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第三章 近づく未来、深まる愛
五話 その二 敗北の甘い余韻 ※
前回五話その一に引き続いて、
三章二話の「飢えた獣を手懐ける」の拓巳視点になります。
梓の腰を抱き寄せた瞬間、彼女の細い身体がわずかに跳ねた。
俺よりもずっと小さくて、華奢な身体をしていて、強く抱きしめれば壊れてしまいそうな梓。それなのに彼女の中は俺の昂りをゆっくりと、深く、迎え入れてくれる。
狭くて、息を呑むほどに熱い梓の内側は、俺の質量をぎゅっと締め付け誘うように絡め取っていく。その感触に、背筋を電撃のような快楽が走り抜けた。
「……っ、梓。なか、熱すぎる……」
彼女の喉から喘ぐ声が漏れて、それを恥じるように俺の肩口に顔を埋める。
そんな仕草さえ、バラバラになった俺の理性を最後の一片まで消し去った。
梓の最奥まで届いた瞬間、俺は確信した。
俺は、この逃げ場のない優しさに触れるために、生きてきたんだ。
繋がり合った場所から境界が溶けてゆき、梓の奥が俺を迎え入れる。
彼女の最深部に突き当たった衝撃に、頭の中で閃光が散った。
やっと、梓の心臓に一番近い場所へ、辿り着けたんだ。
ゆっくりと泥濘の奥まで沈めると、梓のすべてを支配したような、俺が彼女に完全に手懐けられたような、そんな奇妙な感覚に包まれた。
「梓は俺のものだ」という独占欲と「この人のためなら死ねる」という降伏感。
自分のものだという征服欲と、この温もりに一生縛られていたいという服従心。
二つの矛盾した感情が混ざり合い、俺はただ、梓という深い海の中へどこまでも溺れていくことしかできなかった。
このまま、梓の中に溶けて消えてしまいたい――
ついさっきまで、俺は確かに『公僕』だった。
荒い呼吸の合間に、玄関の隙間から差し込む明るい朝の光が見えた。
世間の人たちは、健全な日常を送っているであろう時間。
俺は最愛の彼女を玄関の床に組み敷いて、獣のようになりふり構わず貪っていた。
食欲なんて、梓の笑顔と体温に触れた瞬間に、ドロドロとした情欲に塗りつぶされてしまった。
梓の中で果てた俺は、彼女の胸元に顔を埋めて、荒い呼吸を整える。
キッチンから漂ってくるカレーの香りに、とめどなく罪悪感が湧き上がって、気怠い身体を無理やり起こした。
「……ごめん、梓。……俺、酷いことをした」
まだ息を乱して横たわったままの梓を見て、さっと血の気が引いた。
帰るなり、しかも玄関なんかで、出迎えてくれた梓を襲って……。
「俺は、いったい何やってんだ……」
そう呟くと、梓の手が俺の制服の襟に伸びてきた。
乱れた髪のまま、俺を見上げて微笑む梓。
「……お疲れ様、拓巳さん」
彼女の目には、俺を責める色なんて一欠片もない。
ただ、嵐が過ぎ去った後の海のような、静かな慈愛だけを湛えていた。
ああ、もう……仕事なんて、どうでもいい。
俺は、彼女の首筋に深く顔を埋めた。
手懐けられたのは、俺の方だ。
「梓には、一生勝てない」、そんな心地よい諦め。
結局、俺は彼女の手のひらの上で、転がされているだけなんだろうか。
でも、それでいい。
梓とずっと一緒に生きていけるなら。
三章二話の「飢えた獣を手懐ける」の拓巳視点になります。
梓の腰を抱き寄せた瞬間、彼女の細い身体がわずかに跳ねた。
俺よりもずっと小さくて、華奢な身体をしていて、強く抱きしめれば壊れてしまいそうな梓。それなのに彼女の中は俺の昂りをゆっくりと、深く、迎え入れてくれる。
狭くて、息を呑むほどに熱い梓の内側は、俺の質量をぎゅっと締め付け誘うように絡め取っていく。その感触に、背筋を電撃のような快楽が走り抜けた。
「……っ、梓。なか、熱すぎる……」
彼女の喉から喘ぐ声が漏れて、それを恥じるように俺の肩口に顔を埋める。
そんな仕草さえ、バラバラになった俺の理性を最後の一片まで消し去った。
梓の最奥まで届いた瞬間、俺は確信した。
俺は、この逃げ場のない優しさに触れるために、生きてきたんだ。
繋がり合った場所から境界が溶けてゆき、梓の奥が俺を迎え入れる。
彼女の最深部に突き当たった衝撃に、頭の中で閃光が散った。
やっと、梓の心臓に一番近い場所へ、辿り着けたんだ。
ゆっくりと泥濘の奥まで沈めると、梓のすべてを支配したような、俺が彼女に完全に手懐けられたような、そんな奇妙な感覚に包まれた。
「梓は俺のものだ」という独占欲と「この人のためなら死ねる」という降伏感。
自分のものだという征服欲と、この温もりに一生縛られていたいという服従心。
二つの矛盾した感情が混ざり合い、俺はただ、梓という深い海の中へどこまでも溺れていくことしかできなかった。
このまま、梓の中に溶けて消えてしまいたい――
ついさっきまで、俺は確かに『公僕』だった。
荒い呼吸の合間に、玄関の隙間から差し込む明るい朝の光が見えた。
世間の人たちは、健全な日常を送っているであろう時間。
俺は最愛の彼女を玄関の床に組み敷いて、獣のようになりふり構わず貪っていた。
食欲なんて、梓の笑顔と体温に触れた瞬間に、ドロドロとした情欲に塗りつぶされてしまった。
梓の中で果てた俺は、彼女の胸元に顔を埋めて、荒い呼吸を整える。
キッチンから漂ってくるカレーの香りに、とめどなく罪悪感が湧き上がって、気怠い身体を無理やり起こした。
「……ごめん、梓。……俺、酷いことをした」
まだ息を乱して横たわったままの梓を見て、さっと血の気が引いた。
帰るなり、しかも玄関なんかで、出迎えてくれた梓を襲って……。
「俺は、いったい何やってんだ……」
そう呟くと、梓の手が俺の制服の襟に伸びてきた。
乱れた髪のまま、俺を見上げて微笑む梓。
「……お疲れ様、拓巳さん」
彼女の目には、俺を責める色なんて一欠片もない。
ただ、嵐が過ぎ去った後の海のような、静かな慈愛だけを湛えていた。
ああ、もう……仕事なんて、どうでもいい。
俺は、彼女の首筋に深く顔を埋めた。
手懐けられたのは、俺の方だ。
「梓には、一生勝てない」、そんな心地よい諦め。
結局、俺は彼女の手のひらの上で、転がされているだけなんだろうか。
でも、それでいい。
梓とずっと一緒に生きていけるなら。
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