最弱勇者は無双したい~異世界に来たのに俺tueeeできない勇者の話~

渋井丸

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第一話 転生

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「異世界に、転生してもらいます」

 女神アンリの口から放たれた言葉とともに、色々な感情が俺を襲った。歓喜、驚愕、感動……。まあその殆どが、この突拍子もない話に対しての困惑の現れなのかもしれないから、大凡一つにまとめることは不可能に等しかった。

 「えっと……マジですか」

 熟考を重ねた結果、俺の口から出たのはあまりにも平凡な言葉だった。それでも俺の言いたいことを一度に表してくれるんだもん、日本語ってすげえよなあ。つまり、その偉大な言語を発展させた日本人の末裔である佐藤すげえ。謎の理論だなこれ。

 「マジです。田中さんには、地球とは別の世界、ラムセイムに転生して、魔王を倒してもらいます」
 「マジなんですか」
 「マジなんです」

 マジなのか。とはいえ、取り乱してはいけない。ホントのところわくわくしてしょうがないが、いついかなる場合も落ち着いて対処するのが紳士の嗜みである。
 ということで、聞きたいことを順に聞いていこう。

 「えっと、その世界って魔法があったりしますか?その、ラノベみたいな……。」
 「あります。ステータスだってありますし、モンスターも冒険者もいます」

 なるほど。基本的にはラノベと同じような感じだと思えばいいのか。ということは、もしかして……。

 「あの、異世界に行く特典みたいなのってありますかね?行くからには、強い能力で無双とか……」

 俺がそう言うと、アンリ様の肩がビクッとなった。そう、例えばマンガで、つまみ食いがバレた子供のような動きである。

 「もももちろん!ありましゅっ、ありますよ!」

 言いながら、懐に手を入れてゴソゴソやっている。なんだよ、道具でも探してんの?それならポケット探せよ。

 「えっとえっと……あった!」
 「えっと……このカード、なんですか?」

 アンリ様が取り出したのは、一枚のカードだった。見つかったことへの安堵感からか、笑顔でこちらに渡してくる。葉書ぐらいの大きさのそれには、カタカナで「タナカコウジ」と俺の名前が記されている。

 「それは田中さんのステータスボードです。あなたがよく知っているら……らのべ? とか、げーむにもあったでしょう。」

 そう言われて、手元にあるボードを見た。

 名前 タナカコウジ
 ちから 5 まもり 5 すばやさ 5 まりょく 5 うん 5
 スキル1 無限創造・紙ペーパークリエイトレベル1
 スキル2 形状変化・紙フォルムチェンジレベル1

 ……ん? なんか変なスキルがあるな。

 「すみません、このスキルって……」

 ビクビクっと、アンリ様の方が小さく跳ねた。さっきよりも大きい反応を示すアンリ様に、訝しげな視線を送る。

 「あっ、と……。それは私達が授けられる能力なんですが……。どちらから説明いたしましょう?」
 「……じゃあ、この無限創造・紙ペーパークリエイトからお願いします」

 ステータスボードに記された文字を指差して説明を乞うと、冷や汗をダラダラ垂らしたアンリ様が目を逸らした。

 「……その。名前の通り、紙を無限に創り出せるスキルです。」
 「……。」
 「それだけ……です。」

 居たたまれなくなったのか、髪をいじりだすアンリ様に、俺はなおも視線を送る。勿論、悪い意味で。
 初めのうちは俺の熱視線を無視していたアンリ様だったが、しばらくするとしびれを切らしたように椅子から立ち上がった。ガタン、という音が、無音の空間に鳴り響いた。

 「……スキル2の形状変化・紙フォルムチェンジは、スキル1で創り出した紙の形状変化。要は、折る必要がない上に形を変えられる折り紙です。……どうです? なんか良く思えてくるでしょ?」

 開き直ってドヤ顔でふんぞり返る、目の前の少女を殴りたい気持ちをなんとか抑えつつ、手元のボードに目をやる。とりあえず、今思いつく質問をして気を紛らわせよう。

 「……スキルで作り出した紙の硬さは変えられますか」
 「変えられません。出せるのはコピー用紙レベルの硬さだけ…」

 ……。

 「……形を変えて武器にしたりとかは」
 「基本コピー用紙レベルの硬さだけなので、ちょっと」

 …………。

 「スキルのレベルアップは」
 「あるにはありますが……変化や生産効率が上がるのが恩恵なので、効果自体に変化は……」

 ………………。

 「……聞けば聞くほど無能なスキルじゃねーか!なんでこんなスキルだけで異世界行かなきゃなんねーんだよ!」
 「私が決めたんじゃないですよ!文句は過去の自分に言ってくださいっ!」
 「てめーそんな言い訳が……!」

 ……過去の自分?

 「そうだ!そうですよ!履歴書の特技の欄に「折り紙」って書いたのはあなたじゃないですかっ!スキルの選別にはあの欄に書かれたことが反映されますから、私のせいじゃ……いやまあそりゃ説明を怠った私にも非はあるかもですけど……」

 ……ん? こいつ今聞き捨てならないことを言った気が…。

 「……おいお前。ほんとは説明するはずのことを忘れてたんだろ。そうだな?」
 「ち、ちが……ハイすみません」

 言いかけて、自分を見つめる俺の眼力に怯んだように俯きながら謝るアンリ。
 「じゃあ今からでもスキルを変えろ。反省してるならな」
 「……」
 「変えられないのか? ……もしかしてさっきギャグが滑ったことをまだ気にして」
 「開け!異界への門!」

 その言葉に反応するかのように、俺の足元に魔法陣が現れた。……あれ?出られん。見えない壁に阻まれているようだ。

 「さらば勇者よ!あなたが魔王を倒すのを心待ちにしておりますっ!」
 「おいテメー汚えぞ!……おい出せっ!ここから出せよ!ふざけんな、紙切れで魔王倒せってか!」

 おい、これは洒落に……!チクショー!

 「それでは!旅立て、勇者よ!」
 「てめー、覚えてろよおおおおおおおお!」


 ……こうして、不本意ながら俺は、勇者として異世界に旅立ったのだった。
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