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第一章 出会い
九話 鍵をかけたのは、私 (改)
最初は啄むような軽いキスだった。
お互いの唇の形を、確かめるように繰り返す。
舌が熱い息と一緒に、口の中へ滑り込んできた。
逃げられないように、舌を絡め取られる。
呼吸が乱れて、胸が忙しく上下する。
喉から吐いた息と一緒に、自分の声が漏れた。
口の中をなぞられ、お腹に走る疼き。
鈍く響く感覚を堪え、指先を田島さんの肩に食い込ませた。
苦しいのか、気持ちいいのか分からない。
頭の中に、霧がかかったみたい。
だけど、この人と離れたくない。それだけは分かっていた。
心より先に、身体が勝手に反応してしまう。
触れてほしい。自分でも知らなかった思いがあふれ出す。
もっと――私のずっと深い場所まで。
男の人に触れられて、こんな気持ちになるなんて。
「……梓さん、俺ほんとに我慢できなくなりそう」
「……え?」
「抱きたい」
心臓が、静かに速さを増していく。
田島さんの大きな手が、何度も背中を撫でる。
熱を持った息が首筋にかかり、思わずしがみついた。
「ごめん……ゴムがないから……」
そう言ったあと、田島さんの腕が緩んだ。
……このまま、止めちゃうの?
身体から力が抜けて、胸にぽっかり穴があいたみたいだった。
「……梓さんが嫌じゃないなら……このままで終わりたくない」
迷うことなんか何もなかった。
「……私も……このままは、いや」
欲望を、喉の奥から絞り出す。
自分に嘘はつけなかった。
つなぎとめるように、田島さんは私の手を掴んだ。
「買ってくる。ごめん、すぐに戻ってくるから」
「……わかった。待ってるから」
田島さんの後について立ち上がる。
少しふらついて、ソファの背もたれに手をついた。
「おっと……大丈夫?」
「……ちょっとふらついただけ……です」
田島さんは微笑みながら、腕を支えてくれる。
どうしてこんなに優しいんだろう。
「気をつけて行ってきて。逃げないから」
玄関で見送りながら、冗談交じりにそう伝える。
彼が振り返って言った。
「鍵だけ閉めて待ってて――絶対、逃がさないから」
逃がさない――静かに欲が滲んでいて、思わず腕を擦った。
それでも、鍵のことを気にするなんて警察官らしい。
頭の中がふわっとして、うまく考えられなかった。
一人になると、心臓の音が耳の奥まで響く。
静まり返った部屋に、自分の呼吸だけが残る。
気づけば、触れられた唇を指先でなぞっていた。
開け放っていたリビングの窓を閉め、ガラス越しに外を眺める。
視界の向こうに白く霞むビルが見えた。
以前住んでいた街からは、もう遠く離れている。
思い出したくもない記憶ばかりが詰まった、打ちっ放しのコンクリートのオフィス。
裏切りに気づかなければ、私は今もきっとあの場所に囚われていた。
田島さんとも、出会えないまま――。
私はもう、引き返すつもりなんて少しもなかった。
お互いの唇の形を、確かめるように繰り返す。
舌が熱い息と一緒に、口の中へ滑り込んできた。
逃げられないように、舌を絡め取られる。
呼吸が乱れて、胸が忙しく上下する。
喉から吐いた息と一緒に、自分の声が漏れた。
口の中をなぞられ、お腹に走る疼き。
鈍く響く感覚を堪え、指先を田島さんの肩に食い込ませた。
苦しいのか、気持ちいいのか分からない。
頭の中に、霧がかかったみたい。
だけど、この人と離れたくない。それだけは分かっていた。
心より先に、身体が勝手に反応してしまう。
触れてほしい。自分でも知らなかった思いがあふれ出す。
もっと――私のずっと深い場所まで。
男の人に触れられて、こんな気持ちになるなんて。
「……梓さん、俺ほんとに我慢できなくなりそう」
「……え?」
「抱きたい」
心臓が、静かに速さを増していく。
田島さんの大きな手が、何度も背中を撫でる。
熱を持った息が首筋にかかり、思わずしがみついた。
「ごめん……ゴムがないから……」
そう言ったあと、田島さんの腕が緩んだ。
……このまま、止めちゃうの?
身体から力が抜けて、胸にぽっかり穴があいたみたいだった。
「……梓さんが嫌じゃないなら……このままで終わりたくない」
迷うことなんか何もなかった。
「……私も……このままは、いや」
欲望を、喉の奥から絞り出す。
自分に嘘はつけなかった。
つなぎとめるように、田島さんは私の手を掴んだ。
「買ってくる。ごめん、すぐに戻ってくるから」
「……わかった。待ってるから」
田島さんの後について立ち上がる。
少しふらついて、ソファの背もたれに手をついた。
「おっと……大丈夫?」
「……ちょっとふらついただけ……です」
田島さんは微笑みながら、腕を支えてくれる。
どうしてこんなに優しいんだろう。
「気をつけて行ってきて。逃げないから」
玄関で見送りながら、冗談交じりにそう伝える。
彼が振り返って言った。
「鍵だけ閉めて待ってて――絶対、逃がさないから」
逃がさない――静かに欲が滲んでいて、思わず腕を擦った。
それでも、鍵のことを気にするなんて警察官らしい。
頭の中がふわっとして、うまく考えられなかった。
一人になると、心臓の音が耳の奥まで響く。
静まり返った部屋に、自分の呼吸だけが残る。
気づけば、触れられた唇を指先でなぞっていた。
開け放っていたリビングの窓を閉め、ガラス越しに外を眺める。
視界の向こうに白く霞むビルが見えた。
以前住んでいた街からは、もう遠く離れている。
思い出したくもない記憶ばかりが詰まった、打ちっ放しのコンクリートのオフィス。
裏切りに気づかなければ、私は今もきっとあの場所に囚われていた。
田島さんとも、出会えないまま――。
私はもう、引き返すつもりなんて少しもなかった。
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