エンドレス   ~終わらせたい、終わらせたくない~

中野拳太郎

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三、この男の考えは・・・

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 会社を後にし、十九号線から百五十五号線に入ってくると、帰宅のラッシュアワーとかち合い、混み合っていた。

 車がなかなか進まない。坂戸は手に汗をかき、これまでにない極限的な緊張感を覚える。

 藪押はあれから一言も喋らない。ただ座って前を見ている。いや、サングラスの奥の目を、横から見てみると、目を瞑っていた。寝ているのでは、と思った。疲れているようだった。

「エアコンの温度はどうですか?」

 しばらくは何の返答もなかった。

「暑くないですか?」

 もう一度訊いた。

「快適だ」

 やはり、寝ているわけではなかった。

 ただ目を瞑って、休んでいるだけだ。ぬか喜びだ。一瞬でも安心した俺がバカだったのだ。  

 俺の置かれたこの現状はまさに修羅場といっても過言ではない。これは簡単なことではない。いつものように嵐が過ぎ去るのを待つだけでは、済まされないんだぞ。

 さ、一体どうする? 彩加にも連絡を取らないことには・・・・・・。彩加が言ったことが本当ならば、きっと小和田家に警察が来ているはずだ。これからどうやって、この状況を伝えるのか。

 混み合う百五十五号線から一車線の十五号線に入ると車の通行量はかなり減ってきた。多治見市内の中心部を流れる一級河川、土岐とき川沿いに車を走らせていく。市街地を雄大に流れる姿や、古虎渓ここけい付近の渓谷美は多治見のシンボルだ。

 川沿いに車を停め、その景観を眺める者をちらほら見かけた。生い茂った木々。誘うように深くなりつつある森の中に、坂戸は車を走らせていく。やがて中央本線の潤堂寺駅が見えてきた。左折して、二台の車がすれ違えられるかどうかの細い橋を渡った。

 川の流れはゆるやかで、坂戸のこの現状を忘れさす。だが、隣の押し黙って座る男を見ると、忘れていた危険を思い出され、また意気消沈する。

 一体、この男は、こんな所にまで俺を拉致してきて、今から何をしようとすんだ? 

 分からなかった。いくら考えても分からなかった。





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