清楚系彼女は溺愛警察官を乱して狂わせる

日下 凛

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第二章 触れ合うたび深くなる

九話 ふしだらな夕暮れ

 どれくらい眠っていたんだろう。
 窓の外から聞こえてくる子どもたちの声で、意識がはっきり浮上した。

 開いた目の前には、すうすうと気持ちよさそうに寝息を立てる田島さんの顔があった。私の頭の下にはがっしりした彼の腕があり、片手は腰に回されて逃がさないと言った通り、相変わらず身体は密着していた。

 カーテンを通して入ってくる光は、夕刻を示すオレンジがかった色。ぼんやりしたその光の中で、私は目の前にいる田島さんが眠っているのをいいことに、彼の顔を観察する。

 閉じたまぶたを縁取ふちどるまつ毛は長くて、鼻筋もすっと高く通っている。頬は男らしく引き締っているけれど、微笑んでいるような口元はどこかあどけさを感じた。
 私を抱いていた時は、情欲を剥き出しにした男の顔をしていたのに。

「……こんな顔して眠るんだ」

 思わず微笑み、誘惑に負けて無防備な彼の頬に手を触れる。
 私より少し硬い肌に触れる。指先で顔回りの髪を梳いたり、軽くまつ毛に触れたりしていると、田島さんが微かにうなった。
「起こしちゃった?」と、慌てて手を離し、しばらく様子を見ていると、また寝息を立て始めほっと胸をなで下ろす。

 恐る恐る頬に手を伸ばして肌をなぞり、指先で唇に触れてみる。その手触りは、思いのほか柔らかくて。唇から顎、喉仏からがっしりとした肩のラインへ指先を滑らせていく。
 少し前まで、私を翻弄ほんろうしていたその逞しい肩。滑らかな肌に触れた指先からジリジリとした熱が伝わってきて、下腹部の奥が小さく疼く。一度抱かれただけで、心も身体も全部違う形に作り替えられてしまったみたいだった。

 本当の私は、こんなにふしだらで貪欲だったなんて。

 掛け物の下で、自分の脚を彼の脚にそっと絡ませる。
 肌と肌がれて、高い体温が伝わってくる。
 もっと彼を知りたい、この穏やかな寝顔が、また私を組み敷いて情欲で歪むところを見たい――。
 そんなことを思って、ゆっくり上下する彼の胸板に指先で小さく円を描いた、その時だった。

「……梓さん。……なにしてるの?」

 低いけれど、さっきまで眠っていたとは思えないくっきりとした声。
 とっさに指を引っこめようとしたのに、田島さんの手はそれを許さなかった。私の手首をしっかり捕らえた彼の目は、夕陽の中で濃密な熱を帯び、私を射抜くように見つめている。

「……田島さん、……起きてたの?」
「……ちょっと前から。脚をがっつり固められるし、梓さんの指があんまり楽しそうに俺で遊んでるから……寝たふりしてやり過ごすのも、もう限界だったよ」

 田島さんはいたずらっぽく、けれどどこか危うい笑みを浮かべながら、捕らえた私の手を自分の唇へ運んだ。

「ここ……熱心に触ってたよね?」

 指先に落ちる、さっき感じたばかりの柔らかさと、甘く疼くような吐息。
 頬の内側に火がついたような熱を持ち、鼓動がうるさく速くなる。
 けれど、至近距離で見つめてくる彼から、どうしても視線を逸らすことができなかった。

「……寝顔を見てたら、触れたくなって。私、田島さんに、もっと……」

 そこまで言って、言葉が詰まった。
 でも、田島さんに組み敷かれていた時のあの熱を思い出すと、身体は正直に、掛け物の下でじゅわりと蜜をあふれさせていた。

「私も……あなたに、触れてほしかったから……」

 自分でも驚くほど、明け透けな言葉を漏らしてしまう。
 私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、田島さんの目の奥に理性を焼き切るような情欲の火が灯る。

 彼は私の腰を両手でつかむと、逃がさないと言うように、そのまま自分をまたがらせるようにして、私を身体の上へ引き上げた。

「……さっきまで、あんなにかわいい顔して寝顔を見てたのに、今はそんな顔して……俺を誘うんだ?」

 田島さんの腰に跨った私の下腹部に、低い声が直接響く。
 薄い掛け物の下で、お互いの熱がダイレクトに重なり合う。
 露わになった胸を隠そうとした私の腕をつかみ、囁くように言った。

「覚悟……できてるよね……?」
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