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《白薔薇》は美しいままで
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「少し、派手すぎではないですか?」
「いや、この程度なら問題ない。それに女王陛下も、好きな服装で参加して欲しいと仰っていただろう?」
「そうですけど……」
王室主催のお茶会に招かれた私達は、会場となる城の庭園へと向かっていた。
今回は、王立軍と政治家の懇親を目的としているらしい。そのため、私とディート様、義母上と義父、そして義妹のクレアが招かれたのだった。会場では、兄上やリッシュ達とも会えるに違いない。
「ふふっ。お兄様にしては、なかなか趣味が良いじゃない」
「本当ね、見直したわよ」
「……それはどうも」
庭園まで歩いている途中、クレアと義母上は満足気に笑っていた。それを、ディート様はうんざりしたように聞き流していた。
「ね、義姉様。お茶会の席、絶対お隣座りましょうね。義姉様と私のドレス、並ぶときっと綺麗だと思うの」
そう言って、クレアはドレスの裾を軽く持ち上げて揺らした。
ちなみに、彼女のドレスを見立てたのは私だ。濃紺に白レースをあしらったドレスは、品の良い彼女の顔立ちによく似合っている。
庭園に辿り着くと、既に来客が大勢来ていた。
「おや、大尉ではありませぬか」
前から歩いてきた小太りの男性が、私達に声をかけてきた。服装を見るに、軍の関係者なのだろう。
「お久しぶりです」
「こちらこそお久しぶりで……おや?」
彼は不思議そうに、私を見つめた。やがてそれさ蔑むような視線になり、彼は冷ややかに言った。
「奥方は、大層賑やかでらっしゃる」
どうやら、私の着ているドレスは、私が選んだものだと思ったらしい。彼の一言を聞いて、私は身体を強ばらせた。
何故なら……。
「妻のドレスは私が選びましたが、何か問題でも?」
そう言ったディート様の表情は、完全に怒りを露わにしていた。
「え、あ……そうなんですか? ははっ、流石大尉殿で」
「……それでは挨拶がありますので、では」
男性の隣をすり抜けて、私達はテーブルへと向かった。
後ろから物凄い殺気を感じたけれども、義母上と義妹が先程の男性を睨みつけてる……なんて、きっと気のせいだろう。
「気にするな。お前にはやっぱり、華やかな格好が一番似合ってる」
「ふふっ、ありがとうございます」
ありのままの自分を受け入れてくれた彼が愛しくて、私はぎゅっと彼の腕にしがみついた。
すると。何処からか風に吹かれて、花の香りがした。それは、庭園に咲いた薔薇の香りであった。
けれども、実家に植わっている薔薇の匂いとは少し違うようにも思えた。
「薔薇の種類が違うのかしら……?」
「それか、夜と昼だと匂いの感じ方が違うのかもしれないな」
「……!?」
何気ない彼の一言で、あの夜のことが急に思い出されていく。
その場で私だけが赤面したのは、言うまでもない。
「いや、この程度なら問題ない。それに女王陛下も、好きな服装で参加して欲しいと仰っていただろう?」
「そうですけど……」
王室主催のお茶会に招かれた私達は、会場となる城の庭園へと向かっていた。
今回は、王立軍と政治家の懇親を目的としているらしい。そのため、私とディート様、義母上と義父、そして義妹のクレアが招かれたのだった。会場では、兄上やリッシュ達とも会えるに違いない。
「ふふっ。お兄様にしては、なかなか趣味が良いじゃない」
「本当ね、見直したわよ」
「……それはどうも」
庭園まで歩いている途中、クレアと義母上は満足気に笑っていた。それを、ディート様はうんざりしたように聞き流していた。
「ね、義姉様。お茶会の席、絶対お隣座りましょうね。義姉様と私のドレス、並ぶときっと綺麗だと思うの」
そう言って、クレアはドレスの裾を軽く持ち上げて揺らした。
ちなみに、彼女のドレスを見立てたのは私だ。濃紺に白レースをあしらったドレスは、品の良い彼女の顔立ちによく似合っている。
庭園に辿り着くと、既に来客が大勢来ていた。
「おや、大尉ではありませぬか」
前から歩いてきた小太りの男性が、私達に声をかけてきた。服装を見るに、軍の関係者なのだろう。
「お久しぶりです」
「こちらこそお久しぶりで……おや?」
彼は不思議そうに、私を見つめた。やがてそれさ蔑むような視線になり、彼は冷ややかに言った。
「奥方は、大層賑やかでらっしゃる」
どうやら、私の着ているドレスは、私が選んだものだと思ったらしい。彼の一言を聞いて、私は身体を強ばらせた。
何故なら……。
「妻のドレスは私が選びましたが、何か問題でも?」
そう言ったディート様の表情は、完全に怒りを露わにしていた。
「え、あ……そうなんですか? ははっ、流石大尉殿で」
「……それでは挨拶がありますので、では」
男性の隣をすり抜けて、私達はテーブルへと向かった。
後ろから物凄い殺気を感じたけれども、義母上と義妹が先程の男性を睨みつけてる……なんて、きっと気のせいだろう。
「気にするな。お前にはやっぱり、華やかな格好が一番似合ってる」
「ふふっ、ありがとうございます」
ありのままの自分を受け入れてくれた彼が愛しくて、私はぎゅっと彼の腕にしがみついた。
すると。何処からか風に吹かれて、花の香りがした。それは、庭園に咲いた薔薇の香りであった。
けれども、実家に植わっている薔薇の匂いとは少し違うようにも思えた。
「薔薇の種類が違うのかしら……?」
「それか、夜と昼だと匂いの感じ方が違うのかもしれないな」
「……!?」
何気ない彼の一言で、あの夜のことが急に思い出されていく。
その場で私だけが赤面したのは、言うまでもない。
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