悪役令嬢は下僕の舌上に踊る

3月5日コミカライズ配信♡二階堂まや

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三度目の歓喜は、二人で

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「練習……?」

 首を傾げるとエヴェラウドは何も言わず微笑んだ。

「取り敢えず、お召し物だけお預かりしましょうか」

 その一言で、自分が下半身裸でブラジャーだけ付けていることを思い出す。

「……そうね」

 彼の手で呆気なくブラジャーが外され、乳房がこぼれ落ちる。もう、私を隠すものは何も無い。

 そして彼も全て衣服を脱ぎ、二人共一糸まとわぬ姿となった。

「……っ、」

 エヴェラウドの裸体を見て、私は思わず息を呑んだ。

 生まれたままの姿になったことで、彼の鍛えられた筋肉も全て露わとなったのだ。

 それは、私が今まで目を向けてこなかった、陰ながらの努力を物語っていた。

 単に口が上手く要領が良いだけではない。努力を重ねて、今彼はここにいるのだ。

 その積み上げたものを、小娘への嫌がらせごときに使うなど、大罪である他ない。

 申し訳無さと罪悪感が、じわりと胸の奥に広がった。

「……少しだけ、照れてしまいますね」

 長い付き合いだが、裸で向かい合うのは初めてだった。そして予行練習と言えど、これからすることも初めてである。

 そう思った瞬間、途端に不安を抱き始めるのだった。

「……上手くできるかしら?」

「大丈夫です。どうか私に、お任せください」

 どうやらこの場の主導権は、彼の手に渡ったようである。

 言われるがまま、私は脚を交差するように閉じて、ベッドに背中を預けた。その上にエヴェラウドが跨り、大きな影は私をすっぽりと覆った。

 傍目から見れば、私は大きな獣に押し倒され、襲われているのだろう。

 しかし私の中にあるのは、彼に守られているという安心感だった。

 この男が、早く欲しい。

 少し下に目をやれば、張り詰めた肉棒が天を仰いでいる。彼もまた、目の前の女を求めているのだろうか。

 そう考えた瞬間、膣がきゅんと疼くのを感じた。

「それでは……、失礼します」

「えっ、ひっ……ぁっ!?」

 エヴェラウドは私の股と太腿の間に、勃ち上がった自身を差し入れたのだった。

 繋がってはいない。けれども、性器同士は粘液越しに擦れ合っている。言わば、仮結びのような行為であった。

 とはいえ、彼が抜き差しをする度に秘種が雄茎に擦れ、脳天を撃ち抜かれるような快感が波のように襲ってくる。

 シーツを握りしめ、私はあられも無い声を上げた。

「あ、ああああっ!!」

「うっ、ぁ、っ……は、っぁ!!」

 男と女の喘ぎが、部屋を満たしていく。気付けば、すっかり全身が汗ばんでいた。

 額の汗を拭う時、エヴェラウドと目が合った。その頬にも、汗が一筋流れていた。

「ディアナ様、ディアナ様……、ああ本当に、お美しい……」

 うわ言のように、彼は何度も私の名を呼ぶ。

「ディアナ様、ずっと……お慕い申し上げて、おりました……っ、あの日からずっと……っ、ぁ、」

「……は、ぁ、んっ……」

 口の滑らかな彼には珍しく、上手く言葉を紡げないようだった。

 まるで、初めて出会った時に戻ったみたいだ。

「……、っ……、ぁ、も、申し訳、ござ、いませ、っ……ん」

「……大丈夫、……っ、ちゃんと、聞いてるから」

 飼い犬を安心させるように、私は彼の背に手を回した。

「……っ、は、ぁっ、ディアナ様……!!」

 涙目になりながらも、愛犬は必死に言葉を続ける。

「……、っ、子供の頃、上手く話せなくて、周りに、いつも、揶揄われていました……っ、意地悪された、こと、だって、沢山……っ、あります」

「……っ、ぁ、う、ん、」

「だけど、ディアナ様は、笑わずに、ちゃんと、私の話を……、聞いてくれた。それが凄く、凄く嬉しかった……っ、」

 途切れ途切れに囁かれた言葉は、遠い日の記憶を呼び起こした。

 初めてエヴェラウドに会った時、口下手な印象を受けたのは、今でも覚えている。一言一言がたどたどしくて、早口で話すことが出来なかったのだ。

 けれども私は、彼との会話が嫌いでは無かった。

 機織りをするように丁寧に紡ぎ出された彼の言葉は、どれも棘が無く、人を傷つけないものばかりだったのだ。

 歳の近い兄と口喧嘩をする際、傷つける言葉を平気で言ってしまう私とは、大違いだった。

「あの日、誓ったのです。貴女の、お役に立つために、上手く話せるように……なろう、懸命に……努力しよう……と、」

「……っ、その努力を、下らない嫌がらせに使って、憎く思わなかったの?」

 偶然隣にいるからと、都合良く彼を悪用した。私は悪い女だ。

「い、え……っ、貴女の、お役に立てたのならば、光栄で、ございます……っ!!」

 そして限界は、もうすぐそこにまで来ていた。

「あ、っ、ああああっ!!」

「ぐっ、っ、あああっ!!」

 歓声が重なり、意識が弾け飛ぶ。

 互いに抱き合い、三度目の歓喜に震えた。

「ディアナ様……」

 エヴェラウドは力尽きたように、私の肩に頭をあずける。

 すると熱い雫が、私の肩から背中に流れ落ちていったのだった。
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