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第二章 触れ合うたび深くなる
一話 呼吸が触れる距離で
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一人になった途端、部屋の空気を冷たく感じた。
開け放っていたリビングの窓を閉め、ガラス越しに外を眺める。
視界の向こうに白く霞むビルが見えた。
以前住んでいた街からは、遠く離れている。
思い出したくもない記憶ばかりが詰まった、打ちっ放しのコンクリートのオフィス。
裏切りに気づかなければ、私は今もきっとあの場所に囚われていた。
田島さんとも、出会えないまま――。
インターホンが鳴って、我に返った。
玄関の鍵を開ける。
少し息の乱れた田島さんが、私を見て驚いていた。
「おかえりなさい」
「……ただいま。待っててくれたの?」
「うん……」
うつむきながら、田島さんの袖をつかむ。
外の匂いがする彼に、抱き寄せられた。
「なんか……ほっとした。梓さんがいてくれて」
「……一人で待ってる間、寂しかった」
顔を埋めた胸から鼓動が聞こえて、私の指先を揺らす。
「梓さん……」
顔に添えられた手に誘われて、唇にキスが落ちた。
不意に身体が宙に浮いて、田島さんの首にしがみつく。
背中を支えてくれる引き締まった腕の感触を、薄い部屋着越しに感じた。
「……行こうか」
うなずいて、彼の肩に額を寄せた。
「……ベッドでもいい?」
「ソファじゃ狭いでしょ」
「……確かに」
ベッドにそっと寝かせられて、ふうっと息を吸い込む。
隣に横たわった田島さんと向かい合う。
私の目を見つめて、ゆっくりと髪を撫でてくれる。
その手つきが心地好くて、強張っていた身体の力が抜けた。
「ベッドも狭かった……ですね……」
田島さんは、私を安心させるように、頬や首筋を撫でる。
鎖骨の上を滑る指先に、思わず息が詰まる。
触れ方は優しいのに、胸の中が落ち着かない。
「……っあ……」
溜め息まじりの声が、漏れ出てしまう。
反射的に、腕で顔を隠した。
こんな顔見られたくない。
「……どうしたの?」
「声……恥ずかしくて……」
田島さんは、なだめるように私を抱きしめる。
耳元で低くささやいた。
「かわいい。本当に……」
「……だけど……変でしょ?」
「そんなことない、すごくかわいい」
田島さんの身体の重みを受け止める。
馴染んでくる体温が、泣きたくなるほど切なかった。
大きな手が私の中にある、絡まった何かをほどいていく。
部屋の中は、二人分の鼓動と呼吸の音で満ちる。
外から割り込むように、クラクションの音が聞こえた。
絡められた指を、固く握り返して口づけ合う。
田島さんの手がためらいながら、私の身体を撫でる。
そのたびに私の中に熱が生まれて、夢中で舌を絡ませていた。
乱れた呼吸を抑える余裕なんて、どこにもない。
「梓さん……嫌じゃない?」
目を逸らさないで、首を横に振る。
それが精いっぱいだった。
キスの合間に繰り返し名前を呼ばれる。身体の深い場所が疼く。
抑えきれずに腿を擦り合わせた。
田島さんは私の反応を確かめながら、触れて見つめる。
そんなふうにされると、愛されているんじゃないかって思ってしまう。
顔や耳、あちこちに口づけが落ちるたび、息が触れて胸がざわつく。
首をすくめると、田島さんが言った。
「……この部屋に来た時、この服で俺を出迎えてくれて。あの時、理性が吹っ飛びそうになった」
「だって……これは、部屋着だから……」
一瞬、動きを止めた彼が、わざと私の目を見ていたずらっぽく笑う。
それから、耳元に口づけながら言った。
「……当直明けの俺には、刺激が強かった」
「なにそれ……」
田島さんの手が、ハーフパンツの裾に潜り込んだ。
そのまま内腿を行ったり来たりして、肌の感触を確かめる。
「……ずっと触れたかった。我慢してた」
田島さんは、照れながら苦笑いする。
がっしりした肩に添わせるように手を置いて、私からキスをした。
「好き」なんて、今はなくてもいい。
開け放っていたリビングの窓を閉め、ガラス越しに外を眺める。
視界の向こうに白く霞むビルが見えた。
以前住んでいた街からは、遠く離れている。
思い出したくもない記憶ばかりが詰まった、打ちっ放しのコンクリートのオフィス。
裏切りに気づかなければ、私は今もきっとあの場所に囚われていた。
田島さんとも、出会えないまま――。
インターホンが鳴って、我に返った。
玄関の鍵を開ける。
少し息の乱れた田島さんが、私を見て驚いていた。
「おかえりなさい」
「……ただいま。待っててくれたの?」
「うん……」
うつむきながら、田島さんの袖をつかむ。
外の匂いがする彼に、抱き寄せられた。
「なんか……ほっとした。梓さんがいてくれて」
「……一人で待ってる間、寂しかった」
顔を埋めた胸から鼓動が聞こえて、私の指先を揺らす。
「梓さん……」
顔に添えられた手に誘われて、唇にキスが落ちた。
不意に身体が宙に浮いて、田島さんの首にしがみつく。
背中を支えてくれる引き締まった腕の感触を、薄い部屋着越しに感じた。
「……行こうか」
うなずいて、彼の肩に額を寄せた。
「……ベッドでもいい?」
「ソファじゃ狭いでしょ」
「……確かに」
ベッドにそっと寝かせられて、ふうっと息を吸い込む。
隣に横たわった田島さんと向かい合う。
私の目を見つめて、ゆっくりと髪を撫でてくれる。
その手つきが心地好くて、強張っていた身体の力が抜けた。
「ベッドも狭かった……ですね……」
田島さんは、私を安心させるように、頬や首筋を撫でる。
鎖骨の上を滑る指先に、思わず息が詰まる。
触れ方は優しいのに、胸の中が落ち着かない。
「……っあ……」
溜め息まじりの声が、漏れ出てしまう。
反射的に、腕で顔を隠した。
こんな顔見られたくない。
「……どうしたの?」
「声……恥ずかしくて……」
田島さんは、なだめるように私を抱きしめる。
耳元で低くささやいた。
「かわいい。本当に……」
「……だけど……変でしょ?」
「そんなことない、すごくかわいい」
田島さんの身体の重みを受け止める。
馴染んでくる体温が、泣きたくなるほど切なかった。
大きな手が私の中にある、絡まった何かをほどいていく。
部屋の中は、二人分の鼓動と呼吸の音で満ちる。
外から割り込むように、クラクションの音が聞こえた。
絡められた指を、固く握り返して口づけ合う。
田島さんの手がためらいながら、私の身体を撫でる。
そのたびに私の中に熱が生まれて、夢中で舌を絡ませていた。
乱れた呼吸を抑える余裕なんて、どこにもない。
「梓さん……嫌じゃない?」
目を逸らさないで、首を横に振る。
それが精いっぱいだった。
キスの合間に繰り返し名前を呼ばれる。身体の深い場所が疼く。
抑えきれずに腿を擦り合わせた。
田島さんは私の反応を確かめながら、触れて見つめる。
そんなふうにされると、愛されているんじゃないかって思ってしまう。
顔や耳、あちこちに口づけが落ちるたび、息が触れて胸がざわつく。
首をすくめると、田島さんが言った。
「……この部屋に来た時、この服で俺を出迎えてくれて。あの時、理性が吹っ飛びそうになった」
「だって……これは、部屋着だから……」
一瞬、動きを止めた彼が、わざと私の目を見ていたずらっぽく笑う。
それから、耳元に口づけながら言った。
「……当直明けの俺には、刺激が強かった」
「なにそれ……」
田島さんの手が、ハーフパンツの裾に潜り込んだ。
そのまま内腿を行ったり来たりして、肌の感触を確かめる。
「……ずっと触れたかった。我慢してた」
田島さんは、照れながら苦笑いする。
がっしりした肩に添わせるように手を置いて、私からキスをした。
「好き」なんて、今はなくてもいい。
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