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第三章 コンビニエンスストアー傷害事件 一、注意深く
しおりを挟むじりじりと照りつける強烈な日差し。
藪押は、十九号線を後にし、下道を歩き、勝川までやってきていた。
我ながらよくもここまで歩いてきたものだ、と感心する。途中JR勝川駅を見つけた。そこから電車に乗ろうかと思ったが、何故かはわからなかったが、そうしてはならない、何かを感じ、踏みとどまった。
道路からは猛烈な温度を感じた。車が何台も通っていく。その度に吐き出される排気ガス。景観が揺れていた。道路も揺れていた。それとも俺の頭が揺れているのか。
分からなかった。意識が遠のいていく。ここでは倒れない。こんな所で倒れてたまるか。藪押は足を引きずりながら、前へ進んでいった。
学校や病院を多く見かけた。今じゃ至る所に防犯カメラが設置されている、そんな風に思った。これじゃ何処で何をしているのかが、すぐに分かってしまう。監視社会。
可視化、いい表現だな。でも、俺から言わせれば、闇だ。
大きな、あるモノに自分の行動を読まれているような。ほんと肩が凝る世の中になってしまったな、そう実感する。とは思ってみるが、そんなことよりも、今は、とにかく暑かった。
早く、涼しい所に入りたい。
お、コンビニがある。
まさに砂漠の中のオアシスが目の前にあるのを知ったようで、笑みが漏れた。
アスファルトの照り返しに、額に玉のような汗を滴り垂らし、タオルでそれを拭くが、まったく追いつかない。喉の渇きを異常なまでに感じていた。呼吸を整え、コンビニに入った。
一歩店内に入ると冷気が火照った体を優しく包んでくれ、頬が自然と和らいだ。なんという解放感。それで身体がゆっくりと弛緩していく。
足のつま先から冷えていき、それが頭の芯に及んでいく。顔も緩んでくる。店内は藪押の他に客はいなかった。レジにいる二十歳くらいの女性店員がいるだけで、心なしかほっとした。
防犯カメラがあるのは分かる。帽子を目深に被って、顔を隠してはいるが、それほど自分では、気にはしていなかった。
もし、捕まるのであれば、それはそれで仕方のないことだ、と半ば自棄になっていることにも気づかされる。なるようになるさ。
捕まれば、そこで俺の新しい人生の旅が、そこで終わるだけだ。そんな安易な考えが頭を掠める。
その店員もレジの釣銭を勘定しているのか、あるいは伝票整理でもしているのか忙しそうで、入店した藪押の顔さえ見ようともしなかった。
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