清楚系彼女は溺愛警察官を乱して狂わせる

日下 凛

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第一章 出会い

五話 二人で食事

 田島さんはどんなものが好きなんだろう? 
 買って来た食材でさっと作れて、男の人が好きそうなメニューを考える。
 当直明けだし、疲れが取れそうなものがいいかな。

 メニューが決まれば、後は作るだけ。
 スマホをカウンターキッチンの端に置いて、エプロンを着けて料理に取り掛かる。

 料理がほとんど出来上がった頃、スマホの通知音が鳴った。
『今から行ってもいいですか?』
 田島さんからのメッセージだった。
 ああ、本当に来ちゃうんだ……。
 自分で誘ったくせに、少し緊張してきた。
『待ってます。着いたらインターホン鳴らしてくださいね』
 色々考えた末、スタンプと一緒に返信する。
『わかりました』

 返信が来て間もなく、インターホンが鳴った。
 モニターに映った田島さんの姿を確認して、ドアを開けた私の視界に入ったのは広い胸元。
 顔を上げると、驚いたような表情の田島さんと目が合った。

「……あの、来ちゃいました」
「こちらこそお疲れなのに、無理を言っちゃってすみません。どうぞ、入ってください」
「お邪魔します」

 白いTシャツとスウェットのラフな格好。
 その分広い肩幅や筋肉のラインがしっかり見えて、田島さんの身体はなんだか大きく見える。
 去年別れた元カレは自称細マッチョだったけど、比べればただのヒョロガリだ。

「実は、すごく楽しみにしてたんです。誰かに料理作ってもらうことなんてなかったから」
「本当に? 田島さん、絶対モテそうですけど」
「いやいや、全然モテないですよ。それに出会いもないですし」
「分かりました。なら、そういうことにしておきますね」

 気にならないわけじゃないけれど、私に追究する権利はないし笑ってごまかした。

「田島さん、お茶いれますね。すぐできますから座って待っててください」

 きょろきょろしながらリビングのラグの上に座る田島さんの前に、冷えたお茶を入れて出した。

「すみません。ありがとう」

 制服を着てる時は、頼れる警察官のオーラを放っていたのに。
 大きな身体で所在なさげにしている田島さんが、かわいく見えてしまう。

「当直明けで疲れてますよね? 眠かったら、遠慮しないで寝ててください。ご飯ができたら起こしますから」
「……いや、なんて言うか……眠気なんて吹っ飛んじゃいました」

 洗いざらしの無造作な髪で、そう言いながら笑う彼は爽やかな好青年。
 こんな人、モテないはずがないと思うけど。
 キッチンで料理の仕上げに取り掛かっていると、田島さんが立ち上がってカウンター越しに声をかけてきた。

「俺に手伝えることがあれば、遠慮なく言ってくださいね」
「ありがとうございます。……そうだ、田島さんって味付けは薄めと濃いめ、どっちが好きですか?」
「そうですね……当直明けは、濃い味の物が食べたくなります」
「それなら、少しだけ濃いめにしておきます。ご飯は大盛がいいですよね?」
「すみません、お願いします。いい匂いがして腹減っちゃって」

 田島さんは、照れ笑いをしながらお腹を押さえて見せた。
 味を整えて、出来上がった料理を盛り付ける。
 田島さんの分のご飯は大盛、お肉をたっぷり、お味噌汁の具もたくさん入れた。

 お盆に載せた料理は、田島さんが運んでくれる。
 私もエプロンを外して、彼と向かい合って座った。

「めちゃくちゃ美味しそうです」

 田島さんの表情がキラキラしていた。
 そんな顔を向けられて、胸の奥が少しざわついた。

 ――これは、ただ「ご飯を作っただけ」じゃ済まないかもしれない。
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