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第二章 触れ合うたび深くなる
七話 どこにも行かないで
頭上で響いた声は、彼が自分に言い聞かせているようにも聞こえた。
決して、女性の扱いに手慣れた男の余裕なんかじゃない。
ただ手放したくないと願う、純粋な気持ち。
田島さんは私の肩を抱く腕にぐっと力を込める。
隙間もないくらい、ぴたりと引き寄せられた。
「……田島さんを疑ってるわけじゃない。
でも……本当に、信じてもいいの?」
抱かれたくて、抱かれたくせに――。
一度知ってしまった、田島さんの激しさと優しさ。
それを諦めるのは、今の私にできそうにない。
「これからずっと、梓さんの傍にいさせて欲しい。
不安なら、疑う暇なんてないくらい、毎日でも俺が本気だって伝える」
彼は私を見つめて、不安を消そうとするように目を細めた。
大きな手のひらに、私の頬から耳元をゆっくりとなぞられる。
その指先が、また熱を帯びてかすかに震えている。
それに気づいたとき、私の胸の中で何か密かに弾けた。
「……田島さん、本当?」
「今さら嘘なんてつかないよ。嫌?」
私の髪を撫でる指先の執拗なくらいの優しさ。
彼の中にも芽生えた、何かを物語っているようだった。
冷たい過去の記憶が、彼の言葉と体温で温まっていく。
この人は本気で、私のこれからを引き受けようとしてくれている。
「嫌なわけ、ないです……」
「さっき拓巳さん、って一度だけ呼んでくれた時、嬉しくて……。
正直、頭の中が真っ白になった――」
ぼんやりとその瞬間を思い返しただけで、耳の奥がじわりと熱くなった。
「……他の誰にも、あんないやらしい声を聞かせたくない。
梓さんの顔も、声も、俺だけが知っていればいいって……。
そんな、勝手なことばっかり考えてる。自分でも、こんなに
余裕をなくしてしまうなんて思わなかった」
整った顔に浮かぶ、自嘲気味な笑み。
彼は私の額に、柔らかく口づけを落としてから、
私の頬を指の背でそっとなぞった。
「……本気になってくれるなら、嬉しいです。でも手加減はして。
田島さん、警察官だし……」
空気を和らげたくて口にした私の不器用な冗談に、
田島さんは目尻を下げて優しく笑う。
直後、不意打ちのようにキスされた。
「仕事とは関係ないよ。梓さんは絶対嫌われたくない。
だから、どこへも行かないで……。ずっと俺の傍にいてほしい」
掠れた田島さんの声が微かに震えていて、胸がぎゅっと痛む。
「……私は、どこにも行かないです。……だから、
田島さんも、絶対に離れないでいて」
やっと言葉にできた、私の中に芽生えた彼を求める欲求。
それを彼がこれから少しずつ、丁寧に暴いていってくれる。
根拠なんて何もないけれど、今の私には確信できた。
私を抱き寄せる腕に少しずつ、けれど切実な力が込められる。
その強さが、どんな言葉よりも「離したくない」という、
彼の想いを伝えてくれる気がした。
切なくて、胸が痛くて、気づけば視界がじわりと滲んでいた。
田島さんは、泣きそうになっている私の髪を撫でながら、
そっと親指の腹で、涙を消してくれた。
決して、女性の扱いに手慣れた男の余裕なんかじゃない。
ただ手放したくないと願う、純粋な気持ち。
田島さんは私の肩を抱く腕にぐっと力を込める。
隙間もないくらい、ぴたりと引き寄せられた。
「……田島さんを疑ってるわけじゃない。
でも……本当に、信じてもいいの?」
抱かれたくて、抱かれたくせに――。
一度知ってしまった、田島さんの激しさと優しさ。
それを諦めるのは、今の私にできそうにない。
「これからずっと、梓さんの傍にいさせて欲しい。
不安なら、疑う暇なんてないくらい、毎日でも俺が本気だって伝える」
彼は私を見つめて、不安を消そうとするように目を細めた。
大きな手のひらに、私の頬から耳元をゆっくりとなぞられる。
その指先が、また熱を帯びてかすかに震えている。
それに気づいたとき、私の胸の中で何か密かに弾けた。
「……田島さん、本当?」
「今さら嘘なんてつかないよ。嫌?」
私の髪を撫でる指先の執拗なくらいの優しさ。
彼の中にも芽生えた、何かを物語っているようだった。
冷たい過去の記憶が、彼の言葉と体温で温まっていく。
この人は本気で、私のこれからを引き受けようとしてくれている。
「嫌なわけ、ないです……」
「さっき拓巳さん、って一度だけ呼んでくれた時、嬉しくて……。
正直、頭の中が真っ白になった――」
ぼんやりとその瞬間を思い返しただけで、耳の奥がじわりと熱くなった。
「……他の誰にも、あんないやらしい声を聞かせたくない。
梓さんの顔も、声も、俺だけが知っていればいいって……。
そんな、勝手なことばっかり考えてる。自分でも、こんなに
余裕をなくしてしまうなんて思わなかった」
整った顔に浮かぶ、自嘲気味な笑み。
彼は私の額に、柔らかく口づけを落としてから、
私の頬を指の背でそっとなぞった。
「……本気になってくれるなら、嬉しいです。でも手加減はして。
田島さん、警察官だし……」
空気を和らげたくて口にした私の不器用な冗談に、
田島さんは目尻を下げて優しく笑う。
直後、不意打ちのようにキスされた。
「仕事とは関係ないよ。梓さんは絶対嫌われたくない。
だから、どこへも行かないで……。ずっと俺の傍にいてほしい」
掠れた田島さんの声が微かに震えていて、胸がぎゅっと痛む。
「……私は、どこにも行かないです。……だから、
田島さんも、絶対に離れないでいて」
やっと言葉にできた、私の中に芽生えた彼を求める欲求。
それを彼がこれから少しずつ、丁寧に暴いていってくれる。
根拠なんて何もないけれど、今の私には確信できた。
私を抱き寄せる腕に少しずつ、けれど切実な力が込められる。
その強さが、どんな言葉よりも「離したくない」という、
彼の想いを伝えてくれる気がした。
切なくて、胸が痛くて、気づけば視界がじわりと滲んでいた。
田島さんは、泣きそうになっている私の髪を撫でながら、
そっと親指の腹で、涙を消してくれた。
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