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おっさん、異世界でドラゴンを育てる【外伝短編】
外伝⑤ 輝きの秘密
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【お知らせ】本作、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる」の書籍化が決まりました。発売は3月下旬となります。今後の詳しい情報は近況ボードにて!
これは、ほんのちょっと昔の話――
「よし、と」
額に溜まる汗を二の腕で拭い、大きく息を吐くひとりの青年。
短く切り揃えられた清潔感ある金色の髪は暖かなそよ風に揺られ、その澄んだ青い瞳は目の前に広がる草地を真っ直ぐに見つめていた。
男の名はフレデリック・リンスウッド。
長年夢見ていたドラゴン育成牧場の開業日を迎えられたことに、フレデリックは感無量の心境であった。
「ようやくここまで来られたんだ……」
これまでの苦労を噛みしめるように、瞼を閉じてそう呟く。
「もう、本当に大変なのはこれからなのよ?」
そんなフレデリックの横で少し呆れたように言ったのは彼の妻であるミーア・リンスウッドであった。その腕には小さな赤ん坊が抱かれている。
「もちろん承知しているさ。ミーアとキャロルのために、全力で頑張るつもりだよ。――だから応援してくれよ、キャロル」
ミーアが抱いている赤ん坊――キャロルの頬をツンツンと突きながら上機嫌に言うフレデリック。ミーアは「起きちゃうでしょ」と注意するが、それも虚しくキャロルは目を開けた。
「あうあう」
「ははは、見ろ。キャロルも牧場ができて喜んでいるぞ」
フレデリックがキャロルを抱き上げ、肩車をする格好で牧場に向き直る。その視線の先には広大な草地の真ん中で気持ちよさそうに寝転がっている赤い鱗のドラゴンがいた。
「凄いだろ? 今はまだあのイリウスしかいないが、そのうちもっと数を増やしてハルヴァ一の育成牧場にしてやるぜ」
「その心意気には俺たち竜騎士団も期待しているよ」
妻のものではない、成人男性の声に反応してフレデリックが振り返る。
「ハドリー!」
「いよいよだな、兄貴」
兄であるフレデリックと同じサラサラの金髪をなびかせて現れたのは新米竜騎士のハドリーであった。
「長年の夢が叶った感想は?」
「その気持ちはおまえもよく知っているだろ?」
「ふっ、まあね」
病弱だったハドリーは鍛錬を重ねてとうとう夢だった竜騎士団入りを果たした。それに遅れること約一年――兄であるフレデリックも、ドラゴン育成牧場オーナーという長年の夢を叶えることができた。
「しかし、いるのがまだあのイリウスだけというのはねぇ」
「駆け出しだからしょうがねぇよ。これから実績を積み重ねていくしかねぇさ。――あのイリウスはおまえに託すぞ」
「ああ……わかっているよ」
リンスウッド兄弟は拳を合わせてお互いの成功を祈った。すると、
「ううぇ~ん!!」
突如、フレデリックに肩車をされていたキャロルが泣き出した。
兄弟二人は「しまった」と同時に目を伏せる。
「すまない、兄貴……油断をしていた」
「気にするな、ハドリー」
フレデリックはキャロルをミーアに託すと、ハドリーの肩を優しく叩く。
キャロルがハドリーを見てすぐに泣きだすというのは今に始まった話ではない。激しい戦いを続ける竜騎士団に身を置くハドリーは常に気を張っていて気難しい顔をしていたのだが、その顔は大変凶悪なものであり、キャロルだけでなく他の子どもたちも恐怖のあまり泣きだしてしまうほどだった。
「可愛い姪っ子のため……なんとかしたいと笑顔の練習をしているのだが……」
涙ぐましい努力を語るハドリー。だが、今のところその成果はないようだ。
「そう落ち込むなよ、ハドリー。――そうだ、あれを見ろ」
そう言ってフレデリックが指さしたのはミーアとキャロルの方向。
目を向けると、すでにキャロルは泣き止んでおり、母親であるミーアと何やら楽しそうにしている。そのキャロルの手にはある物が握られていた。球体をしたその物体を、キャロルは楽しそうに叩いたり放り投げたりしている。
「兄貴、キャロルが手にしているのは?」
「アレか? 赤ん坊用のおもちゃだよ。まん丸で柔らかな感触をしているからキャロルが大層気に入ってな。あの大きさなら口にも入りきらないから誤飲することもないし、今や泣きじゃくるキャロルを大人しくさせる切り札だ」
その光景が、ハドリーに天啓をもたらした。
「……ありがとう、兄貴」
「え?」
「いい案を思いついたよ。――じゃあ、俺はこれで!」
そう言い残し、ハドリーは全力で駆けだした。
「な、なんなんだ?」
そのあまりの迫力に、フレデリックはしばらく呆然としているのだった。
それから数日後。
「キャロル!」
リンスウッド・ファームを訪ねてきたハドリー――その姿を目の当たりにしたフレデリックとミーアは言葉を失った。
「は、ハドリー……どうしたんだ、その頭は?」
兄と同じ美しい金髪をしていたハドリーの頭から、その金髪が綺麗サッパリなくなっていたのだ。
「これか? これこそが俺の策だよ、兄貴」
「さ、策?」
なんのことだか皆目見当もつかないフレデリックとミーアは顔を見合わせる。
「キャロルのお気に入りであるそのおもちゃと同じ頭をした今の姿なら、きっと俺を見てもなくことはないはず!」
「…………」
それはどうだろうかと冷静にツッコミを入れようとしたフレデリックだが、ハドリーのあまりの自信とそうまでして姪っ子との関係を改善したいと願う気持ちを汲んで何も語ることはなかった。
「さあ、キャロル!」
兄夫婦の横をすり抜け、子ども用の小さなベッドで横になるキャロルへ迫る。
そして、バッチリと目が合うと、
「あーう♪」
キャロルはニッコリと笑顔を浮かべた。
「! み、見ろ、兄貴! キャロルが俺を見て笑ったぞ!」
「……あれでいいのか」
我が娘ながら少し単純すぎないかと心配になったが、きっとキャロルにもハドリーの「自分と仲良くしたい」という思いが伝わったのだろう。そう解釈することにした。
――それから数年後。
「ハドリー叔父さん」
聞き慣れた姪っ子の声が耳に届く。
ハッと顔を上げたハドリーの目の前には、十五歳になったキャロルがいた。
「居眠りなんて珍しいですね」
「うーむ……ちょっと疲れがたまっているのかもしれんな」
竜騎士団の仕事が非番だったこともあり、ハドリーは姪であるキャロルの様子を見にリンスウッド・ファームを訪れていた。
彼女の両親――兄夫婦は若くして亡くなり、今はこの牧場を十五歳のキャロルがひとりで切り盛りをしている。ただ、その経営はお世辞にも順調とはいえず、売却話が持ち上がってしまうほどだった。
それでも、キャロルは懸命に働いている。
逆境を跳ね飛ばそうと、小柄な体に鞭を打つようにして。
「…………」
「? ハドリー叔父さん?」
「あ、いや、なんでもないよ」
黙ってしまったハドリーを心配して、キャロルが声をかける。それに対し、ハドリーは心配いらないと手を振った。
「そういえば、前から一度きいてみたかったんですけど」
「なんだ?」
真面目な顔つきになったキャロルに、ハドリーも真面目な顔で返す。
「どうしてハドリー叔父さんはいつもスキンヘッドなんですか? お父さんと一緒に写っている昔の写真だと髪の毛があるのに」
「…………」
「な、なんですか、その顔は」
質問者である姪のために剃ったのだが、思えば当人に話したことはないのでその理由を知っているはずもなかった。
ハドリーは大きく息を吐いて立ち上がる。
「そろそろお暇するよ」
そう言ってから、ハドリーはあることに気づく。
「キャロル? その格好……これからどこかへ行くのか?」
姪のキャロルは牧場での作業着である愛用のオーバーオールではなく、外行き用の服であった。
「ちょっとルトアの街まで買い物に行こうかと」
「ルトア? こんな時間にか?」
すでに空はオレンジ色に染まり始めている。
いくら近いからとはいえ、この時間からルトアへ行くと買い物を終えて戻って来る頃には夜になってしまう。
「最近、あの辺は治安があまりよくないって話だぞ。明日じゃダメなのか?」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。ちゃちゃっと買い物を済ませてすぐ帰ってきますから」
ニコニコ笑うキャロルを前に、ハドリーは何も言えなくなってしまう。きっと、何を言っても無駄だろう。一度決めたことはやり通す。そうした、変な頑固さは父親譲りだな、と苦笑いを浮かべた。
結局、暗くなる前に戻ることと素性のわからない人間にかかわらないという約束をして、ハドリーはリンスウッド・ファームをあとにする。
「おっと、しまった」
城へ戻る途中で、ハドリーはパチンとツルツルの頭を叩いた。
「牧場の売却話を進めようと思っていたのに……まあ、明日話せばいいか」
不本意ながらも、これ以上の存続は難しいと判断したハドリーは密かに牧場の売却話を進めていた。もちろん、兄の長年の夢であった牧場を売却するなどもってのほかなのだが、これ以上はキャロルにとっても大きな負担になるだろうという苦渋の決断であった。
「……ここらで大逆転の手でも舞い込んでこないものかねぇ」
願望を口にして、天を仰ぐ。
空のオレンジに薄らと夜の黒が混じり、星の瞬きが顔をのぞかせていた。
――ハドリーの切なる願いは星に届き、翌日、高峰颯太という大逆転の手が舞い込んでくるなど、この時のハドリーは知る由もなかった。
これは、ほんのちょっと昔の話――
「よし、と」
額に溜まる汗を二の腕で拭い、大きく息を吐くひとりの青年。
短く切り揃えられた清潔感ある金色の髪は暖かなそよ風に揺られ、その澄んだ青い瞳は目の前に広がる草地を真っ直ぐに見つめていた。
男の名はフレデリック・リンスウッド。
長年夢見ていたドラゴン育成牧場の開業日を迎えられたことに、フレデリックは感無量の心境であった。
「ようやくここまで来られたんだ……」
これまでの苦労を噛みしめるように、瞼を閉じてそう呟く。
「もう、本当に大変なのはこれからなのよ?」
そんなフレデリックの横で少し呆れたように言ったのは彼の妻であるミーア・リンスウッドであった。その腕には小さな赤ん坊が抱かれている。
「もちろん承知しているさ。ミーアとキャロルのために、全力で頑張るつもりだよ。――だから応援してくれよ、キャロル」
ミーアが抱いている赤ん坊――キャロルの頬をツンツンと突きながら上機嫌に言うフレデリック。ミーアは「起きちゃうでしょ」と注意するが、それも虚しくキャロルは目を開けた。
「あうあう」
「ははは、見ろ。キャロルも牧場ができて喜んでいるぞ」
フレデリックがキャロルを抱き上げ、肩車をする格好で牧場に向き直る。その視線の先には広大な草地の真ん中で気持ちよさそうに寝転がっている赤い鱗のドラゴンがいた。
「凄いだろ? 今はまだあのイリウスしかいないが、そのうちもっと数を増やしてハルヴァ一の育成牧場にしてやるぜ」
「その心意気には俺たち竜騎士団も期待しているよ」
妻のものではない、成人男性の声に反応してフレデリックが振り返る。
「ハドリー!」
「いよいよだな、兄貴」
兄であるフレデリックと同じサラサラの金髪をなびかせて現れたのは新米竜騎士のハドリーであった。
「長年の夢が叶った感想は?」
「その気持ちはおまえもよく知っているだろ?」
「ふっ、まあね」
病弱だったハドリーは鍛錬を重ねてとうとう夢だった竜騎士団入りを果たした。それに遅れること約一年――兄であるフレデリックも、ドラゴン育成牧場オーナーという長年の夢を叶えることができた。
「しかし、いるのがまだあのイリウスだけというのはねぇ」
「駆け出しだからしょうがねぇよ。これから実績を積み重ねていくしかねぇさ。――あのイリウスはおまえに託すぞ」
「ああ……わかっているよ」
リンスウッド兄弟は拳を合わせてお互いの成功を祈った。すると、
「ううぇ~ん!!」
突如、フレデリックに肩車をされていたキャロルが泣き出した。
兄弟二人は「しまった」と同時に目を伏せる。
「すまない、兄貴……油断をしていた」
「気にするな、ハドリー」
フレデリックはキャロルをミーアに託すと、ハドリーの肩を優しく叩く。
キャロルがハドリーを見てすぐに泣きだすというのは今に始まった話ではない。激しい戦いを続ける竜騎士団に身を置くハドリーは常に気を張っていて気難しい顔をしていたのだが、その顔は大変凶悪なものであり、キャロルだけでなく他の子どもたちも恐怖のあまり泣きだしてしまうほどだった。
「可愛い姪っ子のため……なんとかしたいと笑顔の練習をしているのだが……」
涙ぐましい努力を語るハドリー。だが、今のところその成果はないようだ。
「そう落ち込むなよ、ハドリー。――そうだ、あれを見ろ」
そう言ってフレデリックが指さしたのはミーアとキャロルの方向。
目を向けると、すでにキャロルは泣き止んでおり、母親であるミーアと何やら楽しそうにしている。そのキャロルの手にはある物が握られていた。球体をしたその物体を、キャロルは楽しそうに叩いたり放り投げたりしている。
「兄貴、キャロルが手にしているのは?」
「アレか? 赤ん坊用のおもちゃだよ。まん丸で柔らかな感触をしているからキャロルが大層気に入ってな。あの大きさなら口にも入りきらないから誤飲することもないし、今や泣きじゃくるキャロルを大人しくさせる切り札だ」
その光景が、ハドリーに天啓をもたらした。
「……ありがとう、兄貴」
「え?」
「いい案を思いついたよ。――じゃあ、俺はこれで!」
そう言い残し、ハドリーは全力で駆けだした。
「な、なんなんだ?」
そのあまりの迫力に、フレデリックはしばらく呆然としているのだった。
それから数日後。
「キャロル!」
リンスウッド・ファームを訪ねてきたハドリー――その姿を目の当たりにしたフレデリックとミーアは言葉を失った。
「は、ハドリー……どうしたんだ、その頭は?」
兄と同じ美しい金髪をしていたハドリーの頭から、その金髪が綺麗サッパリなくなっていたのだ。
「これか? これこそが俺の策だよ、兄貴」
「さ、策?」
なんのことだか皆目見当もつかないフレデリックとミーアは顔を見合わせる。
「キャロルのお気に入りであるそのおもちゃと同じ頭をした今の姿なら、きっと俺を見てもなくことはないはず!」
「…………」
それはどうだろうかと冷静にツッコミを入れようとしたフレデリックだが、ハドリーのあまりの自信とそうまでして姪っ子との関係を改善したいと願う気持ちを汲んで何も語ることはなかった。
「さあ、キャロル!」
兄夫婦の横をすり抜け、子ども用の小さなベッドで横になるキャロルへ迫る。
そして、バッチリと目が合うと、
「あーう♪」
キャロルはニッコリと笑顔を浮かべた。
「! み、見ろ、兄貴! キャロルが俺を見て笑ったぞ!」
「……あれでいいのか」
我が娘ながら少し単純すぎないかと心配になったが、きっとキャロルにもハドリーの「自分と仲良くしたい」という思いが伝わったのだろう。そう解釈することにした。
――それから数年後。
「ハドリー叔父さん」
聞き慣れた姪っ子の声が耳に届く。
ハッと顔を上げたハドリーの目の前には、十五歳になったキャロルがいた。
「居眠りなんて珍しいですね」
「うーむ……ちょっと疲れがたまっているのかもしれんな」
竜騎士団の仕事が非番だったこともあり、ハドリーは姪であるキャロルの様子を見にリンスウッド・ファームを訪れていた。
彼女の両親――兄夫婦は若くして亡くなり、今はこの牧場を十五歳のキャロルがひとりで切り盛りをしている。ただ、その経営はお世辞にも順調とはいえず、売却話が持ち上がってしまうほどだった。
それでも、キャロルは懸命に働いている。
逆境を跳ね飛ばそうと、小柄な体に鞭を打つようにして。
「…………」
「? ハドリー叔父さん?」
「あ、いや、なんでもないよ」
黙ってしまったハドリーを心配して、キャロルが声をかける。それに対し、ハドリーは心配いらないと手を振った。
「そういえば、前から一度きいてみたかったんですけど」
「なんだ?」
真面目な顔つきになったキャロルに、ハドリーも真面目な顔で返す。
「どうしてハドリー叔父さんはいつもスキンヘッドなんですか? お父さんと一緒に写っている昔の写真だと髪の毛があるのに」
「…………」
「な、なんですか、その顔は」
質問者である姪のために剃ったのだが、思えば当人に話したことはないのでその理由を知っているはずもなかった。
ハドリーは大きく息を吐いて立ち上がる。
「そろそろお暇するよ」
そう言ってから、ハドリーはあることに気づく。
「キャロル? その格好……これからどこかへ行くのか?」
姪のキャロルは牧場での作業着である愛用のオーバーオールではなく、外行き用の服であった。
「ちょっとルトアの街まで買い物に行こうかと」
「ルトア? こんな時間にか?」
すでに空はオレンジ色に染まり始めている。
いくら近いからとはいえ、この時間からルトアへ行くと買い物を終えて戻って来る頃には夜になってしまう。
「最近、あの辺は治安があまりよくないって話だぞ。明日じゃダメなのか?」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。ちゃちゃっと買い物を済ませてすぐ帰ってきますから」
ニコニコ笑うキャロルを前に、ハドリーは何も言えなくなってしまう。きっと、何を言っても無駄だろう。一度決めたことはやり通す。そうした、変な頑固さは父親譲りだな、と苦笑いを浮かべた。
結局、暗くなる前に戻ることと素性のわからない人間にかかわらないという約束をして、ハドリーはリンスウッド・ファームをあとにする。
「おっと、しまった」
城へ戻る途中で、ハドリーはパチンとツルツルの頭を叩いた。
「牧場の売却話を進めようと思っていたのに……まあ、明日話せばいいか」
不本意ながらも、これ以上の存続は難しいと判断したハドリーは密かに牧場の売却話を進めていた。もちろん、兄の長年の夢であった牧場を売却するなどもってのほかなのだが、これ以上はキャロルにとっても大きな負担になるだろうという苦渋の決断であった。
「……ここらで大逆転の手でも舞い込んでこないものかねぇ」
願望を口にして、天を仰ぐ。
空のオレンジに薄らと夜の黒が混じり、星の瞬きが顔をのぞかせていた。
――ハドリーの切なる願いは星に届き、翌日、高峰颯太という大逆転の手が舞い込んでくるなど、この時のハドリーは知る由もなかった。
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