わせてくれているのが分かって、なんだか温かい気持ちになった。

 駅から少し歩いた場所のスーパーで、食材の買い出しをする。
 いいですよって言うのに、田島さんはさっさとカゴを持ってくれた。
 一緒に食材を選んでいると、田島さんが料理の話を始める。

「田島さんも、自炊するんですか?」
「一応はしますよ、大したものは作れないですけど。疲れてる時や遅くなった時は、
手抜きして総菜買ったりしますしね」

 ふと、同じ職場の同僚だった元カレを思い出してしまう。
 私の部屋にふらりと来ては、「何か作ってよ」なんて言って、勝手に冷蔵庫からビールを取り出す。
 食事が出来上がるまでは、ひたすらスマホを触ってるだけだった。
 結局、職場の同僚男性と浮気をしていて、私は捨てられた。

「笹倉さん? どうかしました?」

 心配そうに声をかけられて、我に返る。
 突然フラッシュバックした嫌な記憶を振り払って、無理やり笑った。

「……ごめんなさい。ちょっと考え事しちゃってて」
「……昨夜のこと、まだショックですよね」
「いえ、昨夜のことは本当に大丈夫です。田島さんがいてくれるし……。今言われて、
やっと思い出したくらいで」

 買い物かごを持ってくれている田島さんが、ほっとしたように笑った。
 肩が触れ合うくらい距離が近くなる。
 彼がそばにいてくれると、なぜか安心できた。

「他に何か必要なものありますか?」
「えーっと……これくらいでいいかな……。ありがとうございます」

 スーパーを出て二人で歩く。
 買い物袋は断ったのに、田島さんが持ってくれた。
 道すがら公共施設や、コンビニの場所を教えてくれる。
 夜に女性一人で歩かない方がいい路地裏や、美味しいパン屋さんまで田島さんは何でも知っていた。
 警察官だし、当たり前かもしれないけれど。

 引っ越してきたばかりで、私にとっては馴染みのない土地。
 田島さんが一緒にいてくれるのは、本当に心強かった。

「ありがとうございます、田島さん。私ひとりだったら多分迷子になってました」
「分からないことがあったら、いつでも連絡ください。迷子になったら、交番でも俺のところでも遠慮なく来てください」

 私の買い物袋を持ったまま、微笑みながら言う。
 冗談なのか本気なのか分からない。でも、そんな優しさが嬉しかった。

 アパートに着くと、田島さんは買い物袋を私の部屋のある三階まで「持っていきますよ」と言ってくれた。
 けれど、さすがに丁重に断った。
 あまり優しくされると、余計に意識してしまう。

 道中は甘えてしまったけれど、買い物袋の一つや二つ持てないほど非力じゃないし。
 一緒に降りてしまった二階のエレベーターホールで、田島さんと黙って向かい合った。

「……笹倉さん」

 名前を呼ばれただけなのに、胸が熱くなる。
 何か言いかけて、結局言わないまま田島さんは微笑んだ。

 その仕草だけで心が揺れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

大事な人

ちえ
恋愛
大人向け恋愛小説

一夜の過ちで懐妊したら、溺愛が始まりました。

青花美来
恋愛
あの日、バーで出会ったのは勤務先の会社の副社長だった。 その肩書きに恐れをなして逃げた朝。 もう関わらない。そう決めたのに。 それから一ヶ月後。 「鮎原さん、ですよね?」 「……鮎原さん。お腹の赤ちゃん、産んでくれませんか」 「僕と、結婚してくれませんか」 あの一夜から、溺愛が始まりました。

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...