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第三章 近づく未来、深まる愛
九話 その二 逃げられない幸福 ※
見えない世界に落ちていく感覚が、かえって彼の存在だけを際立たせた。
背後から覆い被さってくる汗に濡れた彼の重い体温と、私の拍動の倍の速さで打ち鳴らされる心音だけが、私の世界の全てになる。
身を捩る余地すらなかった。
その抱擁が、かえって彼に全てを掌握されているという、抗いがたい官能の渦を増幅させていた。
「っ、痛い……!」
うなじから柔らかな首筋へ、容赦ない熱が獣のように食らいついた。
内出血を誘うほど強く吸い上げ、消えない紅い印を深々と焼き付けていく。
私の皮膚一枚、細胞の一つすらも自分以外のものに見せまいとするような、過剰で荒々しいマーキング。
その口付けはピリピリとした痛みを伴うのに、私の脇腹や太腿を這い回る拓巳さんの指先は、矛盾するほどどこまでも優しく丁寧だった。
宝物を愛でるように甘く肌をなぞる指の感触と、決して私を外へ逃がさないよう、腰骨の根元を重く固定する骨盤の苛烈な圧。
天国と地獄が同居したようなその振り幅が、私の感覚を根元から曖昧に溶かしていく。
「……梓。好きすぎて、このままどうにかなりそうだ。全部壊してしまいたくなる自分が……怖いんだよ」
首筋の汗を舐め取りながら、耳元に落とした拓巳さんの呻くような声。
それはいつもの彼の姿に似合わない、どこまでも脆く切実な告白だった。
彼の中に限界まで圧縮された、どこか異常で歪な愛情の深さ。
それに触れた瞬間、恐れではなく、狂おしいほどの甘い痺れが私の脊髄を焼き尽くす。
乞うような愛で私を繋ぎ止め、私という存在を彼だけのものにしようとしている。
それがどうしようもなく嬉しい。
悲しいほどに素直な私の身体はさらに熱を帯び、期待に奥を波打たせてしまった。
遠くの喧騒も、昼下がりの太陽も、すでに分厚い窓ガラスに阻まれた現実感のない夢物語だった。
二人の湿度と欲情の匂いに満ちた部屋。
今だけは、拓巳さんが私のためだけに閉じてくれた、静かで温度のある世界。
大きく引き絞られた重たい腰が、うつ伏せで無防備になった最奥の入り口へと、再びずっしりとした摩擦を伴って最深部まで打ち付けられた。
「っん……! ぁ……ああっ!!」
先ほどまでとは比較にならない、肺の中の空気がすべて押し出されるほどの重く深い侵入。
私の輪郭が内側から、彼の形に作り替えられていく。
軋むベッドのスプリング音と、濡れた肌が擦れ合う鈍い音が、拍動に乗って部屋の温度をどこまでも上昇させていく。
ぐちゃぐちゃに乱れる思考のなか、拓巳さんの凍てつくような吐息が、私の鼓膜を突き刺した。
「……梓、他の男の前では、……澄ました顔をしながら、俺の腕の中で啼いた自分を思い出して。……忘れそうになったら、思い出させるから。……何度だって」
「ぁ……あっ、ああっ、拓巳さん……だめっ……! ひ、あぁっ!」
何がきっかけなのか分からない。
彼に潜んでいたどす黒い独占欲が限界を突破した。
背骨が砕けそうなほどの、苛烈なストローク。
私が外の世界で誰と目を合わせようと、その瞬間、私の身体は彼に抱かれたことを思い出すだろう。
自分の足で立つと決めたのに――本当は心も身体も彼に掌握されているのを、こんなにも思い知らされるなんて。
ああ、もうだめだ――
彼の熱に溶かされて、理性も矜持も真っ白な灰になって散っていく。
私は拓巳さんの強大な重圧の下で抗う気力を奪われ、ただ求めあうまま彼に抱かれ満たされることだけを望む、捻じれた女に成り果てた。
シーツに散る涙も汗も、もう誰のものかもわからない。
すべての熱を奥の奥に注ぎ込まれ、限界を超えて視界が暗転しても、
彼の枷のような腕は私を決して離そうとしなかった。
ぐったりと沈み込む私の背中に、拓巳さんの広く分厚い胸の熱と、うっすらと微睡むような汗の匂いが重なる。
甘くて強引で、そして優しい檻の中。
再び引き戻された私の耳に、彼が満足げに唇を寄せて言った。
「……梓、無理しなくていい。俺の傍にいてほしいんだ」
光の満ちる部屋の中で私は悦楽に揺蕩い、ただただシーツの海に身を委ねるしかなかった。
背後から覆い被さってくる汗に濡れた彼の重い体温と、私の拍動の倍の速さで打ち鳴らされる心音だけが、私の世界の全てになる。
身を捩る余地すらなかった。
その抱擁が、かえって彼に全てを掌握されているという、抗いがたい官能の渦を増幅させていた。
「っ、痛い……!」
うなじから柔らかな首筋へ、容赦ない熱が獣のように食らいついた。
内出血を誘うほど強く吸い上げ、消えない紅い印を深々と焼き付けていく。
私の皮膚一枚、細胞の一つすらも自分以外のものに見せまいとするような、過剰で荒々しいマーキング。
その口付けはピリピリとした痛みを伴うのに、私の脇腹や太腿を這い回る拓巳さんの指先は、矛盾するほどどこまでも優しく丁寧だった。
宝物を愛でるように甘く肌をなぞる指の感触と、決して私を外へ逃がさないよう、腰骨の根元を重く固定する骨盤の苛烈な圧。
天国と地獄が同居したようなその振り幅が、私の感覚を根元から曖昧に溶かしていく。
「……梓。好きすぎて、このままどうにかなりそうだ。全部壊してしまいたくなる自分が……怖いんだよ」
首筋の汗を舐め取りながら、耳元に落とした拓巳さんの呻くような声。
それはいつもの彼の姿に似合わない、どこまでも脆く切実な告白だった。
彼の中に限界まで圧縮された、どこか異常で歪な愛情の深さ。
それに触れた瞬間、恐れではなく、狂おしいほどの甘い痺れが私の脊髄を焼き尽くす。
乞うような愛で私を繋ぎ止め、私という存在を彼だけのものにしようとしている。
それがどうしようもなく嬉しい。
悲しいほどに素直な私の身体はさらに熱を帯び、期待に奥を波打たせてしまった。
遠くの喧騒も、昼下がりの太陽も、すでに分厚い窓ガラスに阻まれた現実感のない夢物語だった。
二人の湿度と欲情の匂いに満ちた部屋。
今だけは、拓巳さんが私のためだけに閉じてくれた、静かで温度のある世界。
大きく引き絞られた重たい腰が、うつ伏せで無防備になった最奥の入り口へと、再びずっしりとした摩擦を伴って最深部まで打ち付けられた。
「っん……! ぁ……ああっ!!」
先ほどまでとは比較にならない、肺の中の空気がすべて押し出されるほどの重く深い侵入。
私の輪郭が内側から、彼の形に作り替えられていく。
軋むベッドのスプリング音と、濡れた肌が擦れ合う鈍い音が、拍動に乗って部屋の温度をどこまでも上昇させていく。
ぐちゃぐちゃに乱れる思考のなか、拓巳さんの凍てつくような吐息が、私の鼓膜を突き刺した。
「……梓、他の男の前では、……澄ました顔をしながら、俺の腕の中で啼いた自分を思い出して。……忘れそうになったら、思い出させるから。……何度だって」
「ぁ……あっ、ああっ、拓巳さん……だめっ……! ひ、あぁっ!」
何がきっかけなのか分からない。
彼に潜んでいたどす黒い独占欲が限界を突破した。
背骨が砕けそうなほどの、苛烈なストローク。
私が外の世界で誰と目を合わせようと、その瞬間、私の身体は彼に抱かれたことを思い出すだろう。
自分の足で立つと決めたのに――本当は心も身体も彼に掌握されているのを、こんなにも思い知らされるなんて。
ああ、もうだめだ――
彼の熱に溶かされて、理性も矜持も真っ白な灰になって散っていく。
私は拓巳さんの強大な重圧の下で抗う気力を奪われ、ただ求めあうまま彼に抱かれ満たされることだけを望む、捻じれた女に成り果てた。
シーツに散る涙も汗も、もう誰のものかもわからない。
すべての熱を奥の奥に注ぎ込まれ、限界を超えて視界が暗転しても、
彼の枷のような腕は私を決して離そうとしなかった。
ぐったりと沈み込む私の背中に、拓巳さんの広く分厚い胸の熱と、うっすらと微睡むような汗の匂いが重なる。
甘くて強引で、そして優しい檻の中。
再び引き戻された私の耳に、彼が満足げに唇を寄せて言った。
「……梓、無理しなくていい。俺の傍にいてほしいんだ」
光の満ちる部屋の中で私は悦楽に揺蕩い、ただただシーツの海に身を委ねるしかなかった。
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